福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

声明

2015年3月11日

司法予算の拡大を求める会長声明

1 我が国の司法予算(裁判所関係予算)は、長年にわたって低い水準にあり、国の一般会計予算比でわずか0.3%台で推移している。諸外国と比較しても、国家予算に占める割合が著しく低いと言わざるを得ない。平成26年度の司法予算額は約3111億円(うち人件費2599億円、物件費512億円)、平成27年度のそれは約3131億円(うち人件費2628億円、物件費503億円)である。
裁判所は国の三権の一翼を担い、様々な紛争を公平かつ適正に解決する機能とともに、正義を実現し、少数者・弱者の権利擁護の最後の砦としての役割を果たす大切な組織である。紛争を解決する、権利の侵害から救済する、違法な行為から身体や財産を守るという司法の役割を十分に発揮するためには司法予算の拡大が不可欠である。
今後、刑事・少年、民事のいずれの分野でも法的扶助の抜本的拡充が必要であり、裁判官の大幅増員や裁判所支部の充実などの司法基盤整備を進めるには、司法予算を現状よりも大幅に拡大する必要がある。

2 この点は、2001年(平成13年)6月の司法制度改革審議会最終意見書においても、「本改革の実現には、これに必要とされる人員・予算の確保が不可欠であり、厳しい財政事情の中にあって相当程度の負担を伴うものであるが、政府におかれては、・・・・・・大胆かつ積極的な措置を講じられるよう、強く要望」するとされており、さらに衆議院や参議院法務委員会も同年11月、「政府は、司法制度改革を実効あるものとするために、......特段(ないし万全)の予算措置を行うように努めること」との附帯決議をしているが、これが実行されているとは、到底、評価出来ない状態にある。

3 福岡県においては、福岡高等・地方・簡易裁判所(福岡市中央区城内)や福岡家庭裁判所(同区大手門)、福岡簡裁石城町分室(同市博多区石城町)を統合し、福岡市中央区六本松に移転集約化しようとしているところ、当会は、家庭裁判所については、高等裁判所及び地方裁判所と家庭裁判所とを同一の庁舎内に併設することには重大な問題があると指摘してきた。
つまり、基本的に公開を原則とする高等裁判所及び地方裁判所で取り扱われる民事事件や成人の刑事事件と、プライバシー保護の観点からの配慮が強く必要とされる少年事件や家事事件、なかんずくプライバシー保護に加えて少年の更生の観点が必要な少年事件は、別の施設であるのが原則であり、実際、これまで家庭裁判所は、高等裁判所及び地方裁判所とは別施設とされてきたのであり、裁判所自らがそのような原則を放擲されることは問題だと指摘してきた。
しかし、裁判所は、家庭裁判所について別の庁舎とすることは困難であるとするのみならず、同一庁舎とした場合の家庭裁判所エリアの独立性の確保ということについてさえ、独立した出入口やエレベーターを設けるなどして構造的に分離独立させることをせず、来訪者のプライバシーの保護や家庭裁判所としての平穏な雰囲気を作り出せる構造を採用しようとしない。このため、本年1月から高等裁判所庁舎で実施されているような来場者に対する手荷物検査が、家庭裁判所の来場者にも一律に実施されることになりかねないとの懸念を払しょくできない。

4 その原因の一つは、総事業費約180億円といわれる裁判所移転関係費につき、現在の大手門の家庭裁判所の敷地を売却することで費用を捻出するという財政上の制約にあると思われるが、仮に財政的な理由から、少年の心理的な安定の要請や家族間の紛争を解決する機関として平穏な雰囲気が求められている家庭裁判所を統合して移転するというのであれば、それは司法の不当な矮小化である。今後、各地において、このような経済的意味での施設の統廃合が進行することを強く懸念する。
そもそも司法の人的、物的基盤の脆弱さは、圧倒的に少ない司法関係予算に問題があると言わざるを得ず、この点が、国民の裁判を受ける権利に少なくない悪影響を及ぼしていることは、明らかである。よって、最高裁判所は、司法制度基盤の人的、物的基盤整備のために、財務省に対し、相応な予算を組むように強く求めるべきであって、政府、財務省は、最高裁判所の要求に応じ必要な予算措置をとるべきである。

