弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物

2014年8月16日

「毎日パンダ」


著者  高氏 貴博 、 出版  平凡社

 いま、私のブログでも和歌山・白浜のパンダを連続して紹介しています。
 パンダって、本当に不思議な生き物ですよね。熊なのに、竹を主食とするなんて・・・。そして、黒と白のツートンカラーで、白い顔に黒いフチ取りの大きな目。とても愛らしくて、ついなでなでしたくなります。でも、子どもパンダはともかくとして、大人パンダだと、飼育員も同室にいるのは危険なので禁じられているそうです。
 白浜では、1時間ほどじっくりパンダを観察させてもらいました。
 小さな池に半身つかって眠りこけているパンダ。岩にもたれかかって爆睡中のパンダ。そして、やおら動きまわったかと思うと、青竹をバリバリとかみくだいて食べるパンダ。
青竹なんて、美味しいとも思えないのに、ひたすら食べるパンダの姿を見て、とてもクマの仲間だとは思えませんでした。
 初めてパンダを見た都会人は、なかに人間が入っているとばかり思ったとのこと。さもありなんですね・・・。
 この本は、なんと、上野動物園に毎日通っているという、物好きなおじさんのとったパンダの写真集です。
 パンダって、眠りながらもいろんなポーズをするのですね。それがまた、面白いのです。
通いはじめのうちは、二等のパンダの見分けがつかなかったのが、次第に即座にオスのリーリートメスのシンシンを見分けることができるようになったのでした。といっても、両者を並べてくれないと、ちょっと見分けるなんて、できませんね。
 動物園生活のパンダをいじめに来るのがカラスだというのを知り、なるほど、と思いました。パンダの背中の毛を抜いて巣材にしたりするのです。
 パンダの肩にとまったり、カラスは遊びたい放題。それでもパンダは相手にしません。別に殺し合いに発展するわけではありませんから、いいか・・・。
 パンダは、大胆のように見えて、実はとてもデリケートな動物だ。といっても、人がたくさんいても、あまり気にすることはない。
「毎日パンダ」はブログでも見られるとのことで、私も眺めてみました。
 著者は、よほどヒマな年寄りかと思うと、仕事で忙しいとのこと。青年というより壮年のようです。それでも、3時間の行列に並んでまでパンダの写真を毎日とるなんて、見上げた根性をしていますね。この著者は・・・。
(2013年6月刊。1100円+税)

2014年8月13日

オオカミ

著者  ギャリー・マーヴィン 、 出版  白水社

 日本は西欧諸国に比較すると、オオカミへの親和性の高い国だということです。
 なるほど、そうかもしれません。日本のオオカミはとっくに絶滅してしまっていますし・・・。
 オオカミは、1日あたり、3.3キロの肉を必要とする。獲物があるとき、食べられるだけ食べておく。獲物が大きいときは、大量に食べる。オオカミの成獣の胃の容量は7~9キロで、大きな獲物を食べるときには、体重の25%も詰め込む。
 オオカミの群れは、平均して3~11頭のあいだ。みな、夫婦と兄弟姉妹だ。
 仔オオカミは、1年から3年のあいだ、何をするにも両親と一緒に過ごす。
典型的な巣穴は、体高よりも広い入り口と、長さ4メートルにも及ぶトンネル。入り口は水が侵入しないように上向きのことが多い。
 繁殖するのは両親だけで、最初の年に育てた仔が、新たに生まれた仔オオカミをさまざまな方法で世話する。
仔オオカミは成獣のオオカミに遊んでもらい、その鼻面をなめて餌をせがむ。
 オオカミの遠吠えは、オオカミ自身にとって大事なことを伝えあうためのもの。たとえば、競合関係にある群れ同志が互いに遭遇してしまうのを避けるための仕組みになっている。
 群れのメンバーは、個体それぞれの感情の状態や物理的な存在を他の個体に伝える複雑なシグナルを通じて、また他の個体からの合図に対する自身の応答を通じて、その社会生活を営んでいる。
 ヒトラーは、個体的にも軍事的にも、オオカミを思わせる用語で、自らを包んでいた。自分の名前が古ドイツ語で「高貴なオオカミ」を表すコトバに語源があることを誇りに思っていた。
 ヒトラーは、お気に入りのジャーマンシェパード犬のブロンティの仔犬の一匹をヴォルフと名付けた。それは、彼が触れることを許した唯一の生き物だった。
 1930年代から、狼などの補食動物を殺戮することに疑問を感じる人々があらわれた。
 自然のバランスという視点で物事をとらえる発想が生まれた。オオカミは貴重であるだけでなく、捕食を通じて野生の草食獣の群れが健全に生存していく能力を維持するのに欠かせない役割すら演じる存在だと理解されるようになった。
 アメリカでもオオカミをよみがえらせる取り組みがすすんでいる。
日本では、もう無理なのでしょうか・・・。オオカミを見直すことも必要だと思ったことでした。
(2014年5月刊。2500円+税)

