会長日記
2023年2月1日
会長 野田部 哲也(43期)
◆リスキリングと弁護士
2020年1月、世界経済フォーラムにおいて、「リスキリング革命」の推進が表明され、日本でも、リスキリングが推奨されています。「第四次産業革命」と言われ、これまで、人が担っていた業務が、ロボット等機械の仕事になりつつあります。これにより、生産性が向上する一方で、人がその業務を行う必要がなくなる場面が生じます。リスキリングは、スキル向上を目的に学びなおしを行い、人が行うべき新たな業務に対応するためのものです。人生100年時代を迎え、就業や活動の期間が長期になり、若い時に身に着けたスキルが陳腐化し、通用しなくなる事態を生じています。私たちは、その長い人生において、社会の変化に応じ、新たなスキルを獲得し、その向上を図らなければならなくなっています
ところで、弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とし、これに基づき、誠実にその職務を行わなければなりません(弁護士法1条)。そのため、弁護士は、常に、深い教養の保持と高い品性を育て上げ、法令及び法律事務に精通しなければなりません(同法2条)。科学が進歩し、DXが推進され、弁護士に対し、深い教養と高い品性の維持、向上への期待がさらに強くなっているように思われます。法令も、民法、刑法等の基本法まで、次々に改正され、法律事務のあり方も大幅に変革しています。これらに適切に対応するには、弁護士のリスキリングは、不可欠です。
弁護士会の会長の職務も、現在、大幅に変化していっており、会長の業務を行う上でも、リスキリングが不可欠なように思われます。
◆リーダーの方々との会談と啓発
本年度は、地方公共団体や企業等に対し、就任のあいさつだけでなく、組織内弁護士の採用、社外役員への弁護士の就任など、弁護士の活用を促進していただくため、訪問を続けています。その際、リーダーの方々と会談して、組織内弁護士について、フルタイムのみならず、パートタイムでも、数多く活用されていることを知り、その先見性に驚かされました。また、団体や企業が、その生き残りや成長をかけて、その状況に応じて、知恵を絞って、様々な工夫をされていることを知り、啓発されました。
組織のリーダーの方々は、往々にして、懐が広く、親切で、好奇心が旺盛で、サービス精神に富んだ方が多く、リーダーとして、人として、啓発されました。見習っていこうと思います。
◆即決即断―年度内のチケット制の導入
組織のリーダーの方々は、決断が早く、会談のその場で、弁護士会の活動に即座に協力する旨の回答をしていただくこともありました。社外役員に女性弁護士の名簿の活用をお願いしたところ、その場で、改選の際には、利用し検討する旨の回答をいただくこともありましたし、また、既に社外役員として弁護士を選任していただいている企業のリーダーの方に、仲間の経営者に対し、その活躍を伝えてほしい旨お願いすると、即座に協力する旨の回答をいただいています。
協力をお約束いただいた企業のご推薦により、上場会社の次年度の社外役員に、当会の女性弁護士が採用される可能性のある状況も生まれています。
太宰府市は、本年度の途中の昨年11月に法律相談のチケット制(市民に法律相談センターでの相談の無料チケットを配布するもの)を導入しました。市長は、初回の面談の時から、担当の職員の方に導入を検討するよう指示され、11月には、議会の承認を経たうえで、チケット制を導入されました。広報もしっかり実施していただき、初月から上限に達していたようです。
弁護士会は、強制加入団体であり、会内合意の形成は不可欠です。ただ、社会の変化が著しく、法令の改変等も目まぐるしい今日、会内合意を得たうえで、弁護士会が迅速に活動するべく、色々な工夫をすることが必要なように思われます。
◆単位会交流会―新たな発見
当会は、他の単位会と交流会を実施し、各々が抱えた課題について、協議しています。本年度は、当会、広島県弁護士会、大阪弁護士会の三会交流会をリアルに実施しました。
2022年12月10日、大阪弁護士会館において、三会が集まって、「会務におけるIT化の活用」等について協議しました。他会の状況を知ると、新たな発見があり、当会の制度の運用の工夫に繋げていくことができたらと思います。
◆新年会―Withコロナと組織の意気込み
今年の正月は、10近い新年会に参加しました。いずれの新年会も、コロナへの感染対策については、相当の配慮をされているものの、大会場、大人数をいとわず開催されています。同じ新年会といっても、様々な形式や態様のものがあり、各団体や企業が、様々な工夫をして、実施していました。
Withコロナに舵を切り、それぞれの団体や企業が、その活動を活性化させるため、相当の意気込みをもって実施していることを実感しました。