「ほう!な話」

2010年10月1日

弁護活動が犯罪の背景探る

なぜ、悪いことをした人を弁護するのか-。私たち弁護士によく突きつけられる質問です。

「真犯人はほかにいる」「身に覚えがない」などと主張していれば、弁護人は必要だと思う人は多いでしょう。他方、本人が罪を認めているときまで弁護人の援助が必要なのか、疑問を感じる人は多いかもしれません。

答えは「被疑者・被告人がどんな人であろうと、どんなに凶悪な事件であろうと、刑事手続きを受けるにあたっては弁護が必要だから」に尽きます。それでも、なかなかすぐには共感、納得してもらえないようです。

犯罪には、動機や背景などさまざまな側面があります。弁護人が被疑者・被告人から生の話を詳しく聴くことによって、初めてあぶり出される事件の真実も多々あります。特に世間一般の人が一面的にしかとらえていない事件ほど、被疑者・被告人 の視点に立った弁護活動が必要な場面は多いのです。

「悪いことをしたら弁護人はいらない」となれば、被害者への謝罪や弁償はもとより、家族など被告人を取り巻く人々の存在、犯罪を生み出した社会的背景は何かを浮かび上がらせることができなくなります。それでは適正な裁判とはいえません。

市民参加の裁判員裁判制度が2年目を迎えました。市民のみなさんが抱く刑事弁護への根源的な疑問を、長い時間をかけて解消していくことも、私たち弁護士に課せられた役割だと肝に銘じています。

◆天神弁護士センター=092(741)3208。

西日本新聞 10月1日分掲載(德永響)

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