「ほう!な話」

2015年4月18日

「ほう!な話」スペシャル版 新生活トラブル対処法

4月。入学、入社など新しい生活が始まった方も多いでしょう。希望と期待の一方、トラブルに巻き込まれる恐れもあります。三つのケースについて、水曜生活面で「ほう!な話」を担当している福岡県弁護士会に所属する3人に解説してもらいました。
〈福岡県弁護士会相談窓口=(0570)783552〉

●賃貸修繕費 年数で借り主負担減

【Q】この春、転勤で10年住んだ家を退去しました。大家に「リビングの壁のクロスが1カ所破れていた。そこだけ替えると見た目がおかしいので、部屋全体を張り替える」と言われました。敷金から全面張り替えの費用が差し引かれようとしています。確かに、子どもが遊んでいるときにクロスを破いてしまいましたが目立たない小さな破れです。私は全面張り替え分の費用を負担しないといけないのでしょうか。

【A】まず、入居者が故意または過失によってつけた傷の修繕費用は入居者負担になります。今回はお子さんがクロスを破られているので、修繕費用は入居者負担となります。

次に入居者が修繕費用を負担する範囲です。国土交通省が策定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に考え方が示されています。クロスの修繕範囲については「平方メートル単位が望ましいが、賃借人が毀損(きそん)した箇所を含む一面分までは張り替え費用を賃借人負担としてもやむをえない」とされています。傷の程度で一面分までの張り替え費用は請求される恐れがあります。ただ、ガイドラインでは経過年数により借り主の負担割合は減少する(6年で残存価値1円)とされています。10年居住の場合は入居者の負担額は極めて低い金額になると考えられます。その旨を大家さんに伝え、交渉しましょう。

(藤村元気)

●一気飲み事故 刑事、民事の責任発生

【Q】この春大学に進学した息子が急性アルコール中毒で救急搬送されました。サークルの飲み会での一気飲みが原因のようです。息子に万が一の事があった場合、サークル関係者に何らかの責任を問うことができるのでしょうか?

【A】一気飲みは急性アルコール中毒を引き起こし、死亡事故につながりかねません。大変危険なので絶対にやめてください。一気飲みで死亡事故が発生した場合、周囲の人は刑事、民事を問わず責任を負う可能性があります。

刑事事件の場合、一気飲みをさせた人が過失致死罪や傷害致死罪などに問われます。酔いつぶれた人が放置され、吐しゃ物を喉に詰まらせ死亡したケースでは保護責任者遺棄致死罪に。死亡しなくても急性アルコール中毒を起こさせたとして傷害罪や過失傷害罪になることもあります。

民事事件の場合、周囲の人に対する損害賠償請求を認めた判例があり、高額な損害賠償を請求される可能性があります。一気飲みはその場のノリで行われることが多いため、つい一気飲みを勧めてしまうことがあり、いつの間にか加害者になってしまうことがあります。被害者だけでなく、加害者にもならないよう、十分に気をつけてください。また未成年の飲酒は法律違反(未成年者飲酒禁止法第1条)です。

(中嶽修平)

●新入社員 本採用の拒否は違法

【Q】正社員としてA社に入社しました。3カ月の試用期間があります。求人広告では手厚い新人教育がうたわれ、会社説明会ではサービス残業はさせないと言っていたのですが、実際には全く教育はされずに長時間残業でも残業代は一切ありません。
十分な休憩時間もありません。会社に是正を求めたいのですが、本採用を拒否されると嫌なので何も言えない状況です。

【A】求人広告の内容や会社説明会での説明と実際の労働環境が異なる場合には慰謝料などを請求できる可能性があります。また、労働者が残業をした場合には会社は残業代を支払う義務がありますので残業代を支払わないことは違法です。そもそも慢性的な人手不足のために残業を強いられている場合などには残業命令自体が違法となることもあります。労働者に休憩時間を与えることも法律で義務付けられています。

あなたが法律に沿った正当な主張をする限り、会社がそのことを理由に試用期間後の本採用を拒否することは違法です。何も主張せず違法な状態のまま働くことになれば本来もらえるはずの残業代がもらえないばかりか、過労で心身に重大な悪影響が生じるかもしれません。労働法はあなたが健康で楽しく働くことをサポートするために存在します。少しでも労働環境に疑問があれば気軽に弁護士にご相談ください。

(西野裕貴)

西日本新聞 4月18日分掲載

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