福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

月報記事

2010年5月 1日

少年付添人日誌

会員 篠 原 一 明(61期)

1 少年からの手紙

先日、自分が付添人として審判を担当した少年からの手紙が届きました。私は、弁護士業務をはじめて1年半、今まで5件の少年事件を担当しました。しかし、事件が「終わって」少年から手紙をもらうのは初めてでした。私は、内心「先生、あのときはお世話になりました。」という手紙かな?と期待したのですが、開けてみると内容は、「被害者に謝りたい」「手紙を出したいが連絡を取れないだろうか」というものでした。少年の手紙には、「反省」「後悔」「償い」の文字が何度も並べられ、負のエネルギーに充ち満ちていました。

2 事件の記憶

この少年は、私が付添人を担当し、初めて少年院送致処分になった子でした。 事件は、少年が、元妻とその友達に対し暴力を振るって軽傷を負わせたという事案でした。私には、少年が、事件当初から真摯に反省しているように思え、この過ちで少年院に行かなくてはならないような子ではないように思えました。

しかし、少年には「前科」があるからなのか、調査官の少年の処遇に関する見解は最初から厳しいものでした。調査官は、面談で、少年に対し、「どうして少年院に行くのがそんなに嫌なの?」とまで言っていました。私は、少年から調査官のこの言葉を聞いて「この調査官はバカなのか?」と腹が立ちましたが、感情的になって調査官と必要以上に対立し、調査官を自己の意見に固執させてはいけないと思い、「少年も充分反省しているみたいですし、暴力沙汰での家裁送致は初めてですから…」と努めておだやかに調査官に訴えました。しかし、調査官の「少年院行き」の「信念」は固く、途中、「先生、用件はこのお電話で伺いますけど?」と言われたこともありました(しつこいのが嫌われただけかもしれません)。 被害弁償も試みましたが被害者から拒否されたので、私を通じて謝罪の手紙を受け取ってもらうのが精一杯でした。一方で、少年は、住み込みでの仕事を始めたばかりでしたので、仕事と身元引受人は、何とかなりました。私は、住み込みの仕事で環境が変わること、仕事場の上司が少年を指導監督すると誓約してくれていること、粗暴犯での家裁送致がはじめてであることなど、若干寂しい手持ちの武器を駆使して少年の保護観察処分を主張しました。

しかし、結局は自分の付添人としての力不足で、調査官の「信念」を全く揺るがすことができず、少年は、そのまま少年院送致にされてしまったのでした。審判の日、私に泣きながら「ありがとうございました」と言う少年を思い出すと、今でも心が痛みます。

3 手紙への返事

自分は、弁護士業務を始めてもう1年半が過ぎましたが、日々の業務の中で、昔の事件のことを忘れるようになってしまっています。もちろん、弁護士業務は、ストレスの大きい仕事でもあると思いますので、「忘れる」ことも重要なのでしょうが…「少年のなかでは、事件は終わっていない。」自分は、手紙を受け取ったとき安易に事件が「終わった」ものと判断した自分の事件に対する認識の甘さに、戒めを受けたような気がしました

今思い返すと、この少年にはもっとできることがあったような気がします。確かに、それで、少年院送致を免れていたかどうかは分かりません。しかし、この少年の手紙からは、あの事件から「上向き」になっている少年の姿を想像することができません。あのとき、この少年に、どんな言葉をどんなことをしてあげていれば良かったのか。そして、今、この少年にどんな言葉をかけてあげれば良いのか…まだ、手紙の返事は出せていません。

2010年4月 1日

『中小企業法律支援センター』設置報告

中小企業法律支援センター副委員長・事務局長
日弁連中小企業法律支援センター副本部長
池田 耕一郎(50期)

3月11日の常議員会で、当会の中小企業法律支援センター設置規則が承認され、4月1日から活動を開始しました。

当会では、これまで、日弁連の活動と連動して、全国一斉の中小企業向けシンポジウム・セミナー、無料法律相談会を開催するほか、当会独自に、弁護士会が中小企業支援に積極的に取り組む姿勢を広く理解してもらうと共に実務面での連携に向けた方策を探るべく、弁護士業務委員会の委員を中心として、中小企業支援機関・団体(福岡商工会議所、福岡県商工会連合会、中小企業基盤整備機構九州支部、九州経済産業局、中小企業診断協会福岡県支部、福岡県中小企業再生支援協議会等)と意見交換会、勉強会などを開催するなど地道に活動を重ねてきました。こうした活動を発展させ、より実務的な視野に立って活動を進めるための組織設置が適切との認識に基づき、当会に中小企業法律支援センターが設置されるに至ったものです。

