福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
月報記事
2008年2月29日
法教育・消費者教育授業の現場から
法教育委員会 委員 ? 優香 (60期)
1 【はじめに】
平成19年11月29日及び12月13日、春日西中学校において行われた消費者教育授業に、岡精一先生及び千綿俊一郎先生と参加致しました。私にとって、法教育委員会の委員として初めての活動でしたが、法教育の現場を見ることでその重要性や面白さを肌で感じることができ、大変貴重な経験となりました。
2 【授業の概要】
第1回では、友人間でのゲームソフトの売買といった身近な具体例について生徒達に議論をさせた後、契約の拘束力という法律の基本的な考え方を説明しました。その上で、契約を解消できる場合について具体例を通して生徒達に議論させ解説しました。第2回では、クレジット契約のしくみとクレジット契約における三者それぞれのメリット・デメリットを理解させた上で、クレジット契約トラブルの具体例について議論させ、クレジット契約の危険性やトラブルの解決方法を説明しました。
今回の授業の対象は中学3年生で、「よのなか科」という社会科の選択教科を選択した生徒達でした。「よのなか科」とは、よのなかと学校の授業を結び付ける授業で、中学校で学んでいることと実社会を結ぶことを目指して全国規模で行われているそうです。自ら興味を持って授業を選択していたということもあり、生徒達は積極的に議論に参加して意見を述べていました。
3 【現場に参加して】
今回の授業で難しかったことは、(1)教育現場と法律家の役割分担と(2)法教育と消費者教育の観点をうまく取り入れた授業を組み立てることです。
(1)について、中学校の先生が司会進行をし、生徒達が中心となってディスカッションをし、弁護士が解説をするという授業の進め方をしました。生徒を主体としながら、生徒の能力を把握し、生徒の意見の引き出し方に長けている学校の先生が中心に授業を進行し、法的な側面は専門家である弁護士が解説するという役割分担です。法律について基本的な考え方から解きほぐして、中学生でも理解できるようなわかりやすい言葉で伝えることで、自分の足下を見つめ直すよい機会となりました。
(2)について、法教育は、条文や法律知識を教えるのではなく、法律の背景にある基本的な価値観(正義・公平・権威・プライバシー)やそれら価値観を確保し調整するためのルールを学ぶことを主眼としています。一方で、消費者教育は、消費者としてトラブルに巻き込まれないように注意し、巻き込まれた場合の具体的な対処方法を学ぶことを主眼としています。今回は、消費者教育授業ではありましたが、対象が中学生であり、法教育委員会の活動として行われたこともあって、法教育の観点を特に重視しました。消費者としてトラブルに巻き込まれないようにするためには、まずは法律の基本的な価値観やルールを理解していることが大切ですから、消費者教育の前提として法教育が大切だとも言えます。
当初は、「契約書がないと口約束だけではだめじゃない?」等、契約の意味も十分に理解できていなかった生徒達が、次第に「契約は守らないといけないのが原則。でも今回は守らせると〜だからかわいそうじゃない?」等、利害の対立にも目を向けながら議論するとができるようになっていく姿を見て、法教育として一定の効果があったことを実感しました。
4 【最後に】
消費者問題の他、身近な契約トラブル、凶悪な刑事事件等様々な事件が日々起きていますが、法律の背景にある基本的な価値観やルールを理解していれば防ぐことができる事件は多く、そのためにも法教育は重要だと言えます。また、裁判員制度のスタートを控え、法律が国民にますます身近なものとなってきた現在において、私たち法曹には、個別具体的な紛争を解決するだけでなく、より広い視点から、法律の背景にある基本的な価値観やルールを国民に広めていく役割が重要になってきていると思います。法教育は新しい分野として多くの可能性を秘めており、様々な分野をつなぐ架け橋になると思います。今後、法教育が広く認知され浸透していくために積極的に活動に取り組んでいきたいと思います。
当番弁護士日誌
会員 柳 優香(60期)
1 【初めての当番弁護士出動】
「当番が入ったんだけど、明日行ってくれない?」。ボスの一声に「はい!」と答える(しかない)私。
こうして、期待と不安の入り交じった中、私の初めての当番弁護士活動が始まりました。
2 【接見〜受任】
