会長日記
2018年11月1日
会長 上田 英友(40期)
皆さま、こんにちは。今月は、9月下旬から10月上旬にかけて行われた二つの行事に参加した感想などを記したいと思います。
◆広報サミット(9月22日、大阪)
第6回広報に関する先進5会懇談会(広報サミット)が、9月22日に大阪弁護士会館で開催されました。これは、弁護士会の対外的な広報活動において先進的に取り組んでいると自負している5つの弁護士会(札幌、愛知県、京都、大阪、福岡県)が5年前から毎年、広報活動に関する意見交換会を持ち回りで開催しているものです。
当会からは、池田耕一郎担当副会長、塗木麻美業務事務局長、原田直子対外広報委員長をはじめとする対外広報委員、内田敬子対外広報戦略PT座長をはじめとする対外広報戦略PTの委員で総勢12名の参加でした。また、日弁連の広報室とLC委員会(日弁連公設事務所・法律相談センター)からも参加されており、会議全体では、63名の参加者でした。
会議では、まず、各弁護士会から、それぞれの広報活動についての報告と質疑応答があり、続けて、日弁連広報室とLC委員会から、日弁連の広報施策についての報告がなされました。
その後、大阪弁護士会の高橋司弁護士(広報室長)がコーディネーターとなり、その他4会のパネリストによる「弁護士会の広報の役割と会員の理解」をテーマとするパネルディスカッションが行われました。当会からは会長として私が参加しました。
弁護士会による広報の対象は、弁護士制度であり、関連他士業との業務の違いや優位性を強調すべきとの意見が出され、非弁行為を防ぐためにも、広報に力を入れるべきとの考えも示されました。
対外的な広報活動には、会員や委員会の理解が前提として必要であり、他方、マスコミ等の外部との折衝も不可欠です。広報サミットへの参加は、今回で3回目でしたが、年々議論が深まっており、各弁護士会の広報活動も発展していると感じました。
当会の対外広報活動は、本年度の重点課題の一つです。引き続き、力を入れてまいりたいと思います。
◆釜山地方弁護士会との交流会(10月11日、大韓民国:釜山)
恒例となっている釜山地方弁護士会との交流会が、10月11日に開催されました。近年は、隔年で相互訪問しており、本年度は、当会が釜山を訪問する順番でした。
当会からの訪問団は、羽田野節夫国際委員長を団長として、執行部と国際委員を中心とする21名のメンバーでした。
当日のスケジュールは、まず、午前中に、三進オムクという蒲鉾の製造販売を営んでいる会社を訪問し、工場を見学しました。同社は、ここ4年間に急成長を遂げた会社で、従業員数も、4年前は50名だったところ、現在は、550名になっています。蒲鉾といっても、日本の蒲鉾のように蒸して製造するのではなく、揚げるもので、さつま揚げのような製品です。日本の蒲鉾は、蒸して造るので柔らかいのが特徴ですが、韓国では、モチモチした噛み心地が大事で、揚げて造るのが主流とのことでした。工場見学では、製造過程の製品の試食があり、出来たてでアツアツの蒲鉾を沢山食べることができたので、参加者は、非常に満足していました。
午後は、当会を代表して、羽田野国際委員長と一緒に、釜山高等法院(BUSAN HIGH COURT)の黄漢式法院長を表敬訪問しました。
その後、釜山地方法院の民事法廷を傍聴し、電子裁判の実際の進行を見学した後、その法廷の裁判長から電子裁判の事件ファイルの説明と質疑応答をしていただきました。日本でも、民事裁判のIT化が検討されている中で、韓国の電子裁判による法廷の様子を見学することができて、大変、貴重な機会でした。
韓国の裁判は、電子裁判と従来の紙による裁判が併用されており、まず、原告がどちらを選択するかを決めます。いずれの場合も、被告に対して、訴状は、紙で送達されるそうです。これに対して、被告は、電子裁判に応じるか紙による裁判で応訴するのかを決めることができ、電子裁判を選択する場合は、裁判所サイトにアクセスして答弁書をサイト上で提出することになります。電子裁判と紙による裁判が併用されていますが、電子裁判の方が便利なので、弁護士は電子裁判を利用することが多く、地裁レベルでは90%が電子裁判で運用されているとのことでした。
法廷では、大きなモニター上に、裁判官が操作するパソコンの画面が映し出され、裁判官が特定のファイルをクリックすると、そのモニター上に、主張書面や証拠書類が開かれる仕組みとなっていました。
ただし、裁判は、現実の法廷に当事者や弁護士が出頭して開かれ、インターネット上で裁判が進行される訳ではありませんし、証人尋問も法廷で行われるとのことでした。
さらに、法律事務所を訪問し、電子裁判による訴訟提起の方法について、電子裁判用サイトへの入力の方法などをデモンストレーションしていただき、具体的な電子裁判の手続の進め方をイメージすることができました。
韓国における電子裁判の運営状況は、日本での民事裁判のIT化の検討において、非常に参考になると思います。
法律事務所訪問の後、釜山地方弁護士会館にて、討論会が開催されました。討論会には、釜山地方弁護士会からは、28名の弁護士が参加されました。討論会では、まず、当会が要望した「韓国の死刑制度」について、釜山地方弁護士会の金載勲弁護士から報告していただき、つぎに、韓国からの要望により「日本における司法取引」について、当会の黒原智宏弁護士が報告をしました。報告の後、質疑応答を行われ、中身の濃い充実した議論をすることができました。
討論会の後は、懇親会が催され、記念品の交換では、当会は博多の手提げ提灯を贈りました。懇親会では、恒例の爆弾酒(焼酎をビールで割ったもの)による乾杯が各テーブルで行われ、釜山の夜が更けて行きました。