「ほう!な話」

2012年5月17日

被告人は本当に真犯人か?

想像してみてください。殺人事件が起きました。被害者の遺体はバラバラにされ、交際相手が逮捕されました。やがて被疑者は起訴され、裁判員裁判を受けることになりました。

裁判員に選ばれたのがあなただとします。裁判初日、被告人がこう言うのを目の当たりにします。「私は犯人ではありません。無罪です」。他方、遺族も裁判に出席し「犯人は被告人に間違いありません。絶対に許せません。このままではあの子が報われません。どうか極刑にしてください」と泣き崩れます。

遺族の姿に思わず涙がこみ上げてくるかもしれません。被害者や遺族の無念を晴らしたい。極刑にすべきだ。そして、遺族がうそを言うわけはない、だから犯人は被告人に違いないとすら思うかもしれません。

しかし、遺族は犯人を目撃したのでしょうか。捜査機関から聞かされ、思い込んでいる可能性は?
目撃したとしても、見間違いや記憶が曖昧になっている可能性はないでしょうか。うそをついている可能性は?

被害者遺族の思いに真摯(しんし)に耳を傾けるべきことは言うまでもありません。しかし、被害感情を被告人が犯人であることの証拠にはできません。責められるべき真犯人は本当に被告人なのか、感情に揺さぶられることなく証拠を検討することが大切です。結果的に被害者遺族の言い分を否定しなければならない場合もあるのです。

◆福岡県弁護士会の相談窓口案内=(0570)783552(なやみここに)。

西日本新聞 5月17日分掲載(三浦徳子)

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