被疑者XさんはA国へ密航をしようとしたA国人を案内役の男性とともに、車で港まで送迎し、不法出国を手伝ったとして、入管法違反幇助の容疑で逮捕されました。
Xさんによれば、友人に観光案内の運転手のアルバイトと聞いて行ったのであり、密航しようとしていたことは知らなかったとのこと。しかし、私が接見に行った時点では、警察官に「今思えば、密航かもしれないと思うだろう。」「観光旅行者にしては荷物が少ないと思っただろう。」等誘導され、既に「おかしいな、まさか密航するつもりかなと思いました。」「観光旅行者にしては荷物が少ないと思いました。」といった自白調書をとられていました。
私は、Xさんに、黙秘権、署名押印拒否権、調書訂正申立権があること等を説明して、今考えたことではなく当時思っていたことを言うこと、自分の言い分を貫くことを言い聞かせました。Xさんには十分な資力がなかったため扶助で受任することになりました。
3 【弁護活動】
私は、Xさんは留学生であることから、起訴されてしまうと学生の身分を失い、在留資格をも失う恐れがあったため、何としても不起訴にすることを目標に活動を始めました。
まず、否認事件であったこともあり、被疑者ノートを差し入れて取調べ状況等を記録させました。また、身柄拘束中は学校を無断欠席という状態でしたし、年明けには進級試験を控えていたため、早期に身柄解放しなければならないと思い、捜査状況等を見ながら勾留期間が延長された場合には準抗告をすることにしました。まず、準備として、Xさんのアルバイト先の雇用主に身元引受人になってもらい、友人に嘆願書を書いてもらいました。
また、念のためにXさんに運転手のアルバイトを紹介したという友人に話を聞いて、Xさんの言い分の裏をとっておきました。そうしているうちにあっという間に10日間が経過し、勾留期間が延長されたのですぐに準抗告をしました。Xさんには犯罪の嫌疑がないこと、勾留延長をしなければならない「やむを得ない事由」がないこと等をしつこく書いたのですが、棄却されてしまいました。残念な結果でしたが、アルバイト先の雇用主や友人の協力を得ることで、Xさんを勇気づけることができましたし、Xさんとの信頼関係を築く上でも一定の成果があったと思います。
4 【最終結果】
勾留満期の前日、担当検事から「明日の午前中に釈放します。」とのうれしい連絡がありました。最後に、Xさんが、学校や在留資格の関係で今後のことを不安に思っていたので、念のために「不起訴処分告知書」の交付請求をして、私の弁護活動は終わりました。初めて単独で刑事事件をして、最初に勾留状謄本を取り忘れたり、準抗告すべきなのか迷ったりと、失敗もたくさんしましたが、Xさんや関係者に御礼を言われたときには心からうれしく思いました。
今回の事件を通して、刑事事件は処分結果次第で、被疑者の将来を大きく左右すること、被疑者段階で弁護人が付くことが重要であることを実感し、その責任の重さを痛感しました。今後も、刑事弁護に関わってその責任を全うしていきたいと思います。
2007年11月 1日
IT コラム わたしとIT
福岡県弁護士会職員 梁井 香織
こんにちは!今回ITコラムを担当することになりましたやない梁井香織です。初めまして…という方も大勢いらっしゃるので、まずは少しだけ自己紹介をさせていただきます。私は、今年の3月に大学を卒業し、4月から弁護士会の正職員としてお世話になっています。最近、体力の低下とお肌の曲がり角をしみじみと感じている23歳です。それと、実は私もHP委員会の担当職員に仲間入りしたのですが、まだ1回もHP委員会のお仕事をさせて頂いたことはなく、このITコラムが初仕事となりました。というわけで、ITコラム始めさせていただきます〜。
脳内メーカー
日頃、仕事以外で滅多にパソコンと向き合うことのない私が、最近はまったのが、脳内メーカー。脳内メーカーとは、占いでも診断でも無く、あくまでお遊びのジョークツールであり、字画などの占い的要素や、統計学などの学術的要素などの根拠は一切無く、入力された文字列からランダムに結果を弾き出しているに過ぎないものらしい。しかし、それが意外と面白く、TVで紹介され火がつき、今ではアクセスが5億件を突破したという。私もまんまとはまってしまったのです。
ちなみに、私の脳内は、真ん中に1つだけ「悩」がある以外、他は全部「愛」でした(右図)。何か、愛に悩んでいるか、愛の事しか考えてない子みたいですね…(笑)。
ちなみに、前世の脳内や脳内フェチ、脳内相性等も見る事ができるんです。他にも、家族や友人の名前を入れてみたりして楽しんでいます。意外な結果が出てきて面白いので、脳内メーカーをしたことがない方、是非してみてください!!
