弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物

2016年8月22日

なぜ蚊は人を襲うのか

(霧山昴)
著者  嘉糠 洋陸 、 出版  岩波科学ライブラリー

 ガーデニングの天敵こそ蚊です。冬のガーデニングは蚊がいないので、防寒に気をつけるだけですみます。ところが夏は、熱中症対策だけでなく、蚊から身を守るための装備を欠かせません。
蚊が人間の血液を吸いとったとき、そのお返しに残すのは、痒みだけではない。望まないお土産として、感染症の原因を体内に送り込む。
蚊は病原体の有力な媒介者である。マラリア、フィラリア症、デング熱、日本脳炎、西ナイル熱、そしてブラジル・オリンピックで注目されたジカ熱をもたらす。
蚊は、病原体を充塡した注射器が空を飛んでいるようなもの。
平清盛そして、光源氏はマラリアに襲われた。平安時代は比較的温暖だったことから、マラリアがあたりまえの国土病として存在していた。
著者は研究室で蚊を数万匹の単位で飼育しているとのこと。驚異です。
蚊のオスもメスも、自然界では、花の蜜やアブラムシの排出する甘露をエサとしている。ふだんはそれだけで十分に生きられる。ところが、オスの精子を受け入れたメスは、吸血に対する欲求が高まる。これに対して、処女メスは人間の匂いには全然反応しない。メスの蚊は、卵を少しでもたくさんつくるために、血を必要とする。
蚊は、飛行機に乗って移動する。車輪の格納庫に入り込む。そこはマイナス50度の世界なのだが、蚊は10数時間ほどのフライトなら、その環境下でも生きのびる。
蚊は、人間から遠いところではなるべく最短で標的に向かう。近くなるとジグザグに飛行し、匂いや熱の助けを借りて着地点である肌を探す。
蚊に刺されたくなかったら、明るい色の服を着たほうがよい。
蚊は、血をしこたま吸ってしまうと、それで満足する。血の種類には、まったく無頓着である。
1回の産卵サイクルで生み出す卵の数は、ハマダカラで200個、アカイエカは100~150個。そしてネッタイシマカとチカエイカは100個未満。
蚊についての基礎知識をたっぷりいただきました。
クーラーをつかわない生活をしていますので、蚊取り線香に毎晩お世話になっています。
(2016年17月刊。1200円+税)

2016年8月 1日

カラスの補習授業

(霧山昴)
著者  松原 始 、 出版  雷鳥社

 ゴミ出しは、カラスとの知恵比べです。我が家のゴミには生ごみが入っていませんので、あまりカラスが狙わないはずなのですが、ゴミ袋をつついて内容物を散乱させられたことは数知れません。ネットをかぶせ、ブロックの重しをしていてもダメなことがあります。弱点を巧妙に攻めあげるのです。
朝早くからカラスがカーカーと鳴くと胸騒ぎがしてしまいます。連中がきっとよからぬことを企てているに違いないからです。カラスの集団にやられてしまったら、もうどうしようもありません。ヒヨドリ軍団なんてものではありません。被害のレベルが違います。
この本は400頁近くありますが、前の本に続いてカラスの生態に迫っています。
カラスは南米とニュージーランドにはいない。なぜ、なんでしょうね・・・。
カラフルなカラスはいない。全世界のカラスは白黒か灰色というツートンカラーのみ。日本には、ハシブトガラスとハシボソガラスの2種のみいる。
東京都心のビルが建て込んだ場所にいるのはハシブトガラスだけ。ハシブトは、森林か市街地に住む。ハシボソは田畑や河川敷が大好き。
ハシブトガラスは基本的に地面が嫌いで、あまり降りてこない。カラスが人間を「攻撃」するのは、ヒナの巣立ちの時期。
カラスの集団は若い個体の集まり。カラスのペアは、よほどのことがなければ、ずっと続く。
カラスの寿命は野性でも20年。飼育下では40年も生きたハシボソガラスがいる。
鳥に食べさせてはいけないのがチョコレート。チョコレートに含まれるテオプロミンは鳥にとって毒となる。またアルコールもダメ。
カラスは大型の毛虫を食べる。また、毒をもつヒキガエルも食べる。ヒキガエルの腹側をつついて食べる。毒のある皮だけを残して、きれいに食べているという証拠を残す。
すべての鳥が鼻を利かせることができないというのは間違い。
カラスをふくむ多くの鳥のエサ探知は、視覚に頼っている。鳥の目は良い。高速で動くものを捉える能力だ。
朝、カラスが行動を始めるのは、夜明けの時間ほど・・・。
鳥は耳のいい動物だ。鳥の耳の感度は高い。これは高密度で生えた感覚毛のせいだ。
カラスについて、さらに知りたいと思っている人には最高のプレゼントになる本です。
(2015年12月刊。1600円+税)

