弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物

2017年6月17日

「すずめ日誌」

(霧山昴)
著者 熊谷 勝 、 出版  青青社

すずめの生態をとらえた写真集です。わが家にも、かつては2家族のすずめがいたのですが、すぐ下の田で稲作しなくなってから、姿を消してしまいました。朝、トイレに入ると、子スズメのせわしく可愛らしい鳴き声を聞くことが出来ていましたが、聞けなくなって楽しみが減りました。残念です。
庭にパンくずをまいても、前はすぐにすずめが群がっていましたが、今では2、3日、そのままのことがあります。たまにすずめ軍団が庭にやってくると、うれしくなります。
ふくらすずめ。冬のスズメはふっくらしていて、丸っこい。
スズメたちは、水浴びが大好き。冬、池の氷が少し溶けると、水浴びを始める。
スズメの砂浴びは、身体についたダニをとるため。
スズメは、休息していても、決してあたりへの警戒は緩めない。
焼鳥として食べられてきた長い歴史があるからでしょう。
スズメは、人間のすぐ近くで生活しながら、人間を以上に警戒します。そこがジョウビタキと完全に違います。
スズメの喧嘩は、けっこう激しい。そんな写真があります。そして、けんか相手に威圧されて、「参りました」と降参しているスズメの姿も写真にとられています。
オスは、お気に入りのメスや恋敵のオスに出会うと、尾羽を上げ、胸を張って自己主張する。
スズメの幼鳥たちは、独り立ちすると、幼鳥だけの群れをつくって夏を過ごす。
たくさんのスズメが群れをなして電線にとまっています。これは、幼鳥の集団だったのですね・・・。
知っているようで知らない、スズメの生態百態をとらえた写真集です。一見の価値があります。
(2017年1月刊。1600円+税)

2017年6月12日

ジャングルの極限レースを走った犬

(霧山昴)
著者 ミカエル・リンドノード 、 出版  早川書房

この本のタイトルを読んだとき、私の頭の中には、いくつものハテナマーク?が明滅しました。ジャングルの極限レースって、何なの? 北極の氷のなかを走る耐久レースじゃないの? いったい、どこを走るっていうの? それに、レースに犬が加わるって、何? まさかカナダの犬ぞりレースじゃないんでしょ?
ですから、犬派の私としては、何の話なのか、突きとめなくてはなりません。
場所は中南米のエクアドル。700キロのレースだ。158キロをトレッキング・登山・懸垂下降
で、412キロをサイクリングで、それから128キロをカヤックで進む。ゴールまでの標準時間は110時間から190時間。昼夜8日間にわたるレース。標高4000メートル地点からスタートし、ゴールは海抜ゼロ地点。それまで2度にわたって2000メートル地点まで下り、2度にわたって再度4000メートル地点へ登る。有毒のクモやヘビ、モンスーン氷、ジャングル、急流が行手にある。
4人一組で53チームが参加する。ルールでは睡眠は1時間単位でとることになっている。たとえ数分でも時間を過ぎたら、次の1時間になるまで出発できない。もっとも木々が密集し、もっとも人里離れたジャングル地帯。そこを通過するためには、GPSナビゲーションの使用が認められていた。GPSなしでそのエリアを進むのはほぼ不可能。
著者は途中で、泥だらけの、ぼろぼろの目をした犬を見つけた。その犬は実に平然としていた。威厳があり、その穏やかな様子に惹きつけられた。その犬は、ゆっくり近づいてきた。温まったミートボールを差し出し、「はい、どうぞ」と言うと、ほとんど一口で平らげてしまった。
「きみ、お腹が空いていたんだね」
そして、著者たちは出発する。すると、犬がついて来ている。
「きみも一緒に来るかい?」
その犬は、顔を上げ、目を見開いて見つめた。ヘッドランプの光で、その瞳が琥珀色をしていて、茶色い線に囲まれているのか分かった。
著者たちは道に迷った。
「ここは、きみの国だろ。道を教えてくれないかな」
犬は先頭に立って歩きはじめた。しかし、やがて、犬も迷っていることが分かった。カヌーに乗り込むと、犬は泳いで必死にうしろを尾いてきた。
結局、著者たちのチームは146時間でゴールにたどり着いた。12位。悪くはない。だけど、すばらしくもない。そして、この、レースに途中から参加した犬、アーサーと名づけた犬をスウェーデンに連れ帰るのです。アーサー(犬)が極限レースをどうやって乗り切ったかも興味深いところです。連れ帰るための苦労は並たいていのものではありませんでした。なにしろ、ジャングルで出会っただけの野良犬なんです。検疫に手間と時間がかかるのも当然です。しかし、それを忍耐強くやりきったのです。
それにしても、なんと賢い犬なんでしょうね。犬って、すごいですね。世界には、こんな極限レースがあること、そして、途中からチームに参加した犬の賢さ、それを受け入れた人々の心の温かさに読んでる私の心まで、じんわり、ほっこり温まりました。
犬好きのあなたなら、絶対に見のがせない本ですよ。