5 国民の裁判を受ける権利を実質的に保障するためには、司法の役割を十分に発揮させるための人的、物的基盤の整備が必要であることは明らかである。当会は、家庭裁判所の統合問題に端を発して、国民の目線からは、司法予算の拡大をおこなうことが必要不可欠であることを訴えるために本声明を発するものである。

2015年(平成27年)3月11日
福岡県弁護士会
会  長  三 浦 邦 俊

2015年3月 9日

接見室内での写真撮影に関する国家賠償請求訴訟判決についての会長声明

 2015(平成27)年2月26日、福岡地方裁判所小倉支部第3民事部は、拘置所内において、弁護人が接見室内でした写真撮影に関する国家賠償請求事件につき、極めて不当な判決を言い渡した。弁護団は、本日、同判決に対して控訴を申し立てた。
 本件は、当時弁護人であった原告が、小倉拘置支所の接見室内で被告人と面会した際、被告人から、「拘置支所職員から暴行を受け、顔面を負傷したので、怪我を証拠に残してほしい」との訴えを受け、負傷状況を証拠化する目的で、携帯電話のカメラ機能を用いて写真撮影したところ、撮影した写真データを消去することを拘置支所職員らに強制された事案である。
 判決には、多くの問題が存するが、なにより接見を弁護人等と身体を拘束された被疑者・被告人(以下「被疑者等」という。)との意思疎通に限定し、写真撮影は接見交通権に含まれないと断じた点に重大な問題がある。
 いうまでもなく、憲法及び刑事訴訟法39条1項の保障する接見交通権は、被疑者等が弁護人から助言を受け、有効な防御権を行使するために不可欠な権利である。
 この接見交通権の意義に照らせば、接見の際に得られた情報を記録化することも接見の一環であり、接見時における写真撮影は、接見時の被疑者等に関する情報の取得・記録行為にほかならず、その意味で接見時にメモを作成することと本質的な差異はない。接見で得た情報の記録化を否定することは、情報の取得行為を否定することに等しく、被疑者等の弁護人依頼権という憲法上の権利を危うくしかねないものである。実務上も被疑者等との接見の際に写真撮影や録音・録画が行えなければ、接見における情報収集及び記録化を前提とする公判廷等への顕出が極めて制限される結果となり、被疑者等や弁護人の防御権は大きく制約されることとなる。ましてや、接見室への通信・撮影機器の持ち込みを一律に禁止することには何ら合理性はないと言うべきである。
 判決は、弁護人等が情報を記録することを弁護活動のひとつとして重要なものとしつつも、刑事施設の規律・秩序を根拠として制約が認められるとした。しかしながら、被疑者等が、弁護人の実質的な援助を受けて初めて、当事者が対等であるという前提が整い、刑事手続は公正なものといえるのである。
 ところが、判決は、弁護人等が情報を記録することが、規律・秩序の維持にどのような問題を生じるのかについて、何ら検討を加えていないばかりか、刑事訴訟の基本構造を踏まえたものとは到底言いがたく、弁護活動の重要性を軽視する姿勢は顕著と言わざるを得ない。
 当会は、被疑者等の実質的な弁護を受ける権利の保障を実現するため、写真撮影が、接見交通権に含まれるものであることを改めて表明するものである。


