福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

声明

2014年5月27日

法律によらず顔認証装置を使用しないよう求める声明

当会の調査によれば、2013年(平成25年)12月に福岡県警察(以下「福岡県警」という。)に顔認証装置が導入され、すでに使用例も存在する。
顔認証装置とは、撮影された画像から人の顔の部分を抽出し、目・耳・鼻などの位置関係等を瞬時に数値化し(この数値化されたデータを「顔認証データ」と呼ぶ)、あらかじめデータベースに登録されている特定人物の顔認証データとの同一性を自動的に照合するものである。
福岡県警は、具体的な組織犯罪が生じた場合に、県警が自ら設置する防犯カメラの画像の他、民間のカメラの画像もその捜査のために収集する予定であると説明している。また、顔認証装置で検索・照合する対象となるデータベースに登録される人物については、組織犯罪を対象とすることからの限定があるという。
 しかし、組織犯罪対策運営規程には、顔認証装置の使用について、使用できる場合としての対象犯罪や、検索・照合の対象となるデータベースに登録される者の属性を限定する明文規定も存在しない。
 そもそも、警察は、捜査目的であっても、罪のない市民の行動に関する情報を無制限に収集したり、検索・照合の対象とする権限があるわけではない。
顔認証データは、おびただしい数の顔画像の中から瞬時に人物の同一性判定が可能であり、指紋よりもいっそう簡便に収集が可能な、高度な生体認証データである。したがって、本来、対象者の同意なしに取得することが許されないセンシティブ情報と捉えるべきである。
 対象者の同意なく使用する以上、あらかじめどのような条件の下に収集、利用、保存が許されるのか、またどのようにして目的外利用を防ぐのかを厳格に定める法律なくして顔認証データを収集・利用・保存するべきではない。
 画像を収集する場面で、以下の問題がある。
 ①福岡県警が自ら設置している中洲・博多地区、天神地区など県内132台の監視カメラで収集される画像については、当会が再三にわたり意見を表明しているところであるが、警察が犯罪多発地帯でないのに直接公共の場所に監視カメラを設置して罪のない市民を無差別録画することは本来許されない。
②コンビニエンスストアなどから限定なく任意捜査で画像を収集すると、撮影される画像の対象は市街地中心部から郊外に至るまでの極めて広範に及ぶ。
 また、顔認証装置を使用し、検索・照合する場面で、以下の問題がある。
③検索・照合する対象となるデータベースの登録者について、限定する内部規定すら存在しないというのでは、目的外利用がなされないための歯止めは期待できない。むしろ、8000万人を超える運転免許証データがデータベースとして用いられる可能性もある。
 ④目的外利用がなされないための独自の物理的、技術的対策、内部及び第三者によるチェック体制も存在しない。
 以上によれば、ひとたびある市民が福岡県警の対象とされた場合には、その行動が丸裸となり、そのプライバシー権を侵害するばかりか、街頭での署名活動、集会やデモ行進など、民主主義社会の基礎となる市民の表現の自由を萎縮させる危険が大きい。
どのような条件の下に収集、利用、保存が許されるのか、またどのようにして目的外利用を防ぐのかをまずもって厳格に定めるべきである。さらに、対象者の同意がなくとも顔認証装置の使用を認める法律が存在しない。このような現状においては、福岡県警は顔認証データを収集、利用、保存すべきではなく、顔認証装置を使用すべきではない。
          
                   2014年(平成26年)年5月27日
                       福岡県弁護士会会長 三 浦 邦 俊

2014年5月 2日

憲法記念日会長声明


1 我が国憲法は、前文に平和的生存権を定め、第9条に武力による威嚇・武力の行使の放棄、戦力の不保持及び交戦権の否認を規定し、恒久平和主義を宣明している。
また、憲法を最高法規として公務員に憲法尊重擁護義務を課し、政府を憲法の制約の下におく立憲主義をとることにより、個人の尊重と人権保障を図っている。
  これら恒久平和主義と立憲主義は、憲法の基本原理である。
2 これまで政府は、一貫して、憲法の下における自衛権の行使は、我が国に対する急迫不正の侵害(武力行使)があり、これを排除するために他の手段がない場合に、必要最小限度の範囲のものに限って許容されるものであって、直接武力攻撃を受けていない場合に問題になる集団的自衛権の行使は、その範囲を超えるものとして憲法上許されないとの見解をとってきた。
 ところが、政府は、閣議決定で従来の政府見解を変更(解釈改憲)し、集団的自衛権の行使を容認しようとしている。
3 このような憲法の基本原理に関わる事項を閣議決定で変更することは、政府を憲法の制約の下におく立憲主義に反し、近代憲法の存在意義を根本から否定するものである。
4 憲法の恒久平和主義の下では、安全保障は、軍事力の行使によるのではなく、平和的・国際的な施策等により実現さるべきであり、この原理こそが、戦争を排した我が国憲法の先駆的意義である。
  集団的自衛権の行使容認は、恒久平和主義にも抵触するものである。
5 福岡県弁護士会は、政府が閣議決定でその憲法解釈を変更することによって集団的自衛権の行使を容認することに対し、立憲主義及び恒久平和主義に反するものとして、強く反対する。
  憲法記念日にあたり、憲法の立憲主義と恒久平和主義の意義を確認する観点から、特に、以上のとおり声明を発表する。

                       2014年(平成26年)5月2日
                            福岡県弁護士会
                               会長 三浦 邦俊