(2017年4月刊。1800円+税)

2017年6月 5日

ハヤブサ

(霧山昴)
著者 ヘレン・マクドナルド 、 出版  白水社

ハヤブサは史上最速の動物だ。時速160キロで飛び、いや時速320キロで降下する。ハヤブサは高速で飛び、目が黒っぽく、開けた空中で活発に狩りをする。
ペレグレンハヤブサは鳥を狙うのに対して、砂漠のハヤブサは哺乳動物やハ虫類、昆虫も獲物にする。どちらのハヤブサも、メスのほうがオスよりも身体が大きい。オスは一般にメスの3分の1ほどしかない。
シロハヤブサは、背中の模様がペン先の形に見えたことから、17世紀のスペインでは弁護士(レトラド)と呼ばれた。
ええっ、ハヤブサは弁護士と呼ばれていたのですか・・・。
ハヤブサは、その感覚系と神経系の働きが高速なため、反応がきわめて速い。ハヤブサの世界は人間よりも10倍の速さで動いている。人間の脳は、1時に20の事象しか処理できないのに対して、ハヤブサは70~80の事象が処理できる。だから、テレビ画面では毎秒25枚が放映されるが、ハヤブサは、これを動画としては認識できない。
一瞬のあいだに、人間よりもたくさんのものをまとめて見られるおかげで、全速力で足を延ばして空中の鳥やトンボをつかむことができる。ハヤブサの仲間のチョウゲンボウは、18メートル離れたところから、体長2ミリの虫を判別できる。
ハヤブサは水はめったに飲まない。必要な水分の大半はエサとなる動物から補給する。
ハヤブサの消化系は短い。生の肉は消化しやすいから。
ハヤブサは、一日のかなりの時間を羽のメンテナンスに費やす。脂肪酸、脂肪ろうの分泌液を出し、羽に塗る。この分泌液には、防水効果のほか、ビタミン前躯体があり、これが陽光を浴びてビタミンDに変わる。
ハヤブサは、だいたい一夫一妻であり、婚外交尾はめったに見られない。
ハヤブサの子は、生後1年目に、およそ60%が飢えに苦しんで死ぬ。
ニューヨークやワシントンのような大都会でもハヤブサが繁栄するようになったとのことです。ハトのようなエサが豊富だからのようです。
ファルコンとも呼ばれるハヤブサについて、いろいろ知ることができる本でした。
(2017年5月刊。2700円+税)