2016年7月19日

猛禽探訪記

(霧山昴)
著者  大田 眞也 、 出版  弦書房

 熊本に生まれ、熊本で学校の教師をしていた著者が長年の野鳥観察をふまえて、ワシ、タカ、フクロウなどの生態を写真とともに紹介しています。
 クマタカ、オオタカ、イヌワシ、ツミ、トビ、サシバ、ミサゴ、ノスリ、チュウヒ、そしてハヤブサ・・・。著者は遠くから一見して違いが分かるようです。すごい識別眼ですね。私には、どれも似たような猛禽類としか見えません。
猛禽類(もうきんるい)とは、鉤形(かぎがた)に曲がった鋼鉄のような強靭で鋭い爪と嘴を有して、魚類や両生・爬虫類はおろか、さらには同じ鳥類より進化した哺乳類をも鋭い爪で鷲掴みにして捕え、鉤形の嘴と強い背筋力によって肉を引きちぎって食べてしまう猛々しい鳥のこと。タカ目、ハヤブサ目、それにフクロウ目をさす。
フクロウもタカやハヤブサと同じグループなんですね。
イヌワシのエサは、ニホンノウサギ(54%)、ヤマドリ(18%)、ヘビ(17%)。ワシって、意外にヘビをたくさん食べるのですね・・・。地上のヘビが、空中からよく見えるものです。
イヌワシは番(つがい)で狩りをすることが多い。ヒナが育つなかで、先に大きくなったほうが、小さいヒナを殺して、親が食べ、大きなヒナにも食べさせる。これを「イヌワシの兄弟殺し」という。残酷なようですけれど、合理的な子育てなのです。
クマタカは、山里での人の暮らしの中で共存してきた、山里を代表するタカである。
ミサゴは海中の魚を空から襲って食べる。しかし、その狩りは命がけで、獲物が大きすぎると、逆に水中に引き込まれて溺死することもある。
蜂を主食とするハチクマは、マレー半島やスマトラ島と日本を行き来している。50日あまりで、1万キロを飛ぶ。東シナ海を渡るときには、夜間も飛び続ける。いやはや、なんともすごいことです。
ハヤブサは時速282キロという記録をもっている。アマツバメの時速320キロに次ぐ。これって、まるで新幹線並みですね。どうやって、そんなエネルギーをあの小さな身体に保持しておくのでしょうか・・・。
鳥たちと人間がいつまでも共存できる自然環境を保持したいものです。
(2016年5月刊。2000円+税)

2016年7月11日

先生、イソギンチャクが腹痛を起こしています


(霧山昴)
著者  小林 朋道 、 出版  築地書館

 先生!シリーズも、ついに10冊目となりました。すごいです。鳥取環境大学の学生は幸せですよ・・・。コバヤシ先生は相変わらず快走中です。
 でも、私には洞窟探検なんて、とても出来ません。真っ暗な洞窟に何がいるか分かりません。天井にコウモリがたくさんぶら下がっているのを見つけて喜ぶなんて、コバヤシ先生はやっぱり変人でしょう。いえ、その勇気には大いに敬意を表します。でも、コウモリの毛のなかにクモを見つけて、そのクモはどのコウモリ(の毛)を好むのか、なんて実験をするのです。なんだか学者って、正気の沙汰じゃありませんね。いえ、これも尊敬の言葉ですよ・・・。
 さらに、コウモリは、何か悪い病気をもっているかもしれないので、決して素手では触らないというのです。でも、手でつかんではいるのですよね。ええーっ、気色悪い・・・。
 さらに洞窟の奥にハクビシンがいたりします。ヘビなんかが、うじゃうじゃいるなんてことはないのでしょうか。
 コバヤシ先生の実験室では1メートル以上もある大きなアオダイショウを飼っています。ヘビを見たとき、モモンガがどんな反応を示すのかという実験もします。そして、ヘビが逃げたら追いかけて、尻尾をつかまえるのです。いやはや、私は生物学者になんて、とてもなれません。
私も小学生のころには、カエルを手でもって、地面にたたきつけて股をさいて皮をむき、ザリガニ釣りのエサにしていました。カエルのもも肉は絶好のエサなのです。ところが、成人してからは、カエルなんてとても触れません。梅雨になると家の周囲に全身緑色の小さなアマガエルが姿をあらわしますが、ともかく見るだけです。
 海水魚の話そして、犬が罪悪感を感じるのか、など、10冊目のこの本にも興味深い話が盛りだくさんです。なにより、写真がたくさんあるので見ても楽しいのです。
 コバヤシ先生と学生の皆さん、引き続きがんばってくださいね。
(2016年5月刊。1600円+税)


