福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

月報記事

2008年7月 1日

情報管理について

会 員  高田 明 (60期)

1.はじめに

私は、ITに関して技術的な理屈はほとんどわかりませんが、ITコラムということでの依頼ですので、情報管理について書いてみようと思います。

「弁護士を殺すのにはナイフはいらない。彼のスーツケースを奪うだけでよい」という法諺がある?(少なくとも似たようなものがあるはずです)ように、弁護士業務において最も重要な義務は、守秘義務であるといっても過言ではありません。その大事な守秘義務を守りながらも、ノートPCを持ち歩いて、効率よく仕事ができたらいいなという願望を達成するために、私が今考えていることをそのまま書かせていただきたいと思います。

2.事件関係記録の持ち出し

修習生時代に「記録」というものに触れるようになり、書記官の方に「記録をなくされたら、私の首が飛びますから」と冗談(?)をいわれながら、法曹にとって秘密を守ることがいかに大事かということを教えられました。

その教育の成果があってか、私は自宅等で仕事をするために、記録を持ち帰ることはしません。自らの情報管理に自信がないので、記録を持ち歩かないのが一番だということです。

しかし、事件関係のファイルをノートPCに入れて持ち歩き、空き時間に準備書面を起案したり、メールをチェックしたりできれば、当然のことながら弁護士業務の効率化を図ることができます。

そこで、できれば持ち歩きたいと考えています。

3.セキュリティ対策

<ノートパソコン>

私は、ノートパソコンには、パスワードをかけています。紛失してしまった時に、ハードに記憶された情報を見ることができないように一定の効果はありそうです。

ただ、拾った人が本気で情報を見ようとすれば、パスワードを入力しなくてもハードディスクを取り出して、情報を見ることは可能だそうです。

そこで、「ドライブロック」といってハードディスクドライブにアクセスできないようにすることができる機能を有するノートパソコンが販売されていて、次にノートパソコンを購入する際には、それを買おうかと考えています。そこまですれば、自筆の大学ノートを持ち歩くよりよほど安全な気がしますし、事件関係の情報を入れて持ち歩いてもいいのではないかという気がしています。

<USBメモリー>

私は、指紋認証つきのUSBメモリーを使っています。デスクトップ型に差し込むときには、非常に不恰好なことになってしまいますが、これもメモリー自体をロックでき安心できそうです。それだけにととまらず、第三者のPCに接続された段階で、格納された情報をすべて消去し、読みとれないようにするという機能がついたものもあるそうです。そこまですれば、事件関係の情報を入れて持ち歩いてもいいのではないかという気がします。

4.雑感

とりとめのない雑文を書いてきましたが、守秘義務は弁護士生命に関わる重大問題ですので、どれほどのセキュリティーレベルで満足するか、結局人それぞれだと思います。

ただ、私自身はこれから、最新(細心?)の注意を払っているといえるモノを購入して、ノートパソコン等に入れた情報の持ち歩きに挑戦していこうと考えています。

2008年5月30日

中小企業のためのシンポジウム報告

会員 石井 謙一(59期)

1 本年3月8日、日本弁護士連合会との共催で、NTT夢天神ホール及びエルガーラホールにて、中小企業のためのシンポジウム及び無料法律相談会を実施しました。
シンポジウムは基調講演とパネルディスカッションという2部構成とし、基調講演は、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で企業再建弁護士として取り上げられた東京弁護士会の村松謙一先生にお願いしました。

2 村松先生のご講演は、まさに目からウロコのすばらしいお話でした。
また、法律の専門家でなくても十分に理解できるような分かりやすいお話で、かつ、中小企業経営者の方々にとっては、たいへん勇気づけられる内容のご講演だったと思います。
まさに「中小企業のための」シンポジウムにふさわしいご講演でした。
このすばらしいご講演を、たった30名の方にしかお聞かせできなかったことは、残念で仕方ありません(この点は担当委員である私の初動が遅く、広報が不十分だったことによるもので、反省しきりです。)。
私がご紹介するとそのすばらしさが十分にお伝えできないかもしれませんが、以下簡単にご紹介させていただきます。