中小企業は、全国で420万社、福岡県内だけでも15万社以上あります。中小企業が我が国の企業全体に占める割合は90パーセント以上、雇用でも70パーセント以上ですから、日本の経済は中小企業で支えられているといえます。中小企業の経営が安定することで労働環境が改善され雇用が維持されると共に、新たな雇用も生まれます。また、法律家が積極的に経営に関わることで、経営者の意識が改革され、法律紛争を未然に防止することも期待できます。弁護士会による中小企業支援は、中小企業の権利救済という観点にとどまらず、様々な副次的効果があるといえます。ところが、中小企業側には、よく言われる「弁護士の敷居の高さ」、「弁護士に相談するのは最後の最後」という感覚があります。もちろん、個々の弁護士の日常業務によって、弁護士が中小企業の経営面での問題解消、法的権利救済に果たす役割が認知されてきた経緯はあります。また、当会は、会員の高い意識により、県下20か所に法律相談センターを開設して市民の司法へのアクセス障害を解消する努力を続けてきました。しかし、中小企業が弁護士を「身近な相談相手」と意識するには、まだ十分でなかったように思われます。日弁連が全国の中小企業1万5450社に対して行ったアンケート調査では、回答した中小企業のほぼ半数が弁護士利用経験がなく、その理由のほとんどが「特に弁護士に相談すべき事項がない」という理由であったこと、一方で80パーセントの中小企業が法的問題を抱えており、多くは弁護士以外の士業に相談しているということが明らかになりました。このような実態に基づき、「中小企業法律支援センター」と銘打ち、新たに組織体制を整え、弁護士会としてより積極的に中小企業支援をアピールしていくことによって、弁護士の存在と役割を認知してもらうことが目指されることになったものです。その活動の中核となるのが、コールセンター相談事業です。

従来の法律相談センターを基本とする相談事業は、相談者にセンターへ出向くことを求めていたのに対し、コールセンター相談事業は、中小企業から電話で相談申込みを受け付けると、担当職員から相談担当弁護士にファックス文書で連絡し、弁護士自身が原則24時間以内に相談者に電話をして面談日を決め、すみやかに(原則3営業日以内)、各弁護士の事務所で相談を実施するスキームです。

なお、相談担当者名簿は各部会で作成し、配点も各部会で行う予定です。当面、相談申込みの電話があると、天神弁護士センターの職員が相談申込者の事業所の所在する地域(福岡、北九州、筑後、飯塚の部会単位)を確認し、手作業で各部会事務局に転送することにしていますが、職員の負担軽減・作業効率の観点から、将来的には、プッシュフォンによる自動転送システムの導入が検討されています。

中小企業法律支援センターの活動は、コールセンターの運営にとどまらず、中小企業向けセミナー・相談会の開催、各中小企業関連団体・機関からの要請に対応する講師派遣、中小企業問題に精通する弁護士育成を目的とした研修など、多岐にわたります。

会員の皆様のご理解・ご協力をよろしくお願い申し上げます。

シリーズ ―私の一冊― ハードボイルドはいかが…藤原伊織「ひまわりの祝祭」講談社

会員 匿 名 希 望(40期)

匿名希望の私、シリーズ2回目の登場である。 「趣味は読書」と言えば、「どんなものを読むか?」と問われる。ふと、回答に戸惑わないか。それは回答者の嗜好、知性に結びつけて考えられてしまうことになりかねないからである。もちろん匿名希望の私に戸惑いなどあるはずもなく、推理もの、中でもハードボイルドが好きだ。主人公はスーパー・ハードに強くなくてはならない。必ず理不尽な窮地に追い込まれ、脇の重要人物は死んでしまう。ただ、主人公自体は決して殺されることがなく、最後には必ず大どんでん返しで切り抜けてみせるのである。小気味の良い展開で謎解きがなされ、読者をして、読んで良かったと唸らせることができなければ不作である。ちなみに村上春樹のベストセラー1Q84は、ラスト付近まではわくわくしながら読み進んだが、作者自身ストーリーに収拾がつかなくなってしまったのか、読者である私が読解力に乏しかったのか、読後完全な消化不良になってしまった。有り体に言えば、つまらんかった。

調べてみた。ハードボイルドは、現に探偵をしていたダシール・ハメット(1922年デビュー、34年引退)と並んでレイモンド・チャンドラー(33年デビュー、59年没)が黎明期とされている。村上春樹は、最近になってチャンドラーの長編「ロング・グットバイ」、「さよなら愛しい人」の2編を新訳している。ハリウッド脚本家としての一面を持つチャンドラーが、その作家生活の中で残した長編はわずか7作品しかなく、いずれも私立探偵フィリップ・マーロウが登場する。7冊全部読んでみた。なかなかのものだった。オススメに値する。ただ、翻訳ものは訳者のフィルターによる新たな創作になるため、原文とは味わいが異なっているのではないか、また単純に訳本は読みづらい、と思う。それで、英文を読解できない私や読者の皆様には、原文和書がいい。昔は、大藪春彦とか落合信彦、北方謙三もよかったが、このごろは、藤原伊織、大沢在昌、東直己、樋口明雄、福井晴敏などが好きで、新刊のハードカバーで全部読んでいる。

