会長日記

2018年3月16日

会長 作間 功(40期)

修習生のとき、クラスの刑事裁判教官が、「裁判官はいろいろな土地を巡ることが出来るのでいいですよ。自分は楽しんだなあ」と仰っていた。弁護士は転勤がなく地元に根付くという点でいい面もあるが、事件や当事者から逃げることが出来ないという宿命がある。いい方を変えて、人生に節目がない、ともいえる。「転勤」は、単なる勤務地の変更にとどまらない面があり、羨ましいとさえ思う。その昔、先輩弁護士から、弁護士会の様々なシンポや人権大会に意識して行く様にすれば、勉強にもなるし、日本各地を楽しめる、という貴重なアドバイスをいただいた。しかし、仕事が忙しければ平日にはなかなか行けないし、やがて、国内を廻る弁護士会の行事よりも私的な海外旅行に味をしめてしまうようになった。易きに流れたのである。

しかし、である。執行部になると、その年は海外に行くことができない(ただし、後述のように例外あり)かわりに、各種の大会・シンポに「業務として」行くことが出来る。本年度、7月に東北弁連大会で秋田、9月に大連市律師協会との交流会で大連、10月に人権大会で大津に行ったことが思い出深いものとなった。いずれも妻と同行した(先輩のアドバイスにしたがったものである)。秋田と大連は2度目、大津は初めての訪問であった。秋田では、秋田温泉に浸かり、東海林太郎像を横目に親切なボランティア案内人のお世話で久保田城を散策し、石川達三記念館や藤田嗣治の秋田県立美術館を訪れ、夜は偶々弁護士国金年金基金の理事長と常務理事に遭遇したことから、ご一緒して寿司屋で秋田の食を楽しんだ。大連市は、BANGCHUI ISLAND Hotelで歓待を受け、最後はカラオケにも繰り出すはめとなった。大津は司法権の独立で有名な大津事件の舞台であり、児島惟謙大審院長のことは教科書にも載っているが、これに加えて、被告人津田三蔵の弁護人となった当時代言人であった谷澤龍蔵と中山勘三が力の限りを尽くして弁護にあたった、ということが会場のロビーにパネルで紹介されていたのが印象的であった。ちなみに中山勘蔵は1893年に設立された大津地方裁判所所属弁護士会の初代会長となった方で滋賀県弁護士会の誇りとされる人物として紹介されていた。

ここで読み返してみると、シンポの内容や交流会での勉強会の記述がないが、ご愛敬として容赦されたい。要は、執行部は忙しいが、実は楽しみもある、ということである。他会の会員とも親しくなれる、というのも楽しいことである。