コブクロHP
私が唯一定期的に見ているサイトが、コブクロのHP。昨年発売したベストアルバムがロングヒットしたことで、コブクロを知った方も大勢いらっしゃると思います。私が初めて本物のコブクロを見たのが、大学1年生の時、彼らが天神のソラリアプラザで歌っている姿でした。それから、3年後、大学4年生の時、初めてコンサートに行き、更にファンになりました。それからは、コブクロのサイトに接続しては、日記やイベント、各地で行われたコンサートの写真やコメントをチェックしています。今年もコンサートに行ってきました?!!「来年のコンサートのチケットも取るぞッ!」と意気込んでいる今日この頃です♪
携帯電話について
携帯電話は今や、電話とメールだけではなく、様々な機能を持ち合わせています。しかし、面倒くさがりな私は説明書を読むのが大の苦手…。自ずと、携帯電話で使用する機能は、電話とメール、着うたのダウンロード。あとは、大学生の時にやっと覚えた電車の時刻を調べることくらいです。多機能すぎて使い方が分からなくなります。他の人達の携帯電話の活用の仕方を聞くと、「そんな機能あるの??」っと、ただ感心するばかりです。まして、ギャル文字なんて、チンプンカンプン。
私が最初に持ったのはPHSで、中学校を卒業してすぐの頃でした。今の携帯電話と比べたら、画面も小さく、色も単色で、機能もそれほどのものでした。高校1年生の時、ドコモの携帯電話に替え、意気揚々としていたのですが、ここで問題が…。自宅が田舎のせいか、家の1階にいると電波が入らず、メールはセンターに止まり、電話をすると切れてしまう始末……(1時間電話をすると、2,3回は切れてしまうのです)。電話がかかってくると、2階へダッシュしては、電波の棒を限界まで伸ばしブンブン振って歩き回り電波を探す日々が続きました…。FOMAが出た当初、あまりに電波が悪いのでFOMAに替えようと店頭へ向かい、心配になってエリアを聞いてみたところ、店員さんから一言、(地図を指さして)「ここの道を挟んで向こう側は、FOMAエリア外です。」とのこと。私の自宅は、見事エリア外でした(今では無事エリア内に入りましたが♪)。携帯電話にあまり良い思い出がないのです。
皆さんは、携帯電話どのように活用していらっしゃいますか〜??
終わりに
ITコラムってこんな感じでよろしいのでしょうか?文章が苦手なもので、まとまりがなくてすみません…。まだ働き始めて半年とちょっとなので、至らない点が多々あると思いますが、宜しくお願い致します!!
2007年10月 1日
取調べの可視化シンポジウム報告
会員 石井 謙一(59期)
平成19年9月1日、天神ビル11階において、福岡県弁護士会主催、九州弁護士連合会共催の取調べの可視>
約120名の方が足を運ばれ、報道関係者も多数詰めかけました。1 取調べの録音テープ
シンポジウムの冒頭では、ある窃盗事件の事実上の被疑者として任意の取調べを受けた方が、取調室に録音機を持ち込んで取調べの状況を録音したテープが流されました。
テープの内容は、取調官が闇金業者の取立の電話顔負けの勢いで怒号しながら、自白しなければ任意の取調べをやめて逮捕するぞ、と迫っているという衝撃的なものでした。
私も、この耳で取調べの状況を実際に聞いたのは初めてでしたが、このような違法な取調べが現実に行われているのだということを知って、来場者の多くの方も驚かれたことと思います。
取調べの全過程が可視化されれば、このような違法な取調べをすることができないことは当然です。やはり、違法な取調べはなくさなければならず、そのためには取調べの全過程の可視化を実現するしかない、と強く感じました。
2 各種報告
前記のように、取調べ可視化の最大の意義は、違法取調べをなくすというところにあると言えます。
しかし、取調べの可視化の意義は、それだけではありません。
従前、自白の任意性が争点となり、この点の立証のために多大な時間が費やされてきましたが、裁判員をこのような審理のために拘束することは制度の円滑な運用を大きく妨げることになります。
よって、今後実施が予定されている裁判員制度との関係でも、取調べの全過程の可視化は不可欠であると言えます。
この点について、有馬裕先生から、現実に自白の任意性が争点となった事件を題材として詳細な報告がなされました。
さらに、甲木真哉先生からは、諸外国における可視化の状況、及びわが国における可視化に関する議論の状況について、報告がなされました。
