会長日記
2022年7月1日
会長 野田部 哲也(43期)
◆弁護士は、敷居が高い?!
前回、前々回と、執行部の挨拶回りについて、紹介させていただきました。現在も、挨拶回りとして、地方公共団体や企業を訪問し続けています。
訪問の中で、初対面ではあっても、率直な意見交換していると、未だに、「弁護士さんは敷居が高い。」という話を耳にします。
現在、当会弁護士は、会員が1400名を超え、県内各所に法律相談センターを設け、各種の法律相談を実施し、ホームページ等で広報を行っています。また、県内の各法律事務所も、法律相談を実施し、これを広告する事務所も多数あります。私たち弁護士は、随分と敷居を低くしているように思っていますが、それでも、未だに、組織のトップの人達の中でさえ、弁護士は敷居が高いと思っている方は少なくないようです。
これは、実際の弁護士へのアクセスのしやすさのみならず、弁護士に対するイメージに大きく左右されているように思われます。
弁護士に対し、何にでも厳格に法律を適用する人とか、理詰めでしか物を考えない人というようなイメージの方からは、敷居が高いというイメージを払拭することは、容易でないように思われます。
「自分には、弁護士が、活躍する社会がいい社会だとは思えない。」という発言もお聞きしました。そういう方々から、話を聞いてみると、弁護士が裁判をして紛争を激化する人というようなイメージを強くもたれているようでした。幸いにも、このような方とも、話の途中で、弁護士が紛争の解決に尽力された姿を思い起こされたり、弁護士の実際の業務が、裁判業務に限られず、広がっていることにご理解頂き、今度またゆっくり話を聞きましょうということで、無事に訪問を終えることができました。
弁護士が、社会により浸透し、法の支配を社会の隅々まで行き渡らせるには、弁護士に対するイメージの更なる改善が必要であることを痛感しました。
◆人間広告塔!!
弁護士のイメージを更に改善し、例えば、弁護士が親身に話を聞いてくれる頼りになる存在であるというようなイメージをもってもらえるようにするには、弁護士一人一人が、日々の業務の中で、広告塔になって、相談者や依頼者に良いイメージを与えることが、一番ではないかと思います。弁護士の業務は、依頼者と協力して成し遂げる体験型のものが多く、苦楽を共にし、ワクワク感やドキドキ感を共有することができ、その活動の中で、弁護士に対する良いイメージを形成することは可能なように思われます。
また、会長としても、弁護士のイメージの更なる改善に少しでも繋がればと考え、各種の会合(ロータリークラブ等の例会や各種勉強会からゴルフコンペの表彰式まで)、研修(行政や企業から新人弁護士、修習生まで)において、弁護士の業務や弁護士会の様々な活動について、紹介させて頂いています。
現在弁護士は、訴訟のみならず、交渉はもとより、事業の企画立案段階から、法的なリスクを調査したり、法令上の根拠を組み立てる等しています。また、弁護士は、法律事務所で委任を受けて、その業務を遂行する場合のみならず、企業や行政の組織内に入ることも多くなっています。全国的に見ると、企業内弁護士は、2820名を達し、任期付公務員は、252人にも上り、弁護士全体の10%にも達しています。
今後も、自ら人間広告塔となって、弁護士の業務が、拡大し、その業務遂行の方法も多様化していることを、発信し続けていきたいと考えています。
◆自ら手を挙げよう!!
弁護士の活動領域が広がり、活動の仕方が多様化していることを、社会に訴え続けると同時に、弁護士各人が、自ら積極的に手を挙げ、対応していくことが必要です。
弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする存在であり、そのアイデンティティは、不断の努力で守り続けなければなりませんが、その実現の仕方や方法は、様々です。企業側にも、ESG投資(環境・社会・企業統治要素も考慮した投資)やSDGs(持続可能な開発目標)の考え方が浸透し、企業にも、コンプライアンスやガバナンスが強く求められています。企業側で、弁護士が職務を遂行しても、個人の基本的人権の擁護や社会正義の実現を推進することはできます。そして、そのことを、経験ある世代から若い世代に至るまで、共有し、協力していくことが必要なように思われます。自らが経験したことのない業務や職務遂行形態であっても、チャンスがあれば、自ら積極的に手を挙げて、果敢にチャレンジしていただけたら、幸いです。
◆6月の社外役員の就任
6月は、3月末に決算を迎えた企業が、株主総会を開催する時期です。かつて企業は、総会屋対策のため、株主総会の開催日を集中していましたが、近時は、株主総会が開催日を分散して開かれる傾向になっています。
これまでにも、相当数の弁護士が社外役員として就任していますが、今年の6月は、株式市場が再編される等の関係もあり(一部上場企業が最上位のプライム市場に残るには、社外役員が3分の1以上いることが必要)、さらに相当数の弁護士が、社外役員に就任することが予想されます。この記事が掲載される頃には、九州のトップオブトップの企業の中にも、若い世代の女性弁護士が社外役員として誕生していることと思います。
弁護士が、社外役員に就任し、実働することは、企業にとって、コンプライアンスやガバナンス上、大きな意義があるうえ、社外役員となった弁護士が、女性であったり、若い世代であれば、取締役会の多様性の向上も、さらに資するように思われます。
また、弁護士にとっても、社外役員になることにより、弁護士の世界と異なる別の世界に入り、経営者の考え方やメンタリティに触れたり、企業の実態をより身近に把握できたり、その業界に詳しくなる等のメリットは計り知れません。
今年、社外役員に就任された弁護士が、実働し、企業価値の向上に貢献することにより、企業が、さらに、社外役員として弁護士を活用するようになることを祈念しています。
◆次回の予告
この後も、企業等の訪問は続きます。次回の月報では、「包括外部監査人に向けて」、「再度の領事館の訪問」、「何かあったらどうしよう症候群」等を予定しています。