2017年6月 4日

知っているようで知らない鳥の話


(霧山昴)
著者 細川 博昭 、 出版  サイエンス・アイ新書

本のタイトルどおり、驚きいっぱいの知的刺激あふれる本です。
カラスは遊ぶのが大好きで、1つのボールを集団で追いかけて奪いあったりする。証拠写真があり、なるほどと思いました。
カラスのなかには、カレドニアガラスのように、未知の材料から、状況(必要)に応じた道具をつくり出す能力のあるカラスがいる。
オウムも、カラスと同じように自作した棒をつかって、食べ物をたぐり寄せる。
カケスは、エサの少ない冬に備えて、実りの季節(秋)に栄養価の高いドングリを隠して、溜め込んでいく。カケスは、最大4000ケ所にものぼる隠し場所を正確に記憶している。どこに隠したのかを忘れることはない。
大型のインコであるヨウムは、好奇心が強く、安心できる相手と認識した人間を深く信頼する。
ヨウムのアレックスは、色や形などを50以上も正確に理解し、自分の口で名称を言えるようになった。
ブンチョウは、音楽を聞き分けている。クラシック音楽を好み、現代音楽を聞くくらいなら無音のほうがマシと考える。
ニワシ(庭師)ドリのオスは、メスの気を惹く構造物をつくる以外には何もしない。オスのつくった構造物が気に入ったメスは、オスの才能を認め、その場で交尾する。オスのつくる構造物は、完成するまで10ヶ月もかかる。
カモのヒナが卵からかえるのが同時期になるのは、卵の中のヒナが、卵の内側から卵殻を突つき、その音をまわりの卵に伝え、それぞれの出す音を聞いて、自分の成長が周囲より早いか遅いかを知って、成長速度をコントロールしているから。
よくも、こんなことが判明したものですね。観察だけからとは思えませんが・・・。
陸上にすむ哺乳類で、息を止められるのは人間だけ。チンパンジーには、その能力はない。
鳥は、息を止めたり、気管支を通る息の流量をコントロールして歌をつくっている。
インコやオウムは、寝ているときに、寝言として、耳にした声や、覚えている人間の言葉を口にすることがある。
カラスやインコは、人間の視線をたどって、その目が見ている先を知ることができる。
ツバメの赤ちゃんが巣から放り出されているときには、つがいを見つけられなかった若いオスが、カップルを破局させる目的でヒナをつまみ出してしまった可能性がある。
メスは、ヒナが全滅してしまうと、カップルを解消して、新しいパートナーを探そうとする。
いやはや、世の中は奇想天外、知らないことだらけなんですよね・・・。
(2017年3月刊。1000円+税)

2017年5月22日

カラス屋の双眼鏡

(霧山昴)
著者 松原 始 、 出版  ハルキ文庫

『カラスの教科書』の著者は、カラスや鳥に限らず、ヘビをふくめて、生き物なら、なんでもござれの生物学者だったんですね・・・。
花粉を運ぶのはハチだけではない。鳥も花粉を運ぶ。サザンカやツバキが冬に大きな花を咲かせるが、島を呼び寄せ、蜜を吸うときに花粉を頭にくっつけて運んでもらう。
ハシブトガラスは巣を隠すことに異常なほどのこだわりをもっている。それでも生物学者は簡単にカラスの巣を見つけるのですから、たいしたものです。
カラスは、ふつう巣から少し離れていて、自分の縄張りが見渡せ、かつ、巣の周辺がよく見える場所に陣取って見張っている。
東京・銀座のド真ん中にも、カラスの巣があるなんて驚きですよね。皇居の森の中にあるんじゃないのですね。丸ビルの前の並木にカラスの巣があるだなんて、信じられません。
縄張りがあると、縄張りのなかに住んでいるのは、ペアのカラスの2羽だけ。
ハシブトガラスは、「カアー」と、ハシボソガラスは「ゴアー」と鳴く。
カラスは、しばしば人の声や物音を即興でまねして返す。ハシブトガラスに比べると、ハシボソガラスは鳴かない。ハシボソガラスが鳴きはじめたら、確実に何かが迫っているということ。
カラスは、鳥や獣を捕らえることに関してはシロウト同然である。手際がよくない。
ヘビの起源は、地中仮説が有力になっている。地中では脚が邪魔になるので退化してしまい、目もウロコに覆われてなくなりかけたが、再び地上に出てきたので、目を覆うウロコが透明になって見えるようになった。
ヘビを見たら、すぐ捕まえる。ヘビやクモに咬まれたらどれくらい痛いのか、黙って手を出して咬まれてみる。うひゃあ、なんということをするんでしょう・・・。とても、ヘビ屋なんかにはなれませんし、なりたくもありませんよね・・・。でも、こんな変人・奇人の学者がいるおかげで、判明したことがたくさんあるわけです。世界の視野を広げてくれる本でした。
(2017年3月刊。660円+税)

