「ほう!な話」

2011年5月27日

「ほう!な話」災害スペシャル版

被災者の暮らしを一変させた東日本大震災。日常生活は法に基づいて営まれているだけに、その再建にあたっても法律問題は避けて通れない。生活面で「『ほう!』な話」を連載している福岡県弁護士会の所属弁護士4人に、もしものときに役立つ法知識について解説してもらった。

〈担当した福岡県弁護士会のみなさん〉

星野 圭さん 市丸信敏さん 宮下和彦さん 佐藤 力さん

●生活費 保護申請や失業給付

被災しても生きていかなければなりません。当面の生活費をどう確保するか。

まず生活保護の利用が考えられます。避難先の自治体でも申請できます。対象になると、避難先から引っ越す費用や敷金も支給される可能性があります(限度額あり)。

次に失業給付。退職や解雇が前提ですが、今回は特例として、実際に離職しなくても受けられます。

長期的な生活再建には「働く場」の確保が重要です。一方で、震災の影響を理由とした内定取り消しや解雇、派遣切りが増加傾向なのも事実。しかし、解雇などは労働基準法や労働契約法で定められた厳格な要件を満たす必要があります。災害で会社が休業状態になっても、使用者が一定割合の賃金を払わなければならない場合もあります。

災害関連の法令は複雑で、しかも災害規模や今回のように特定の災害によってさまざまな特例が設けられます。間接的な損害を被った人に有用な制度もあります。納得できない場合は弁護士などに相談しましょう。

(星野圭)

●住宅 ローンは返済猶予も

住宅に関する特に多い三つの相談を取り上げます。

(1)家を失っても住宅ローンは残るのが原則。ただし現在、二重ローンによる過重負担の軽減策、自己破産しなくても返済を免除してもらえる仕組みなどの救済策が政府で検討されています。金融機関に相談してください。ローンを組んだ本人が亡くなった場合、団体信用保険に加入していれば支払いはなくなります。

(2)罹災(りさい)証明の被害認定(全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊)に納得できなければ、再調査を申し立てられます。地震保険の損害認定(全損、半損、一部損壊)にも不服申し立ての仕組みがあります。建物の状況を、写真などに収めておくことをお勧めします。

(3)借家が壊れ、修理するから一時退去してほしいと言われたら、どうするか。大家には建物を賃貸に耐えうるよう修理する義務と権利があり、応じるしかありません。その際の引っ越しや仮住まいの費用請求も難しいでしょう。ただ、一時退去中の賃料は払う必要はありません。また、客観的に住めないくらい壊れていたら、家財道具を置いたままでも賃料を払う義務はありません。

(市丸信敏)

●給付 弔慰金は最高500万円

大災害が発生した場合、何より食べることと住むところの確保、そして、とりあえずのお金は不可欠です。これらについては「災害救助法」で、その支援の内容が定められています。

「災害弔慰金の支給等に関する法律」では、世帯の“大黒柱”(収入が最も多い人)が災害で亡くなった場合は最高で500万円、その他の人が亡くなった場合は最高250万円を遺族に支給することが定められています。災害によって重い障害を負った場合は、最高で250万円が支給されます。

さらに「被災者生活再建支援法」によって、自治体が家屋の損害の程度を調査・判断し、その程度(全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊)を罹災(りさい)証明書という形で認定し、最高300万円まで支給する仕組みになっています。

以上のような給付金とは異なる貸付金として、無利子で原則10万円(特別の場合は20万円)までの生活福祉資金貸付制度(窓口は市区町村の社会福祉協議会)などもあります。

(宮下和彦)

●便乗業者 悪徳商法に注意を

実家が被災したこともあり、連休に現地を訪ね、法律相談をしてきました。そこで気になったのが、震災に便乗した悪質商法です。

例えば、ガス会社や消防署を名乗る者が家に来て、火災警報機や消火器の購入契約を結ぶ(かたり商法)▽建設業者が屋根や床下を無料で“点検”した後「このままだと家が倒壊する」などと不安をあおり、必要のない契約を法外な値段で結ぶ(点検商法)-などの手口が知られています。

いずれもクーリングオフで対処できます。契約書類を受け取ってから8日以内に意思表示をすれば、理由を問わず一方的に契約を解除できる仕組みです。払った代金の返還、工事完了後の原状復帰を求めることも可能。8日間を経過しても勧誘の際にうそをつかれていれば、取り消せます。

おかしいなと思ったら、各地の消費生活センターに問い合わせてください。今回の被災では「震災関連悪質商法110番」=(0120)214888=が利用できます。解決のために弁護士の力が必要なケースでは、日本司法支援センター(法テラス)による費用援助の制度を活用してください。

(佐藤力)

福岡県弁護士会は、東日本大震災復興支援対策本部を設け、19カ所の法律相談センターで面談による無料相談を受け付けています。法的手続きに必要な費用を援助する制度もあります。

▽無料相談(予約制)=福岡092(741)3208/北九州093(561)0360/事業者向け0570(001)240

▽日本弁護士連合会の無料電話相談=(0120)366556

西日本新聞 5月27日分掲載

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