ご紹介するのは、藤原伊織の「ひまわりの祝祭」(四六版426頁)である。あの「テロリストのパラソル」発表後の次作第一弾である。読んだのは10年も前なのでざっと再読してみたが、やはり一気に楽しめた。謎の自殺により妻英子を亡くし、そのショックで世を捨て無為徒食生活にあった秋山(40歳)のもとに妻に似た麻里という若い女が現れる。秋山は無精子症だったが、自殺した英子は妊娠しておりこれを隠していた。英子は美術館の学芸員でファン・ゴッホに深い関心を抱いていた。ところで、史実では、ファン・ゴッホ(1853~90自殺死)の名作「ひまわり」は全部で12枚画かれている。うち1枚は安田火災が1987年に約58億円でオークションで落札したことで有名であるが、12枚のうち7枚が、彼の芸術的ピークとされた南仏アルルでの2年半の間の作とされている。本作品は、アルルでの8枚目の「ひまわり」が存在し、しかもそれが日本にあるということがベースになっている。秋山は、麻里の登場を機に、時価数十億とされる「ひまわり」の探索・争奪をめぐる欲望と抗争に巻き込まれていく。なぜ英子は自殺したのか?「ひまわり」は本当にあるのか?その鍵は、秋山と英子との記憶の中にあるという。ヤクザ、闇の大物、大企業が「ひまわり」の争奪をめぐる攻防を展開する美術ミステリーとなっている。

以下本文より。「数十億?」「ひょっとしたら百億を超えるかもしれない」「見つかった。ようやく私はたどりついた。ひまわり。アルルの8枚目のひまわり。」「もし、それが事実なら世界の美術界が震撼する。伝説が修正される。神話がもう一つ誕生することになる。」

なお、著者は48年大阪生まれ、73年東大卒。電通に在籍して77年デビュー。85年「ダックスフントのワープ」ですばる文学賞受賞。95年「テロリストのパラソル」で江戸川乱歩賞受賞、翌96年の直木賞の史上初のダブル受賞。相当の酒豪で知られていたが、07年7月食道癌で逝去している。享年59歳。

本作品は講談社から文庫化されており、ミステリー、ハードボイルド好きの方にはイチオシの作品である(了)。

2010年3月 1日

~法教育シンポジウム(in 仙台)に行って参りました!!~

会 員 春 田 久美子(48期)

1 会員の皆様、“法教育”ってご存じですか? 県弁の数ある委員会の中でも、出来てからの年月がまだまだ若い、新しい分野のお話しです。

平成22年1月30(土)、杜の都~仙台で、法務省が主催するシンポジウムが開かれたので行って参りました。サブタイトルは、“未来を拓く法教育inせんだい”。

2 法務省大臣官房司法法制部長の方の挨拶を皮切りに、・基調講演として、東京大学法学部教授の大村敦志氏のお話は「法教育と市民教育‐共通点と相違点」。 フランスの子供たちは、友達同士の会話で『セパ ジュスト!』(ずるいよ!正しくないよ!‐あるべきルールに従ってないよ、という意味)というフレーズがよく出てくるようです。背景として、フランスでは、絵本で以てjusticeの概念を学び、いかにして裁判が公平なものになりうるか、を自然と学べるようなのです。そして、中学では議論の仕方を学び、高校では現行制度を歴史や外国の類似の制度と比較しながら学習し、そうやって『市民』が出来上がっていくそうです。

3 次は・学校現場における実践報告として、宮城教育大学附属小学校の教頭先生の発表です。教頭先生自ら(キメキメ王国の)王様に扮し(冠や髭、マントの着ぐるみ)、もしもテレビのチャンネルが一つだけ、新聞も一種類のみ、インターネットも王様が許可した内容しか流せない、という具合になったらどうする?というバーチャルな国のお話。子供たちの授業の様子がスクリーンに上映されます。

4 休憩をはさみ、いよいよメインのパネルディスカッション。「新時代の法教育~学校現場で期待される法教育とは~」とのお題で、コーディネーターは、仙台家・地裁の大谷太裁判官、パネリストは、上記大村教授、文部科学省教科調査官の大倉泰裕氏、仙台弁護士会から神坪浩喜弁護士、島田仁郎前最高裁長官、宮城教育大学の松岡尚敏教授、そして、芸能リポーターとして著名な東海林のり子氏の6名です。

・島田氏は、そもそも法教育が、どういうところから出てきたものか、裁判員裁判を生み出した司法制度改革の話に遡って、語られました。将来裁判員になったときにも対応できるよう、犯罪が起きないような世の中にしていくために、法教育は大切だ、というお立場。・大倉氏は、平成18年に教育基本法が改正され、今後、法教育がますます盛んになるはずだ、と予測されました。今、学校現場で☆★教育と付くものは何と130を超えるそう・・・(学校の先生も忙しいはずです)。・大村氏は、法教育の実践者として実務家・プロが関与していくことが大切と力説されました。・松岡氏は、教育者らしく、何事も、小さなうちから教える事が大切、大人になってからではあまり意味がない、と仰る一方で、今後は、大人も子供から学び取るようなシステムが必要ではないかと。心に残ったのは・神坪弁護士と・東海林氏のお話でした。神坪弁護士が熱く語られたのは、自己肯定感を植え付けてあげることの大切さ。ご自分が小学生だったころの担任の先生との暖かな交流が根っこになって、今の自分がある、幸せに他人と(暖かく)つながっていけるような生き方を授ける方法として法教育というものを考えてよいのでは、というご提案でした。東海林氏は、長年、芸能リポートの仕事をされ、たくさんの人にインタビューするうちに、今では、子供と言うよりお母さん達にこそ、法教育をする必要性を強く感じる時代になった、と仰っていました。