2014年8月 4日

サルなりに思い出す事など


著者  ロバート・M・サポルスキー 、 出版  みすず書房

 アフリカに単身わたって、ヒヒの群れに近づき長く研究を続けている学者の面白体験記です。といっても、著者は何度もアフリカ各地で怖い思いをし、死にそうになっています。それも、今となってはなつかしい笑い話として語ってくれるのです。
 著者の研究テーマは、ストレスの起因する疾病と患者の行動との関係を探ること。だから、ヒヒの群れを観察し、ストレス状況にあるヒヒを吹き矢で麻酔をかけて採血する。もちろん、仲間のヒヒに悟られないようにしなければいけない。危険と紙一重の命がけの研究だ。
 ヒヒは大規模で複雑な社会集団を形成する種。
群れのヒヒが食糧を確保するための狩りに費やす時間は、1日に4時間ほど。そして、ヒヒが誰かのエサになる心配はほとんどない。つまり、ヒヒは、通常、日中のおよそ6時間を、おたがいを精神的に煩わせることだけに使っている。まるで人間の社会と同じだ。
ヒヒの誰が誰と何をしたか。けんか、逢い引き、友だちづきあい、協力、恋愛...記録する。そして、ヒヒに吹き矢で麻酔をうち、ヒヒの身体の状態、つまり血圧、コレステロールのレベル、ケガの治癒率、ストレスホルモンの程度を調べる。
ヒヒの狩りは、無秩序に、勝手気ままにおこなわれている。最優位のオスは、いざというときに、群れをエサ場に導くことができない。
 捕食者に襲われたとき、最優位のオスは先陣切って戦い、子どものヒヒを守ろうとする。ただし、それは、その子どもが自分の子だと確信できるときに限る。それ以外の場合は、最優位のオスは、もっとも高く、もっとも安全な木の枝の上に陣取り。高見の見物を決め込んでいる。
 ええーっ、そ、そんな・・・。どうやって自分の子どもだと確信できるのでしょうか。人間だって我が子の判定は難しいというのに・・・。
オスのヒヒの地位は刻々と変化する。誰かが栄華を極めれば、他の誰かが権力を失い失脚する。ソロモンと名付けられたヒヒは3年間も最優位のオスの地位を守った。それは桁外れに長い。
メスのヒヒは母親の地位を受け継いでいく。姉が母親に次ぐ地位を獲得し、妹はその次の地位につき、やがて娘たちがそれぞれの地位で新たな家族をつくりあげる。
 近親相姦を防ぐため、ヒヒは、オスがもやもやした漂泊の思いに駆られて、群れの外へ出ていく。
 仲のいいオスのヒヒ同志が道で出会うと、挨拶がわりに、互いのペニスをひっぱりあう。
 高位のメスを両親に持つ幸運に恵まれた子どもは、低位のメスの子よりも、より早く、より健康的な発達をとげ、厳しい困難にあっても生きのびる可能性が高い。
 雄のヒヒにとって魅力的なメスの条件は、すでに何人かの子持ちで、その子どもたちが立派に育っていること。そのメスに繁殖力とよい母親になる能力があることを証明している。
雄のヒヒは、手強い敵に遭遇すると、他のヒヒに頼んで協力的な連合を形成することがある。
 ものごとが思い通りにならないとき、ヒヒたちがまず一番に考えるのは、どこかに憂さをはらせる相手はいないか、ということだ。戦いに敗れたオスたちは、周囲を探して大人になりかけの誰か、若者を追いかける。追いかけられた若者は苛立ち、大人のメスに突進し、メスは思春期の子どもをたたき、子どもは幼児を殴り倒す。ざっと15秒ですべてが終わる。
 これは、専門用語で「攻撃の置き換」と呼ばれる行動だ。ヒヒの攻撃行動のうちの信じられないほどの割合を、不機嫌な誰かによる、何の罪もない傍観者への八つ当たりが占めている。
 雄のヒヒに勤勉という言葉は似合わない。自分の欲望を抑えられないし、公共心もない。ついでに言えば、頼りがいもない。
 ヒヒの群れがついていくのは、年取ったメスのヒヒなのである。最優位のオスにつけ込む隙があるとき、頭の良いメスはすぐに気がつく。
60頭ほどのヒヒの群れの近くでずっと観察したのです。21歳のときから23年間です。すごいですよね。1頭1頭に名前をつけました。それも旧約聖書に出てくる名前です。
ひげもじゃの著者の顔写真が巻末にあります。ユダヤ人ながら無神論者を自認するスタンフォード大学の教授です。専門は生物学、神経科学、神経外科ということです。勇気があり、頭もすぐれている実践的な学者です。
この本を読んで、人間を知るためには、ヒヒも知る必要があると思ったことでした。
(2014年5月刊。3400円+税)

