1 大会の概要
さる8月7日、福岡地方裁判所を舞台に高校生模擬裁判選手権九州大会が開催されました。
この大会は日弁連主催で、同日に関東・関西・九州・四国の4大会が行われました。
今年の内容は、傷害致死罪に問われた被告人の犯人性をめぐり、検察チーム、弁護チームがそれぞれストーリーを構築して冒頭陳述を行い、証人尋問と被告人質問により立証したうえで、最終弁論を展開するもので、法曹三者、大学教授、マスコミ関係等の多様な審査員が各チームの内容を審査し、優勝校を決定します。
2 大会前日まで
今年は「九州大会」らしく各県からの参加を呼び掛け、宮崎県から県立宮崎西高校、佐賀県から県立佐賀西高校、福岡県から県立福岡高校、県立鞍手高校の4校がエントリーしました。各校には支援弁護士、支援検事が日参して生徒たちを指導されました。
大会前日の8月6日、県弁と九弁連との法教育委員会合同会議で段取りの最終確認を行い、その後の懇親会では、支援弁護士が審査員にそれぞれの高校をアピールするなど、前哨戦の様相を呈していました。
3 開会式
当日は朝早くから高校生たちが弁護士会館に集まり、最終チェックに余念がありませんでした。
午前9時40分からの開会式では、当山尚幸九弁連理事長の開会挨拶に始まり、いよいよ組み合わせ抽選です。くじ引きの結果、午前の部は宮崎西・検察-佐賀西・弁護、鞍手・検察-福岡・弁護の組み合わせ、午後は、福岡・検察-宮崎西・弁護、佐賀西・検察-鞍手・弁護の組み合わせとなりました。
法廷は本館301号と新館1号法廷を使い、裁判長役は、それぞれ開發礼子大分地裁判事、水上正博弁護士(長崎県弁護士会)が務められました。
4 試合開始
試合は検察チーム・弁護チームの冒頭陳述から始まりました。各校、模造紙やホワイトボードを使って視覚に訴えたり、裁判員席にずらりと並ぶ審査員をしっかり見すえて、説得力あるプレゼンテーションを展開しました。
そして、メインの証人尋問、被告人質問。元気に「異議あり!」の声が飛び交い、裁判長が要領よく異議をさばいて証拠調べを進めます。
証人は検察チーム、被告人は弁護チームの高校生が担当しましたが、涙声になるなど迫真の演技も見られました。
検察側の証人は被告人に恩義があり、当初は被告人をかばう供述をしていたが、途中で内容を変えたという設定だったので、証人の供述の信用性を揺るがせようと、白熱した反対尋問が展開されました。
鞍手高校はメンバーが1年生だったそうですが、福岡高校弁護チームの厳しい反対尋問に、証人がよく耐えていたのが印象的でした。
証拠調べ後、休憩をはさんで双方の最終弁論。検察チーム、弁護チームがそれぞれ有罪、無罪を主張しました。裁判員によりよく理解してもらおうと、要点を最初にまとめたり、語りかける論法を展開したり、様々な工夫が見られました。
お昼の休憩では、高校生たちは相手校のいいところも盗んで午後の試合に臨んだようです。午後からの試合も同様に見ごたえがあるものでした。
5 閉会式
試合終了後、審査員の集計結果を待ちつつ、閉会式が始まりました。
まず、審査員から各高校について、丁寧な講評がなされました。福岡地検中尾総務部長からは、検事役の女子生徒の鋭さに感心し、「ぜひウチに来てほしい。」と勧誘がありました。また、福岡地裁杉本正則判事からは、「冒頭陳述は初めてのデート、あるいは映画の予告編である。」という非常に示唆に富む指摘がなされました。
参加者にとっても生徒名まで挙げた講評は、誇らしく、達成感につながるものであったと思います。
そして審査結果が到着し、優勝校が発表されました。
今回の優勝校は、福岡高校。2年連続の快挙です。
事前に合宿をして、夜中まで準備をした努力が実ったようです。
佐賀西高校も2度目の参加でレベルが高く、初参加の宮崎西高校、鞍手高校も様々な工夫が光っていました。
宮國英男九弁連理事の挨拶により閉会式は終了し、記念撮影、懇親会と続いて、今年の九州大会は幕を閉じました。
6 雑感
会場にはテレビカメラも終日入っており、マスコミの関心の高さがうかがえました。
当日のRKB、FBSの夕方のニュースで放映されたほか、翌日の朝日新聞地方版「青鉛筆」欄にも掲載されました。
私はデジカメ撮影係として、両法廷に出入りしたので、少しずつですが各高校の実演(?)を見ることができました。視覚的効果を狙う小道具や、「あと3分」といったタイムキーパー用のボードの工夫などには感心させられました。
また、何より驚いたのは、高校生のプレゼンテーション能力の高さです。審査員に語りかける口調、メリハリ、視線を動かさせる指示棒の使い方など、本当にレベルが高くてびっくりしました。我々も見習う点が多くあったと思います。もっとも、社会人時代のプレゼン研修では、指示棒で音を出してボードや紙をたたくのはよくないと習った気がするので、それは気をつけていただきたいです。
このような盛大な大会となり、大会運営に尽力された委員会メンバーの皆様、本当にお疲れ様でした。