3 皆さんは、「絶対に企業をつぶしてはいけない」と考えたことがおありでしょうか。
私はありません。多くの方も考えられたことはないのではないかと想像します。
しかし、村松先生は、「絶対に企業をつぶしてはいけない」、という信念をもっておられます。
こう書くと、「そんな無茶な。」と思われる方も多くおられるでしょう。
しかし、村松先生のお話を聞いておられれば、同じ気持ちになられたと思います。
村松先生は、もともと東京で勤務弁護士として倒産関係の仕事をしておられましたが、その際、相談を受けていた中小企業経営者が企業の存続が難しいと知り、取引先に対する罪悪感から自ら命を断ってしまうという事件が起こりました。
この事件から、村松先生は、企業を守ることは人の命を守ることであると思い至られました。
当然、企業の倒産のたびに経営者が自殺するわけではありません。
しかし、我々は、このような視点を忘れているのではないでしょうか。村松先生のお話を聞いて、私は、企業の倒産事件を処理するとき、経営者にとって企業がどれほど大切なものか考えたことがほとんどないことに気づきました。安易に、事業の継続は無理だと決めつけ、破産することを勧めてきたように思います。
私は、これからは、村松先生の言葉を思い出しながら相談に臨もうと思っています。「弁護士の仕事は人を護る仕事です。だから絶対に見捨てない。」

4 では、その信念をもってどうやって企業を守るのか。
企業再建の手法についてのお話は我々弁護士にとってはとても参考になるものでした。
詳しくはここでは触れませんが、一部ご紹介させていただきますと、法的手続を利用しない場合の考え方として、銀行と取引先を分けて考えるというお話が印象的でした。取引先は従来どおり支払を続け、銀行からの借入についてのみ、延長の申し入れや減額の申し入れをするのです。
村松先生のご経験では、銀行は銀行間での平等な取り扱いさえ徹底すれば、銀行のみを対象とする債務整理にも協力してくれるとのことで、今後の実務の参考にしようと思いました。

5 中小企業経営者の方々にとっても、様々な企業再建の手法があり、危機に陥っても心配することはないという村松先生のお話は、とても勇気づけられるものだったのではないでしょうか。

6 後半のパネルディスカッションは、村松先生、福岡商工会議所の経営支援部長の三角薫さん、中小企業基盤整備機構の事業承継コーディネーターをされている中小企業診断士の薗田恭久さん、当会の柳沢賢二先生にパネリストとしてご参加いただき、「中小企業の課題と未来」と題して行いました。
ここでは、主に福岡商工会議所と中小企業基盤整備機構が中小企業支援のためにどのような取り組みをされているのか、ということが紹介されました。
中小企業経営者の方々がこれら支援の取り組みにアクセスされるきっかけとなったのではないかと思います。

7 終了後のアンケートでは、ほとんどの方から「大変役に立った」とのご回答をいただくことができました。今後も今回のような企画を実施してほしいという声も寄せられています。
担当者の打ち上げのときも、とてもいいものになった、参加者が少ないのが残念だったという話になりました。
担当委員は、もう一度村松先生に来ていただきたいという希望を強く持っていますので、もしかしたら、また福岡で講演が実施されるかもしれません。
その際は、是非ご参加されることをお勧めします。

2008年5月21日

私にとっての憲法

筑後部会 会員 紫藤拓也(55期)

1 はじめに

つい最近、筑後部会の「市民向け憲法講座」の紹介をしたばかりだか、再び「憲法リレーエッセイ」で登場になってしまった。
私は、特に憲法問題だけをがんばっているわけではないが、すべての人権活動が憲法問題につながると考え、依頼に応じて筆をとってもいいかという気になる。
しかし、若輩者の55期生にとっては、憲法は未だ現実に見えないというのが、正直なところである。

2 知識としての憲法

学生時代、憲法の単位は取ったが、授業に出かけた記憶がない。
受験時代も、私の場合かなり長いが、学んだのは、図式化した憲法である。おおまか「封建社会から絶対王政が確立する過程で国家という社会のあり方が生み出され、その国家権力を制限し、国民の自由を守ることを目的として憲法が作られた。
その後近代の諸原理が変容を受け現代型の憲法になった。
そこにいう新たな諸原理にはこれこれがあり、憲法は目的である人権保障を達成するための手段として統治機構を規定している。残りは各論として条文と判例がある」というものである。「国家」と「国民」を対立させた図式と「人権」と「統治」を対立させた図式があれば、憲法全体の理解をしたと思い込むことができた。

しかも、それぞれの時代の憲法が生まれた背景に関しても、世界史や日本史などの大学受験レベルの歴史の知識に加えて、史実かどうか判然としない架空の小説に登場する歴史観しか持ち合わせていない。誠に恥ずかしいが、私の憲法の理解はこの程度である。

3 具体的事件における憲法

 だから、弁護士になっても、「これって人権問題ですよね」と唐突な相談を受けると、回答に窮してしまうのが現実である。

司法の意義に関する知識では、事件性が要求されるので、憲法を実践しようとすると、具体的な事件の中で憲法問題に結びつける必要が出てきてしまう。しかし、具体的な事件では、憲法を使うすべが私にはまだわからない。