2014年8月 3日

かえる!かえる、かえる!


著者  松井 正文 、 出版  山と谿谷社

 世界のカエルが大集合した写真集です。同じカエルでも、こんなにいるのかと。びっくり仰天です。わが家には、梅雨時になると門柱に鎮座まします緑色の小型アマガエルがいます。なぜか、今年は今のところ姿を見せてくれません。
 庭のコンポストの水たまりには、これまた小さなツチガエルがたくさん棲みついています。すぐ下は、今は広々とした休耕田になっていますが、水田にしていたときには、ウシガエルのくぐもった低い鳴き声に悩まされていました。
 スズガエルは、緑と茶と黒の迷彩服を着た格好です。いわば戦闘服でしょうか・・・。
 緑色のニホンアマガエルもちゃんと紹介されています。わが家の門柱に座り込んでいるのと同じカエルです。
 トウキョウダルマガエルは、池の中にいて、両頬に大きな風船をふくらませています。
ワラストトビガエルは、どうやら空中をモモンガのように飛翔できるようです。カエルが空中を滑空するなんて、いささか不気味ではあります。
 カエルが笑っている写真があります。ナタージャックヒキガエルです。口の中に歯がないので、笑顔が本当に可愛らしいのです。
 中南米にいるヤノスバゼットガエルは、ブンブク茶ガマのような変な格好のカエルです。
オレンジヒキガエルは、前進が赤味の濃いオレンジ色をしています。
 ジョウメドクアマガエルは、白と濃茶のツートンカラーです。
 ヤドクガエルは、体内に毒をもつカエルです。
 アラハダヤドクガエルは、不気味に青く光る体色です。毒々しげです。
 トマトガエルは、イチゴのように真っ赤なトマト色の体色をしています。びっくりです。
 世の中のさまざまなカエルの写真を手軽にみれるなんて、なんて便利な世の中でしょうか。
(2014年6月刊。1600円+税)