諸外国の可視化実施の状況からすれば、わが国でも取調べの全過程の可視化が可能であること、わが国における可視化反対論に理由がないこと、取調べの一部のみの可視化では、現在の取調べをめぐる問題は全く解消されないことがわかりやすく報告されました。
3 当事者の生の声
シンポジウムでは、最近違法取調べが問題となった鹿児島選挙違反事件、佐賀北方事件、大阪地裁所長オヤジ狩り事件を題材としましたが、それぞれの事件を実際に弁護人として担当された先生方をお招きして、事件について詳しいお話を聞くことができました。
さらに、鹿児島選挙違反事件の元被告人ご本人と大阪地裁所長オヤジ狩り事件の被告人ご本人にも来ていただき、実際に違法取調べを受けた方の生の声を聞くことができました。
これらの事件でいかにひどい取調べがなされ、公判廷でいかなる攻防がくりひろげられたのか、ということが生々しく語られました。このように、実際に違法取調べを受けた方や、事件を担当された弁護人の先生方から、直接お話を聞くことができるというのはたいへん貴重な機会であったと思います。
4 さいごに
シンポジウムには、一般の方も多数来場されていていましたし、冒頭で配布した質問票の提出を呼びかけたところ、会場からは多数の質問票が提出されました。裁判員制度実施に向けて、刑事司法に対する社会全体の関心も高まっているのだと実感させられました。
ただ、一般市民の方が、自分もいつこのような取調べの対象となるか分からないという危機感をもたれているということは感じられなかったので、その点についてもう少し市民の理解を得られれば、この活動はもっと広がるのではないかと感じました。
おそらく弁護士全員が、日々の業務を通じて、現在の取調べの問題性を強く感じておられることと思います。今回のシンポジウムは、可視化の必要性の根拠を明確に提示した点で、今後の可視化に向けた活動にとって意義深いものであったと思います。
IT コラム E MOBILEを使ってみると
会員 森 竹彦(16期)
イー・モバイル株式会社は、“モバイル通信の世界でブロードバンド革命を実現する”と、受信最大通信速度3.6MbpsのHSDPA通信サービス『EMモバイルブロードバンド』を今年3月から東京、大阪などで始めました。伝え聞いて、うらやましく思っていたのですが、福岡ではまだだろうとたかをくくっていたところ、なんと7月中旬、端末を売っているのを見つけました。しかも宣伝期間は機材費1円だというので早速購入しました。
これまで、モバイルの通信にはウイルコムのAir-H'に頼ってきました。が、なにしろ速度は64kbs。その後倍速や8倍速までは出るようになりましたが、8倍速だって500kbs。しかも端末の買い換えが必要とあって倍速で我慢してきました。事務所では光ケーブルでの早さを体感しているだけに、Air-H'の遅さにはいらいらさせられ通しでしたから、最大速度3.6Mbpsといわれたらその早さの魅力に負けました。
注文してからチップのセットが済んで機材が渡されるまで約30分。すぐ持って帰り、セットアップ。CDをノートPCにいれて指示通りすれば出来上がり、なんの問題もありませんでした。
早速端末カードをノートPCに入れ、画面デスクトップにあるユーティティをクリックすると、すぐに通信可能となります。私の場合はすでに他のプロバイダーと契約しAir-H'での通信をしていたので、その通信環境がそのまま引き継がれ、メールもインターネットもすぐさま可能でした。
果たしてどれくらいの速度が実際に出ているのか?gooの通信速度測定を利用して計測したところ、受信速度で大体2.3〜2.4Mbpsでした。まあ、ADSLなみというところでしょうか。
問題は、現在のところサービスエリアが極めて狭いことです。福岡では福岡市部程度(全部ではない)、福岡県で使用できるのはこの福岡市と北九州市の中心部だけで、残念ながら飯塚も久留米も直方も柳川も使えません。全国で見ても東京、大阪、名古屋、札幌、仙台、広島と東京と有数地方都市では可能ですが他ではほとんど使えません。しかし拡大強化に取り組んでいるようで毎月少しづつ広がっている(アンテナを立てている)様子からすると、数年でかなりの範囲をカバーするだろうということは出来ましょう。福岡市中央区で利用する限りは不足なしということです。
IT コラムIT初心者のIT活用(?)法
会員 後藤 富和(55期)
コンピューターやインターネットについては、使ってはいるけれど理屈は分からない、手引書や説明書を読んだこともなく見よう見真似で覚えたに過ぎないIT初心者の私にとって、このコラムの執筆は不適任だと思うのですが、私と同様にIT初心者の方もいらっしゃると思いますので、その方々に向けて書きたいと思います。