先日うけた仏検(一級)の結果が分かりました。46点でした(150点満点)。自己採点は54点ですから、8ポイントも下まわっています。これは仏作文、書きとりが自己評価以上に悪かったのだと思います。残念です。ちなみに合格点は84点ですので、あと40点も上乗せする必要があります。まだまだ険しい道のりです。くじけず、めげずに引き続きがんばります。

2016年5月16日

微生物が地球をつくった


(霧山昴)
著者  ポール・G・フォーコウスキー 、 出版  青土社

微生物は地球上で最古の自己複製する生物なのに、見つかったのは最後で、ほとんどのあいだ知られていなかった。
地球の生命の圧倒的多数は微生物だ。細菌の種は、動物と植物とをすべて合わせた種の数より、はるかに多い。その数は、少なくとも何百万種にもなる。
 生命は電気的勾配を用いてエネルギーを生成する。生命はエネルギーを使って電気勾配を生み出す。要するにすべての生物は電気発生装置だ。陽子のようなイオンを膜ごしに移動させ、それぞれの電気勾配を生成する。陽子と電子の元は水素だ。水素は宇宙に一番豊富にある元素である。電気勾配は膜を必要とする。これがないと、陽子などのイオンの濃度差もなく、したがってATPをつくるエネルギー源もない。
 共役因子と呼ばれるナノマシンは、膜の内側にまたがる文字どおり超小型モーターである。その基本的な造りは極微のメリーゴーランドのようなものだ。
 光合成の過程は、ほとんど魔法のようだ。光合成では、光は特定の分子、たいていは葉緑素という緑の色素に吸収される。特定の葉緑素分子が特定の波長、つまり特定の色の光を吸収することが、化学反応をもたらす、反応中心に収まった一個の特定の葉緑素分子が光子からエネルギーを吸収するとき、光子のエネルギーは、葉緑素分子から電子を一個押し出すことができる。およそ10億分の1秒のあいだ、葉緑素分子は、正(せい)に帯電することになる。
 光のエネルギーは、葉緑素分子から、たんぱく質複合体の提供側から需要側へと電子を押す。その結果、10億分の1秒のあいだ、正電荷をもった分子と負電荷をもった分子がタンパク質の足場にあり、両者は10億分の1メートルの距離で隔てられている。正電荷は負電荷を引き寄せる。タンパク質の足場は実際には電荷の引力のせいでわずかに崩れ、そうなると圧力波が生じる。圧力波は両手を叩くようなものだ。反応中心が電子を動かすたびに、両者はミクロの拍手となり、非常に高密度のマイクなら文字どおり検出できるような音を立てる。この現象は光音響効果と呼ばれる。ベルは、この効果をつかって光から音波を生成し、光電波という、音を伝える装置をつくった。光のエネルギーの約50%が反応中心の電気エネルギーに変換される。
最初の光合成をする微生物は嫌気性だった。つまり水を分解することができなかった。微生物が水を分解する能力を進化させるには数億年がかかった。
酸素は、地球の大気に独特のものだ。24億年前の地球には、植物も動物もいなかった。微生物しかいなかった。酸素は光合成作用の廃棄物だ。地球は、光合成によって水分解サイクルを回して酸素をつくり、呼吸によって水の清算を行うのだ。酸素は相手かまわず反応し、単独でいることを好まない。非常に反応性の高い分子で、多くの金属など他の元素と科学的に結合する。
 人間が呼吸する酸素は、恐らく100万年前につくられて、大気圏のおかげで遠くから運ばれてきた。遠い昔、植物や植物プランクトンが、地球のどこかであなたが今呼吸している酸素を生み出した。
遺伝子の伝達の間違いは、すべての生物のすべての遺伝子に、絶えず自然発生的に生じていて、場合によっては利益になることもある。絶えず生じているランダムな間違いが、遺伝子に厖大な多様性をもたらす。その多様性のほとんどすべてが微生物にある。
10の24乗の微生物が生きている。
日本人の腸内微生物は、改葬の消化を助ける遺伝子をもっている。その遺伝子は、白人の腸内微生物には見当たらない。人間の腸にいる微生物の総数は、体の細胞の総数の10倍ほどである。腸内微生物は、人間の代わりにビタミンをつくってくれる。
アメリカで消費される抗生物質の80%は、家畜生産のために使われている。そして、多くの微生物が普通の抗生物質には、免疫になっている。有毒の微生物が人間に対する反転攻勢を始めている。
微生物を知らないと、人間そして生命を知ることは出来ないということのようです。