2017年5月13日

クマムシへんてこ最強伝説

(霧山昴)
著者 堀川 大樹 、 出版  日経BPマーケティング

体長わずか1ミリしかないクマムシは地球上の最強生物。
その強さは、体を縮めて乾燥している仮死状態(乾眠)に入ったら、マイナス273度の低温からプラス100度近くの高温に耐えられる。ヒトの致死量の1000倍の線量の放射線にも、紫外線にも、そして水深1万メートルの75倍相当の圧力にも、さらには真空でもアルコールにも耐えて生き続ける。
宇宙空間の真空に10日間さらされた乾眠クマムシは、地球に帰還したあと、見事に復活した。
体長1ミリなので、顕微鏡をつかわないと、じっくり観察できないというのが難点ですが、ともかく、その生命力のすごさには圧倒されてしまいます。
クマムシは、ムシつまり昆虫ではなく、動物。小さいけれど脳もあり、消化器官もある。ちゃんと神経や筋肉だってある。
クマムシは水生動物であり、水の中でのみ活動できる。ただ、水中を泳ぐのではなく、水の底を歩く。
ヨコヅナクマムシにはオスがいない。メスは交尾をせずに、自分自身で卵をつくって産む。
クマムシは、これまで1200種が知られている。
最後に、知られざるクマムシを食べてみたとのこと。あまり美味しいものではなかったようです。
かわいくて強い、へんてこな小動物、クマムシのいろいろを知ることのできる面白い本です。いやあ、世の中には、こんな動物もいるのですね。万物の霊長なんて、人間は威張っておれませんよ。
(2017年2月刊。1400円+税)

2017年4月24日

人生を変えてくれたペンギン

(霧山昴)
著者 トム・ミッチェル  、 出版  ハーパーコリンズジャパン

イギリスの若き教師がアルゼンチンンの海で油まみれのペンギンを救い出し、それからずっと一緒だったという実話です。
ペンギンって、実に可愛いらしい動物ですよね。パンダに似てるところがあります。白と黒のツートンカラーで、愛らしいところなんて・・・。
この40年間に、ペンギンは大幅に減っている。場所によっては、80%以上も減少している。その原因は、海洋汚染、漁業といった人間の活動が原因だ。かつて人間はタンカーから廃油を大量に海へ投棄していた。そして、タンカーの座礁事故も頻発していた。
ペンギンは人間より尾骨がたくさんあるので、その上に座ることができる。
脚の骨の大部分は体の中に隠されていて、体のすぐ下に踵(かかと)がある。ペンギンの足が冷たくならないのは、主として、このため。
マゼランペンギンは、一夫一婦制で、終生連れ添う。
水に入ると、ペンギンは華麗な変身を遂げる。水面を泳いでいるときは、頭と尻尾だけを水の上に出して、まるで泳ぎに自信のないアヒルのよう。だが、いったん水に潜ると、まず右に出るものはいない。水中では優雅で巧みな動きを見せる。
重油まみれのペンギンを洗い流すために、バターとマーガリン、オリーブオイルに食用油、せっけんにシャンプー、中性洗剤を集めた。
ペンギンは洗われるとき、ものすごく怒り、抵抗した。しかし、洗剤を洗い流していたとき、突然、その抵抗をやめた。そして、べっとりした重油を洗い流していることを理解したようだった。ところが、ペンギンの羽には防水効果がなくなり、海に戻ることが出来なくなった。
なーるほど、海中でべっとり濡れてしまえば、さすがのペンギンだって海で生きてはいけないのです。
そこで、どうしたか。ペンギンは助けてくれた若い教師のあとを、ずっとついていくことにしたのです。著者は、なぜペンギンがずっとついてきたのか、その後も長いあいだ不思議に思っていました。すると、ペンギンは群れで生きる動物なので、一頭だけでは生きていけないのです。そこで、著者を仲間とみなして、ずっとついていったというわけです。
そして、結局は、著者のつとめる学校にまでやってきて、生徒たちの人気者になったのでした。名前までつけられています。ファン・サルバドといいます。
頭がよくて、人なつっこい性格だったので、みんなから好かれて幸せな「人生」を過ごしたようです。
ファン・サルバドには手がかかった。エサと水を与え、運動させ、遊び相手をしなければならなかった。学校では、生徒たちがしてくれた。ファン・サルバドは、週に3~4キロの魚(スプラット)を食べた。これはビール1本程度で買えた。
ファン・ダルバドは、きわだった個性で周囲の人を虜(とりこ)にした。聞き上手なうえ、頭や目の動きで受けこたえして、相手を会話に引き込んだ。
これから動物の行動に関する研究がすすんだら、動物たちには、人間が考えているよりはるかに高度な伝達能力があり、仲間同士あるいは人間と十分に意思疎通ができることが判明するに違いない。
ファン・サルバドは著者の旅行中に不慮の事故で死んでしまいました。
ファン・サルバドが残してくれたのは、希望という贈り物だった。
40年も前のアルゼンチンでのペンギンとの出会いと、ともに過ごした日々を楽しく思い出している本ですが、ペンギンのかしこさと愛らしさ、包容力の豊かさが伝わってきて、ほわんほわんと胸が、温かく熱くなってきます。いい本です。
(2017年1月刊。1500円+税)