【ノートパソコン】
出張が多いので、使用しているパソコンは、スペック云々よりも耐加重90キロという頑丈さと重量2キロ以下という軽さで選んだノートパソコンです。その代わりデザインはダサダサです。
【PHS・無線LAN】
出張時には、このパソコンにカード式のPHSを差し込んで、電波が届くところどこでもメールの送受信、インターネットの接続が可能な状態にしています。
また、日弁連会館は無線LANが完備されています。日弁連の事務局に自分のパソコンを持参すれば、日弁連会館で無線LANが利用できるように設定をしてくれます。ですから、日弁連会館では、自分のパソコンの電源を入れるだけで、LANに接続されます。
このように、どこでもメールの送受信やインターネットの接続が可能な状態にし、事務局員への指示や準備書面の起案提出などが出張中でもできるようになります。外部からの電話がかかってこない分、出張中の方が効率的に書面を書けたりします。この原稿も、熊本出張中に出先で書いて送信したものです。
【リモートメール】
パソコンを開くことが出来環境では、私はリモートメール(リモメ)を利用して、パソコンのアドレス宛に来ているメールを携帯電話でチェックするようにしています。この機能は、メールの「転送」ではなく「覗き見る」だけですから、携帯でメールをチェックしてもパソコンで再度、そのメールを受信することが出来ます。朝、息子を幼稚園に送って事務所まで歩く間にリモメでメールをチェックするようにしています。
【PDF・インターネットディスク】
ノートパソコンを持ち歩くことで、出先でも準備書面を起案しそれを事務所に送信して提出するということが可能です。ただ、準備書面を書くために相手方から届いた書面や資料などを確認する必要がありますが、いちいち記録を持ち運ぶのは大変ですし、また、FAXで届いた相手方からの書面を出先で見たいという時に困ります。そういう時には、事務員に書面をスキャナーで読み取ってもらいPDF化(電子情報化)し、メールに添付して送ってもらうようにしています。そうする事で、出先でも書面が読めるようになります。
また、インターネット上にインターネットディスクという貸し倉庫のような物を借りていますので、書面の量が多い場合や画像などデータが重い場合は、インターネットディスクにアップしてもらい、そこにアクセスしてそれらを何時でもどこでも見ることができるようにしています。
私が加入している「よみがえれ!有明海弁護団」でも準備書面や、書証、資料をインターネットディスクにアップして、弁護団員がいつでも閲覧・取得できる状態にしています。紙資源消費の削減にもなりますし、いちいち書棚から必要な書面を探さなければならない手間が省けます。弁護団を組むような大規模な事件においては、インターネットディスクなどの活用が必須になってくると思います。
昨年、委員をした日弁連人権大会実行委員会でも、インターネットディスクと同様のブリーフケースをネット上に設置していました。これにより数百ページに及ぶ人権大会報告書の起案をスムーズに行うことができました。
【パワーポイント・プロジェクター】
近時、憲法に対する市民の関心が高まっており、度々、憲法講演の依頼を受けます。その際、プロジェクターを持参して、パワーポイントを使って講演をするようにしています。プロジェクターに付属していたリモコンを使えば、パソコンを遠隔操作することが出来るので、パソコンの前に座ったままでなく、通常の講演のように自由に動き回りながら、講演をすることが可能となります。
【事務所ホームページ】
事務所のホームページは、ホームページビルダーというソフトを使って所員が手作業で作っています。ですから、制作費はかかっていません。このホームページをわが事務所では毎週1回更新するようにしています。ここ数年、ホームページを見てから来たという相談者も増えています。
【今後の計画】
弁護士のスケジュール管理について、わが事務所では、事務員が弁護士の手帳を手書きで書き写して把握するという前近代的な手法によっています。これでは、刻々変化するスケジュールの動向に対応することが出来ません。そこで、電子手帳などを導入して、弁護士が手元でスケジュールを入力したならば、即時に事務局にもその情報が伝わるようなシステムを作りたいと考えています。
2007年8月 1日
都市型公設事務所を知っていますか?