                    2015年(平成27年)3月9日
                    福岡県弁護士会 会長 三 浦 邦 俊

2014年12月10日

改めて特定秘密保護法の廃止を求める会長声明

本日、特定秘密の保護に関する法律(以下「本法」という。)が施行された。
 当会は、本法の法案段階から、同法の成立に反対し廃止を求める旨の会長声明を三度にわたり発表した。また、本法の問題点を市民と共に考えるシンポジウムを三度開催し、そのほか多数回に及ぶ街頭宣伝活動を展開してきた。
 そもそも、国が扱う情報は、最終的には国民の財産として国民に公表・公開されるべきものであると考える。ところが、本法は、①行政機関が秘密指定できる情報の範囲を広範かつ曖昧にしている点、②第三者による実効的なチェック体制を備えていない点、③それどころか、チェックをしようとする国民、国会議員、報道関係者などを重罰規定によって牽制する点で、およそ情報公開の理念に逆行するものとなっている。
 そのため、当会は、本法によって、主権者である国民が正しい意思決定を行うために必要な情報にアクセスできなくなり、国民の知る権利を侵害し、民主主義の根幹の破壊に繋がることが懸念されるとして、上記の各活動を展開してきたものである。なお、同様の懸念は、本法に関して、2014年7月26日に国際人権(自由権)規約委員会から日本政府に対して出された勧告意見中でも表明されている。
 そして、これらの懸念は、本法に関する「施行令」や「特定秘密の指定及びその解除並びに適正評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準」等によっても、何ら払しょくされていない。
 また、政府は、本法の制定過程において、罰則強化や人的管理を内容とする立法の必要性について主権者たる国民に対して十分な説明をしていない。そのため、本法に関しては、国民的な議論が尽くされたとは到底言えず、これでは主権者たる国民の信認を得たものとはおよそ評価できない。
 従って、当会は、政府に対して、改めて本法を廃止し、制度の必要性や内容について、あらためて一から国民的な議論を行うことを強く求める。併せて、当会は、引き続き本法の廃止のための活動を行っていく所存である。
                                   以上

                   2014年(平成26年)12月10日
                      福岡県弁護士会 会長 三浦邦俊

2014年10月15日

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明

1 国際観光産業振興議員連盟(通称「IR議連」)に所属する国会議員によって、「特定複合観光施設区域の整備に関する法律案」(以下「カジノ解禁推進法案」という。)が国会に提出され、衆議院において継続審議となっている。

カジノ解禁推進法案は、刑法第185条及び第186条で処罰の対象とされている「賭博」に該当するカジノについて、一定の条件の下に設置を認めるために必要な措置を講じるとするものである。

しかしながら、経済効果のみが喧伝され、深刻な社会に対する影響等についての検討がなされていない。また、賭博であるカジノを合法化するような正当な理由は何ら認められないため、到底容認できない。

2 そもそも、カジノが合法化されることにより、「暴力団員その他カジノ施設に対する関与が不適当な者の関与」、「犯罪の発生」、「風俗環境の悪化」、「青少年の健全育成への悪影響」、「入場者がカジノ施設を利用したことに伴い受ける悪影響」(カジノ解禁推進法案10条)等の弊害が生じることが確実に予想される。

ギャンブル依存症の問題も深刻である。ギャンブル依存症は、経済的破綻をもたらすのみならず、自らを死に追いやる危険性もある重篤な疾患である。

ギャンブルをするために借金を繰り返す者が現れることも必至であり、多重債務者問題対策が一定の効果を上げているにもかかわらず、これに逆行して、再び多重債務者が増加する可能性が極めて高く、多重債務問題と共にヤミ金問題の再然も大いに危惧されるところである。

合法的賭博が拡大することによる青少年の健全育成への悪影響も看過できない。カジノができることにより、住環境、教育環境の悪化は避けられず、賭博に対する抵抗感を喪失させることにつながりかねない。

さらに、資金源獲得を目的とする暴力団の関与を完全に排除することは極めて困難であるといわざるを得ない。

仮に、カジノ解禁推進法の成立だけを理由に、日本人のカジノ利用や規制については別の法案で定めるとの修正がなされたとしても、その内容も不明確である上に、以上の問題点が払拭されることは無い。

3 刑法が賭博を禁じている主な趣旨は、「勤労その他正当な原因によらず、単なる偶然の事情により財物を獲得しようと他人と相争うものであり、国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害するばかりでなく、副次的な犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあることから、これを社会の風俗を害する行為として処罰すること」(第186回国会衆議院内閣委員会における政府参考人の答弁)にあるところ、カジノ推進法案が成立すれば、刑事罰をもって賭博を禁止してきた立法趣旨が損なわれ、様々な弊害が生じることは必至である。