               (2015年10月刊。2300円+税)

2016年4月18日

ねこはすごい

(霧山昴)
著者  山根 明弘 、 出版  朝日新書

私は根っからの犬派です。でも、猫にも関心はあります。
日本人は世界有数の「ねこ好き」国民である。日本は「ねこ文化大国」で、日本人ほど猫好きな民族は他に存在しない。日本のどんな大都市にも路地に入ると、そこにあたり前のようにノラ猫が暮らしている。町には「ねこ」がデザインされた服や小物を身につけた子どもや女性があふれ、店に入ると何かしらの「ねこグッズ」が売られていて、書店には、ねこの写真集コーナーまである。こんな猫まみれの光景はヨーロッパではありえない。
たしかに、フランスでは犬を見かけることは多くても、猫はほとんど見たことがありません。ねこの身体の「つよさ」は、一にも二にも瞬発力があること。
ねこの最高速度は時速50キロ。
ねこは、自分の身体の5倍の高さ、1.5メートルへ、助走なしで飛び乗ることができる。ねこの背骨は、180度以上、身体をよじることができる。関節がとても柔らかい。
ねこの歯は上下あわせて30本しかない。犬は42本。ねこは、かむ力を強力にするため、骨や筋肉の構造上、あごを短くする必要があった。ねこの犬歯(牙)は、獲物を仕留めるためのなくてはならない武器。ねこの歯は、犬歯で獲物を殺し、裂肉歯によって殺した獲物から肉片を切り取るという二つの機能に特化している。
ねこは、ツメ研ぎによって、古いツメ先の屑を離脱させて、新しく尖ったツメ先に更新している。
ねこの指の間には、ニオイを出す臭腺があり、ツメ跡と同時に自分のニオイをそこに残していく。
ねこは妊娠してから2ヶ月後で出産する。
ねこは、人間がものを見ることのできる限界の6分の1の光景でも、ものが見える。ねこの瞳孔は、最大直径14ミリにまで拡げることができる。ねこは、暗闇でものが見えるように進化したが、他方で、色の識別は難しくなった。
ねこの視力自体はあまり良くはない。ねこには赤色は見えていない。ねこにとって、色など、どうでもいいこと。
ねこの聴力はすごくて、人間の5倍もある。
ねこの耳がピンと立って正面を向いているときは、気分的に安定した正常状態である。母ねこと子ねこは、お互いに声を聞き分けている。
ねこは、犬には少し及ばないが、臭覚においても非常に優れている。ねこの臭い尿は、狩りのうまい、強いオスの証しである。
日本に猫が渡ってきたのは、平安時代初期(1200~1300年前)のこと。中国からもたらされた猫は「唐猫」として、大切に扱われていた。それよりもっと古い、1400年前の飛鳥時代のころ。
飼いねこは、平均すると15歳までは生きている。
ねこが殺処分されるのは、平成25年度に8万匹。ただし、年々減少の傾向にある。
ノラ猫には食べ物をやってはいけない。著者は何回も強調しています。まったく同感です。ねこをさらに少し知ることが出来ました。
(2016年3月刊。760円+税)

