1 はじめに
平成22年7月24日(土)午後1時30分から、福岡県弁護士会館3階ホールにおいて、「行政訴訟改革シンポジウム~国民に真に役立つ行政訴訟制度を~」が開催されました。
本シンポジウムは、(1)福岡大学法科大学院の山下義昭教授による基調講演、(2)全国市民オンブズマン連絡会議及びNPO法人市民オンブズマン福岡の児島研二代表幹事による基調報告1、(3)平成21年度日弁連行政訴訟センター委員の当職による基調報告2、(4)上記の3名と当会行政問題委員会委員長・日弁連行政訴訟センター副委員長の名和田茂生弁護士をパネリストとしたパネルディスカッションという構成で進行しました。
2 基調講演
基調講演では、平成16年改正法で改正された点とその後の判例の展開及び問題点について講演されました。山下教授は、平成16年改正の問題点として、原告適格の拡大が実現できていないこと、非申請型義務付け訴訟の要件が過度に厳格であること、仮の救済制度が十分に機能していないこと等を指摘されました。
また、公法上の確認訴訟について、行為の違法確認の訴えの活用を提言されました。
3 基調報告1
基調報告1では、平成16年改正法では導入を見送られた「公金検査請求訴訟制度」の必要性について報告されました。児島代表は、自治体の無駄遣いに対する市民オンブズマン運動に取り組んでおられ、自ら活動された福岡県庁の公金不正支出問題等における成果を報告されました。また、国の税金の無駄遣いに対する国民による追及手段がない現状を指摘され、国の税金の無駄遣いを監視するには国民の参加が不可欠であるとして、公金検査請求訴訟制度の導入を提言されました。
4 基調報告2
基調報告2では、当職より、日弁連で作成されている5年後見直し案の骨子を報告させていただきました。
見直し案は、日弁連が法曹三者及び行政法研究者と新法の施行状況について共同研究を重ねて作成しており、原告適格など平成16年に改正された部分の再改正に加え、公金検査請求訴訟制度の創設など平成16年改正の際に見送られた改正事項を盛り込んだ内容となっています。
5 パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、(1)公金検査請求訴訟制度の導入と、(2)行政訴訟法5年後見直しについて、それぞれの方向性と実現への道筋等について議論されました。
まず、(1)公金検査請求制度の導入について、同制度の導入の必要性について見直し案に肯定的な意見が占め、その実現のためには、まず国民に同制度の必要性を理解してもらう必要があり、弁護士会等が説明していかねばならないと結論されました。
次に、(2)行政訴訟法5年後見直しに関連して、裁量審査の強化及び団体訴訟制度の導入について議論され、肯定的な意見が占めました。また、行政訴訟法の改正の時期について、早急に改正を実現すべきという意見が占めました。
6 意見交換
最後に、来場者を交えた意見交換が行われました。当日は、日弁連の行政訴訟センター委員長の斎藤浩弁護士ら同センター委員の方々も来場されており、会場から活発に意見が出され、充実した内容となりました。
7 おわりに
平成22年9月11日に開催される日弁連第24回司法シンポジウムでは、行政訴訟分科会が「官僚任せの裁量行政・公金の無駄遣いの根絶、行政分野の実効的救済を目指して」とのテーマで、公金検査請求訴訟制度の導入等を中心に検討することになっています。法改正の気運を高めるには、まず国民に内容を理解してもらうことが必要であり、そのためには上記シンポジウム等の弁護士会の活動は不可欠です。本シンポジウムはその重要な機会になりました。