5 会場からは、質疑応答も出て、夜は、日弁連や東北弁連の法教育担当の先生方と仙台の地酒でほろ酔い気分になり、翌日は、仙台弁護士会会館での委員会等に出席して福岡に帰って参りました。

6 福岡でも、法教育のネットワークや弁護士会の受け皿としての法教育センターを近々立ち上げる予定です。今後の新しい活動についても、適宜ご紹介していくつもりです。

2010年2月 1日

法律事務所のエコ(その1)

会 員 後 藤 富 和(55期)

1 地球温暖化 第52回人権擁護大会では、地球温暖化の危険から将来世代を守ることが大きなテーマとなりました。 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、産業革命以後の気温上昇を2℃以内に抑えるために、先進国において二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を1990年比で2020年までに25~40%削減、2050年までに80%削減することが必要と警告しています。日弁連は意見書や人権大会宣言を通して、国に対し温室効果ガスの排出総量規制などを求めてきました。麻生政権下では2005年比15%減(1990年比にすると8%減)という低い目標で誤魔化そうとしましたが、鳩山新政権は1990年比25%削減を打ち出しており、温室効果ガス削減が現実の課題となってきました。この課題は、政府や産業界だけではなく、私たち弁護士にも突き付けられています。そこで、法律事務所でも地球温暖化防止に向けた取組ができないかと考え、うちの事務所では様々な実践をはじめました。

2 まずは知ることから 温室効果ガスの削減に取り組むのであれば、まず、現状でどのくらい排出しているのかを知ることが必要です。 大橋法律事務所の2009年1月から7月までのCO2排出量は、電力・交通・廃棄物の合計で2285kgとなります(環境省の計算式)。仮に同じペースで1年間排出したとすると年間排出量は3917kgとなります。平均的一般家庭の年間排出量が6500kgといわれていますので、事業所としては少ない量に抑えることができていると思います。ちなみに、ヒノキ1本の年間CO2吸収量が約25kgといわれていますので、うちの事務所の活動によるCO2を吸収するためには156本のヒノキが必要ということになります。

3 削減努力、カーボンオフセット、グリーン電力 エアコンの温度をこまめに調整したり(思い切ってエアコンを使わず窓を開けるという選択もあり)、近距離の移動に自転車を利用したりすることでCO2の排出は大幅に削減できます。そのコツは我慢をしないということです。暑いのを我慢するのではなく、エアコンが効きすぎて上着を羽織って仕事している状態を不自然と感じられるかどうかだと思います。 それでも、削減できない部分は残ります。そのような場合に、事業により排出したCO2を別の活動で吸収し相殺する考え方をカーボンオフセットと言います。例えば、飛行機を利用したことで排出したCO2を植林によって相殺する全日空のカーボンオフセットプログラムなどがその例です。 また、電力を石油・石炭など化石燃料による発電に頼るのではなく、発電時にCO2を発生しないと考えられている風力、太陽光、バイオマス(生物資源)などの自然エネルギーに転換することで電力消費によるCO2排出を大幅に削減することも考えられます。しかし、小規模な事業所が独自に太陽光発電や風力発電システムを備えることは困難です。そこで、考え出されたのがグリーン電力証書システムです。これは、自然エネルギーにより発電された電力の環境付加価値を証書化し、証書の購入を通じて消費者(事業所)が自然エネルギーによる発電コストを負担することで、事業所で使用する電力を自然エネルギーに由来するものとみなすことができるという制度です。野村証券本社ビル、銀座のソニービル、羽田空港、全国6か所のZEPP(ライブハウス)などでこの制度が利用されています。 大橋法律事務所でも今年8月からこの制度を利用して使用電力すべてをバイオマス発電によってまかなうことが可能となりました。

4 環境マネジメントシステム(EMS)について これら環境保全に対する自主的取組を促進する制度として環境マネジメントシステムがあります。このシステムはすでに日弁連で導入され、単位会では京都弁護士会が導入しています。また、大阪の法律事務所でも導入例があります。EMSについては「その2」で述べ詳しく説明します。

2009年9月 1日

ITコラム

ホームページ委員会
小山 格(60期)

2回目のコラム担当となりましたが、ITに関する私の周辺環境はほとんど変化しておりません。そこで、今回は、今後導入してみたいことなどをあれこれ考えてみたいと思います。

・ 電子メールのドメイン取得

電子メールのドメインとは、「●●●@・・・・・」で構成される電子メールで@以下の英数字を意味します。最近はドメインも簡単に取得できるようです。ドメインが、事務所名などで構成されていると、やはり見栄えが良い感じがします。というのも、私、仕事の関係で依頼者の方とメールをする機会があったのですが、事務所のドメインが情報流出で問題となった某会社であったため、「このアドレスに送っても大丈夫ですか?」という質問を受けました。ドメイン名とセキュリティなどの安全対策はリンクするものではないのですが、やはり、一般的に使うドメインだと「大丈夫なの?」という疑問を持たれることもあるようです。