2014年3月27日

派遣労働を永続化し,貧困と格差を拡大する労働者派遣法改正に反対する声明

 2014年(平成26年)3月11日,政府は労働者派遣法改正案の閣議決定を行った。政府は今国会で法案を通過させ,2015年(平成27年)4月からの施行を目指しているとされている。
 政府の改正案は,2014年(平成26年)1月29日にとりまとめられた厚生労働省労働政策審議会の「労働者派遣制度の改正について(以下,単に「建議」という。)」に基づいて,①政令指定26業務(専門性を理由に派遣期間の制限を受けない業務)の区分を廃止し,②派遣元で無期雇用されている派遣労働者は派遣期間の制限を撤廃し,③派遣元で有期雇用されている派遣労働者は派遣労働者個人単位で上限期間(3年)を設定するが,④派遣先で労働組合等から意見を聴取すれば派遣労働者を入れ替えることで派遣労働を永続的に利用できる,というものである。すなわち,上記建議は,労働者派遣法の根本原則である常用代替防止(派遣労働者をもって直接雇用労働者に代替させてはならない)の理念を放棄し,あらゆる業務・業種において使用者が永続的に派遣労働者を利用できるようにするものである。
 そもそも,わが国の戦後労働法制の原則は,職業安定法が労働者供給事業の禁止を明定し,労働基準法が中間搾取を禁止していることからも明らかなとおり,使用者は労働者を直接雇用すべしとすることにある。これは,間接雇用が労働者の立場を不安定なものとさせ,中間搾取が低賃金等の無権利状態を蔓延させた痛苦の経験に基づいている。そのため,1985年(昭和60年)に制定された労働者派遣法は,これまで政令指定26業務以外の業務については,派遣可能な上限期間を設け,上限期間に達した場合はそれ以降の派遣労働の利用を禁止する等して,常用代替防止の理念を堅持し,その後,不十分ながらも派遣労働者保護の規定も追加されてきた。
 しかしながら,上記建議は,全ての業務・業種において,常用代替防止の理念を放棄し,派遣労働者に対し何らの保護規定も設けないまま,大量の不安定で低賃金の労働者を市場に出現させることとなる点で到底容認できないものである。
 1999年(平成11年)に労働者派遣法が自由化されて以降,貧困と格差が拡大してきた経緯に鑑みれば,本改正が今後のわが国の労働市場に押し及ぼす災禍は明らかであるというほかない。
 当会は,常用代替防止の理念を放棄し,派遣労働を永続化し,格差と貧困を拡大する上記建議に基づく労働者派遣法の改正に強く反対するものである。
                                                 
                                    以上

                    2014年(平成26年)年3月27日
                    福岡県弁護士会会長 橋 本 千 尋

2013年12月12日

死刑執行に関する会長声明


1 本日、東京拘置所及び大阪拘置所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
  2013年(平成25年)9月12日の1名の死刑執行後、わずか3ヶ月での死刑執行であり、本年においては2月21日、4月26日、9月12日に次ぎ4回、8人の死刑執行となる。
2 いわゆる免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件という4つの死刑確定事件における再審無罪、いわゆる足利事件、布川事件における無期懲役刑確定事件の再審無罪判決が示すとおり、死刑判決を含む重大事件において誤判の可能性が存在することは客観的な事実である。
のみならず、日本弁護士連合会の2011年(平成23年)10月7日のシンポジウムの宣言でも述べたとおり、死刑はかけがえのない生命を奪う非人道的な刑罰であることに加え、更生と社会復帰の観点から見たとき、罪を犯したと認定された人が更生し社会復帰する可能性を完全に奪うという根本的問題を内包している。さらに、我が国では、死刑に直面している者に対し、被疑者・被告人段階あるいは再審請求の段階に至るまで十分な弁護権、防御権が保障されておらず、執行の段階でも死刑確定者の人権保障の面で多くの問題を抱えている。そして、死刑は人の生命を確実に奪い生命に対する権利を侵害するもので、いかなる執行方法であっても、その残虐性は否定できない。であるからこそ、死刑の廃止は国際的な揺るぎない潮流となっているのである。
3 今回死刑執行された死刑確定者のうち大阪拘置所において執行された死刑確定者は一審から上告審まで殺意を争っていたもので、2012年(平成24年)6月の死刑確定からわずか1年半での死刑執行である。また東京拘置所において執行された死刑確定者も幼少期の虐待が事件の背景事情として存在することから死刑という量刑に争いがあり、再審請求を繰り返していたものである。先に述べた宣言で指摘した問題点が如実に表れている事案であって、正に死刑の是非が問われるべきものである。
4 日本弁護士連合会は、2013年(平成25年)2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を直ちに講じることを求める要望書」を提出して、死刑制度に関する当面の検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査のうえ、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、死刑の執行を停止することを求めた。2013年(平成25年)2月21日の死刑執行はこの直後に行われたものであった。
今回も、日本弁護士連合会が、死刑制度に関する政府の世論調査の結果について、政府の評価は死刑支持者の割合を過大に表示しており、死刑制度の関する国民の意識について誤解を与える物であるとする「死刑制度に関する政府の世論調査に対する意見書」を2013年(平成25年)12月4日に安倍晋三内閣総理大臣に同月11日に谷垣禎一法務大事に提出した直後に死刑の執行が行われている。
日弁連及び当会は、死刑執行に強く抗議するとともに、一切の死刑執行を停止するよう求めていたのであり、この要請を再度無視した今回の執行は到底容認できない。
5 当会としては改めて政府に対し強く抗議の意思を表明するとともに、今後、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ、それに基づいた施策が実施されるまで、一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。

