会長日記
2018年9月1日
会長 上田 英友(40期)
みなさま、こんにちは。今年の夏は猛暑に加え、豪雨や台風災害など、自然災害の脅威を感じることが多く、穏やかな秋を待ち望む今日この頃です。
◆平成30年7月豪雨災害について
本年6月28日から7月8日にかけて、台風7号及び梅雨前線等の影響によって発生した西日本を中心とする広範囲にわたる集中豪雨によって、平成最悪の水害と称される甚大な被害が発生しました。新聞報道によれば、福岡県での死者は3人、住宅損壊は348棟、浸水は3123棟、土砂災害は63件とされています。全国的には、死者225人、住宅損壊1万4050棟、浸水3万4200棟、土砂災害1518件に上っています(平成30年8月6日現在)。
亡くなられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた方々に対して、心よりお見舞い申し上げ、一日も早い復興をお祈りいたします。
さて、当会は、平成30年7月豪雨災害に対応するため、7月9日、「福岡県弁護士会平成30年7月豪雨災害対策本部」を設置し、県下17か所の法律相談センターにおいて、被災された方及びご家族からの豪雨災害に関する法律相談について、相談料を無料とし相談時間を60分に延長すること、当会の紛争解決センター(ADR)での申込手数料を無料とし、成立報酬を半額とすることを決定しました。
法律相談の実績としては、7月が、福岡地区で11件、北九州地区で19件、筑後地区で3件、筑豊地区で3件の合計36件、8月(29日まで)が、福岡地区で3件、北九州地区で14件、筑後地区で3件、筑豊地区で1件の合計21件となっています。
また、対策本部の活動内容として他の弁護士会への支援も定めておりますので、今後、要請があれば、被災地の弁護士会による無料電話相談の回線分担や出張相談への担当弁護士の派遣等も行う予定です。
復興の支援は、息の長い活動が求められます。今後とも、引き続き、平成30年7月豪雨災害の復興支援に向けて、様々な活動を続けてまいりたいと思います。
◆三極会議2018(7月22日)
福岡市のホテル日航福岡で三極会議2018(Three Bar Meeting 2018)が開催されました。これは、日弁連と欧州弁護士会評議会(Council of Bars and Law Societies of Europe)、中華全国律師協会(All China Lawyers Association)の三者で毎年、開催地を回り持ちで行っている会議です。本年度は、日弁連の担当でしたが、それが福岡市で開催されたものです。
会議は、英語と日本語を使って、同時通訳によって進められ、まず、それぞれが活動報告をした後、(1)刑事司法、(2)情報とプライバシー、(3)AI・テクノロジーの活用、(4)外弁制度・管理の各テーマについて、報告と質疑応答を行うという形式でした。
欧州弁護士会評議会では、弁護士に関するヨーロッパ条約を推進する活動を行っており、その理由は、弁護士は司法アクセスと基本的人権及び自由を保障することで法の支配の保証に貢献しているが、そのため行政、立法機関、司法機関等から圧力を受けうる立場にあるので、弁護士を効果的に保護する必要があるからとのことです。条約の内容としては、弁護士の職務上の秘匿特権の範囲と保護、弁護士の職務遂行の自由の尊重等が含まれており、欧州では、日本で保障されている弁護士の権利が守られていない国も少なくないことを理解しました。
中華全国律師協会からの報告によれば、中国では、法曹が守るべきルールを最適化し、国、省、(直轄)市レベルで、弁護士の権利擁護センターと市民からの苦情申立て調査・処理センターを設置されており、同センターでは、弁護士の権利擁護、弁護士の懲戒に関するケースを取り扱っているとのことでした。弁護士自治が守られている日本との大きな違いを改めて認識しました。
◆弁護士職務の適正化に関する全国協議会(8月3日)
日弁連が主催する掲記全国協議会に出席しました。この協議会は、市民窓口の対応、紛議調停手続、綱紀懲戒手続、会員のメンタルヘルスケアその他、弁護士の不祥事防止対策を所管する弁護士職務の適正化に関する委員会が担当するもので、全国の弁護士会から、会長、副会長等が参加しました。
弁護士不祥事は、被害を受けた依頼者等に大きな損害を与えるだけでなく、その防止策が十分でないと弁護士会への不信感が生じ、弁護士自治への疑念を招くおそれがあります。防止策の検討のためには、不祥事の発生原因を探る必要がありますが、そのためには、実際に寄せられている苦情の内容を十分に検討することが必要です。
当会としても、本年度会務方針(重点課題)の一つとして、「不祥事対策をさらに進める」を掲げておりますので、発生した不祥事に適切に対処するだけでなく、会員を支援して不祥事を防止する施策を進めてまいりたいと考えております。