・ 送付データのパスワード設定

仕事によっては、wordで作成したドラフト段階の書面などを送付してもらい、こちらが手を入れて返信する場合があります。この場合、依頼者によっては、添付データにパスワードを設定していることがあります。私自身は、メールの宛先を間違えて送信したということはありませんが、メール誤送信の話は良く耳にします。依頼者の秘密を守るという弁護士の立場からしても、積極的にパスワード設定をするべきでしょう。蛇足ですが、複数の弁護士で作り上げた準備書面で、変更履歴を一部残したままで裁判所に提出したことがあります。致命的なミスではありませんでしたが、非常に恥ずかしい思いをしましたので、wordで作成した書面は、「最終版」で印刷するようにしましょう。

・ パワーポイント等の視覚に訴えるソフト

裁判員制度の開始に伴い何かと話題のパワーポイントですが、使いこなせるのであれば、もちろん仕事の幅は広がると思います。もっとも、これらのソフトは、プレゼン等の際に自分で操作して使えるかという問題と資料として作りこめるかという問題があり、弁護士の仕事としては、前者をマスターすれば十分なのではないかと思っています。プレゼン資料や上場企業の投資家向け資料などを作成する方の話を伺うに、作りこみの作業には、一定の専門性に加え、かなりの時間と労力が必要になりますので、自分で作成するのであれば、ほどほどでよろしいのではないかと思います。また、会社によっては、これらの視覚に訴えるソフトからの揺り戻しもあるようです。曰く「説明を受けた気になるが、要点が伝わってこないし、時間と労力の無駄。A4一枚くらいの手元資料で相手を納得させなければならない。」とのことでした。私も、弁論や証人尋問に通じるところがあると考え、多いに共感しています。

高校生の熱き闘い! 「高校生模擬裁判選手権九州大会」

法教育委員会
柏熊 志薫(60期)

平成21年8月8日、福岡地方裁判所において「高校生模擬裁判選手権九州大会」が実施されました。

1 大会の意義・狙い

この大会は、高校生が、1つの事件を素材に法律実務家の支援を受けながら、検察チーム、弁護チームを作り、高校生自身の発想で争点を見つけ出し、整理し、法廷で冒頭陳述、証人尋問・被告人質問、論告・弁論を行うものです。刑事法廷で要求される最低限のルールに則り、参加各校の生徒が検察側と弁護側に分かれて知力を尽くして闘う経験を通じて、物事のとらえ方やそれを表現する方法を学び、刑事手続の意味や刑事裁判の原則を理解することを狙いとしています。

選手権そのものは2年前から関東大会、関西大会が行われており、今年で3回目となりました。日弁連が単独で主催してきたのですが、今年は裁判所と検察庁の共催によって、裁判所の法廷を実際に使った臨場感あふれる大会となりました。 九州大会は今年初めての実施となり、福岡県立福岡高校、福岡県立小倉高校、久留米大学附設高校、佐賀県立佐賀西高校の4校が出場しました。

2 事案の概要と争点

事案は、正月、かねてからの知り合いであった被害者が被告人宅に新年の挨拶に来ていたところ、被害者が酔った勢いで自慢話を執拗に繰り広げたことが原因で口論となり、被害者の「撃てるなら撃ってみろ。」という挑発に耐えかねて、被告人が別の部屋から散弾銃を持ち出して引き金を引き、弾を被害者の肩に当てて傷害を負わせたという殺人未遂被告事件です。

本件では殺意の有無が争点となりました。被告人は散弾銃に弾が入っていることがわかっていて被害者を殺害するために敢えて発砲したというのが検察官の主張です。これに対して、被告人・弁護人側は、普段は猟銃を厳重に管理して弾を抜いて安全装置も確認していたのに、今回はその確認をうっかり忘れていたのであり誤射であると主張しました。

3 高校生の迫力あるエネルギッシュな論戦!!

出場選手の高校生は、みんな、大きな声ではっきりとわかりやすい言葉を使って尋問、弁論等を行っていました。緊張していたと思いますが、そのような素振りは全く見せずに堂々と落ち着いた闘いぶりで本当に頼もしいものがありました。

印象的な場面の1つとして、弁護チームが、被告人質問の際に被告人役の生徒に犯行を再現させるところがありました。散弾銃の模型を被告人に持たせて、通常の構え方と、今回被害者に発砲したときの持ち方を比較するという手法です。普段は両手で構えて肩で銃をしっかりと支えて照準を合わせていたのに対して、事件当時は片手で腕を伸ばした状態で持っていました。本当に殺意があったのだとすれば狙いを定めて普段通りに銃を構えたはずだというのです。また、このときにメジャーを使って犯行当時の被告人と被害者の距離も再現していました。

この視覚に訴える尋問の効果は抜群で、これが本当に裁判員裁判で行われていたとしたら、心証形成に大きく影響するのではないかと思ったほどでした。 尋問中には「異議あり!」の声も頻繁に出ました。尋問担当者が質問を撤回することも数々あり、異議の効果は十分に発揮されていました。