                    2013年(平成25年)12月12日
                    福岡県弁護士会会長 橋 本 千 尋

特定秘密保護法成立に抗議し同法の廃止を求める会長声明


2013年(平成25年)12月6日、特定秘密保護法が衆議院、参議院ともに強行採決という形で成立した。
 同法に関し、当会は、従前から(本年10月11日付、同12月3日付の会長声明)、特定秘密の対象範囲が広範かつ不明確であること、指定権者による恣意的運用のおそれがあること、国政調査権やマスコミの取材活動を制限し萎縮させるものであること、広く一般国民まで処罰される可能性があること等々のこの法律が内包する多くの問題点から、国民の知る権利を侵害し、国民主権原理に反するものであるとして、その成立に反対してきた。
同法の成立過程は、政府が唐突に法案提出を表明したことに始まり、募集期間僅か2週間のパブリックコメント、形ばかりの公聴会、国民に不透明な与野党間での修正協議、臨時国会の限られた会期での不十分な国会審議と不整合な政府答弁など、およそ適正な手続きや十分な説明と意見交換という民主主義的プロセスを踏まないものであった。これにより、今後の我が国の国民主権や民主主義などの憲法秩序の維持に関し重大なる危機感を持たざるを得ない。
 当会としては、同法が存続する限り、その廃止を求め、その実現に向けての活動を継続していくとともに、その過程においても国民生活全般の萎縮をもたらさないよう同法の濫用を厳しく監視し、同法による人権侵害が甚だしい場面である同法違反の刑事事件について基本的人権の擁護と社会正義の実現という弁護士の使命にかけて全力で取り組むことを声明するものである。

  2013年(平成25年)12月12日
                        福岡県弁護士会
                          会長  橋 本 千 尋

2013年12月 3日

特定秘密保護法案に関する会長声明

2013年(平成25年)11月26日、衆議院で特定秘密保護法案の採決が強行され、現在参議院で審議中である。
 同法案は、特定秘密の対象範囲が広範かつ不明確であること、指定権者による恣意的運用を防止する制度がないことなどから、国民の知る権利を侵害し、国民主権原理に反しており、廃案にされるべきことは、当会においても、本年10月11日付の会長声明にて意見表明を行ってきたところである。
 しかし、衆議院での4党による修正を経てもその危険性は何ら減じられておらず、かえって、国会審議を通じて、以下のような問題点がさらに明らかとなった。

1 立法事実の不存在
  森まさこ担当大臣によると、過去15年間における公務員による主要な情報漏えい事件は5件で、本法案の特定秘密に該当するものは中国潜水艦の動向にかかる事件1件のみである(2013年(平成25年)11月14日衆議院国家安全保障に関する特別委員会答弁)。
  しかも、この事件は不起訴処分となっており、重罰を科す法案の根拠とはなり得ない。
2 取材の自由の侵害のおそれ
 公務員から記者へ秘密の提供がなされ、記者の行為は違法ではなく公務員の行為のみが違法と評価されるケースで、提供を受けた記者が捜索を受けることがあり得るかという問題点について、森担当大臣は、「ない。」と答弁したが、谷垣禎一法務大臣は、「一概に言えない。博多駅事件の最高裁判例の趣旨を尊重する。」と答弁し(前掲衆議院特別委員会答弁)、被疑者としての立場に立たない場合においても記者が捜索を受ける可能性を認めており、取材の自由が侵害されるおそれがある。
3 刑事裁判との関係
  秘密保護法違反の刑事裁判において、裁判所が証拠開示を命じなかった場合、被告人、弁護人には秘密とされた情報の内容すら知らされず(2013年(平成25年)11月11日衆議院特別委員会答弁)、被告人は自己の行為の何が罪に問われているかも分からないまま有罪とされるおそれがある。
 そもそも、国民主権の下では、国の保有する情報は主権者である国民に公開されるべきことが大原則である。それにもかかわらず、本特定秘密保護法案は、情報を秘密にし、国民の目から隠すことのみを重視するあまり、国民主権を形骸化しかねない内容となっている。多数の国民が危惧感を抱き、かかる法案に反対しているのも当然である。
 当会は、特定秘密保護法案について、良識の府である参議院において十分な審議を尽くし、当会の示す懸念が払拭されないのであれば、今国会における採決を強行せず、廃案にするよう強く求めるものである。


