「ほう!な話」

2011年5月19日

冤罪防止 ルール厳守こそ

日本で、弁護士が刑事事件の被告人を弁護するようになったのは、実はそれほど昔のことではありません。

明治8年、広沢参議暗殺というセンセーショナルな重大事件の裁判の際に「弁護官」が任命されたことがあります。ただしこの弁護官は役人だったので、「別に弁護すべき意見なし」と述べ、裁判が終わってしまいました。弁護官が選任されたのはこのとき1回限りです。

明治13年以降、ようやく「代言人」(現在の弁護士のこと)が弁護人として一般の刑事事件に関わるようになりました。このように、無罪の人を罰しないための多くの仕組みが、長い時間をかけて作られてきました。

21世紀にも足利事件、村木事件のような冤罪(えんざい)が発生し続けています。刑事裁判の仕組みの意味を理解せず、ルールを守っていないからです。

例えば「疑わしきは被告人の利益に」など、一見すると犯人を逃がしてしまう方向に働くように見えるルールもあります。しかし、ルールを無視して「犯人」を作りだすことは誰の利益にもなりません。被害者にとっても、真犯人が見つからなくなるという到底受け入れられない結果をもたらします。

刑事裁判の仕組みを理解し、ルールを守ることが、結局は真実に近づくことを可能にし、適正に犯人を罰することにもつながる-。長い刑事裁判の歴史から私たちが学んできたことなのです。

◆天神弁護士センター=092(741)3208(要予約・30分5250円)

西日本新聞 5月19日分掲載(高平奇恵)

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