会長日記
2020年2月1日
会長 山口 雅司(43期)
◆今後10年の弁護士の活動像
みなさま、こんにちは。
いよいよ2020年代が始まりました。
今回は、昨年までを振り返りつつ、今後、特にこれからの10年、弁護士がどのような環境の中で活動することになりそうか考えてみます。とはいえ、多くの不確定要素や主観的要素が入りますから、参考までということでお付き合いください。
◆人口推移と法曹人口・訴訟案件の推移
内閣府の予測によれば、日本の総人口は2020年の1億2410万人から2030年には1億1661万人に減少し(749万人の減少)、生産年齢人口(15~64歳人口)は、同期間で7340万人から6772万人に減ります(568万人の減少)。
他方で、法曹人口は、日弁連の予測によれば、2020年の4万2057人から2031年の5万2793人と、1万人余り増加すると見られます。
また、司法統計等を見ると、民事通常訴訟事件数はここ5年間でいえばやや減少しており、家事事件・人事訴訟事件は増加傾向ですが、一般調停事件は減少しており、大きな変動要因がない限り、今後もしばらくはこの状態が続くと思われます。
ただし、それぞれの事件は、時代を追うごとに細分化された議論が増え、解決までの労力がかかるようになったと思います。
◆訴訟手続のIT化
さらに、民事訴訟手続のIT化は、司法コストや訴訟コストの削減、訴訟手続の効率化や迅速化、地理的不便の解消等が期待され、電子機器の普及に伴い、その推進は必然であり不可避だと思います。
ただ、IT化が万能かといえばそうではなく、訴訟手続の効率化や迅速化を真剣に考えるのであれば、特に裁判所の人員を増やす必要があります。
また、IT化は、集権化を加速させて新たな地域的な司法過疎問題を生む可能性や、IT化から取り残される紛争を見落とす可能性もあり、諸刃の剣であることも認識しておかなければなりません。
◆社会の大きな変革期
他方で、裁判外の社会情勢に目を移すと、外国人や国際化の問題は珍しくなくなっています。
また、2030年までには高齢化率(総人口に占める65才以上人口の割合)は30%を突破し、その後も上昇し続け、社会構造は否応なく変容します。
大都市部への人口集中とその他の地域の人口減少は、過疎地問題を再燃させるでしょう。エネルギー、環境問題、食料問題など、生存にかかわる諸問題は永遠の課題ですが、特に災害対策は大きな課題となりそうです。
経済活動や社会活動の範囲は拡大し、新しいルールを構築しなければならない場面が生じています。
◆「明日の弁護士」の姿
こうした社会状況を見ると、弁護士は、訴訟対応をしていれば良いという時代は既に過去のこととなっているようです。もちろん、訴訟事件を中心に活動する弁護士は今後も不可欠ですが、訴訟以外の場所でどのように活動し、社会の中でのルールの構築や維持にどのように寄与するかというのも、「明日の弁護士」の姿であり、「拡大された司法」の行方であるように思います。
手続のプラットフォームが変容し、新しい分野や再構築が必要な分野が出てくるのですから、これらに対してどこまで積極的に対応していくのかが、弁護士の今後10年の課題ではないかと思います。