4 栄えある優勝校は・・・

九州大会では、福岡県立福岡高校が優勝しました。 同校は、前述の猟銃の模型を作ってきただけではなく、論告・弁論ではキーワードが両面に大きく書かれたスケッチブックを高くかざして審査員席、傍聴人席の双方向に見えるようにしていた等の工夫をしており、事前に相当の準備をしていたことが随所に現れていました。リーダーの女子生徒は、「大会まではみんな部活を休んで全てを注ぎ込んできた。本当に嬉しい。」と感想を述べていました。

残念ながら優勝を逃してしまった3校の選手達はとても悔しかったと思います。しかし、力を尽くして闘い抜いた充実感が表情に出ていて、閉会式後の記念撮影ではみんなの笑顔が見えました。出場校の選手達全員に対して温かい拍手が贈られました。 各校が優勝に向けて力を合わせて頑張る、そのプロセス自体に、この大会の意義が見出せると感じました。

5 審査員によるスカウト!?

審査員は、法曹関係者(弁護士、検察官、裁判官)の他に、学者、マスコミ等様々な分野の方が引き受けてくださいました。

閉会式の際には各審査員からの講評がありました。高校生とは思えない立派な冒頭陳述、尋問、論告・弁論に舌を巻いたという感想が多く、中には、「じわじわと被告人を追い詰めていく尋問に感心した。即戦力になるから是非うちの役所(検察庁)へ来て欲しい。」というスカウトもありました(笑)。

6 来年に向けた抱負 聞くところによると、ある支援弁護士は、優勝を逃してとても悔しかったようで、早くも来年に向けた必勝法を考えている、とのことでした。選手である高校生だけではなく、支援弁護士も熱くなれる選手権ですね。

高校生模擬裁判選手権はまだ始まったばかりの若いイベントです。実施回数を重ねていく中で、主催者側も課題をその都度克服しつつ、より良い大会へと熟成していくことを願っています。

是非、来年以降の大会には会員の皆様も足をお運びください。高校生の活き活きとした鋭気に刺激を受けること請け合いです!

2008年11月 1日

「バガージマヌパナス」(池上永一・文春文庫)

会 員  佐 藤  至(35期)

月報委員会では、この「私の一冊」をシリーズ化するつもりらしい。そうすると、この原稿はプロ野球で言えば、開幕戦の、それも第一球ということになる。ならば、ここはやっぱり、剛速球でいくか(例えば「おそろし」※1)、いや、内角を鋭くえぐるシュートでいくか(例えば「黒の狩人」※2)、いやいや、ここは緩いカーブでいくか(例えば「雪沼の風景」※3)と散々悩んだが、ここは大きく裏をかいてレッドソックスのウェイクフィールドばりのナックル(※4)で… ということで「バガージマヌパナス」(わが島のはなし)。

この小説は、作者の実質的なデビュー作で、第6回のファンタジーノベル大賞を受賞している。このファンタジーノベル大賞という賞はなかなかユニークな文学賞で、酒見賢一(※5)、森見登美彦(※6)、鈴木光司(※7)らが受賞している。

さて、この物語は、石垣島(と思われる)を舞台とするものである。主人公は中宗根綾乃、19歳の美しい娘である。しかし、態度はあまり芳しいものではない。最初の登場場面からして、「島に絶えず吹く潮の香りをたっぷりと含んだ海風に、彼女は豊かな髪を靡かせている。赤く小さなかたちのよい唇から、奥歯をのぞかせて、ポカンと口を開けていた」と書かれているくらいである。話は、この主人公とオージャーガンマー(「大謝(おおじゃ)家の次女」という意味)という86歳のおばあさんの交遊を中心に進んでいく。このおばあちゃんがまた、魅力的ではあるが、しまりがない。何せ「いつも、子供用の造花を散りばめたピンクのサンダルを履いて」、「左右別々のサンダルで」、「髪はオレンジ色に染め上げて、フワフワした綿菓子のようなヘアースタイル」という登場の仕方である。小説の前半は、南国のこと、ゆっくりと、また、あまり締まりなく進行する。二人のユンタク(お喋り)と散歩が、否応なく本土のグローバリズムに飲み込まれて行かざるを得ない琉球弧の悲しみを混ぜながら続く。そして、小説の会話の一部は、地の言葉で語られていく。ワジワジー(不愉快だ)、チャースガヒャー(どうしよう)、コンマーハイットン、ヤナファーナーヤ、バラリンドー(急所にあたったぞ、このあまぁ、叩き殺すぞ)などなど、非常に軽やかな言葉が続く。それは沖縄方言という失礼な言い方をすべきではなく、琉球言葉とでもいうべきリズミカルな言語である。