2014年7月28日

アルゼンチンアリ


著者  田付 貞洋 、 出版  東京大学出版会

 アルゼンチンアリとは、聞き慣れないアリですが、日本と無関係のようでいて、いまや全世界にネットワークを拡大中の史上最強の侵略外来種であるアリなのです。当然、日本でも大いに繁殖しています。といっても、この本によると、九州ではまだ見つかっていないとのこと。本当でしょうか・・・。
 アルゼンチンアリは体長3ミリたらずの、チョコレート色をした小さい、ごく普通のアリ。強大なキバや毒針もない。それなのに、過去15年あまりのあいだに原産地南米の一隅から世界中に分布し拡大し、「史上最強の侵略的外来種」とまで言われる存在になった。
 アルゼンチンアリは、一つの巣のなかに多数の女王が存在する。大きな巣では、1000頭を優にこす女王がいる。女王は巣内で何度も交尾する。ワーカーのアリの寿命は半年ほど。女王の寿命も短く、10ヵ月程度。女王のいない巣であっても、そこに幼虫がいれば、それを女王に育て上げることができる。
 日本へのアルゼンチンアリの侵入によって、在来の地上徘徊性のアリ類が著しく排除されている。イチゴやイチジク、スイカなどの果実にアルゼンチンアリが来集する被害が生じている。
アルゼンチンアリの行列は、線状の1列のものではなく、2~3列以上の帯状である。大きな行列では幅が20センチをこえるときがある。
 アルゼンチンアリは巣分かれの繰り返しによって、多数の巣が協力しあうスーパーコロニーを形成し、なわばり争いをしない。雑食性で、なんでもエサとする。アルゼンチンアリの巣は、一生固定した巣ではなく、営巣場所の環境が悪くなると、すぐに巣を移動する。
 アルゼンチンアリが日本で発見されたのは1993年7月広島県廿日市市でのこと。
 2013年8月現在、1都11府県に広がっている。ゴミ箱に頻繁に来集するのでゴミとともに運搬される機会も非常に多い。
 アルゼンチンアリは地球規模で一つのスーパーコロニー、つまりメガコロニーを形成している。この大きさは人間社会以外に匹敵するものがない。
 アルゼンチンアリの分布拡大は、人間活動に強く依存していることから、人間は知らず識らずのうちに、自分たちの社会に匹敵するアルゼンチンアリの巨大社会をつくっていたことになる。
 これは、二匹のアリをプラスチックシャーレに入れて観察し、敵対行動をとるかどうかで判定して判明したのです。
 侵略的外来種対策の基本は根絶。アリの巣に持ち帰らせて根絶を図るベイト剤は有効のようです。とりあえずは「タダの虫」にして、そして根絶する。
アルゼンチンアリについての百科全書のような本(300頁)です。勉強になりました。
(2014年3月刊。4800円+税)

2014年7月22日

光る生物の話


著者  下村 脩 、 出版  朝日新聞出版

 身近な光る生物といえば、なんといってもホタルです。私の家から歩いて5分のところにホタルが飛びかう小川が流れています。コンクリート三面張りにした部分も、やがて土で覆われて、少しずつホタルが回復しています。
 本格的な梅雨入りすると、このあたりのホタルは季節は終わります。よそは8月に入ってもホタルが飛びかうようですから、私のところは早いのでしょう。
ホタルが光るのは、雌雄間の求愛行為。ホタルの点滅は、誤差20ミリ秒という正確さで同調している。ただし、雄ホタルの点滅発光は、同調しているが、雌ホタルの点滅発光は、同調発光しない。だから、雄ホタル発見できるのですよね。
雄ホタルの発酵時間は0.1秒で、発行間隔は1秒。ただし、種によって、多少異なる。
 生物が光を放つのは、化学反応である。ルシフェリンは、ルシフェラーゼの触媒作用により酸化されて、発光エネルギーを与える有機化合物である。発光量は反応したルシフェリン量に比例する。
 発光反応では、ルシフェリンが酸化され、大きなエネルギーをもつ励起状態の酸化物(発光体)を生じ、それが、通常のエネルギーの基底状態に変わるときに、余分のエネルギーを光子(フォトン)として放出する。
 著者は、光るウミホタルの研究のため500万匹のウミホタルをつかった。オワンクラゲの研究では、18年間に85万匹を、1匹1匹、手網で採取して使った。採取ノルマは、1日300匹だった。すごいですね。大変だったでしょうね・・・。
 オワンクラゲは緑に光るが、それから得た発光タンパク質イクオリンはカルシウムで青く光る。これは、オワンクラゲの発光細胞中には、イクオリンと緑色蛍光たんぱく質GFPが共存するためである。
 ノーベル賞を受賞した学者の涙ぐましい努力のあとがしのばれる本です。
(2014年4月刊。1300円+税)