      2013年(平成25年)12月3日
                   福岡県弁護士会
                      会長  橋 本 千 尋

2013年11月26日

衆議院選挙無効訴訟に関する最高裁判決についての会長声明

2013年(平成25年)11月20日、最高裁判所は、昨年12月16日に施行された衆議院議員総選挙についての選挙無効訴訟において、「本件選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあった」としながら、「憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえ」ないとして、「本件区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできない」とする判決を言い渡した。 この最高裁判決の原審は、全国14の高等裁判所と支部に提訴されていた16件の訴訟である。16件のうち14件の高裁判決が違憲とし、うち2件は選挙無効をも言い渡した。本年3月18日の福岡高裁判決は、議員定数のいわゆる「0増5減」について、「十分なものといえないことは明らかである」としていた。 これに先立ち、最高裁判所は、2011年(平成23年)3月23日、2009年(平成21年)の衆議院総選挙について、「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていた」、「投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要がある」と判決していた。   この2011年(平成23年)の判決から2012年(平成24年)の衆議院総選挙までには1年9か月が経過しており、国会が是正措置を講ずるための時間は十分にあった。ところが、国会は、議員定数を「0増5減」し、その適用は次回の総選挙からとすることを定めたにとどまった。人口比例部分とは別に各都道府県に議員定数1を配分する1人別枠方式については、根拠規定こそ廃止されたものの、同方式を前提とする定数配分は抜本的に見直されることもなく、 2012年(平成24年)の総選挙時はもとより、現在もまだ維持されている。 そのため、2012年(平成24年)総選挙は2009年(平成21年)の総選挙と同様の選挙区割りで施行され、投票価値の最大格差が拡大し、「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態」がより深刻化していた。 このような国会の怠慢ともいうべき事実経過を踏まえれば、最高裁判所は今回の判決において、2011年(平成23年)3月23日の判決よりも踏み込んだ違憲判断を示すべきであったにもかかわらず、立法裁量を過度に尊重した不十分な判断にとどまった。 そもそも、議員1人あたりの選挙人の人数が均等であるべきという投票価値の平等は、法の下の平等(憲法14条1項)、選挙人資格の平等(憲法44条)を定める憲法の要請である。このような投票価値の平等が侵害されたときには、「国権の最高機関」(憲法41条)である国会は国民の意思を的確に反映することができず、議会制民主主義ひいては国民主権がゆがめられてしまう。   これを正すことは、唯一、違憲立法審査権(憲法81条)を有する裁判所にしかなし得ない。今回の最高裁判決は、このような裁判所の職責を果たしたものとは認められない。   今回の最高裁判決によって、投票価値の平等を実現すべき国会の取組の停滞が許されるはずもない。 当会は、裁判所に対して積極的に憲法保障の機関としての職責を果たすことを求めるとともに、国会に対し速やかに衆議院議員総選挙における投票価値の平等を実現するための抜本的措置をとることを改めて強く求める。

2013年(平成25年)11月26日
福岡県弁護士会
     会長  橋 本 千 尋

2013年11月22日

改めて生活保護法改正法案の廃案を求める会長声明

2013年(平成25年)11月13日、「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下「新改正案」という。)が参議院本会議で可決された。

当会は、2013年(平成25年)6月7日、5月17日に閣議決定された「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下「旧改正案」という。)について、「生活保護法改正法案の廃案を求める会長声明」を公表し、厳格な要式行為の追及による生活保護申請の事実上の拒否(いわゆる「水際作戦」)を合法化し、単なる優先関係に過ぎない扶養義務の履行を迫ることによる保護申請への萎縮化を招来するという看過しがたい重大な問題があることから、その廃案を求め、旧改正案については、批判の高まりの中2013年(平成25年)6月26日の第183回通常国会の閉会に伴い廃案となったが、今国会において、再度審議されているところである。

審議の過程において政府は、申請の際に申請書及び添付書類の提出を求める改正法24条については、(1)従前の運用を変更するものではなく、申請書及び添付書類の提出は従来どおり申請の要件ではない、(2)福祉事務所等が申請書を交付しない場合もただし書の「特別の事情」に該当する、(3)給与明細等の添付書類は可能な範囲で提出すればよく、紛失等で添付できない場合もただし書の「特別の事情」に該当する旨答弁した。また、扶養義務者に対する通知義務の創設や調査権限の拡充を定めた改正法24条8項、28条及び29条については、明らかに扶養が可能な極めて限定的な場合に限る趣旨である旨答弁し、以上両趣旨を厚生労働省令等に明記し、保護行政の現場に周知する旨繰り返し答弁してきた。

しかし、改正法の法文が一人歩きし、違法な「水際作戦」がこれまで以上に、助長、誘発される危険性が払拭されたとは到底言い難い。当会では、2006年(平成18年)、北九州市で孤独死していた56歳の独居男性が、生前二度にわたって申請意思を明確に表示していたにもかかわらず、福祉事務所から、子どもに援助してもらうようにと言われて申請を違法に拒まれていた事件も起きている。このような改正法の施行によって、生活保護の利用が抑制され、餓死・孤立死・自殺等の悲劇が増加する事態が強く懸念される。

当会は、憲法上保障された生存権が現実に市民に保障される社会となることをめざし、平成21年度から生存権の擁護と支援のための緊急対策本部を設け、多数の会員が登録する「生活保護支援システム」によって生活保護申請同行など生活保護法の適法な運用を求める活動を行ってきた。当会の立場からは、保護申請権ひいては生存権を侵害するおそれの大きい改正法案は到底容認することができない。

よって、当会は、改正法案について即時の廃案を改めて求めるものである。

2013年(平成25年)11月22日

福岡県弁護士会
会長 橋本 千尋

福岡拘置所小倉拘置支所の建て替えに関する要望書

平成25年11月21日

内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
法務大臣 谷垣 禎一 殿
法務省矯正局長 西田  博 殿
法務省福岡矯正管区長 横尾 邦彦 殿

福岡県弁護士会
会 長 橋 本 千 尋
福岡県弁護士会北九州部会
部会長 荒 牧 啓 一

福岡拘置所小倉拘置支所の建て替えに関する要望書

第1 はじめに

1 現在の福岡拘置所小倉拘置支所(以下,「小倉拘置支所」という。)は,監獄法(施行日,明治41年10月1日)に基づいて昭和35年に建築された施設であり,既に築後50年以上を経過しているため,建物や施設の老朽化は著しく,未設拘禁者の無罪推定の原則や基本的人権を保障するにふさわしい施設とは言えず,未決拘禁者の防御権や弁護人の弁護権にも支障をきたすという事態が生じている。