よって、当会は、カジノ解禁推進法案に強く反対の意見を表明し、カジノ解禁推進法案の廃案を求めるものである。

2014年(平成26年)10月15日
福岡県弁護士会
会長 三浦邦俊

2014年10月 1日

福岡刑務所尿道カテーテル事件控訴審判決に対する会長声明

2014年(平成26年)9月19日、福岡高等裁判所は、2010年(平成22年)4月当時福岡刑務所の受刑者であった控訴人が、腰痛の訴えに対して尿道カテーテルを挿入・留置されたことを理由として国に損害賠償を求めた裁判において、国に慰謝料等の支払いを命ずる判決を言い渡した。
一審の福岡地方裁判所は、強い腰痛の訴え等当時の状況に照らし、一時的安静・転倒防止のために尿道カテーテルを挿入・留置した医師の判断には合理性があるとして請求を棄却していたが、このたびの控訴審判決は、刑事施設内における医療も、社会一般の医療水準に照らして適切なものであるべきことを前提として、①医師の腰痛に対する診療が医療水準にしたがったものとはいえないこと、②本件は尿道カテーテル使用に関するCDCガイドラインの適応条件を充たさないこと、③福岡刑務所以外の刑事施設では腰痛患者に対して尿道カテーテルを使用することなく他の方法で対応していることを指摘し、一審判決を取り消し、本件カテーテル使用の違法性を認めたものである。
当会は、福岡刑務所における本件同様のカテーテル使用につき、控訴人を含む福岡刑務所内の受刑者6名からの人権侵犯救済申し立てを受け、2010年(平成22年)9月、福岡刑務所長に対し、腰痛患者に対する尿道カテーテル留置が憲法13条及び刑事被収容者処遇法56条に違反する重大な人権侵害であり、この侵害行為に関与した医師らに厳正な措置を採るとともに再発の防止を徹底すべき旨の警告を、また法務大臣に対し、刑事収容施設内における診療体制の強化やそれに必要な予算の構築も含めた適切な再発防止策を講ずべき旨の勧告を発している。
福岡刑務所は、当会の警告に対して、「医療措置に問題なし」とコメントし、国は本件訴訟においても尿道カテーテル使用の正当性を主張し続けてきた。今回の福岡高裁判決はそのような考え方に理由がないことを明らかにしたものであり、刑事施設被収容者の基本的人権の擁護の観点から高い評価に値する。
国に対しては、この高裁判決を重く受け止め、自ら非を認めて上告を断念するとともに、改めて、当会の警告及び勧告に沿った再発防止策を実現するよう強く求めるものである。
                         

                    2014年(平成26年)10月1日
                              福岡県弁護士会
                             会長 三浦 邦俊

2014年8月29日

死刑執行に関する会長声明

1 本日、東京拘置所、仙台拘置支所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
  死刑執行は、本年(平成26年)6月26日に1名の死刑執行がなされたばかりであり、今後も新たな執行がなされることが懸念される。
2 本年(2014年(平成26年))3月に、1966年(昭和41年)にみそ製造会社の専務一家4名を殺害したとして強盗殺人罪などで死刑が確定した元プロボクサーの袴田巌氏(以下「袴田氏」と略。)に対する再審開始決定がなされ、刑事司法が無謬ではないという認識が世間一般に改めて広く共有されたところである。万一、袴田氏に対する死刑が執行されていたことを想像すると震撼させられるのを禁じ得ない。
そもそも、死刑という刑罰は、日本弁護士連合会の2011年(平成23年)10月7日の人権擁護大会の宣言でも触れられているとおり、①生命を奪う非人道的なものであり、②受刑者の更生し社会復帰する可能性を奪うものである点に根本的問題を内包している。そして、③人の生命を奪う点において、いかなる執行方法であっても、その残虐性は否定できない。
それ故、死刑の廃止は国際的な揺るぎない潮流となっているのである。
また、我が国では、死刑に直面している者に対して、被疑者・被告人段階あるいは再審請求の段階に至るまで十分な弁護権、防御権が保障されていない。執行の段階でも死刑確定者の人権保障の面で多くの問題を抱えている。
3 当会は政府に対し強く抗議の意思を表明するとともに、今後、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ、それに基づいた施策が実施されるまで、一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。
                                    以上
                 