人権活動の一環として信じて集団事件にも多数関与しているつもりだが、いつもこのジレンマに陥ってしまう。

憲法改正の議論を眺め、自らは護憲派だと自称してみても、「市民向け憲法講座」の準備をしてみると、自らの無知を思い知ってしまう。
争点についての不十分な知識しか持ち合わせていないのである。

私の世代は、物と情報にあふれ、手を伸ばそうと思えば手に入れられる世代である。

しかし、そのような時代を作り上げることのできた日本国憲法がどのようにしてできたのか、その具体的意味を歴史観を伴って実感できないのである。具体的に憲法を守るあるいは作るという経験もなく、その必要性を具体的に実感できない世代だと思う。

4 見えかけている憲法

ただ、こうした無知な私でも、例えば、刑事事件について、「国家権力による人権侵害が目の前で行われないようにチェックする仕事をしているのだ」と信じて取り組むことはできる。

 集団事件も、過去の人権侵害に対する損害賠償請求事件と平行しながら、同時に将来の人権侵害を防止するための差止請求事件に関与することで、将来に向かって憲法の理念を実践していると信じ込むことはできる。

弁護士になったとき、どんな弁護士になりたいかと問われたときの答えを弁護士会の自己紹介に書いたことを思い出す。それは、ちょうど娘が生まれた頃だったから、「パパの仕事はなに?」と問う娘に対して、「子どもたちの将来を守る仕事よ」と答えられる弁護士になりたいという内容だった。今では、青臭いなあと思うこともあるが、だから私は公害環境事件を中心として人権問題を実践しているのだと自分に言い聞かせることもできているとも思う。

つい最近、その娘が小学校に入学した。入学式の帰りに警ら中の警官に会う機会があり、娘が「ごくろうさまです」とぺこりとお辞儀をすると、その警官が笑顔で敬礼してくれた。

私は、こうしたとき、憲法の平和を感じる。

だから私は、まだ、見えてはいないが、見えかけている憲法があると信じることができる。

2008年4月10日

福岡商工会議所との勉強会 第8回 「ITに関する法律問題」

会員 丸山 和大(56期)

1月24日、「福岡商工会議所との勉強会」第8回が福岡商工会議所ビルにて行なわれました。この勉強会は、中小企業の事業承継に関する法的問題を研究することを主な目的とし、福岡商工会議所職員と当会会員とが参加して月に1回開催されている勉強会です。

第8回勉強会は、事業承継から少し外れて「ITに関する法律問題」というテーマで行なわれました。というのも、昨年12月に行なわれた懇親会の二次会において、福岡商工会議所職員の土斐崎美幸氏が、「意外とITに関する法律相談も多いんですよ。」と発言した(口を滑らした)ことから、その発言を聞きつけた池田耕一郎弁護士が「じゃあ、次回はそのテーマでやろう。発表者は土斐崎さんと…(たまたま近くにいた私に目を付け)丸山さんね。」と決定したからでした。

当日の勉強会は、私が「情報システム開発取引契約における留意点の概要」を報告した後、福岡商工会議所経営支援部主任土斐崎美幸氏が「商工会議所におけるITに関する相談事例」について報告し、相談事例を出席者で検討していくという形式が採られ、午前10時から正午まで行なわれました。出席者は福岡商工会議所の職員が6名、当会会員が8名、合計14名でした。

まず、私の「情報システム開発取引契約における留意点の概要」についてですが、これは昨年4月に経産省の「情報システムの信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会」が公表した「情報システム・モデル取引契約書」をもとに、若干のアレンジを加えて講義しました。

情報システム取引の特徴は、無から有を作ることも珍しくなく、ユーザとベンダ(情報システム会社=開発受託者)の情報格差もあって開発当初においてはユーザが成果物の最終的な完成形を認識していないことも多いということです。このため、ユーザがベンダに開発を丸投げすることが多く、その結果、「自分が想像していたものが違う」「成果物では業務上の使用に耐えられない」といった紛争が頻発することになります。

上記モデル契約書では、このようなリスクを低減させるため、開発のフェーズごとに契約を締結する「多段階契約方式」をとることが提唱されています。例えば、企画プロセスにおいては準委任契約としてのコンサル契約を、開発プロセスでは請負契約としての設計契約を締結するなどです。段階ごとに契約を締結することで、ユーザにとっては開発フェーズごとに自己の注文・委託範囲を認識し、ベンダと交渉することができ、ベンダにとっては自らの受注・受託範囲を明確にすることで責任範囲を限定することができます。