2014年7月14日

観察の記録、60年


著者  矢島 稔 、 出版  平凡社

 すごい写真のオンパレードです。その息を呑む美しさに圧倒されます。
 アオスジハエトリというクモがいる。昆虫を食べて生きている。このクモは、前脚をいかにもありの触覚のように動かして、ときどきアブラムシの背中をトントンと叩く。すると、アブラムシが尻から甘い液を分泌する。クモは、それを飲むのではなく、アリになりきって、アブラムシの回りを動きまわっている。そこへクロオオアリがやって来る。すると、クモは体をひるがえしてアリに飛びかかってきた体をおさえこむ。牙でかみついて、そのままクモの餌食になってしまう。
 クモはアブラムシのいる所にアリが集まってくるのを知っていて、アリそっくりの動きをして待っているのだ。この瞬間を写真に撮っているのですから、すごいものです。よほど辛抱強くなければなりません。
 クヌギがコナラの樹液を求めて昆虫たちが寄り集まる。だいたい勝つのは、カブトムシのオスで、次がクワガタのオス。カミキリの大型種は、脚が長いせいか、力負けしてしまう。意外に強いのは、スズメバチ。
樹液にはお酒というより、薄いビール程度のアルコール分が入っている。木から樹液がしみ出してくるのは、篩管に穴を開けるものがいるからのこと。それは、ボクトウガの幼虫である。
 ニホンミツバチが天敵であるスズメバチを取り囲んで熱死させる情景をとった写真もあります。これも、すごいと思いました。
 ニホンミツバチは、集団で体温を上げ、48度でスズメバチを殺す。自らの体温を限界ぎりぎりまで上げて相手を熱死させる。これは、いわば捨て身の戦法だ。この習性は、セイヨウミツバチにはない。おそらく、ニホンミツバチが長い間、同じ地域にスズメバチとともに生活してるために生まれた護身術であり、それが世代をこえて伝えられているということだ。
 驚異の写真といえば、カンガルーの袋のなかの、生まれたばかりの「胎児」の写真はすごいものです。「胎児」は、目が見えなくても、生まれ落ちたあと母親の乳首を目ざして、ついにたどり着くのです。感動しました。
 写真をめくるだけでも楽しい大自然のすばらしさを語る本です。
(2014年4月刊。1800円+税)

2014年6月30日

先生、ワラジムシが取っ組みあいのケンカをしています


著者  小林 朋道 、 出版  築地書館

 鳥取環境大学のコバヤシ教授による先生シリーズも、なんと8冊目です。すごいですね、驚嘆するばかりです。
 この書評コーナーでずっと紹介してきました。生き物観察を通じて生物の神秘を知るのは面白くもあり、人間の存在を深く考えさせられます。
 私が今回の本を読んでもっとも印象に残ったのは、ツバメにコバヤシ教授が何回も襲いかかられたというくだりです。親ツバメたちにとって、子どもを襲う危険な存在だったのでした。
 ツバメは、つがいで共同して巣作りをし、子育てする。つがいの2個体が相次いで巣に戻ってきたとき、巣づくりや子どもたちへの餌やりを先に終えたほうは、そのまま飛び立つのではなく、あとの個体が作業を終えるまで待っている。そして、あとの個体が作業を終えると、そのまま飛び立っていくのではなく、待っている相手の横に止まる。そして、互いの労をねぎらうかのように顔を見合わせて、それから一緒に飛び立つ。
 ええーっ、これって、夫婦のコミュニケーションが大切にされているっていうことですよね・・・。驚きました。
 コバヤシ教授が、親鳥のいない留守に巣に接近し、ヒナたちと目線を交わし、写真をとったころ、親鳥が巣に戻ってきた。ピチーッ、ピーッ、ピーッという甲高い、強烈な声がした。ヒナたちは一斉に身をかがめ、巣の奥に身を隠す。急いで巣から離れたコバヤシ教授の頭上を飛びかい、その数が次第に増えてきた。攻撃するように飛びかうツバメたちにはかなり迫力があった。
さすがのコバヤシ教授もタジタジになってしまったのです・・・。
 写真もたくさんあり、学生たちのさまざまな反応も面白おかしく紹介されていて、今日もコバヤシ教授は元気いっぱいなのでした。いつ読んでも面白いシリーズです。
(2014年5月刊。1600円+税)