2016年4月16日

鳥たちの博物誌

(霧山昴)
著者  デイヴィド・ターナー 、 出版  悠書館

わが家の庭に来る鳥は、一番にヒヨドリです。我が物顔でやって来ます。それでも、スモークツリーの木に巣をつくっていて(気がつきませんでした)、蛇にヒヨドリのヒナたち(2羽)が食べられてしまったのは痛恨の極みでした。冬はビョウビタキ、春はウグイス、そしてメジロです。ほかにも、名前の分らない小鳥が何種類もやって来ます。カササギはたまに来ますし、生ゴミあさりのカラスはしぶとい敵になります。カササギはビックリグミの木の頂上付近に巣をつくっただけでした。
渡り鳥のなかで、もっとも長い距離を飛んでいるのがキョクアジサシ。イギリスの夏のあいだにグリーンランドで繁殖し、南極大陸付近でイギリスの冬を過ごす。20年も生きるとしたら、生涯に80万キロを飛ぶことになる。どうして、こんな長距離の「渡り」をするのか。それは、一年に夏を2度も過ごせるということ。
北アメリカに住むスグロアメリカムシクイは、夏の終わりに強力な貿易風を利用して、わずか4日間で南アメリカに到着する。
島の糞から成るグアノは、数千年にわたって厚さ90メートルもの層を築きあげた。
アホウドリは、最適のエサ場を求めて、ある方向に平気で1600キロも行き、また1600キロも戻ってくる。
海鳥は長生きする。これまでに記録された野鳥のなかで、もっとも長生きだったのはシロアホウドリで、58歳だった。その年でも、まだ産卵していた。
ハヤブサには、空ばかりではなく陸上でも、水中でも、かなう生物はいない。急降下するときには、時速108キロを出した記録がある。ハヤブサが減少したのは、農薬のせいだろう。
鳥は歌います。上手です。わが家に毎年やってくるウグイスは、2月初めころは、いかにも下手です。ところが、3月初めのころになると、姿こそ見えませんが、堂々と歌っています。
ウタツグミは、何でも2回を大声で歌うという奇妙な習性がある。
尻尾をチョンチョンと振りながら人間に近づいてくるジョウビタキの愛らしさは最高です。
年をとった鳥ほど、若い鳥より歌がうまい。幼鳥は、1ヶ月で1とおりの鳴き声を覚える。そして、鳥類の歌にも、方言がある。
小鳥のことを、さらに少しだけ認識することができました。
(2016年4月刊。2000円+税)

2016年4月11日

なぜニワトリは毎日卵を産むのか

(霧山昴)
著者  森 誠 、 出版  こぶし書房

私と同世代の農業博士です。ニワトリの専門家でもありますから、ニワトリをめぐる面白い話が満載の本です。
なま卵を食べるのは日本だけ。それだけ、日本の卵は安全なのでしょうが、驚きますよね・・・。古代ローマ人は、なま卵に穴をあけて、寝転がって中身をすすっていた。ちなみに、キリストの最後の晩餐でも、使徒たちはテーブルに向かってイスに座っていたのではなく、臥台に寝そべっていた。それが当時の風習(習慣)だったのです。
バイオリニストの先住真理子は、毎朝、3~6個のなま卵を呑む。これが彼女のスタミナ源。私も、おでんには卵がほしいと思いますが、毎日、なま卵という感じではありません。
温泉玉子とかたゆで玉子の違いを識りました。かたゆで玉子は、白身も黄身も固くなっています。それに対して、温泉玉子は、黄身は固まるけれど、白身は固まらない温度である70度のお湯に30分ほどつけておくと出来上がる。この温泉玉子も、日本独特のもの。ガイジンは半熟玉子を好む。
 フランスはモンサン・ミッシェルにある有名なレストランでオムレツを食べたことがあります。泡立てた卵を使って厚さが10センチにもなるものです。このときは、卵を銅製のボールで力一杯泡立てるのです。この銅イオンのおかげで、泡が安定するのだそうです。ですから、見かけこそ巨大オムレツですが、実は、一人前なんてペロリと食べることができます。食べ過ぎの心配は無用なのです。ぜひ、一度、ためしてみてください。
ニワトリは、1日に1個以上の卵は産まない。
日本人は、江戸時代は卵は食べても、ニワトリはあまり食べなかったようです。明治のはじめに東北地方を旅行したイギリス女性のエザべㇻ・バードは、結局、ニワトリを食べることはなかったと旅行記に書いています。
江戸時代の日本人は、動物の肉をおおっぴらに食べることはなかった。それで、鶏肉をカシワと呼び、猪肉はボタン、鹿肉をモミジと呼んだ。馬肉はサクラだ。
江戸時代の日本で、鶴は最高のごちそうだった。しかし、さすがの中国人も鶴は食べていない。なぜか・・・?つまり、鶴はまずいから。なーるほどですね。
ニワトリにまつわる興味深い話が満載の本でした。