大神昌憲(総務事務局長)
1 都市型公設事務所・連絡協議会及びシンポジウムの開催
私は,平成19年6月29日,日弁連会館において開催された「第4回都市型公設事務所等連絡協議会」(日弁連主催)及び都市型公設事務所シンポジウム(東京弁護士会主催)に参加しました。私は都市型公設事務所については全くの初心者で,一体どのようなものなのか,興味津々で参加いたしました。
2 全国9事務所
都市型公設事務所は,現在,全国で9事務所あるようです。
- 弁護士法人東京パブリック法律事務所(平成14年6月開設)
- 弁護士法人北千住パブリック法律事務所(平成16年4月開設)
- 弁護士法人渋谷パブリック法律事務所(平成16年9月開設)(以上,東京弁護士会)
- 弁護士法人渋谷シビック法律事務所(平成15年5月設立,同16年6月法人化)(第一東京弁護士会)
- 弁護士法人東京フロンティア基金法律事務所(平成13年9月開設,同14年4月法人化)(第二東京弁護士会)
- 弁護士法人大阪パブリック法律事務所(「刑事こうせつ法律事務所」と「大阪フロンティア法律事務所」が平成19年4月に統合)(大阪弁護士会)
- 弁護士法人岡山パブリック法律事務所(平成16年8月開設)(岡山弁護士会)
- 弁護士法人広島みらい法律事務所(平成18年10月開設)(広島弁護士会)
- 弁護士法人すずらん基金法律事務所(平成17年3月開設)(北海道弁護士会連合会)
の9つがそれで,弁護士法人多摩パブリック法律事務所(仮称)(東京弁護士会)は開設準備中(平成20年2月開設予定)とのことです。
3 都市型公設事務所の機能
都市型公設事務所は弁護士会が抱える様々な問題を解決すべく,多くの重要な役割を担っています。
1つめは地域の法律相談センター,権利擁護センターとしての機能です。都市の市民の法的な駆け込み寺として,一般的には受任が難しい少額の事件でも,法テラスなどと連動し,積極的に相談,受任に応じています。
2つめは刑事対応機能です。前記2-2の北千住パブリック法律事務所は,被疑者国選弁護の拡充,裁判員裁判に備え,質量ともに刑事事件に十分に対応することを主たる目的として設立されています。
3つめは若手弁護士の育成支援と過疎地への派遣の機能です。多様な事件の処理を通じて若手弁護士を鍛錬育成し,入所後1年ないし2年で過疎地の公設事務所等に派遣しています。
4つめは弁護士任官推進と判事補の弁護士経験の機能です。弁護士が任官をするためには依頼者や顧問先に迷惑を掛けぬよう抱えている事件に解決の目処をつけることが必要ですが,公設事務所に所属することにより,円滑な事件引継が可能となります。また,都市型公設事務所は事件の種類も多く,判事補が弁護士の職務を経験するうえで適していると言えます。弁護士経験を終え裁判所に戻る際も,円滑な事件引継が可能です。
5つめは,後継者養成機能です。法科大学院と連携,協力し,学生を受け入れエクスターンシップを実施するなど,法曹養成の機能があります。前記2?の渋谷パブリック法律事務所は,國學院大學内法科大学院棟1階に事務所があり,臨床法学教育(リーガルクリニック)を主たる目的として設立されています。
4 都市型公設事務所の事務所形態
都市型公設事務所の事務所形態としては,ベテラン弁護士を所長とし,中堅弁護士数名と若手弁護士多数といった弁護士構成が多いようですが,前記2-9の弁護士法人すずらん基金法律事務所の場合,所長制を採用せず,運営委員会の支援を受けながら,若手弁護士のみが事務所を運営している点に特徴があります。
5 都市型公設事務所の今後について
現在,日弁連は,弁護士偏在の解消を最優先の課題の1つとして取り組んでいることから,今後,都市型公設事務所は全国に広がっていく可能性が大きいと考えます。
実際,東北弁護士会連合会及び仙台弁護士会は,過疎対策と刑事2009年問題対応のため,都市型公設事務所の設置を検討しているとのことです。
今後,九弁連や当会でも,偏在問題等の解消のために都市型公設事務所の検討がされることになると思われます。
以上
2006年8月12日
ITコラム
会員 大庭 康裕
1 はじめに
ホームページ委員会からITコラムを書いて欲しいというご依頼がありましたが、私はITに関する知識が殆どないので、最初は丁重にお断りする予定でした。しかし、その夜、スーパーサニーで買ったお豆腐1丁、ひじきと大豆とこんにゃくの煮つけなどで夕食をとりながら考察したところ、人生の夜長に興を添えるために、何か意見を述べておくのも悪くはないと思ったので、お引き受けした次第です。
2 私のIT歴
ITの代表と言えばパソコンですが、私はもともとワープロに慣れ親しんでいたせいか、パソコンがぽつぽつ普及し始めても頑固にワープロに拘っていました。携帯電話さえも贅沢品であり不必要だという意見で持っていませんでした。けれども、私が司法修習生になった頃、福岡地裁、福岡地検では既に大きなディスクトップのパソコンが導入されていました。そこで、私も後期修習に入る前にノートパソコンを購入して(当時はまだ高価でしたが)パソコンの練習を始めました。
本格的にパソコンを使用し始めたのは、修習を終えて森竹彦先生の事務所に就職してからです。森先生は知る人ぞ知るパソコンに造詣の深い方で、私にとってはまさに闇夜の光でした。
平成12年に独立して事務所を構えてからは、業務上の必要性を認識して(無料で電話機をもらえたからでもありますが)ようやく携帯電話を購入しました。また、私の事務所は狭いことから、場所を取らない薄型ディスクトップパソコンが登場し始めていたので渡りに船と導入しました。そして、弁護士のパソコンと事務局のパソコンをLANでつなぐなどして効率的な仕事を心掛ける傍ら、メールやインターネットを利用して仕事や趣味の充実を図っています。
