「ほう!な話」

2011年4月7日

「ほう!な話」特別版

遺産相続をめぐるトラブルで、家族の絆が損なわれてしまうケースが後を絶ちません。そこで日本弁護士連合会は、4月15日を語呂合わせで「良い遺言の日」と定め、各地で啓発行事を展開しています。福岡県弁護士会も「『ほう!』な話」の特別版を企画しました。

●生命保険金も分ける?/受取人指定なら対象外

【Q】夫を亡くし、「生命保険金」と「死亡退職金」を受け取りました。これらも遺産分けの対象になるのでしょうか。

【A】まずは生命保険金について。受取人が具体的に指定されている場合は、その人固有の財産になるので、遺産分けの対象にはならないのが原則です。
ただし、受け取った保険金の分が「特別受益」と見なされると、話は別。特別受益とは、亡くなった人から生前に援助を受けた場合(マイホーム資金など)で、相続分の前渡しとして、遺産分けの際に考慮されるものです。
死亡退職金は、労働協約や就業規則など会社との取り決めに基づいて支給される場合、固有の財産となり、遺産分けの対象にはなりません。この場合も特別受益に当たるかどうかで判断が分かれ、判例も統一されていません。
同様の問題は「遺族年金」の取り扱いでも起こります。身近な問題ですが、誤解や勘違いをしている人も少なくないので、正確な知識を身につけておきましょう。

(岡田武志)

●孫への相続できるの?/「特段の事情」があれば

【Q】母の遺産分けで、おいともめています。私には弟がいたのですが、母が「財産はすべて息子(私の弟)へ」との遺言書を残していたところ、弟が先に急死したのです。弟には息子がいて、母の遺言書を盾に「僕が全部もらえるはず」と強硬です。母の遺言は有効なのでしょうか。

【A】その遺言が有効となれば、基本的に遺産はおいのものになり、あなたはせいぜい「遺留分」(本件では4分の1)を主張できる程度でしょう。しかし、無効であれば、原則に戻って法定相続分(2分の1)の権利を主張できます。
似たようなケースは少なくなく、各地の地裁や高裁の判断もバラバラでした。それが今年2月、初めての最高裁判決が出ました。
「遺言書の記載内容や作成当時の状況などから、孫に相続させるという意思があったという特段の事情がない限り、遺言書は無効」。つまり「息子にあげる」という遺言書からは、その限りの意思(息子にあげる、という意思)しかうかがわれず、それ以上でもそれ以下でもないので、孫が全部もらえることにはならない-と判断したのです。
遺言書を作る場合は、自分の思いは一層明確にしておくことが求められます。

(春田久美子)

●長男の妻に家残したい/遺言書に記せばできる

【Q】同居の長男が昨年急死しましたが、子どももおらず1人残された長男の妻は、以前と変わらず同居し、老いた私の世話をしてくれます。夫に先立たれた私には次男がいますが、長男の妻には、この自宅だけでも残してあげたい。希望はかなうでしょうか。

【A】この場合、長男の妻には、あなたとの関係では相続権がありません。自宅を生前贈与する方法も考えられますが、相続税に比べ贈与税が多額になる問題もあります。そのため多くは遺言書を作成し、長男の妻に残す旨を明記して遺贈する方法がとられます。
ただ、次男と長男の妻との間で紛争が予想されるときには、次男の「遺留分」も考慮して遺言を残しておいた方がいいでしょう。受遺者への所有権移転に関わる登記申請は、次男と長男の妻が共同で行う必要があるので、遺言で遺言執行者も指定しておくのが望ましいです。

(平井敬三)

●上手に事業を譲るには/「円滑化法」を活用して

【Q】私は一人株主の会社の社長です。万一の場合、長男に会社を譲りたいのですが、遠方に住む次男もいます。財産といえば会社の株式ぐらいですが、長男と次男がもめないよう、上手に事業承継をする方法はありますか。

【A】経営者が何も対策をせずに亡くなると、思いのほか厄介な問題が生じます。これまで会社の経営に全くタッチしていなかった次男が、法律に基づいて株式を半分相続することになり、会社の意思決定にも影響力を及ぼすようになる-などです。かといって、株式の全部を長男に相続させる遺言書を作成しても、次男が「遺留分」を主張するかもしれません。
こうした中小企業ならではのトラブルを解消するため、2008年に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が制定されました。これにより、所定の手続きをとれば、経営者から後継者への生前贈与株式を遺留分の対象から除外するなどの対処ができるようになりました。
事業承継には高度な法律知識も必要となります。福岡県弁護士会は中小企業法律支援センターを設けており、日弁連の「ひまわりほっとダイヤル」=0570(001)240=もあります。相談してみてください。

(川上修)

福岡県弁護士会は15日午前10時―午後4時、福岡市の天神弁護士センターで、遺言や相続に関する無料法律相談会を開催します。

要予約(先着30人)問い合わせは同センター=092(741)3208。

西日本新聞 4月7日分掲載

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