2 小倉拘置支所建て替え後の新拘置所をどのような施設にするかは,未決拘禁者の基本的人権や防御権の保障,弁護人の弁護権の保障と密接に関連する。

すなわち,未決拘禁者は,無罪推定を受ける者であり,刑事手続のために身体拘束される他は,一般市民と同様の立場にあることから,未決拘禁者には,拘置所内においても,できる限り一般市民と同様の生活が保障されなければならない。そのためには,新拘置所においては,未決拘禁者の人格を尊重した待遇を行い,その心情の安定を図る必要があり,十分な人的・物的設備を整える必要がある。

また,新拘置所においては,未決拘禁者の防御権や弁護人の弁護権が侵害されることがあってはならず,未決拘禁者の防御権や弁護人の弁護権に十分配慮された施設にする必要がある。

3 そして,新拘置所は,憲法及び刑事訴訟法の精神にふさわしい,現在の人権基準を十分に満たすような施設とする必要があることは言うまでもないが,新拘置所は少なくとも半世紀は利用されることから,単に現在の人権水準を満たす施設とするだけでは不十分であり,50年先の人権水準をも見据えた最先端の施設を築く必要がある。

そのためには,現在軽視されている未決拘禁者の基本的人権の保障に配慮することは当然であるが,それにとどまらず,面会に来る一般市民の利便性や,新拘置所の周辺環境との調和,環境問題への配慮等も盛り込んだ施設とすることが必要である。

4 そこで,当会は,新拘置所を建築するにあたって,無罪の推定を受ける未決拘禁者の基本的人権や防御権,弁護人の弁護権に最大限配慮した施設にするともに,一般市民の利便性,地域との調和,環境問題等にも十分配慮された新拘置所を建築することを強く要望する次第であり,そのために必要と考える具体的な要望事項を以下において述べる。

第2 要望事項

1 未決拘禁者の基本的人権保障・生活環境の改善について

(1)未決拘禁者と既決囚の居住スペースの区別

未決拘禁者と既決囚の居住スペースを別の階にする等,未決と既決を明確に区別する措置を講じることを要望する。

未決拘禁者には無罪推定の原則が及ぶことから,既に有罪判決を受けた既決囚とは明確に区別する必要があるため,未決拘禁者と既決囚の居住スペースを別の階にする等,居住スペースを明確に区別する措置を講じることを求める。

(1)未決拘禁者の居住スペース内の環境について

未決拘禁者の居住スペース内の日当たりと風通しを十分確保するよう配慮し,また,居住スペース内から自然環境等,外の景色が見えるように配慮することを要望する。

未決拘禁者の基本的人権を保障し,その心情の安定を図るためには,居住スペース内の日当たりや風通し等の環境に十分に配慮する必要がある。未決拘禁者は,刑事裁判を控えながら,一日の大半の時間を狭い居住スペース内で過ごすのであり,その環境が未決拘禁者の心情に与える影響は大きい。窓の外に,木々草花等の自然や周囲の風景を見ることができるだけでも,未決拘禁者の社会からの隔絶感・疎外感を和らげることができ,その心情の安定をもたらすことができるのである。

(3)未決拘禁者の居住スペースの広さ等について

決拘禁者は原則として独居房に収容すべきであり,そのために独居房を増設することを要望する。

現在の未決拘禁者の居住スペースは狭すぎるため,現状よりも広くすることを要望する。

未決拘禁者は無罪推定の原則の適用を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の生活ができるように配慮されなければならない。未決拘禁者が,他者と同室で生活をする場合には,著しいストレスを強いることとなるため,原則として独居房に収容すべきであり,そのためには,独居房の増設が必要である。

また,現在の居住スペースは,未決拘禁者の生活環境として十分な広さが確保されているとは言えないため,無罪推定を受ける未決拘禁者の地位にふさわしい一定の広さを確保することを求める。

(4)未決拘禁者の居住スペース内の設備(冷暖房設備・トイレ)について

冷暖房設備を設置し,個々の居住スペース内において温度管理  ができるようにすることを要望する。

居住スペース内のトイレについて,看守から見えない位置に個室のトイレを設置するとともに,洋式(ウォシュレット付)にすることを要望する。

未決拘禁者は無罪推定を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の生活ができるように配慮すべきであるから,冷暖房設備を設置し,個々の居住スペース内において温度管理ができるようにすべきである。

また,現在の居住スペース内のトイレは,看守から見える位置に壁等で仕切られることなく設置されているため,未決拘禁者のプライバシーや羞恥心が著しく侵害されており,居住スペース内に個室のトイレを設置することを要望する。個室であっても,壁上部を透明にするなどして,看守から上半身が確認できるようにすれば,未決拘禁者の監視においても特に問題が生じることはないはずである

さらに,衛生上の観点からは,トイレは,和式でなく洋式(ウォシュレット付)の方が望ましい。

(5)未決拘禁者の心情の安定を図るための各種施設について

未決拘禁者が一定の範囲内を自由に行動して,他者とのコミュニケーションを図ることができるよう,テレビ等の設備を設けた談話室を設置することを要望する。

未決拘禁者が自由に読書ができるための図書館を設置するとともに,未決拘禁者が他者と一緒に食事するための食堂を設置することを要望する。

未決拘禁者は無罪推定を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の生活ができるように配慮すべきである。

