「ほう!な話」

2012年9月1日

「防災の日」特集 家屋損壊 最大300万円を支給 ほか

今日は防災の日。この夏、九州では豪雨被害が相次いだ。一方、東日本大震災に遭い、今も九州で避難生活を送る人もいる。家のローンは、生活費は・・・。法律で解決できることも少なくない。木曜生活面「『ほう!』な話」を担当する福岡県弁護士会の4人に、Q&A形式で解説してもらった。

●家屋損壊 最大300万円を支給

【Q】九州北部豪雨で自宅が全壊しました。これからの生活が不安です。どのような公的支援を受けることができるでしょうか。

【A】今回の豪雨には災害救助法が適用されます。被災者生活再建支援法が適用される市町村もあり、家屋の場合、各自治体の調査により全壊、大規模半壊、半壊のいずれに当たるかを確認し、発行される罹災(りさい)証明書に基づいて最大300万円まで支給されます。

けがを負った場合は、両目失明や常時介護が必要な重度の障害が残った人には「災害弔慰金の支給等に関する法律」により同250万円が支給されます。

一家の生計を維持していた方が亡くなった場合は同500万円、その他の方だと同250万円が遺族に支給されます。当面の生活費については災害援護資金の貸付制度や市町村の社会福祉協議会による緊急小口貸付制度があり、税金や医療費の減免制度もあります。

日本の災害関連諸法令は複雑な上、災害の規模により特別立法が設けられ、特例措置が採られます。福岡県と大分県の弁護士会は、九州北部豪雨に関する法律相談に無料で応じています。ご利用を。

(宮下和彦)

●賠償責任 不可抗力なら不問

【Q】豪雨でビニールハウスが浸水し、収穫間際の野菜が全滅しました。そのため、野菜を引き渡す約束をしていた業者から損害賠償を要求されています。応じる義務はありますか。

【A】災害で約束(契約)が守れなかった、約束の実現が不可能になったという相談はとても多いです。

農家が野菜を業者に売るのは売買契約なので、通常は約束を守れなかった人が損害賠償義務を負います。しかし、その理由が災害のように不可抗力であれば、責任を負う必要はありません。河川の氾濫が浸水の原因であれば、賠償義務はありません。

また、契約でいえば、農機具小屋を大工さんに建ててもらっていたのに豪雨で地盤が崩れて建てられなくなった、という例もありました。これは請負契約なので、完成しない限り代金を払う必要はありません。途中で不可抗力により建てられなくなった場合も、それまでにかかった材料費さえ払う必要はなく、契約関係から解放されます。大工さんには気の毒ですが・・・。

ただし、契約は内容によって対応の仕方が異なりますので、弁護士にご相談ください。

(青木歳男)

●住宅ローン 減免制度が有益

【Q】東日本大震災の津波で自宅が流され、九州へ避難してきました。九州で仕事を見つけ、生活を再建しようと新居を希望していますが、流された家のローンを払い続けるのは到底無理です。破産をするしかないのでしょうか。

【A】東日本大震災での被災者の二重ローン対策としては「被災ローン減免制度」(私的整理ガイドライン)が有益です。支援金や義援金、弔慰金に加え、これとは別に預貯金を原則500万円まで手元に残し、破産によらずにローンと抵当権を整理するものです。

原則として500万円を超える部分と土地の買い上げ代金をローンの返済に充て、残りは免除されます。既に返済の停止や返済方法を変更したりしていても利用できる場合があります。

さらに信用情報機関(事故情報リスト)に登録されず、一定の場合を除いて保証人にも請求されないので迷惑がかからないなどのメリットがあります。事業資金ローンなどにも使えます(法人は除く)。返済の繰り延べなどの「条件変更」より、新しい生活を踏み出す被災者にとっては有益な仕組みで、弁護士費用も無料です。

(安河内智子)

●原発事故損賠 請求は3通り

【Q】原発事故で九州に避難しています。ようやく落ち着き、東電に損害賠償請求をするつもりです。どんな方法がありますか。

【A】(1)東電の請求書を使用(2)公的な第三者機関、原子力損害賠償紛争解決センター(東京、福島)に和解仲介を申し立てる(3)民事調停、民事訴訟で請求する-という方法があります。

(1)は迅速に解決に至る半面、請求書の書き方が難しく、額も低いとされます。(2)は東電の認定額に不満がある場合などに活用できますが、実際は弁護士が関与しない申し立てが多いためか、和解成立に時間がかかる問題が指摘されています。(3)は一般的な方法で額が高くなる可能性はあっても、解決に時間を要します。

慰謝料も支払われます。第三者機関の原子力損害賠償紛争審査会が作成した中間指針では月1人10万円。これはあくまで目安であって、同センターによる和解で10万円以上が認められた例も出てきています。重度の持病があるなど理由はさまざまです。

いずれにしても難しい問題です。身近な弁護士が支援します。福岡では被害者弁護団も発足しました。気軽に相談を。

(岡部史卓)

<解説した弁護士>

▼宮下 和彦さん

▼青木 歳男さん

▼安河内智子さん

▼岡部 史卓さん

●福岡県弁護士会 相談窓口(0570)783552

電話番号は「悩みここに」と覚えてください。最寄りの相談センターを案内します。東日本大震災に関する相談には、宮崎県をのぞく九州各県の弁護士会が無料で応じます。

西日本新聞 9月1日分掲載

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