2017年4月23日

みつばち高校生


(霧山昴)
著者 森山 あみ 、 出版  リンデン舎

長野県富士見高校には全国でも珍しい「養蜂部」がある。そこで飼っているハチは外来種の西洋ミツバチではなく、日本在来種の日本ミツバチ。
そして、創立以来3年目にして全国大会で優勝したのでした。快挙というほかありません。
全国大会というのは、日本学校農業クラブ全国大会です。いわば農業甲子園なのです。そこで発表した報告のタイトルは、「ニホンミツバチで笑顔広がるまちづくり」です。
富士見高校は、長野県の諏訪地方にある、全校生徒300人という小さな高校です。
ミツバチは、女王蜂を中心とした集団生活を営んでいる。春から夏にかけて群れの中に働き蜂が増え、巣が手狭になると、女王蜂は次に女王となる卵を産む。そして、これが孵化する少し前に、半分の働き蜂を連れて別の場所へ飛び去る。これがミツバチの巣分かれ、分蜂(ぶんほう)である。養蜂家は、分蜂した群れを捕まえて、群れを増やす。
もし、地球上からハチがいなくなると、人類は4年以上は生きていけない。世界の農産物の3分の1が昆虫による受粉によって成り立っている。そして、昆虫の8割をミツバチが占めている。
日本ミツバチは、昔から日本に生息する在来種。気性はおとなしく、寒さや病気に強い反面、巣の環境が気に入らないと、集団で逃げてしまう。これを逃去(とうきょ)という。
日本ミツバチは、人間が家畜として飼いならすことはできない。そして、日本ミツバチは西洋ミツバチと違って売られていない。
日本ミツバチの群れには8千から1万匹のハチがいる。働き蜂の寿命は、およそ4週間。
日本ミツバチから蜜をとるのは年に1回だけ。西洋ミツバチのようにたくさんはとれない。
一匹のミツバチが一生かかって集められる蜜の量は、ティースプーン1杯ほどでしかない。
農業甲子園に出場し、優勝の栄冠を見事勝ちとるまでの苦難の日々がよく紹介されています。ブラスバンド、チアダンスそして養蜂と、日本の高校生も捨てたものではありません。そして、指導した教師の粘り強さにも頭が下がります。心から拍手を贈りたいと思います。
(2016年3月刊。1500円+税)