その反面、多段階契約方式ではベンダが自己の責任範囲を小さく「切り取る」ことができ、不当にベンダの責任を軽減することになるのではないか、といった問題点も指摘されています。当日の勉強会においても、弁護士会出席者からこの点を指摘する意見が出されました。個人的意見ですが、ベンダの責任範囲が明確になることはユーザにとっても好ましい側面があること、多段階契約方式は継続的取引における基本契約・個別契約を垂直方向に引き直したものともいえ、従来の継続的取引論に親和性があるように感じられること、などからデメリットよりメリットが大きいと思われ、実際に私は実務で多段階契約方式を推薦しています。

次に、福岡商工会議所の土斐崎主任から、ユーザがベンダを変更した際にベンダが情報システム内の個人データの引渡を拒否するなどした事例など、福岡商工会議所に寄せられた最近の3例のITに関する相談事例が紹介されました。そして、3例を概観したときの問題点として、契約書がないか、あっても極めて杜撰であること、ユーザの問題としてユーザの要望がころころと変わること、ベンダの問題としてベンダの担当者がすぐに変わることなどが報告されました。

土斐崎主任の報告の後は、相談事例の解決方法についてのディスカッションが行なわれ、予定していた2時間を使い切って勉強会が終了しました。

福岡商工会議所との勉強会は毎月開催されており、最近2回は福岡商工会議所に寄せられた具体的相談を題材として議論を交わす形式が採られ、開始当初に比べより中身の濃い勉強会となっています。興味のある方は、ぜひ一度ご出席ください!

2008年2月29日

法教育・消費者教育授業の現場から

法教育委員会  委員 ? 優香 (60期)

1 【はじめに】

平成19年11月29日及び12月13日、春日西中学校において行われた消費者教育授業に、岡精一先生及び千綿俊一郎先生と参加致しました。私にとって、法教育委員会の委員として初めての活動でしたが、法教育の現場を見ることでその重要性や面白さを肌で感じることができ、大変貴重な経験となりました。

2 【授業の概要】

第1回では、友人間でのゲームソフトの売買といった身近な具体例について生徒達に議論をさせた後、契約の拘束力という法律の基本的な考え方を説明しました。その上で、契約を解消できる場合について具体例を通して生徒達に議論させ解説しました。第2回では、クレジット契約のしくみとクレジット契約における三者それぞれのメリット・デメリットを理解させた上で、クレジット契約トラブルの具体例について議論させ、クレジット契約の危険性やトラブルの解決方法を説明しました。

今回の授業の対象は中学3年生で、「よのなか科」という社会科の選択教科を選択した生徒達でした。「よのなか科」とは、よのなかと学校の授業を結び付ける授業で、中学校で学んでいることと実社会を結ぶことを目指して全国規模で行われているそうです。自ら興味を持って授業を選択していたということもあり、生徒達は積極的に議論に参加して意見を述べていました。

3 【現場に参加して】

今回の授業で難しかったことは、(1)教育現場と法律家の役割分担と(2)法教育と消費者教育の観点をうまく取り入れた授業を組み立てることです。

(1)について、中学校の先生が司会進行をし、生徒達が中心となってディスカッションをし、弁護士が解説をするという授業の進め方をしました。生徒を主体としながら、生徒の能力を把握し、生徒の意見の引き出し方に長けている学校の先生が中心に授業を進行し、法的な側面は専門家である弁護士が解説するという役割分担です。法律について基本的な考え方から解きほぐして、中学生でも理解できるようなわかりやすい言葉で伝えることで、自分の足下を見つめ直すよい機会となりました。

(2)について、法教育は、条文や法律知識を教えるのではなく、法律の背景にある基本的な価値観(正義・公平・権威・プライバシー)やそれら価値観を確保し調整するためのルールを学ぶことを主眼としています。一方で、消費者教育は、消費者としてトラブルに巻き込まれないように注意し、巻き込まれた場合の具体的な対処方法を学ぶことを主眼としています。今回は、消費者教育授業ではありましたが、対象が中学生であり、法教育委員会の活動として行われたこともあって、法教育の観点を特に重視しました。消費者としてトラブルに巻き込まれないようにするためには、まずは法律の基本的な価値観やルールを理解していることが大切ですから、消費者教育の前提として法教育が大切だとも言えます。

当初は、「契約書がないと口約束だけではだめじゃない?」等、契約の意味も十分に理解できていなかった生徒達が、次第に「契約は守らないといけないのが原則。でも今回は守らせると〜だからかわいそうじゃない?」等、利害の対立にも目を向けながら議論するとができるようになっていく姿を見て、法教育として一定の効果があったことを実感しました。