我々一般市民は,昼夜とも一人で生活をするのではなく,昼間は外で活動して他者とのコミュニケーションを図り,夜には帰宅して就寝するという生活を送っているところ,未決拘禁者は,ほぼ終日居住スペース内に収容され,誰ともコミュニケーションをとれない状態にあるというのは,未決拘禁者に大きな精神的ストレスを与える。

そこで,新拘置所においては,未決拘禁者が他者とのコミュニケーションを図ることを可能にするためのテレビ等がある談話室を設置することを求める。また,未決拘禁者が本を自由に探せる図書館を設置して,一般市民と同様の権利を保障する必要がある。

さらに,現在,未決拘禁者は狭い居室内で食事をとらざるを得ない状況であるが,広い場所で他者と会話しながら食事をとる方が未決拘禁者の心情の安定に資することから,食堂を設置し,そこで食事をとることを可能にすべきである。

(6)運動スペースについて

現在の運動スペースは狭すぎるため,現状よりも広くすることを要望する。雨天時でも運動を可能とすべく,屋上運動スペースには手動の開閉式の屋根を設置するとともに,複数の未決拘禁者が同時に運動できる十分な広さを持った体育館のような屋内運動スペースを設置することを要望する。

未決拘禁者は無罪推定を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の生活ができるように配慮すべきである。

現在の小倉拘置支所の運動スペースはあまりに狭く,可能な運動も限られている状況であり,未決拘禁者にとって十分な運動環境が整っているとは言えない。

また,現在は屋上に設置された運動スペースしかないため,雨天時には運動することができず,雨天が続けば,事実上運動が不可能となるため,未決拘禁者の運動する機会が十分に確保されていない。

そこで,現在の運動スペースをより広くするとともに,運動スペースに手動で開閉可能な屋根を設置することで,多少の風雨であっても運動をすることが可能にすべきである。

また,雨天でも運動をすることが可能な十分な広さのある体育館のような多目的な屋内スペースを設置するよう求める。そうすることで雨天でも運動を行うことが可能となるとともに,レクリエーション等を行うことにより,未決拘禁者の心情の安定を図ることが可能となる。

(7)浴室について

現在の共同浴槽では,複数の者が同じ浴槽に入ることとなり不衛生なため,浴槽に自動濾過装置を設けることを要望する。

個別の浴室・浴槽を設けるとともに,シャワー室を現状より増設し,未決拘禁者の入浴の機会を増やすことを要望する。

未決拘禁者は無罪推定を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の生活ができるように配慮すべきである。

現在の共同浴槽は,複数の者が同じ浴槽に入ることとなり,入浴の順番が後になるにつれ,浴槽内のお湯が汚れ,未決拘禁者は不衛生な入浴環境を強いられている。そのため,共同浴室については,浴槽に自動濾過装置を設け,浴槽内のお湯を常に衛生的に保つ必要がある。

また,個別浴室・浴槽を設け,未決拘禁者は個別の浴室・浴槽を原則とするとともに,シャワー室を現状よりも増設することにより,未決拘禁者の入浴の機会を増やす必要がある。

(8)施設内の設備・備品について

拘置所内にエレベーターを設置することを要望する。

高齢の未決拘禁者や身体に障害のある未決拘禁者の拘置所内における移動にも十分に配慮する必要があり,そのためには拘置所内にエレベーターを設置することが必要不可欠である。

(9)拘置所内の医療設備の充実について

診察室,検査設備,手術室等の拘置所における内部医療設備を整えるとともに,常勤の医師又は非常勤の派遣医師を配置することによって,内部診療の充実を図ることを要望する。

未決拘禁者は無罪推定を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の医療サービスを受けることができるように配慮すべきである。

未決拘禁者が拘置所に収容されているために,必要な治療を受けることができず,病状の悪化を招く等の事態は絶対にあってはならない。

健康の保持は,未決拘禁者の基本的人権の保障において最も基本となる事柄であるため,早急に,拘置所内の医療設備の充実及び医師等の医療スタッフの十分な人員配置を行う必要がある。

2 弁護人の弁護権の保障について
(1)接見室の数について

接見室を現状の3室から5室に増設することを要望する。

弁護人4~5名程度が着席できる広さの接見室を2室設置することを要望する。

現在,弁護士数の増加に伴い,接見室が全て使用中となっていることも少なくなく,待ち時間が長時間に及ぶことがある。

弁護士は時間に制約のある中で接見に赴いており,待ち時間が長くなると,その後の予定のために接見時間を短縮せざるを得なかったり,接見自体を断念せざるを得ないという事態も生じている。

このような状況は,弁護人の弁護権の保障に著しい支障をきたすものであり,早急に改善する必要がある。

また,今後も弁護士数の増加が見込まれることからすると,現状の接見室数では,数十年後には接見室不足の問題はさらに深刻化し,円滑かつ迅速な接見を実現することが困難となることが予想される。

