会長日記
2020年6月1日
会長 多川 一成(45期)
皆さま、こんにちは。
◆ 緊急事態宣言と弁士会の業務
連休最終日の5月6日、緊急事態宣言(期間4月8日~5月6日)は、期間が5月31日まで延長されました。ただし、専門家等から意見を聴き、新型コロナウィルスの感染状況が一定程度収まったときは期間を短縮するということでした。
これに先立ち、当弁護士会でも、4月30日に関連委員会の連絡会議を開催し、関連委員会の委員長らと意見交換をした上で、5月1日、弁護士会館及び天神弁護士センターの業務を5月31日まで縮小することとし、仮にそれ以前に緊急事態宣言の期間が終了したときは、業務を徐々に復旧していくことを決定しました。
他方、当番弁護士、被疑者国選、精神保健当番弁護士といった、弁護士としての人権擁護活動の根幹にかかわるものについては通常どおりの活動を続けました。
弁護士会の法律相談業務についても、一般の法律相談(電話相談に切り替え)の他、新型コロナ110番(毎週火曜、木曜)、DV被害110番(5月1日、8日)、給与ファクタリング110番(5月1日)、子どもの人権110番、養育費ひとり親110番、ふくおか人権ホットライン、生活保護支援相談等の電話相談を無料で実施し、可能な限り対応することにしました。
◆ 感染症拡大下の弁護士会として
新型コロナ110番には、労働者の方からは、解雇、賃金未払い、給与補償・助成金等の相談が、事業者の方からは、資金繰り、労務関係、契約不履行等の相談が数多く寄せられ、DV被害110番にも、深刻な相談が何件も寄せられました。新型コロナ感染拡大の中で、いかに多くの市民の皆様が厳しい生活を強いられているかを肌で感じることができ、弁護士会としての今後の具体的な取り組みの必要性を痛感しました。
なお、5月14日に福岡県は緊急事態宣言の対象外となり、県内の民間施設への休業要請も原則解除されたため(不要不急の外出自粛、他県への移動自粛は継続)、現在弁護士会では、3密を避けるなど感染防止策を講じつつ、業務の再開を進めています。
◆ 検察庁法改正問題~会長声明、意見書の発出
当会は、3月27日、内閣が2月7日に退官予定だった東京高等検察庁検事長について「国家公務員法81条の3を適用し、勤務を6か月延長する」とした閣議決定の撤回を求める会長声明を公表しました。また、4月24日にも、上記閣議決定に関連し、内閣が3月13日国会に提出した検察庁法改正法案の一部、すなわち「内閣又は法務大臣の判断で、個別に検察官の63歳の役職定年の延長や65歳以上の勤務延長をすることができる」という部分について反対する会長声明を公表しました。
さらに当会では、この法案は準司法官である検察官の政治的独立性を脅かし、憲法の基本原則である三権分立さえ揺るがす虞があるにもかかわらず、緊急事態宣言が継続する中で、十分な議論もないまま衆議院内閣委員会において採決される可能性があったことから、制度の問題点をより詳細に整理した意見書(検察庁法改正等による検察官の独立性侵害等に反対する意見書)を作成、公表しました。
今回の検察庁法改正法案については、検察庁に対し、不起訴の理由を公表しないなど、これまで国民の信頼を得ようと努めてこなかったといった指摘はありますが、新聞報道によると、インターネット上(特にTwitter)で今回の検察庁法改正法案に反対する投稿数は、5月14日の時点で500万件を超えているとのことです。5月15日には、元検事総長ら検察OB十数人が今回の検察庁法改正法案に反対する意見書を法務省に提出するという事態にまで発展しました。
個々の検察官は、皆さんが職務の独立性について、強い自負を持たれていると思いますが、特に政治的に重要な案件を扱うときには、時に計り知れないほどの重圧がかかることがあると元検察トップも述べられています。
結局この法案は、5月19日になって急きょ今国会での成立は見送られ、継続審議という扱いになりましたが、検察官の人事に関わる法律改正という一見馴染みのない案件について、これだけ市民の皆様の関心が集まることは、私どもにとっても大変頼もしく感じられるとともに、やはり日頃から市民の皆様の信頼を得ることがいかに重要であるかを改めて認識した次第です。