4 【最後に】

消費者問題の他、身近な契約トラブル、凶悪な刑事事件等様々な事件が日々起きていますが、法律の背景にある基本的な価値観やルールを理解していれば防ぐことができる事件は多く、そのためにも法教育は重要だと言えます。また、裁判員制度のスタートを控え、法律が国民にますます身近なものとなってきた現在において、私たち法曹には、個別具体的な紛争を解決するだけでなく、より広い視点から、法律の背景にある基本的な価値観やルールを国民に広めていく役割が重要になってきていると思います。法教育は新しい分野として多くの可能性を秘めており、様々な分野をつなぐ架け橋になると思います。今後、法教育が広く認知され浸透していくために積極的に活動に取り組んでいきたいと思います。

当番弁護士日誌

会員 柳 優香(60期)

1 【初めての当番弁護士出動】

「当番が入ったんだけど、明日行ってくれない?」。ボスの一声に「はい!」と答える(しかない)私。

こうして、期待と不安の入り交じった中、私の初めての当番弁護士活動が始まりました。

2 【接見〜受任】

被疑者XさんはA国へ密航をしようとしたA国人を案内役の男性とともに、車で港まで送迎し、不法出国を手伝ったとして、入管法違反幇助の容疑で逮捕されました。

Xさんによれば、友人に観光案内の運転手のアルバイトと聞いて行ったのであり、密航しようとしていたことは知らなかったとのこと。しかし、私が接見に行った時点では、警察官に「今思えば、密航かもしれないと思うだろう。」「観光旅行者にしては荷物が少ないと思っただろう。」等誘導され、既に「おかしいな、まさか密航するつもりかなと思いました。」「観光旅行者にしては荷物が少ないと思いました。」といった自白調書をとられていました。

私は、Xさんに、黙秘権、署名押印拒否権、調書訂正申立権があること等を説明して、今考えたことではなく当時思っていたことを言うこと、自分の言い分を貫くことを言い聞かせました。Xさんには十分な資力がなかったため扶助で受任することになりました。

3 【弁護活動】

私は、Xさんは留学生であることから、起訴されてしまうと学生の身分を失い、在留資格をも失う恐れがあったため、何としても不起訴にすることを目標に活動を始めました。

まず、否認事件であったこともあり、被疑者ノートを差し入れて取調べ状況等を記録させました。また、身柄拘束中は学校を無断欠席という状態でしたし、年明けには進級試験を控えていたため、早期に身柄解放しなければならないと思い、捜査状況等を見ながら勾留期間が延長された場合には準抗告をすることにしました。まず、準備として、Xさんのアルバイト先の雇用主に身元引受人になってもらい、友人に嘆願書を書いてもらいました。

また、念のためにXさんに運転手のアルバイトを紹介したという友人に話を聞いて、Xさんの言い分の裏をとっておきました。そうしているうちにあっという間に10日間が経過し、勾留期間が延長されたのですぐに準抗告をしました。Xさんには犯罪の嫌疑がないこと、勾留延長をしなければならない「やむを得ない事由」がないこと等をしつこく書いたのですが、棄却されてしまいました。残念な結果でしたが、アルバイト先の雇用主や友人の協力を得ることで、Xさんを勇気づけることができましたし、Xさんとの信頼関係を築く上でも一定の成果があったと思います。

4 【最終結果】

勾留満期の前日、担当検事から「明日の午前中に釈放します。」とのうれしい連絡がありました。最後に、Xさんが、学校や在留資格の関係で今後のことを不安に思っていたので、念のために「不起訴処分告知書」の交付請求をして、私の弁護活動は終わりました。初めて単独で刑事事件をして、最初に勾留状謄本を取り忘れたり、準抗告すべきなのか迷ったりと、失敗もたくさんしましたが、Xさんや関係者に御礼を言われたときには心からうれしく思いました。

今回の事件を通して、刑事事件は処分結果次第で、被疑者の将来を大きく左右すること、被疑者段階で弁護人が付くことが重要であることを実感し、その責任の重さを痛感しました。今後も、刑事弁護に関わってその責任を全うしていきたいと思います。

2007年11月 1日

IT コラム わたしとIT

福岡県弁護士会職員 梁井 香織

こんにちは!今回ITコラムを担当することになりましたやない梁井香織です。初めまして…という方も大勢いらっしゃるので、まずは少しだけ自己紹介をさせていただきます。私は、今年の3月に大学を卒業し、4月から弁護士会の正職員としてお世話になっています。最近、体力の低下とお肌の曲がり角をしみじみと感じている23歳です。それと、実は私もHP委員会の担当職員に仲間入りしたのですが、まだ1回もHP委員会のお仕事をさせて頂いたことはなく、このITコラムが初仕事となりました。というわけで、ITコラム始めさせていただきます〜。