                     2014年(平成26年)8月29日
                        福岡県弁護士会会長 三浦邦俊

2014年7月16日

集団的自衛権の行使等を可能とする閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明

 本年7月1日、安倍内閣は、多くの国民の反対を押し切って、国会における議論も、国民的議論も尽くさないまま、従来の政府の憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使等を可能とする閣議決定を強行しました。  集団的自衛権は、わが国が直接攻撃されていないのにもかかわらず、他国のために武力を行使するもので、その行使は憲法第9条によって禁じられています。この憲法解釈は、これまでの政府答弁(1981年5月29日政府答弁書等)や国会決議(1954年6月2日参議院本会議決議)等の積み重ねによって確立しています。  日本弁護士連合会と当会をふくむ全国の弁護士会が一致して指摘するとおり、このたびの閣議決定は、それ自体が憲法第9条に反し、また、憲法によって政治権力の濫用を抑制する立憲主義に反するものです。   このたびの閣議決定は、「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」に「必要最小限度の実力を行使する」としています。しかし、これらの文言は極めて曖昧で、時々の政府の判断により都合良く解釈して運用されかねず、歯止めにはなり得ません。  さらに、閣議決定について政府が説明用に作成した想定問答集においては、集団安全保障に基づく武力行使への参加に道を開く回答がなされています。集団安全保障は、国連が侵略国などへの制裁として多国間の枠組みで対応する措置ですが、その措置の中には武力行使も想定されています。そのような事柄を、国民的議論がほとんどなされていないなかで準備をすることは、立憲主義の破壊、民主主義の破壊に等しく、到底許すことはできません。  このたびの閣議決定はまた、「わが国を取り巻く安全保障環境は根本的に変容」し、「アジア太平洋地域において問題や緊張が生み出さ」れていることをも集団的自衛権の根拠としています。仮にそうだとしても、そのような「問題」を解決し、「緊張」を緩和するよう、外交努力を強化することこそ政府の責務のはずです。  当会は、これまで、韓国の釜山地方弁護士会、中国の大連市律師協会等と親善交流を深め、相互の信頼関係を築いてきました。このような草の根の交流の蓄積を踏まえて、今後より一層、平和外交を進めることが平和国家として歩むべき道だと、確信するところです。  憲法違反の閣議決定に引き続く自衛隊法等の法改正も、憲法に違反するものとして許されるものではありません。  当会は、集団的自衛権の行使等を可能とする閣議決定に対して強く抗議し、その撤回を求め、今後予定される関係法の改正等に断固として反対するものです。

                                          2014年(平成26年)7月16日

                      福岡県弁護士会

                                                       会長 三 浦  邦 俊

2014年6月26日

会長声明

1 本日、大阪拘置所において、死刑確定者に対する死刑が執行された。
  死刑執行は、2013年(平成25年)12月以来半年ぶりとはいえ、昨年中には合計8名が執行されていることから、今後も新たな執行がなされることが懸念される。
2 本年(2014年(平成26年))3月に、1966年(昭和41年)にみそ製造会社の専務一家4名を殺害したとして強盗殺人罪などで死刑が確定した元プロボクサーの袴田巌氏(以下「袴田氏」と略。)に対する再審開始決定がなされ、刑事司法が無謬ではないという認識が世間一般に改めて広く共有されたところである。万一、袴田氏に対する死刑が執行されていたことを想像すると震撼させられるのを禁じ得ない。
そもそも、死刑という刑罰は、日本弁護士連合会の2011年(平成23年)10月7日の人権擁護大会の宣言でも触れられているとおり、①生命を奪う非人道的なものであり、②受刑者の更生し社会復帰する可能性を奪うものである点で根本的問題を内包している。そして、③人の生命を奪う点において、いかなる執行方法であっても、その残虐性は否定できない。
それ故、死刑の廃止は国際的な揺るぎない潮流となっているのである。
また、我が国では、死刑に直面している者に対して、被疑者・被告人段階あるいは再審請求の段階に至るまで十分な弁護権、防御権が保障されていない。執行の段階でも死刑確定者の人権保障の面で多くの問題を抱えている。
3 当会は政府に対し強く抗議の意思を表明するとともに、今後、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ、それに基づいた施策が実施されるまで、一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。

