1 憲法委員会では、日々生起している社会事象について、福岡県民に憲法的視点からの素材を提供し、共に議論していただきたいと考え、市民講座を開催し、問題提起や提言を行ってきました。そして、今年は、安倍政権のもと集団的自衛権行使が認容の方向へシフトしつつある現状を踏まえ、9月6日に、「自衛隊が国防軍に変わるとき」と題し、東京新聞編集委員の半田滋さんをお招きして、市民講座を開催いたしましたので、当日の様子をご報告いたします。
2 まず、半田さんのプロフィールをご紹介しますと、半田さんは、1991年に中日新聞入社後、92年から防衛庁の取材を担当され、現在は、東京新聞論説兼編集委員です。2007年には、「新防人考」で第13回平和・協同ジャーナリスト基金賞(大賞)を受賞され、その問題意識の深さが反響を呼び、現在日本各地で講演依頼が殺到しているそうです。
3 当日は、120名収容の会場がほぼ満席になるくらいの聴講者の方々がお集まりのなか、半田さんの講演が始まりました。
冒頭、半田さんは、スライド写真を利用して、本来、自国防衛が役目であるはずの自衛隊の活動について、海外活動が増えてきている現状を説明されました。スライドには、ソマリア沖で海賊船対策を行っている自衛隊の様子、インド洋で米艦船やパキスタン海軍に無料で燃料供給をしている自衛隊の給油艦の様子、及びP3C対潜哨戒機が、オーストラリアを飛んで訓練している様子など、自衛隊が米国や他の同盟国と軍事一体化が進んでいる事実が映し出されていました。
4 続けて、半田さんは、自衛隊の海外派遣がもたらした影響について説明されました。イラクへ派遣された自衛隊員の自殺率が一般の公務員の5~10倍であること、PKO法における武器使用基準が事実上緩和されたこと、座間基地に中央即応集団が配置されたことなどをご説明されました。また、これまでの自衛隊のPKO活動は、憲法9条の制約のもと、武力行使から距離をおいて、派遣先の人々に喜ばれるような救援活動が中心であった(日本モデルPKOとして、海外からも高い評価を受けていたそうです。)が、憲法9条が改正されて集団的自衛権の行使が容認されてしまうと、自衛隊はアメリカ軍の武力行使を後方から支援することとなり、海外から高く評価されてきたこれまでの活動とは一変してしまうおそれがあるとの指摘もありました。最近、自衛官を志す若者の中には、自衛隊の海外支援や災害救助の活躍に憧れをもって入隊してくる者も少なくないそうですが、自民党の改憲はこのような若者の夢や希望までをも奪ってしまいかねないと感じました。
5 加えて、安倍政権が法律を改正することで、憲法解釈を変え、実質的に憲法改正を行おうとしている筋道についても、国家安全保障基本法案や秘密保全法の話を交えながらご説明いただきました。
講演終了後には、聴講者から10以上の質問が寄せられ、今回の講演のテーマに対する市民の関心の高さがうかがわれました。
6 半田さんは、終始、軽快な語り口で、話の内容も非常に興味深くかつ鋭い問題意識を提起してくださいましたので、講演のときにはよく居眠りをしてしまう私も、半田さんの話に聞き入っていました。
今回、半田さんのお話をお聞きして、日本国憲法の中核である第9条の解釈が今まさに変えられようとしている事の重大さをきちんと認識し、一国民としてこの問題にきちんと向き合わなければならないと感じました。
7 講演会後は、会場近くの「博多窯山」という居酒屋で、半田さんも交えて懇親会を行い、会場では聞くことができなかったお話を、ざっくばらんな語り口で、聞くこともできました。