脳内メーカー

日頃、仕事以外で滅多にパソコンと向き合うことのない私が、最近はまったのが、脳内メーカー。脳内メーカーとは、占いでも診断でも無く、あくまでお遊びのジョークツールであり、字画などの占い的要素や、統計学などの学術的要素などの根拠は一切無く、入力された文字列からランダムに結果を弾き出しているに過ぎないものらしい。しかし、それが意外と面白く、TVで紹介され火がつき、今ではアクセスが5億件を突破したという。私もまんまとはまってしまったのです。

筑後弁護士会館

ちなみに、私の脳内は、真ん中に1つだけ「悩」がある以外、他は全部「愛」でした(右図)。何か、愛に悩んでいるか、愛の事しか考えてない子みたいですね…(笑)。

ちなみに、前世の脳内や脳内フェチ、脳内相性等も見る事ができるんです。他にも、家族や友人の名前を入れてみたりして楽しんでいます。意外な結果が出てきて面白いので、脳内メーカーをしたことがない方、是非してみてください!!

コブクロHP

私が唯一定期的に見ているサイトが、コブクロのHP。昨年発売したベストアルバムがロングヒットしたことで、コブクロを知った方も大勢いらっしゃると思います。私が初めて本物のコブクロを見たのが、大学1年生の時、彼らが天神のソラリアプラザで歌っている姿でした。それから、3年後、大学4年生の時、初めてコンサートに行き、更にファンになりました。それからは、コブクロのサイトに接続しては、日記やイベント、各地で行われたコンサートの写真やコメントをチェックしています。今年もコンサートに行ってきました?!!「来年のコンサートのチケットも取るぞッ!」と意気込んでいる今日この頃です♪

携帯電話について

携帯電話は今や、電話とメールだけではなく、様々な機能を持ち合わせています。しかし、面倒くさがりな私は説明書を読むのが大の苦手…。自ずと、携帯電話で使用する機能は、電話とメール、着うたのダウンロード。あとは、大学生の時にやっと覚えた電車の時刻を調べることくらいです。多機能すぎて使い方が分からなくなります。他の人達の携帯電話の活用の仕方を聞くと、「そんな機能あるの??」っと、ただ感心するばかりです。まして、ギャル文字なんて、チンプンカンプン。

私が最初に持ったのはPHSで、中学校を卒業してすぐの頃でした。今の携帯電話と比べたら、画面も小さく、色も単色で、機能もそれほどのものでした。高校1年生の時、ドコモの携帯電話に替え、意気揚々としていたのですが、ここで問題が…。自宅が田舎のせいか、家の1階にいると電波が入らず、メールはセンターに止まり、電話をすると切れてしまう始末……(1時間電話をすると、2,3回は切れてしまうのです)。電話がかかってくると、2階へダッシュしては、電波の棒を限界まで伸ばしブンブン振って歩き回り電波を探す日々が続きました…。FOMAが出た当初、あまりに電波が悪いのでFOMAに替えようと店頭へ向かい、心配になってエリアを聞いてみたところ、店員さんから一言、(地図を指さして)「ここの道を挟んで向こう側は、FOMAエリア外です。」とのこと。私の自宅は、見事エリア外でした(今では無事エリア内に入りましたが♪)。携帯電話にあまり良い思い出がないのです。

皆さんは、携帯電話どのように活用していらっしゃいますか〜??

終わりに

ITコラムってこんな感じでよろしいのでしょうか?文章が苦手なもので、まとまりがなくてすみません…。まだ働き始めて半年とちょっとなので、至らない点が多々あると思いますが、宜しくお願い致します!!

2007年10月 1日

取調べの可視化シンポジウム報告

会員 石井 謙一(59期)

平成19年9月1日、天神ビル11階において、福岡県弁護士会主催、九州弁護士連合会共催の取調べの可視>約120名の方が足を運ばれ、報道関係者も多数詰めかけました。

1 取調べの録音テープ

シンポジウムの冒頭では、ある窃盗事件の事実上の被疑者として任意の取調べを受けた方が、取調室に録音機を持ち込んで取調べの状況を録音したテープが流されました。
テープの内容は、取調官が闇金業者の取立の電話顔負けの勢いで怒号しながら、自白しなければ任意の取調べをやめて逮捕するぞ、と迫っているという衝撃的なものでした。
私も、この耳で取調べの状況を実際に聞いたのは初めてでしたが、このような違法な取調べが現実に行われているのだということを知って、来場者の多くの方も驚かれたことと思います。
取調べの全過程が可視化されれば、このような違法な取調べをすることができないことは当然です。やはり、違法な取調べはなくさなければならず、そのためには取調べの全過程の可視化を実現するしかない、と強く感じました。

