会長日記

2021年12月1日

会長 伊藤 巧示(45期)

会員の皆様、こんにちは。

もう師走に入り、今年も残すところ、あとひと月となりました。今月号では、10月中旬から11月中旬にかけて、福岡県弁護士会館において行われた研修などについてお伝えしたいと思います。

◆通訳人研修(10月18日)

当然のことですが、外国人の依頼者とコミュニケーションをとるには通訳人の存在が不可欠です。幸い、当会が整備した「通訳協力会」の名簿の登録人数は、今年の10月時点で319人、対応言語は39語です。そして、当会では毎年1回、通訳人のスキルアップや、通訳人と弁護士との情報交換などを目的として、通訳人研修会を開催してきました。

今年は、わが国の労働法制やこれに関する在留資格の問題、紛争解決方法を学ぶことにより、通訳人の方々にこれらの相談や事件における法律問題について日頃の通訳活動に活かしていただくことを目的として、「在留資格と労働にかかわる法律問題」をテーマとして通訳人研修会が開催され、多数の通訳人の方が参加なさいました。

◆合同就職説明会(10月30日)

75期修習生対象の合同事務所説明会が開催されました。当会には、修習生就職問題および新規登録弁護士支援対策室という執行部直属組織があります。支援対策室は平成21年度の故池永満会長の音頭で発足し、私は池永会長から頼まれて(私は池永会長のもとで修習しました。)、初代の室長となりました。

私が室長時代は、参加者も100名を超え、当時の3階ホールは100名を超えると床が抜ける恐れがあるので、天神や赤坂の会議室を借りて開催していました。新会館ができてからは、会館2階大ホールで開催するようになり、今回が3回目でした。ただ、参加した修習生は23名で、最近の就職状況の改善傾向が見て取れます。10年前頃と比較すると隔世の感がありました。

◆捜査弁護研修(11月1日)

新しい制度が発足しました。被疑者援助成果報酬制度です。10月1日以降に受理した被疑者弁護援助事件について、勾留阻止、勾留質問への弁護人立会い、被害者等との示談に関して成果報酬が支払われるようになりました。当会では、身体拘束からの解放のための取組みとして、平成30年から毎年6月から8月にかけて、「準抗告運動」を行っているのはご存じのことと思います。今回のこの新しい制度は、勾留決定が出た後の準抗告ではなくて、そもそも勾留自体を阻止する活動を推し進めるため費用の面からバックアップするものです。

これから多くの会員の方が利用することになると思われ、今後勾留阻止活動に積極的に取り組んでいただければと思います。

◆医療観察付添人研修(11月2日)

いわゆる医療観察法は正式には「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」といいます。通常の刑事責任が問えない状態で重大な他害行為が行われることは被害者に深刻な被害を生ずるということはもちろん、その病状のために加害者となるということは極めて不幸な事態であることから、このような加害者については、必要な医療を確保して病状の改善を図り、再び不幸な事態が繰り返されないよう社会復帰を促進することを目的としています。

そして、医療観察付添人は、対象者の社会復帰のため、この医療観察法の手続の始めから終わりまで対象者の権利を守るという重要な役割を担います。

そこで、この医療観察法制度における医療観察法審判付添人活動の知識習得及び技能向上を目的とするための研修が開催されました。

◆継続研修義務化について

弁護士は、法律実務に関する業務を独占していることに伴い(弁護士法第72条)、法令及び法律事務に精通すべき責務があります。この責務を果たすため、個々の弁護士による自主的研鑽に委ねるのみならず、弁護士会として一定の継続研修受講義務を制度的に定めるかどうか、今後、常議員会で議論することになります。