そして、物語は中盤から、琉球の宗教世界が絡み、急展開していく。まず、琉球の神様が登場するが、この神様は、本土の神様のように「念仏を唱えさえすれば救われる」というようなヤワな神様ではない。人に嫌なことを押しつけ、言うことを聞かないと、電撃を加えたり、サリンドー(殺す)と脅したり、病気を押しつけるというとんでもない神様なのである。そもそも、登場するときから「神様はこれまでとは違い、鈍感な綾乃に神様の威厳を示そうと後光を背負っていた。肩がこるのでよっぽどの場合でないと背負わないものぐさな神様である。後光の出力は千二百ワットのフルチャージだ」という登場の仕方である。この神様が主人公にユタ(巫女)になるよう命じるあたりから、物語は呪術的世界の中で展開されていく。そして、ここにもう一人、「カニメガ」という魅力的な人物が登場する。カニメガは純粋のユタで、他人の家に乗り込んでは「ウガンブスクー!」(拝み不足)と叫びながら島の人々に祈祷を強要していく。そして、「大謝、大謝といえば、あのオージャーガンマーの家か。得体の知れない婆さんどもが住んでいて、いりびたりの不良娘と三人で悪さのかぎりを尽くしている厄介者のことか」と言って、主人公らと対立しながら狂言回しの役割を果たしていく。小説は、これらの人物や神様との間の交流や喧嘩を、グソー(あの世)、ツカサ(一種のシャーマン)、アンガマー(死者の仮面)、トートーメー(先祖の位牌)などの事象や表現を交えながら、特異な宗教世界の中で進んでいき、そして、一つの出来事を経て、静かに終わっていく。人間がどんな生き方をしようと、琉球弧の時間の流れと自然は、当面、変わることはないと思うよ… というような終わり方である。

この小説は、波瀾万丈の物語とか、アッと驚く大トリックとか、読んで人生観が変わるというようなものではないが、何とも可愛らしく、一寸、叙情的で魅力的な小品である。作者は、この後、「僕のキャノン」、「風車祭(カジマヤー)」等の琉球の物語を書いた後、突然、「シャングリ・ラ」という未来の東京を舞台とした、とんでもないホラ話を書いているが、さらに最近作として「テンペスト」という江戸末期の沖縄を舞台とした大作(上下2巻)を発表している。「バガージマヌパナス」を気に入った方は、全く色合いは違うが、この小説もお気に召すのではないだろうか。併読をお勧めする。

※1 [三島屋変調百物語事始]宮部みゆきの最新作

※2 大沢在昌の最新作

※3 堀江敏幸の谷崎潤一郎賞、川端康成文学賞、木山捷平文学賞受賞作

※4 ボールを押し出すような形で投げる変化球の一種。無回転で、手元でスッと落ちると言われている。ニークロ兄弟とウエイクフィールドがナックルボーラーとして有名。

※5 「後宮小説」、「墨攻」、「陋巷に在り」等。

※6 「夜は短し、歩けよ乙女」、「有頂天家族」等。最新作は「美女と竹林」

※7 「楽園」、「らせん」等。

少年付添人日誌

会 員  松 尾 幸太郎(60期)

1 はじめに

ご紹介させていただくのは、私が当番付添人研修という形で初めて少年事件に携わった件です。初めての付添人活動に取り組む中、心強い指導をしてくださったのは、サポート弁護士の小坂昌司先生でした。

2 少年と非行事実

私が付添人となった少年は、19歳の少年でした。両親は健在で、16歳、13歳の弟と9歳、5歳の妹がいる5人兄弟の長男でした。高校を真面目に卒業し、電気工事や危険物取扱等の資格を取得して、職に就いた経験もあるのですが、一つの仕事が長続きせず、無職の状態が続いていました。非行当時は一人暮らしをしており、仕送りを受けていなかった少年は、生活苦に陥った挙句、2ヶ月間で8件もの窃盗事件を単独で犯していました。少年には目立った非行歴はなく、自転車窃盗で簡易送致された事件が1件あるのみでしたが、その手口は常習者さながらに、留守中の隣人宅に侵入する、以前に働いていた工場のロッカールームに人気のない時間帯を狙って侵入する、自販機の釣銭口をバールでこじ開けるといったものでした。

3 試験観察処分に至るまで

初めて少年と面会したときの第1印象は、見るからに真面目そうで大人しく、19歳という割にはまだまだあどけなさが残っていて、いかなる犯罪とも無縁の存在に思えました。この少年が現に侵入盗や自販機荒らしを繰り返して捕まっているとはにわかに信じがたいものがありました。

一連の非行事実は、生活苦に端を発したものであることは間違いないのですが、まだ未成年なのですから、通常なら両親に経済的援助を求めたり、一人暮らしをやめて実家に戻るという選択肢もあるはずなのですが、なぜか少年は他人から金品を盗むことによりその場をしのぐという選択をとっていました。この不自然な行動の背景に少年の抱える問題が隠されていました。

面会当初、少年は、「自分は誰からも必要とされていないのだから、どうなってもいい。」、「自分は少年院送りになってもかまわない。」、「自分には居場所がないので、社会に復帰しても実家には戻りたくない。」などと自暴自棄的な発言をしていました。

少年の話を聞いてみると、少年の両親は長年に亘って不仲な状況にあり、少年は幼少時からそのような両親の姿を見て育ってきたのであって、少年にとって家庭とは、安心して生活できる場所ではなかったことがわかりました。また、長男である少年は、新たに弟妹が生まれる度に両親から注がれる愛情が薄れていくのを感じ続けてきたようで、幼少時から両親に甘えることを許されず過度の自立を余儀なくされた少年にとって、両親とは心から頼れる存在ではなかったようです。つまり、少年にとって家庭とは、頼れる存在もおらず、むしろ疎外感、孤立感を募らせる場でしかなかったのです。