2 各種報告

前記のように、取調べ可視化の最大の意義は、違法取調べをなくすというところにあると言えます。
しかし、取調べの可視化の意義は、それだけではありません。
従前、自白の任意性が争点となり、この点の立証のために多大な時間が費やされてきましたが、裁判員をこのような審理のために拘束することは制度の円滑な運用を大きく妨げることになります。
よって、今後実施が予定されている裁判員制度との関係でも、取調べの全過程の可視化は不可欠であると言えます。

この点について、有馬裕先生から、現実に自白の任意性が争点となった事件を題材として詳細な報告がなされました。
さらに、甲木真哉先生からは、諸外国における可視化の状況、及びわが国における可視化に関する議論の状況について、報告がなされました。
諸外国の可視化実施の状況からすれば、わが国でも取調べの全過程の可視化が可能であること、わが国における可視化反対論に理由がないこと、取調べの一部のみの可視化では、現在の取調べをめぐる問題は全く解消されないことがわかりやすく報告されました。

3 当事者の生の声

シンポジウムでは、最近違法取調べが問題となった鹿児島選挙違反事件、佐賀北方事件、大阪地裁所長オヤジ狩り事件を題材としましたが、それぞれの事件を実際に弁護人として担当された先生方をお招きして、事件について詳しいお話を聞くことができました。
さらに、鹿児島選挙違反事件の元被告人ご本人と大阪地裁所長オヤジ狩り事件の被告人ご本人にも来ていただき、実際に違法取調べを受けた方の生の声を聞くことができました。
これらの事件でいかにひどい取調べがなされ、公判廷でいかなる攻防がくりひろげられたのか、ということが生々しく語られました。このように、実際に違法取調べを受けた方や、事件を担当された弁護人の先生方から、直接お話を聞くことができるというのはたいへん貴重な機会であったと思います。

4 さいごに

シンポジウムには、一般の方も多数来場されていていましたし、冒頭で配布した質問票の提出を呼びかけたところ、会場からは多数の質問票が提出されました。裁判員制度実施に向けて、刑事司法に対する社会全体の関心も高まっているのだと実感させられました。
ただ、一般市民の方が、自分もいつこのような取調べの対象となるか分からないという危機感をもたれているということは感じられなかったので、その点についてもう少し市民の理解を得られれば、この活動はもっと広がるのではないかと感じました。
おそらく弁護士全員が、日々の業務を通じて、現在の取調べの問題性を強く感じておられることと思います。今回のシンポジウムは、可視化の必要性の根拠を明確に提示した点で、今後の可視化に向けた活動にとって意義深いものであったと思います。

IT コラム E MOBILEを使ってみると

会員 森 竹彦(16期)

イー・モバイル株式会社は、“モバイル通信の世界でブロードバンド革命を実現する”と、受信最大通信速度3.6MbpsのHSDPA通信サービス『EMモバイルブロードバンド』を今年3月から東京、大阪などで始めました。伝え聞いて、うらやましく思っていたのですが、福岡ではまだだろうとたかをくくっていたところ、なんと7月中旬、端末を売っているのを見つけました。しかも宣伝期間は機材費1円だというので早速購入しました。

これまで、モバイルの通信にはウイルコムのAir-H'に頼ってきました。が、なにしろ速度は64kbs。その後倍速や8倍速までは出るようになりましたが、8倍速だって500kbs。しかも端末の買い換えが必要とあって倍速で我慢してきました。事務所では光ケーブルでの早さを体感しているだけに、Air-H'の遅さにはいらいらさせられ通しでしたから、最大速度3.6Mbpsといわれたらその早さの魅力に負けました。

注文してからチップのセットが済んで機材が渡されるまで約30分。すぐ持って帰り、セットアップ。CDをノートPCにいれて指示通りすれば出来上がり、なんの問題もありませんでした。

早速端末カードをノートPCに入れ、画面デスクトップにあるユーティティをクリックすると、すぐに通信可能となります。私の場合はすでに他のプロバイダーと契約しAir-H'での通信をしていたので、その通信環境がそのまま引き継がれ、メールもインターネットもすぐさま可能でした。

果たしてどれくらいの速度が実際に出ているのか?gooの通信速度測定を利用して計測したところ、受信速度で大体2.3〜2.4Mbpsでした。まあ、ADSLなみというところでしょうか。

問題は、現在のところサービスエリアが極めて狭いことです。福岡では福岡市部程度(全部ではない)、福岡県で使用できるのはこの福岡市と北九州市の中心部だけで、残念ながら飯塚も久留米も直方も柳川も使えません。全国で見ても東京、大阪、名古屋、札幌、仙台、広島と東京と有数地方都市では可能ですが他ではほとんど使えません。しかし拡大強化に取り組んでいるようで毎月少しづつ広がっている(アンテナを立てている)様子からすると、数年でかなりの範囲をカバーするだろうということは出来ましょう。福岡市中央区で利用する限りは不足なしということです。