                                     以上

                    2014年(平成26年)6月26日
                         福岡県弁護士会会長 三浦邦俊

2014年6月18日

改正少年法施行にあたっての会長声明


1 本日、少年法の一部を改正する法律(平成26年4月18日法律第23号)(以下、「改正法」という。)が全面施行され、国選付添人選任の対象事件が死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁固に当たる事件(被疑者国選弁護事件と同じ)に拡大した。この結果、当会の試算では、観護措置を受けた少年の約80パーセントが国選付添人選任の対象事件となる。
2 これまで、成人の刑事事件では原則として国選弁護人による法的援助が受けられる一方、可塑性に富み、かつ、成人に比してさらに防御能力が劣る少年には弁護士の援助が権利として保障されてはおらず、正義・公正に反する状況が長く続いていた。
こうした状況の中で、当会は、少年に適正手続を保障するとともに、少年の立ち直りを支援する弁護士付添人の役割の重要性に鑑み、2001年(平成13年)2月、全国に先駆けて、観護措置決定を受け少年鑑別所に収容された全ての少年に弁護士付添人をつける「身柄事件全件付添人制度」を創設した。
 この動きは、当会から全国に広がり、2011年(平成23年)には、全国の全ての単位弁護士会で同様の制度が創設されるに至り、全ての少年に弁護士付添人をつける人的体制は整った。そして、現実に当会では、ほぼ100パーセントの少年に弁護士付添人が選任されるに至ったのである。
 今回の改正法は、我々が目指してきた全面的国選付添人制度実現に向けた大きな前進であると評価できる。
3 もっとも、今回の改正では、①共同危険行為(暴走行為)や「ぐ犯」事件など弁護士付添人の支援が必要と考えられる事件が対象外とされた点、②付添人の選任は家庭裁判所の裁量とされた点、③検察官関与対象事件が拡大された点、④少年の刑事裁判において科しうる有期刑の上限が引き上げられた点に未だ不十分さを残しているといわざるを得ない。
すなわち、まず「②」の結果、対象事件でも、国選付添人が選任されないというケースも考えられる。
 つぎに、「③」の結果、少年審判に検察官が関与することは、少年審判に対立構造を持ち込み、「懇切を旨として、和やかに」行われるべき審判の審理構造と矛盾するものであるとともに、予断排除原則や伝聞法則の適用もない少年審判において、少年を成人以上に不利益な立場に置くことになる。
 更に「④」の厳罰化により、少年を長期間社会から隔絶させることは、少年の社会復帰を困難にし、むしろ更生の妨げになりかねない。
4 当会は、改正法によって国選付添人の対象とされた事件については、全て国選付添人が選任されるように努めるとともに、対象事件の拡大のための運動を継続し、観護措置決定を受けた全ての少年に国選付添人が選任される制度の実現を目指していく所存である。
  更に、弁護活動及び付添人活動を通じて、検察官関与や厳罰化が決して安易になされることがないように務めるとともに、これまでにも増して少年の権利を擁護し、少年の更生のために最大限の付添人活動を実践する所存である。

                                    以上


                   2014年(平成26年)6月18日
                   福岡県弁護士会 会長  三 浦 邦 俊

2014年6月11日

行政書士法の改正に反対する会長声明

日本行政書士会連合会は、行政書士法を改正して、「行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立てについて代理すること」及び「ADR手続において代理すること」を行政書士の業務範囲とすることを求め、そのための運動を推進してきており、行政書士法改正案が議員立法として今通常国会に提出される可能性がある。

しかしながら、行政庁に対する不服申立やADR手続(以下「行政不服申立等」という。)における代理権を行政書士の業務範囲に加えることは、以下に述べるとおり、国民の権利利益の擁護を危うくする恐れがある。

よって、当会は、行政書士法を改正して行政書士に行政不服申立等の代理権を付与することに反対する。

1 行政不服申立等の代理業務は行政書士業務と相容れないこと

そもそも、行政書士の主な職務は、行政に関する諸手続の円滑な実施に寄与して国民の利便に資することを目的としており、その主な内容は、官公署に提出する書類等の作成及びその作成や提出を代理人として行うことであって、その性質から紛争性の存しない職務を内容としていたものである。