(2015年12月刊。2000円+税)

2016年4月 4日

植物はすごい、七不思議篇

(霧山昴)
著者 田中  修 、 出版  中公新書

 春は、なんといってもチューリップと桜です。チューリップは昔ながらの色と形、桜はソメイヨシノのピンクですよね。
桜の開花宣言が、九州より東京のほうが早いことが多いのはなぜなのか・・・。
開花宣言は、標本木として定められている木に、わずか5~6輪の花が咲いたときに出される。実際に満開となるのは、それから一週間くらいしてからのこと。
桜は、冬にきびしい寒さを感じなければ、春の暖かさを感じても開花が遅れてしまう。九州では冬でも暖かいので、春の暖かさに敏感に反応せず、開花が遅れてしまう。東京の桜は寒さがきびしいので、春の暖かさに敏感に反応して早く開花する。なーんだ、そういうことだったのですか・・・。
 北海道で、梅と桜の花が同時に咲くのは、梅の花が全国的にほぼ同じ気温(6~9度)で咲くから。梅の花が咲いた頃、北海道でも厳しい冬の寒さから少し暖かくなったと桜が感じるので花を咲かせる。
アサガオの花が夏に早朝から咲くのは、暗さを感じはじめて10時間後に咲くという習性があるから。10時間後に真っ暗な箱に入れられていても、アサガオは花を咲かす。
ゴーヤの果実の表面にブツブツがあるのは、このデコボコによって影をつくり、太陽の光が実全体に直接あたらないようにしている。強すぎる光があたると、かえって種に害を与える有害な物質が発生する。
植物の不思議な行動がとても分かりやすく解明されていました。


(2015年8月刊。820円+税)

2016年3月28日

植物は「知性」をもっている


(霧山昴)
著者  ステファノ・マンクーゾ、アレッサンドラ・ビオラ 、 出版  NHK出版

 結論からいうと、植物は「知性」をもっているということです。この本は、いろんな角度から、それを論証しています。日曜ガーデニング派の私は、まったく同感です。
植物は、どこから見ても知的な植物だ。根には無数の司令センターがあり、たえず前線を形成しながら進んでいく。根系全体が一種の集合的な脳であり、根は成長を続けながら、栄養摂取と生存に必要な情報を獲得する分散知能として、植物の個体を導いていく。
 動物は、植物が作り出した物質とエネルギーを利用する。植物は、太陽のエネルギーを自分の必要を満たすために利用する。つまり、動物は植物に依存しているが、植物は太陽に依存している。
 植物は地球上の生命に対して、あまねく作用している。動物にそんなことは出来ない。
 植物に脳はない。しかし、脳は本当に知性の唯一の「生産」の場なのか・・・。人間だって、脳だけでは知性が生まれてはいない。脳は単独では何もつくり出すことは出来ない。どんな知的な反応をするにも、体のほかの部分から届けられる情報が必要不可欠だ。
 植物は、口がないのに栄養を摂取し、肺がないのに呼吸している。植物は見て、味わって、聞いて、コミュニケーションをし、おまけに動いている。だったら、どうして植物が思考しないと決めつけられるのか・・・。
 「知性」とは、問題を解決する力なのだ。だったら、植物にあると言って、おかしいことではない。植物には神経がない。しかし、植物は体のある部分から別の部分に情報を送るため、三つのシステムを活用している。その一つは電気信号をつかうこと。電気信号は、細胞壁に開いた微小な穴を通って、一つの細胞から別の細胞への伝えられる。
 植物は、水や化学物質も信号として使っている。光は、人間の血管系とそっくり。ただし、体の中心部にポンプはない。さらに、化学物質(植物ホルモン)の信号も送られる。
植物は、自分でも「におい」をつくり出す。ローズマリー、バジル、レモンなど・・・。「におい」は植物の言葉だ。
 植物が害虫に食べられたとき、警報を発する。トマトがその一例だ。植物に「知性」があるというのは間違いありませんよね・・・。

         (2016年2月刊。1800円+税)

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