IT コラムIT初心者のIT活用(?)法

会員 後藤 富和(55期)

コンピューターやインターネットについては、使ってはいるけれど理屈は分からない、手引書や説明書を読んだこともなく見よう見真似で覚えたに過ぎないIT初心者の私にとって、このコラムの執筆は不適任だと思うのですが、私と同様にIT初心者の方もいらっしゃると思いますので、その方々に向けて書きたいと思います。

【ノートパソコン】
出張が多いので、使用しているパソコンは、スペック云々よりも耐加重90キロという頑丈さと重量2キロ以下という軽さで選んだノートパソコンです。その代わりデザインはダサダサです。

【PHS・無線LAN】
出張時には、このパソコンにカード式のPHSを差し込んで、電波が届くところどこでもメールの送受信、インターネットの接続が可能な状態にしています。

また、日弁連会館は無線LANが完備されています。日弁連の事務局に自分のパソコンを持参すれば、日弁連会館で無線LANが利用できるように設定をしてくれます。ですから、日弁連会館では、自分のパソコンの電源を入れるだけで、LANに接続されます。

このように、どこでもメールの送受信やインターネットの接続が可能な状態にし、事務局員への指示や準備書面の起案提出などが出張中でもできるようになります。外部からの電話がかかってこない分、出張中の方が効率的に書面を書けたりします。この原稿も、熊本出張中に出先で書いて送信したものです。

【リモートメール】
パソコンを開くことが出来環境では、私はリモートメール(リモメ)を利用して、パソコンのアドレス宛に来ているメールを携帯電話でチェックするようにしています。この機能は、メールの「転送」ではなく「覗き見る」だけですから、携帯でメールをチェックしてもパソコンで再度、そのメールを受信することが出来ます。朝、息子を幼稚園に送って事務所まで歩く間にリモメでメールをチェックするようにしています。

【PDF・インターネットディスク】
ノートパソコンを持ち歩くことで、出先でも準備書面を起案しそれを事務所に送信して提出するということが可能です。ただ、準備書面を書くために相手方から届いた書面や資料などを確認する必要がありますが、いちいち記録を持ち運ぶのは大変ですし、また、FAXで届いた相手方からの書面を出先で見たいという時に困ります。そういう時には、事務員に書面をスキャナーで読み取ってもらいPDF化(電子情報化)し、メールに添付して送ってもらうようにしています。そうする事で、出先でも書面が読めるようになります。

また、インターネット上にインターネットディスクという貸し倉庫のような物を借りていますので、書面の量が多い場合や画像などデータが重い場合は、インターネットディスクにアップしてもらい、そこにアクセスしてそれらを何時でもどこでも見ることができるようにしています。

私が加入している「よみがえれ!有明海弁護団」でも準備書面や、書証、資料をインターネットディスクにアップして、弁護団員がいつでも閲覧・取得できる状態にしています。紙資源消費の削減にもなりますし、いちいち書棚から必要な書面を探さなければならない手間が省けます。弁護団を組むような大規模な事件においては、インターネットディスクなどの活用が必須になってくると思います。

昨年、委員をした日弁連人権大会実行委員会でも、インターネットディスクと同様のブリーフケースをネット上に設置していました。これにより数百ページに及ぶ人権大会報告書の起案をスムーズに行うことができました。

【パワーポイント・プロジェクター】
近時、憲法に対する市民の関心が高まっており、度々、憲法講演の依頼を受けます。その際、プロジェクターを持参して、パワーポイントを使って講演をするようにしています。プロジェクターに付属していたリモコンを使えば、パソコンを遠隔操作することが出来るので、パソコンの前に座ったままでなく、通常の講演のように自由に動き回りながら、講演をすることが可能となります。

【事務所ホームページ】
事務所のホームページは、ホームページビルダーというソフトを使って所員が手作業で作っています。ですから、制作費はかかっていません。このホームページをわが事務所では毎週1回更新するようにしています。ここ数年、ホームページを見てから来たという相談者も増えています。

【今後の計画】
弁護士のスケジュール管理について、わが事務所では、事務員が弁護士の手帳を手書きで書き写して把握するという前近代的な手法によっています。これでは、刻々変化するスケジュールの動向に対応することが出来ません。そこで、電子手帳などを導入して、弁護士が手元でスケジュールを入力したならば、即時に事務局にもその情報が伝わるようなシステムを作りたいと考えています。

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