2017年3月21日

はたらく動物と

(霧山昴)
著者 金井 真紀 、 出版  ころから

読んでいると、ほんわか心の温まってくる本です。生き物って、みんな人間と変わらないんだなって思わせてくれます。
盲導犬にふさわしい犬の特性の一つに、寝るのが大好きなこと、というのがあって、驚きました。
エネルギーが多い犬は、かまってかまってと人間に甘えてくる。かまってやらないと、わざと注意をひこうとして、悪さをする。人間が忙しくしているときには、黙って寝ているような犬のほうがいい。ただし、「かまってかまって」のタイプの犬であっても、それにきちんとこたえられるユーザーなら、相性がいいことにはなる。
なーるほど、そういうことなんですね・・・。
馬と仲良くなる方法・・・。いきなり馬に近づいてはいけない。距離を保って静かにしていると、馬のほうから気がついて、「ふむ?」とサインを出してくる。それから近づく。馬に向かってちゃんと頭を下げて挨拶し、鼻先に手をさしのべて自分の匂いをかいでもらう。そうすると馬と仲良くなれる。
鵜飼の鵜は、茨城県の太平洋岸で生けどりされたウミウ。25年ほど生きる。死ぬ間際まで仕事をする。若いときには片足で立てる鵜が、年をとると両足で立つようになる。そして、最後の最後は立てなくなってしゃがむ。しゃがむと食欲がなくなり、それから1週間で死ぬ。
野生の鵜が連れてこられたら、籠のなかに入れて、毎日、2、3回は頭からお尻まで全身をなでてやる。人間との触れあいを毎日やって、3ヶ月たち、4ヶ月目に籠から出す。そして、ほかの鵜の仲間に入れる。
昔は飛べないように羽の筋を切っていたが、今は切らない。それでも飛んで逃げていくことはない。鵜飼の仕事を鵜は楽しんでいる。
鵜は、二羽がペアを組んで生活しているが、つがいではない。京都で卵からヒナがかえったときにはビッグ・ニュースになった。それほど、子は産まれない。だから、毎年、野生の鵜を捕まえる。
長野県には猿害対策のために飼われている犬たちがいる。
モンキードッグという。全国23都道府県で、351頭ものモンキードッグが活躍している。このため、法律改正までされている。モンキードッグは猿だけを追い払い、猫や鶏は追わない。これは繰り返しの訓練のたまもの。ほめるのと気合い。この二つがとても大切だ。
人間と一緒に、いろんな動物が生きて、役に立っているのですね。興味深い本でした。
(2017年2月刊。1380円+税)

2017年3月13日

新たな魚類大系統

(霧山昴)
著者 宮 正樹 、 出版  慶應義塾大学出版会

著者は小学生のころからヘラブナ釣りに凝っていて、高校のときには学校を休んでまでも釣りに出かけていたほど、魚が好きだったそうです。
私は小学生の低学年のころは、一人ででも遠くのレンコン堀へザリガニ釣りに出かけていました。高学年になると、大川の叔父の家の周囲のクリークでヘラブナ釣りをしていました。静かな水面を見つめていて、浮きがピクピクと沈む様子は、夜、布団に入ってからも脳裏から離れないものです。弁護士になってからも、しばらくはマイカーのトランクに釣り道具を入れておいて、柳川のクリークで釣りをしていたことがありました。それほど当時はヒマだったのです。
子どもたちが小学生のころには、自宅のすぐ近くの小川で釣りの手ほどきをしたのですが、教える師匠より教えられる子どものほうが何匹も釣り上げてしまい、面目を喪ったこともありました。まあ、子どもに自信をつけさせて良かったとは思いますが・・・。
この本には、魚のDNAを比較解析することによって、系統関係を解き明かす「分子系統学」の成果が紹介されています。
魚は3万種を優に超す。5億年もの太古の昔に存在した唯一の祖先種から、種分化と絶滅を繰り返して現在の3万種に進化したのだ。
たった一つの祖先種が5億年かけて今の3万種の魚になったとは、そしてそれが判明したとは、すごいことですよね。
一般に魚類(さかな)と呼ばれている生きものは、脊椎動物の初期進化で水中生活から脱することのなかった、由来が異なる4つのグループの寄り合い所帯にすぎない。
①顎をもたない無顎類(ヤツメウナギやヌタウナギの仲間)
②中軸骨格が軟骨からできている「軟骨魚類」(サメやエイ、ギンザメの仲間)
③各鰭の鰭条がよく発達した「条鰭類」(ほとんどすべての魚)
④肉鰭類(シーラカンス、ハイギョ)
これら4つのグループの進化的な由来は大きく異なっている。
ウナギの祖先は深海魚である。日本列島に分布するメダカにはキタノメダカとミナミメダカと二種いる。
おサカナくんではありませんが、魚好きの人には魚とは何かを考えさせてくれる、欠かせない本です。
(2016年10月刊。2400円+税)

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