3 ITのメリット
電子メールの普及は、他の弁護士と共同して事件を受任できる余地を大幅に拡大しました。準備書面などを添付ファイルでやり取りできるので、他の弁護士の作成した文書の訂正が容易になりました。それゆえ、わざわざ共同事務所にしなくても他の弁護士と仕事をしやすくなりました。
各種メーリングリストの存在は、私のような弁護士一人事務所を経営する者にとっては大助かりです。いろいろな大先生に事件処理上の問題点をお聞きすることができ、しかも適切な回答を得ることができるからです。
インターネットによる情報収集は、地方と中央の情報の格差を大幅に縮小したと思います。地方に居ながら東京あるいは世界各地のいろんな情報が入手できるからです。
4 ITのデメリット
パソコンにせよ携帯電話にせよ、備わっている機能を全て使いこなせる人は少ないと思いますし、技術の進歩も早過ぎます。最近、老若男女を問わず異常な行動を示す人が増えたと言われていますが、それはITに代表される種々の技術の進歩があまりに早すぎるので、とてもついていけないからではないかと思っています。
また、コンピューターウイルスにいつ侵入されるかわからないので、対策ソフトを導入し、しかも毎年更新しなければならないなど厄介です。
ウイルスではないにせよ、ジャンクメール(海賊メール)が毎回送りつけられるので削除するのに往生します。「貴方を50万円で買いたいという女性がいます。すぐご連絡を!」などというメールが何度も来ますが、「私の値段は50万円か」と苦笑しています。
そして、携帯電話が普及したことで、「弁護士は出張で連絡が取れません」などという言い訳が次第に成り立たなくなっています。どこにいても仕事に追い回される状況になっています。
5 結 論
ITそのものは我々の生活における便利な道具の一つにすぎません。これに振り回されることなく上手に付き合っていきたいものです。
公益通報者保護制度研修
会員 植松 功
平成18年6月23日、日弁連消費者問題対策委員会のPL・情報公開部会の部会長である山本雄大先生を講師に、公益通報者保護制度についての研修がありました。
ご承知のように、公益通報者保護法が本年4月1日に施行されておりますが、実はこの法律が成立する過程で、公益通報者のための相談窓口の充実に関し、「日本弁護士連合会に協力要請する」と名指しで国会の附帯決議がされており、現に昨年7月20日には内閣府から要請があり、これを受け日弁連も各弁護士会に「公益通報者支援制度を設置されたい」という依頼文書を出しており、我々弁護士はいわば外堀を埋められた形で公益通報者保護制度に主体的な役割を果たさねばならない事態となっているもので、その結果、我々は少なくともこの法律はきちんと知っておかなくてはならないということになっていて、今回はそのための研修だったわけです。
そこで、研修を受けてみて、私は、細かいことはさておき、徹底的にスリム化してこの法律を理解しようとすると、以下の三つのポイントに尽きるのではないかと思いましたので、紹介することとします。
1 ポイント1
この法律は、「労働者」を保護するための法律である。
要するに、公益通報者保護法というものの、公益となる情報の提供の全てを保護していこうというものではなく、あくまで公益通報をした「労働者」が解雇や労働者派遣契約の解除、不利益取扱を受けないようにしたもので、「労働者」の保護であるということです(法2条)。したがって、不当な不利益取扱等の労働問題について、労働者側が利用できる法律ができたと理解する必要があると思います。
2 ポイント2
この法律は、「こういう場合は、通報者は確実に保護される」というケースを定めているだけで、「こういう場合しか通報者は保護されない」ということではない。
つまり、この法律の狙いは、労働者が安心して通報できる範囲(竹中大臣の言葉を借りれば「安全地帯」)を明確にするということに目的があり、その範囲を外れたとしても、解雇権濫用の法理(労働基準法18条の2)のような一般法理による通報者の保護は十分に可能なのです(公益通報者保護法6条)。
3 ポイント3
この法律による保護の要件は、通報先ごとに異なる。
この法律の保護の枠組は、ポイント1の発想であるため、限定的なのですが、特に我々が注意すべきは、通報先が三つに限定され、しかもその通報先ごとに保護の要件が異なるという点です。とりわけ、我々がこれから通報しようという人の相談を受けるときは、やはりこの法律によって保護を受ける「安全地帯」であるかどうかを適切に判断したうえ、アドバイスすべきですから、この要件の理解は不可欠となりそうです。
まず、三つの通報先とは、・労務提供先もしくは当該労務提供先があらかじめ定めた者、・通報対象事実について処分権限を有する行政機関、・通報対象事実の発生もしくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者です。具体的にどのようなところが上記・〜・に該当するかは、どんな本にでも解説されているので研究いただくとして、ここでは今回の研修で紹介のあった「処分権限を有する行政機関」を調査するのに便利な内閣府ホームページ公益通報者保護制度ウェブサイト(http:/www.consumer.go.jp/koueki/kensaku.html)をお知らせしておきます。
次に、保護の要件ですが、法律第3条1号、2号、3号に規定されているので、詳しくは条文を精読していただくとして、とりあえず「・、・、・の順番で要件がどんどん厳しくなっていく、だから相談を受けたときは、ちゃんと条文を確認しよう。」ということにしておけばいいでしょう。
筑後弁護士会館完成!
