「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2014年10月15日

ハーグ条約 日本国籍の婚姻にも

▼Q 私と妻(双方日本国籍)との間に6歳の子どもがいます。ところが、突然、妻が子どもを連れて国外に行ってしまい、戻ってきません。取り戻す手段はないのでしょうか。

▼A 近年、国際結婚の増加などにより、一方の親による子の国外への連れ去りが増加していると言われています。このような問題を解決するため「国際的な子の奪取の民事面に関する条約(ハーグ条約)」があります。日本もハーグ条約を締結。今年4月1日から発効しました。

ハーグ条約では(1)子の返還手続き(2)子との面会交流手続き(3)これらに対する中央当局の援助-などを定めています。日本では外務省が中央当局を担います。ハーグ条約は国際的な子の連れ去りに適用されるので日本国籍同士の婚姻でも国外に子を連れ去った場合は適用されます。しかし、ハーグ条約は締結国でないと効力を有しません。北米・欧州では大部分の国や地域がハーグ条約を締結していますが、アジアでは数カ国です。

連れ去り先が条約締結国であれば外務省に援助申請することも、現地の中央当局に直接援助を申請することもできます。ただ、連れ去りから1年以上経過し子が現地の環境に適応している場合は子の返還が拒否されることも。締結国以外の場合は、現地の裁判所などに子の引き渡しを求めなければならず、現地ごとに対応が異なります。
子の返還が認められても、あなたに監護権が得られるとは限らず、日本の裁判所で手続きする必要があります。

西日本新聞 10月15日分掲載(井上 敬)

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