もっとも、当初は頑なな態度をとっていた少年も、両親が少年に対し実家に戻って生活を立て直して欲しいと望んでいることを知って、自分を必要としてくれる存在がいることを実感し、それまでの疎外感、孤立感も薄れたようで、家族との関係も修復していきたいと話すようになりました。

一連の非行事実の背景には、少年の成育環境により醸成された少年の自暴自棄的とも自虐的ともとれる考え方が潜んでいること、成育環境は少年自身が選べるものではないことなどを意見書の中でアピールしましたが、少年には家族関係を修復することや仕事を継続することなど、まだまだ心配な点が残っていましたので、小坂先生と相談のうえ、試験観察処分が相当であるとの意見書を提出しました。審判において、少年がこれまでの寂しさを吐露するかのようにむせび泣いていたことが印象に残りました。

4 保護観察処分に至るまで

それから5ヶ月の間、少年は、実家に戻り幼い妹達の面倒をみながら、電気工をしている父親の仕事を真面目に手伝っていました。また、父親とともに被害者のもとを訪れ、謝罪と被害弁償を行っていました。その間の少年は、初めて会ったころの自暴自棄的な様子は見られず、家族とともに落ち着いて社会生活を営んでいました。

そこで、もう少年が非行に走るようなことはないと判断し、不処分が相当であるとの意見書を提出しましたが、非行事実の重大性がネックとなり保護観察処分となりました。

5 おわりに

今回の付添人活動を通じて、少年自らがこころの拠り所を見つける手助けをすることは本当に大切なことだと感じました。やがて保護観察期間が過ぎ一連の出来事が過去のものとなっても、少年がこれからの長い人生を歩んでいくなかで一生の支えになってくれると思うからです。これからも、少年のこころに寄り添えるような付添人活動を目指していきたいです。

あさかぜだより~事務所開設式が行われました~

あさかぜ基金法律事務所運営委員会

事務局長 柴 田 耕太郎(54期)

1 去る平成20年9月26日に、あさかぜ基金法律事務所(以下「あさかぜ事務所」と略します)におきまして、事務所開所式及び披露パーティーが開催されました。当日は、多くの会員にあさかぜ事務所の船出をお祝いして頂き、誠にありがとうございました。

開所式では、日弁連公設事務所・法律相談センター 大沢一實委員長、九州弁護士会連合会 德田靖之理事長、福岡県弁護士会 田邉宜克会長から、それぞれあさかぜ事務所開設の意義についてのお話や初代弁護士である井口夏貴会員へのはなむけの言葉を頂きました。

特に当会の田邉会長からは、あさかぜ事務所の被養成弁護士(=あさかぜ事務所で養成を受け、司法過疎地へ赴任する新任弁護士)に対する技術的支援(=金銭的な支援ではなく、弁護士業務を行う上での技術や事務所経営面の方法といった技術面での支援)を当会が全面的に担っているため、会を挙げて支援しなければならない旨の決意表明がなされました。

その後、先月の月報でも紹介のありました井口夏貴会員から、「しっかり勉強して過疎地へ赴任するんだ」という決意表明がなされるとともに、マスコミ各社からの質疑に応じました。

続いて行われた披露パーティーでは、日本司法支援センター福岡地方事務所 吉野正所長よりご祝辞及び乾杯のご挨拶を頂きました。乾杯用のシャンパンがなかなか皆様に行き届かずにご迷惑をおかけした場面もございましたが、パーティーには井口会員の他、今年12月にあさかぜ事務所に登録予定の細谷修習生と水田修習生も参加し、多くの会員の皆様に叱咤激励を受けておりました。なお、12月には細谷修習生、水田修習生とともに吉澤修習生も登録し、4名体制で執務を行う予定です。

2 あさかぜ事務所は、9月3日に執務を開始し、9月25日には事務所を法人化し、「弁護士法人 あさかぜ基金法律事務所」としてスタートを切りました。

あさかぜ事務所は、いわゆる「都市型公設事務所」の1つですが、「拠点事務所」であって、首都圏や関西圏などに存在する「事件過疎型」の公設事務所ではありません。

「事件過疎型」の公設事務所は、法律扶助事件や国選刑事事件等、費用が低額に留まるため、受任を忌避されがちな事件を積極的に受任することで都市部での普遍的な司法サービスの提供を目指すものです。他方で、「拠点事務所」は、司法過疎地へ赴任する弁護士を養成することに主眼があるため、法律扶助事件や国選事件だけを処理するのではなく、被養成弁護士に幅広い事件を経験させる必要があります。

そのため、「拠点事務所」である「あさかぜ基金法律事務所」が成功するか否かは、いかに多くの会員の皆様が、あさかぜ事務所の弁護士と関わり育てていけるかということにかかっております。被養成弁護士の指導担当弁護士の依頼があった際には積極的に応じて頂きますようよろしくお願いいたします。また、あさかぜ事務所の弁護士は会を挙げて養成していくものですので、指導担当弁護士以外の先生方も、被養成弁護士と共同受任できる事件がございましたら、ご一緒して頂きますようお願い致します。

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