松本 佳郎
筑後弁護士会館が、遂に完成しました。
鉄骨造4階建て、延床面積648.88・、1階に事務室、応接室外、2階に相談室3、弁護士談話室、弁護士執務室外、3階にADR委員会室1、ADR当事者待合室2、委員会室、評議委員会室外、4階には大会議室(74名収用)の堂々たるものです。
6月1日、筑後部会員による内覧、点検の後、一部修正変更の工事をへて、正式に引渡を受け、同月25日に備品等を搬入、30日に間借りしていた裁判所の一室の控室兼弁護士会室、法律相談センター(パークノヴァ)からの引っ越しを終え、7月3日から、正式に供用を開始しました。
思えば、当会館の建設は、平成12年の部会忘年会の酒席における某先生の裁判所隣の空き地に弁護士会館を建てればいいのにという無責任な、いや貴重な一言に端を発したものでした。もちろん、筑後部会員が50名を超える会員数を擁することが現実のものになっており、誰もが独自の会館の保持についてはその必要性は感じていたところでした。ただ、用地の取得は? 財源は? 会員の負担は? 建設までの手続やスケジュールは? 等々の難問が山積みであり、皆頭に描いてはいるものの言い出しっぺが火中の栗を拾うことになることにもなりかねず、誰も正面切って言い出すことはなく、何らの現実の行動には結びついてはいませんでした。従って、この瓢箪から駒の一言は、貴重な一言でした。
これを聞きつけたのが、次期県弁会長に決まっていた永尾先生でした。当時の春山県弁会長とともに、早速、会館建設のプロジェクトが始動しました。
しかしながら、当部会においても堺紀文会員を委員長として会館建設委員会を立ち上げたものの、当初は用地の取得すらままならず、計画は遅々として進みませんでした。他方、当部会においても上記のような有様であり会館建設のための準備資金などの積立も行っておらず、財政をどうするかの議論も詰めないままで、内部の意思統一も不十分なままで動き出したというのが実情です。
この流れが一気に加勢したのは、平成16年1月に用地取得がなってからでした。この時点において、ようやく会館建設のイメージが部会員全員に共有され始めました。
その後の経緯等については、これまで月報等でお知らせしてきたとおりです。
なお、新たに興味深い史実が判明しました。
まず、関ヶ原の戦いがあった1600年頃、本部会会館敷地には、久留米城主毛利が建立したキリスト教会堂があったことです。当時、久留米とその周辺には約7000名ほどのキリシタンが在住しており、教会堂には一人のパードレ(宣教師)と二人のイルマンが駐在していたとのことです。その後、キリシタン弾圧があり、教会堂の歴史は終焉しました。
その後、町屋敷となり、火災があったこと、今回の発掘でその遺構が発掘されたことなどについては、以前、お知らせしたとおりです。
もう一つは、昭和11年、現在立て替えが進んでいる検察庁の敷地付近に久留米弁護士会館が建設されていたということです。記録によると、建設費と調度備品を含めた建設費は総額1,700円、これを部会の大先輩弁護士10名の寄付1,170円と他部会からの応分の負担で賄ったそうです。ちなみに、当時小さな一軒の借家を建てるのに300円から400円かかっていたとのことですから、当時の弁護士の懐具合なども窺い知れるところです。
福岡県弁護士会の会史(上巻)によると、この頃から弁護士の数が急増し、弁護士が貧窮していったことが記されています。中には、着手金ゼロ、成功報酬一割を謳った広告により客集めを始めた弁護士も現れてきたそうです。
何か咋今の状況と似ており、今後の司法改革の行方と行き着くところが気になるところです。
いずれにしても、このようにして新会館は始動しました。皆さん、是非、お立ち寄り下さい。ゆったりした談話室もありますし、遠来の先生方のための執務室(個室:パソコンを持ち込んでの作業もできます。)も用意しております。
最後になりましたが、今回の建設にあたり、部会員はもとより、久留米・筑後に縁のある他部会の先生方からも多額の寄付を頂きました。深謝に堪えないところであります。本当にありがとうございました。