しかるに、行政不服申立制度は、行政庁の違法または不当な行政処分を是正して国民の権利利益を擁護するための制度であり、紛争解決制度であるADR手続と共に、本来的に紛争性を内在していて、行政書士の主な職務とは、その内容を本質的に異にしている。特に、行政不服申立制度においては国民と行政庁が鋭く対立することが予想されるところ、行政手続の円滑な実施に寄与することを主目的とする行政書士が、行政庁の行った処分についての是正を求めることは、その職務の性質と本質的に相容れないものである。行政官庁の職員であった経歴を持つ行政書士が相当数に上るという事実も、行政書士に対しては、行政庁の違法又は不当処分の是正を期待出来ず、逆に、国民の権利擁護に欠ける事態の発生が懸念される理由である。

たとえ代理権の範囲を行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する不服申立に限定したとしても、行政書士の職務の内容と不服申立手続とが相容れない点についは、何ら変わりはないというべきである。

2 行政不服申立等の代理権を行政書士に付与することは国民の利益を損なうこと

国民と行政庁が鋭く対立する行政不服申立等の代理人は、行政庁と鋭く対立することを求めざるを得ないが、都道府県知事による監督を受ける行政書士にそのような対立をすることは全く期待できず、その結果、行政書士が国民のために適正に業務を遂行することができるのかという点に関しては、根本的な疑問が残るものであって、寧ろ、国民の権利及び法的利益の実現を危うくする恐れが極めて大である。

また、行政不服申立等の代理行為は、その後の行政訴訟の提起や同訴訟での結論も充分に視野に入れての判断が必要となるところ、行政書士は、行政不服審査法が行政書士試験において必須科目とされてはいるものの、行政訴訟における高度な専門性と判断に関する能力が担保された状態にはなく、訴訟実務にも精通していない。司法制度改革において行政書士以外の各士業に与えられた行政不服申立代理権は、各分野における高度な専門性に、訴訟実務に関する一定の研修を受けることを前提にして付与されたものであるところ、行政書士には、そもそも他士業のような専門的な分野は存しないのであるから、他の士業と同列に訴訟代理権を認めるべき前提を欠くものである。

このような行政書士に行政不服申立等の代理権を付与することは、行政庁の違法または不当な行政処分を是正して国民の権利利益を擁護するはずの行政不服申立制度において、国民の側に立ってその権利や法的利益の擁護のために最善を尽くすことのできない代理人の存在が許容されることになるところ、国民の権利や法的利益の保護が全うされない事態の発生は、厳に避けなければならない。

3 行政書士には紛争性の存する職務を取扱い得る職業倫理が確立していないこと

紛争性を内在している行政不服申立等の代理行為を行うには、当事者の利益が鋭く対立する場面における職業倫理が確立されていることが必要不可欠である。常に紛争性が高い事件の取扱いを主な職務とする弁護士には、これを前提とした弁護士職務基本規程が定められている。

しかるに、行政書士について定められている倫理綱領は、その内容において抽象的に国民の権利擁護を掲げるのみであり、行政書士においては、紛争性の存する職務を取扱うだけの職業倫理が確立しているとはいえない。

4 行政書士法の改正が必要となる立法事実がないこと

国民による行政不服申立等を代理する資格者が充分に確保できていないという事実は実証されておらず、従って、行政書士に行政不服申立等の代理権を付与する前提として立法事実を欠いている。

これまでも、弁護士は、生活保護法、出入国管理及び難民認定法、精神保健及び精神障害者福祉法等に基づく行政手続等の様々な分野で、行政による不当な処分から社会的弱者を救済する実績を上げている。そして、今後も、弁護士人口の増加等により、行政不服申立の分野にも弁護士が一層関与していくことが確実に予想される状況にあるから、行政書士法を改正して行政書士の業務範囲を拡大する必要性はない。

また、当事者の権利義務の存否が問題となる民事紛争解決手続の一つとしてのADRについては、この面での専門性を全く欠いている行政書士に代理権を付与する余地はない。

よって、当会は、行政書士法を改正して行政書士に行政不服申立及びADR手続に関する代理権を付与することに、断固として反対する。

2014年(平成26年)6月11日

福岡県弁護士会 会長 三 浦 邦 俊

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