「ほう!な話」

2012年4月28日

「ほう!な話」スペシャル版

昨年の離婚件数は23万5千組(厚生労働省推計)。結婚するカップルの3割近くが別れていることになる。別れる際、法律問題が絡むことが少なくない。そこで、木曜生活面で「『ほう!』な話」を担当する福岡県弁護士会の4人に、最新の傾向と対策を解説してもらった。

●準備 家計把握と物証を

弁護士は夫婦の幸せな門出に立ち会うことは多くなく、大抵は「もう駄目」となって登場する存在です。話を聞くと「もう少し早くから準備しておけば」というケースがよくあります。

まずお金。相手の収入が分からない、家の資産を把握していない・・・。家計を片方に任せきりの夫婦は少なくありません。財産分与を期待して離婚を切り出したものの、ふたを開けると資産はほとんどなかった-ということにならないよう、日ごろから把握しておきましょう。

とりわけ複雑化しやすいのが、住宅ローン支払い中の夫婦。例えば夫が債務者で妻が連帯保証人の場合、離婚しただけでは保証人の責任から解放されることになりません。金融機関との協議が必須ですが、簡単にいかないのが通常です。

また、暴力や浮気を訴えるとき、否定されたときに備えて物証を残しておくことも大切です。病院の診断書、偶然見たメールで浮気を知ったらプリントを。

お互いに歩み寄るのが一番ですが、長い人生、備えあれば憂いなし。そして、こじれる前に弁護士に相談を。

(木下比奈子)

●親権 条約批准前に議論

日本がボーダーレス社会となるにつれて国際離婚も増加傾向で、2010年には約2万件に達しました。最近は、妻が日本人、夫が欧米人というケースで親権や面接交渉のトラブルとなるケースが増えています。

背景には、日本が離婚後は単独親権で、子どもは母親が育てるという観念が根強いといった事情があり、欧米人の夫が「親権を失うと子どもに会えなくなる」との不安を抱くからです。欧米諸国はほとんどが共同親権で、父親も子育てに対する権利があるとの信念を有します。文化や民族、宗教的な問題ともつながります。

そこで09年に欧米諸国から、ハーグ条約の批准を求められるに至りました。国際結婚が破綻した際、一方の親が無断で子どもを国外に連れ去った場合の対処を定めた約束事です。議論の結果、昨年5月に政府も批准の方針を打ち出し、今年3月には関連法案と条約案を国会に提出する旨の閣議決定をしました。

今後はどんな場合に子どもの返還を拒否できるかという議論に加え、親権そのものが再検討される時期に来たのかもしれません。

(田邊俊)

●養育費 簡易算定表に疑問

4月から、協議離婚届用紙が改定されました。離婚の際、養育費や面会交流について取り決めがなされているかを尋ねる欄が新設されたのです。

養育費の額が問題になる場合、実務上は「簡易算定方式」「簡易算定表」を用いて決めることが多かったのが実態です。2003年に「東京・大阪養育費等研究会」が発表したもので、両親の収入を基準にして、妥当に見える養育費が一目で分かるものです。これだと、簡易・迅速に結論が出やすいため、広く用いられてきました。

しかし、養育費の額が低すぎて、母子(父子)ともに困窮するケースが珍しくありません。「簡易・迅速」が優先され、子どもの生活が困窮することがあってはなりません。この算定には疑問の声も多く、養育費が全般的に低額となり、特に母子家庭が困窮に陥ってしまう場合が多いことが指摘されていたのです。

そこで日本弁護士連合会は、これまでの実務の在り方に見直しを求める意見書を取りまとめました。これまで実務で使用されてきた算定は見直しの時期を迎えているのです。

(松尾朋)

●慰謝料 金額には幅がある

「慰謝料の相場は?」とよく相談されます。離婚しても必ずもらえるわけではありません。原因が、不貞や暴力などの不法行為(民法709条)と評価できる場合のみ請求できるのが前提です。裁判にまでこじれると証拠も必要です。

浮気が原因の場合、裁判になれば浮気の内容や精神的苦痛の程度、婚姻期間などの諸事情が総合的に考慮されて金額が決められます。裁判官の心証次第という側面もあり、弁護士としては具体的な金額は明言しづらいのが本音です。

裁判で請求が認められても、相手方が任意に支払わなければ、給料や不動産を差し押さえて換価する手続きが別途必要です。最近では離婚専用の銀行ローンもあるようです。浮気相手への慰謝料の請求も可能ですが、浮気した時点で夫婦関係が破綻していれば支払う義務がない判例(1996年、最高裁)もあります。

配偶者からの慰謝料の場合、あえて額を示すなら一般的なサラリーマン家庭で100万~300万円のケースが多いです。ただし、これはあくまで目安であり、弁護士によっても回答に幅がある法律問題です。

(春田久美子)

<解説した弁護士>

▼木下比奈子さん

▼田邊 俊さん

▼松尾 朋さん

▼春田久美子さん

●福岡県弁護士会 相談窓口(0570)783552

電話番号は「悩みここに」と覚えてください。最寄りの相談センターを案内します。県外からもつながりますが、県外での対応は各県の弁護士会にお問い合わせください。

西日本新聞 4月28日分掲載

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