会長日記

2017年6月1日 弁護士自治について

会長 作間 功(40期)

1 自治って何

「自治」というと、真っ先に頭に浮かぶのは「我が町の自治会」でしょうか。町内会ですね。そのほか、「地方自治」「大学の自治」というのもあります。自分たちのことは自分たちが決めて、自分たちで運営する、ということです。

「弁護士自治」も同様で、弁護士・弁護士会のことは、弁護士会が決めて、弁護士会が運営していく、ということです 。ⅰいや、先に例として出した団体より、より高度な自治が認められている、といってよいでしょう。弁護士会は、他のいかなる者・団体からも、指図・指示・干渉・監督を受けないからです。

町内会は自治体の、地方公共団体や大学は国(総務省・文部科学省・財務省等)から一定の指示・監督を受けますので、弁護士・弁護士会の高度な自治は明らかです。

具体的には、例えば、司法修習を終え弁護士資格を取得した者が当会に入会したいときは、会自身が入会を認めるか否か、審査しますし、ほかの地域の弁護士が当会に登録替えをする際は、当会はこれを認めるか否か、審査します。「弁護自治」の一環です。

しかし、「弁護士自治」の例として一番分かり易いのは、何といっても「懲戒」です。弁護士が何らかの非行を行ったときに加えられる懲戒処分には、重い順に、「除名」「退会命令」「業務停止」「戒告」の4つあるⅰのですが、その処分を行うのは、弁護士会自身なのです。弁護士法には、次のように定められています。「懲戒は、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会が、これを行う」(56条2項)。

これに対し、例えば、司法書士については、司法書士会ではなく、法務局長が懲戒処分を行います(司法書士法47条)し、税理士については、税理士会が懲戒処分を行うのではなく、財務大臣が懲戒処分を行います(税理士法46条)。

つまり、司法書士や税理士と違って、弁護士会が懲戒権をもっている、ということです。弁護士・弁護士会には監督官庁がない、ということです。

では、どうして、懲戒権を弁護士会自身がもっているのでしょうか。

2 弁護士自治が認められる理由

その理由は、弁護士・弁護士会の使命にあります 。ⅲ

弁護士の使命は、基本的人権の擁護と社会正義の実現にあります(弁護士法1条)。基本的人権を保障する法典は憲法であり、憲法は国家権力をしばるものです(立憲主義)。憲法を破る者、基本的人権を侵害する者は、一番に「権力」です。憲法が破られたときたたかう者、基本的人権が侵害された者と一緒にたたかうのは、弁護士です。つまり、弁護士はその職責上、国家権力と対峙する立場にあります。もし、憲法を守り、人権侵害に遭った者を守るべき弁護士を国家が監督する立場にあれば、国家権力はその権力を濫用して弁護士・弁護士会に圧力を加えたくなるかもしれない。弁護士・弁護士会は、国家権力を畏怖して、十分な活動を自制してしまう虞れもでるかもしれない。しかしこれでは、国民の人権が守られない。人権保障がゆきわたった自由で豊かな社会にはなれない。そこで、法は、弁護士・弁護士会は国その他いかなる団体からも監督・干渉されないものとし、懲戒権を弁護士会に認めたのです。

3 したがって、我々弁護士は、弁護士自治を自分たちの利益のために与えられたものだと理解してはならないし、社会の信頼を失えば、弁護士自治を取り上げられてしまうことともなるⅳ、と自覚する必要があります。弁護士自身が身をほろぼすのは自業自得ですが、国民に対して不利益な事態を招いた歴史的責任を問われることとなるでしょう。そのようなことにならぬよう、心して職責を果たしたいと思います。

  • もう少し、専門的に言えば、「弁護士自治」とは、弁護士の資格審査や弁護士の懲戒を弁護士の自律に任せ、又それ以外の弁護士の職務活動や規律を、裁判所、検察庁又は行政官庁の監督に服させない原則のことと、説明されています。弁護士自治として考えられるものは、(1)弁護士試験の実施、(2)実務修習の実施、(3)弁護士資格の付与と登録、(4)監督と懲戒、(5)強制加入団体としての弁護士会の設立、の5つがあるとされ、現行法上、(3)から(5)が認められています。
  • 「除名」とは、弁護士としての身分を失わせる処分、「退会命令」とは、所属弁護士会から退会させる処分、「業務停止」とは、一定期間(2年以内)弁護士業務を行うことを禁止する処分、「戒告」とは、非行の責任を確認させ反省を求め、再びあやまちのないよう戒める処分をいいます。
  • 本文以外に、裁判の適正のため必要だからという政策的理由、裁判所、法務省・検察庁、それに弁護士会という3者が相互に不羈独立していることが民主的司法運営のために必要だからという制度論的理由も挙げられています。
  • イギリスでは、2007年リーガルサービス法により、弁護士自治が廃止されました。

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