2014年6月 2日

ペンギン


著者  藤原 幸一 、 出版  講談社

 私は、ペンギンも大好きです。
 ええっ、ペンギンって鳥だったの、しかも大空を飛んでいたの・・・、と思ってしまいました。
 海の中をすいすいと気持ちよさそうに泳ぎ、陸の上で子育てするペンギンを、いつのまにか人間と同じ哺乳類だと勘違いしていたのでした。
 1億年前、ペンギンの祖先は大空を飛ぶ鳥だった。そして7000万年前に、ペンギンの祖先は空を飛ぶのをやめてしまった。空中より水中により長くいて、大好物の魚をとれるように進化したのだ。
 地球にすむペンギン19種のうち、南極を繁殖地とするペンギンは5種類だけ。赤道直下や、人間と共生して街に住む種もいる。森の中にすむペンギンもいる。ただし、北半球には人間が連れてきたもの以外には、いない。
夏はペンギンにとって衣替えの季節。羽毛が抜けかわる。その換羽のあいだは海に入れないので、ペンギンは絶食状態となって、体重も半減してしまう。ええーっ、そうなんですか。犬のようにはいかないのですね。
 ペンギンのオスとメスを見分けるのは、至難の業だ。混ざっていたら、判別不可能。つがいがそろって並んで初めて、オスとメスを判別できる。メスがオスよりひとまわり小さい。
 メスは主としてオキアミを食べ、オスは魚を多く食べる。
 メスは繁殖地から200キロ以上、オスは160キロもの旅をする。
 集団で一糸乱れぬ行動をするペンギンは、捕食者であるアザラシに襲われにくい。
アデリーペンギンにとって巣作りの材料となる小石は、マネー(貨幣)のような価値をもっている。
 小石のほしいメスは、独身オスに売春まがいの行為をして小石を手に入れる。連れあいのオスは、メスが小石を手に入れて帰ってくると大歓迎する。
 見ていて楽しくなるペンギンの写真がどっさりの写真集です。写真を撮る苦労は大変なものがあったことだと思います。ありがとうございました。
(2013年12月刊。2800円+税)

2014年5月12日

海への旅


著者  中村征夫 、 出版  クレヴィス

 海中の生物の、不思議で、素敵な生きざまを紹介する写真集です。
 海中に、なんとカラフルで、意表をつく形をした生き物がたくさんいることでしょうか・・・。
 ともかく圧倒されます。すごいです。
 世界各地の海に潜って、魚たちの見事な色と形と生きざまを紹介してくれる写真集です。
 これだけ生命の神秘を満載した写真集を2000円で手にして、何度でも見直すことができるなんて、本当に安いです。ありがたいことです。
 鮮やかな色と形のオンパレードです。朱色あり、黄色あり、紅白あり。量の形をしたもの、円塔形のもの。光るものも、さまざまです。いったい、何のために、どうやって光っているのか、不思議です。神秘にみちた世界が海中にもあるのですね・・・。
 天使のような可愛らしいクリオネ。プランクトンの一種です。その多くが他の生物に食べられてしまいます。しかし、それが、この生物界を底辺で支えているのです。
 イカは子を産むと、海底に沈み、他の生物に食べられてしまいます。
クマノミの顔のおかしさには、つい笑ってしまいます。ホヤの仲間は、はじめからマンガチックな笑い顔です。
 ウミムシは、まるで海中の宇宙船。どこの星から来たのでしょうか・・・。
 海中に潜り、海底を探しまわり、ときにはサメやトドと遭遇したり・・・。危険をものともせずに、海中写真をとり続ける勇気に対して、心から敬意を表します。

(2014年1月刊。2000円+税)

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