そのため,弁護人接見室の数を,現状の3室から5室へと増設することを要望する。

また,弁護人が3名以上の事件の場合には,現在の接見室では同時に接見することが困難であるため,4~5名程度が着席できる広さの接見室を2室設置することを要望する。

(2)接見室の遮音性確保及びアクリル板の通音性改善のための措置

接見室における会話の内容が他に漏れることのないよう遮蔽のための措置を講じることを要望する。

現在の接見室では,被疑者・被告人と弁護人との間にアクリル板の壁が設置されているが,通音性に問題があるため,通音性に配慮した措置を講じることを要望する。

被疑者・被告人と弁護人との間のアクリル板の壁がない接見室を1室設置することを要望する。

弁護人の秘密交通権が十分に保障されるためには,接見内容が外部に漏れることのない接見環境は必要不可欠であるところ,現在の接見室は遮音構造となっていないため,接見室内での会話内容が外部に漏れ,外部から容易に聞き取ることができる状況になっている。そのため,接見室内の会話が外部に漏れることのないように遮音のための措置を講じる必要がある。

また,現在の接見室に設置されているアクリル板の壁は通音性に問題があるため,被疑者・被告人や弁護人の会話内容が相互に聞き取りにくいという問題が生じている。そこで,アクリル板に穴を開ける方法ではなく,通音性のよい無数の細かい穴をあけた金属板をアクリル板の下に取り付ける等,通音性に配慮した措置を講じる必要がある。

さらに,現在の接見室には,全ての接見室にアクリル板の壁が設置されているため,被疑者・被告人に直接裁判資料を示して打ち合わせをすることが非常に難しい状況にある。そこで,未決拘禁者の防御権及び弁護人の弁護権の保障の観点から,アクリル板の壁のない接見室を設置することを要望する。

(3)パソコン等使用のための電源設備の設置

接見室内にパソコン等使用のための電源設備を設けることを要望する。

現在の接見室内には,パソコン等使用のための電源設備はない。

被疑者・被告人と接見する際にパソコン等のIT機器を使用する必要性もあることから,接見室内にパソコン等使用のための電源設備を設ける必要がある。

(4)拘置所外での連絡設備について

弁護人から未決拘禁者に対して拘置所外からの連絡を可能とするために,電話,テレビ電話,ファックス,メール等の通信設備の設置を要望する。

現在,未決拘禁者との連絡方法については,弁護人が直接拘置所に出向く他は,手紙・電報に頼る以外に方法がない。しかし,未決拘禁者の防御権や弁護人の弁護権の保障という見地からは,弁護人と未決拘禁者との間の密なる連絡・打合せが非常に重要である。電話,テレビ電話,ファックス,メール等の簡易迅速な連絡方法があることから,新拘置所ではこれらの通信手段を可能とするための通信設備を設置すべきである。

(5)弁護人待合室・接見室内の設備について

弁護人待合室及び接見室に冷暖房設備を設置することを要望する。

また,接見室の机を,裁判資料等を広げるのに適した奥行きのあるものにするとともに,接見室内の椅子を長時間座っても疲れないものにすることを要望する。

弁護人待合室にトイレを設置することを要望する。

現在の弁護人待合室及び接見室には,冷暖房設備がないため,冷暖房設備を整えて,弁護人接見の際の環境を改善する必要がある。

また,弁護人接見室の机には奥行きがなく,裁判資料を広げることもままならないため,十分な奥行きのある机を設置する必要がある。

さらに,現在の接見室内の椅子は簡素なパイプ椅子であり,かつ,接見室の机との高さのバランスが悪いため,腰や背中に負担がかかり,長時間の接見に支障が生じる状況となっている。そこで,接見が長時間となった場合にも疲れにくい椅子を設置する必要がある。

現在の弁護人待合室にはトイレがなく,一般面会者用のトイレまで行くしかないため,極めて不便であり,弁護人待合室にトイレを設置することを要望する。

3 拘置所に面会に来る一般市民の利便性の向上について
(1)一般面会室の広さについて

現在の一般面会室は狭いため,現状よりも広くすることを要望する。

また,4~5名程度の面会者が着席できる広さの面会室を設置することを要望する。

現在の一般面会室は十分な広さが確保されていないため,面会者は,非常に窮屈な状態での面会を強いられており,新拘置所では,一般面会室を現状よりも広くする必要がある。

また,家族等の複数の者が同時に面会する場合に備えて4~5名程度の面会者が着席できる広さの面会室を1室設置する必要がある。

(2)面会室のアクリル板の通音性について

現在の一般面会室では,被疑者・被告人と面会者との間にアクリル板の壁が設置されているが,通音性に問題があるため,通音性に配慮した措置を講じることを要望する。

現在の一般面会室に設置されているアクリル板の壁は,通音性に問題があり,未決拘禁者と面会者との会話内容が相互に聞き取りにくいという問題が生じている。

そこで,アクリル板に穴を開ける方法ではなく,より音を伝えやすいよう無数の細かい穴をあけた金属板をアクリル板の下に取り付ける等,通音性に配慮した措置を講じることを求める。

(3)面会スペースの設備について

一般面会室内に冷暖房設備を設置するよう要望します。

現在の一般面会室内には冷暖房設備が設置されていないため,特に夏場や冬場の面会において十分な面会環境が整備されておらず,面会にも支障が生じている。

そこで,一般面会室内に冷暖房設備を設置し,面会に支障が生じることがないよう配慮することを求める。

4 その他の要望事項
(1)新拘置所の外観を周囲と調和したものとすること

新拘置所には,外塀を設けず,周囲の環境と調和した外観とすることを要望する。

現在の小倉拘置支所は,高い塀に囲まれた物々しい雰囲気の建物となっており,住宅地である周囲の環境からかけ離れた異様な外観となっているため,新拘置所では,外壁をなくすとともに,周囲の環境と調和した外観にする必要がある。

(2)新拘置所の職員数の増員

未決拘禁者の待遇改善のために,拘置所の職員数を増員することを要望する。

未決拘禁者の待遇改善のためには,現状よりも拘置所の職員数の増員が必要である。

(3)太陽光パネル設置等の再生可能エネルギーの積極的導入

新拘置所の屋上に太陽光パネルを設置する,太陽光及び風力をエネルギー源とする街灯を設置する等,再生可能エネルギーを積極的に導入することを要望する。

現在,日本全体において,持続可能な社会の構築を目指すべく,再生可能エネルギーの積極的導入が求められており,新拘置所においても例外ではなく,再生可能エネルギーを積極的に導入するための措置を講じることを求める。

なお,平成21年3月に完成した立川拘置所では,屋上に太陽光パネルが設置され,太陽光と風力を利用した街灯も設置されていたことからすれば,新拘置所においてもこれらの設備を設置することは十分可能なはずである。

(4)建替期間中の問題について

建替期間中においても,未決拘禁者の基本的人権・防御権の保障,弁護人の弁護権の保障に支障がないように配慮することを要望する。

拘置所の建て替えにあたっては,代替収容施設の確保等の様々な問題が予想され,新拘置所の建築期間も長期にわたることが予想される。

そこで,建替期間中の代替収容施設において,未決拘禁者の基本的人権・防御権の保障,弁護人の弁護権の保障に支障が生じることがないよう配慮することを要望する。

以上

2013年11月21日

商品先物取引について不招請勧誘禁止を撤廃することに反対する会長声明

 2011年(平成23年)1月1日から施行された現行商品先物取引法は、商品先物取引については、国内公設取引所取引であっても不招請勧誘を禁止する規定を設けた(214条9号)。  これは、商品先物取引業者が、先物取引のような投機に適合せず、希望もしない者に対して、突然の電話や訪問により、大きな利益が得られることのみを強調し、投資金以上の損失が生じる危険性をほとんど認識させないような不公正な勧誘を行って取引に引きずり込み、深刻かつ悲惨な被害を多数生じさせていた実情に鑑み、消費者・被害者関係団体等の長年にわたる強い要望によって、2009年(平成21年)の商品取引所法改正により、ようやく導入されたものであった。  ところが、本年6月19日、衆議院経済産業委員会において、証券・金融・商品を一括的に取り扱う総合取引所での円滑な運営のための法整備に関する議論の中で、内閣府副大臣は、委員の質問に対し「商品先物取引についても、金融と同様に、不招請勧誘の禁止を解除する方向で推進していきたい」旨の答弁をした。  この答弁は、総合取引所において商品先物取引業者に対しても監督権限を有する金融庁が、総合取引所に関する法規制について、不招請勧誘禁止を撤廃することを検討していることを示すものであるが、これは商品先物取引についての不招請勧誘規制が導入された経緯を軽視し、2012年(平成24年)8月に産業構造審議会商品先物取引分科会が取りまとめた報告書の内容にも反するものであり、到底看過できない。  その後、2012年(平成24年)2月から6月にかけて開催された産業構造審議会商品先物取引分科会における議論に際しては、不招請勧誘規制を見直すべきとの意見が出されたが、日本弁護士連合会が2012年(平成24年)4月11日付け「商品先物取引についての不招請勧誘規制の維持を求める意見書」を公表して同規制の維持を主張し、分科会報告書においても、「不招請勧誘の禁止の規定は施行後1年半しか経っておらず、これまでの相談・被害件数の減少と不招請勧誘の禁止措置との関係を十分に見極めることは難しいため、引き続き相談・被害の実情を見守りつつできる限りの効果分析を試みていくべきである」、「将来において、不招請勧誘の禁止対象の見直しを検討する前提として、実態として消費者・委託者保護の徹底が定着したと見られ、不招請勧誘の禁止以外の規制措置により再び被害が拡大する可能性が少ないと考えられるなどの状況を見極めることが適当である」とされ、商品先物取引についての不招請勧誘規制を維持することが確認されたのである。  このように、商品先物取引についての不招請勧誘規制は、深刻かつ悲惨な被害の多発を受けて導入されたもので、前記分科会においても、有識者らが様々な角度で議論した結果、規制維持の必要性が確認されたにもかかわらず、それから間もない現時点において、何らの検証もなく、規制を撤廃する方向で検討することは到底容認できない。  事実、商品先物取引についての不招請勧誘規制の導入以降、商品先物取引に関する苦情件数が減少する一方で、不招請勧誘規制を潜脱する業者の勧誘により消費者が被害を受ける事例がなお相当数報告されており、不招請勧誘禁止を撤廃すれば、商品先物取引被害が再び増加するおそれが極めて高いものである。 前記内閣府副大臣の答弁は、商品取引と証券・金融取引を同じ規制下におくべきとの横並び論から出たものと考えられるが、それぞれの取引が過去どういう営業を行い、どのような紛議を生じていたのかの実情を無視したものであって、それぞれの取引の過去の実情が異なれば、個別の規制の必要性を検討するのが当然である。  当会は、消費者保護の観点から、商品先物取引についての不招請勧誘禁止を撤廃することに強く反対する。

2013年(平成25年)11月20日
福岡弁護士会 会長 橋 本  千 尋

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