福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

月報記事

2007年8月 1日

都市型公設事務所を知っていますか?

大神昌憲(総務事務局長)

1 都市型公設事務所・連絡協議会及びシンポジウムの開催

私は,平成19年6月29日,日弁連会館において開催された「第4回都市型公設事務所等連絡協議会」(日弁連主催)及び都市型公設事務所シンポジウム(東京弁護士会主催)に参加しました。私は都市型公設事務所については全くの初心者で,一体どのようなものなのか,興味津々で参加いたしました。

2 全国9事務所

都市型公設事務所は,現在,全国で9事務所あるようです。

  1. 弁護士法人東京パブリック法律事務所(平成14年6月開設)
  2. 弁護士法人北千住パブリック法律事務所(平成16年4月開設)
  3. 弁護士法人渋谷パブリック法律事務所(平成16年9月開設)(以上,東京弁護士会)
  4. 弁護士法人渋谷シビック法律事務所(平成15年5月設立,同16年6月法人化)(第一東京弁護士会)
  5. 弁護士法人東京フロンティア基金法律事務所(平成13年9月開設,同14年4月法人化)(第二東京弁護士会)
  6. 弁護士法人大阪パブリック法律事務所(「刑事こうせつ法律事務所」と「大阪フロンティア法律事務所」が平成19年4月に統合)(大阪弁護士会)
  7. 弁護士法人岡山パブリック法律事務所(平成16年8月開設)(岡山弁護士会)
  8. 弁護士法人広島みらい法律事務所(平成18年10月開設)(広島弁護士会)
  9. 弁護士法人すずらん基金法律事務所(平成17年3月開設)(北海道弁護士会連合会)

の9つがそれで,弁護士法人多摩パブリック法律事務所(仮称)(東京弁護士会)は開設準備中(平成20年2月開設予定)とのことです。

3 都市型公設事務所の機能

都市型公設事務所は弁護士会が抱える様々な問題を解決すべく,多くの重要な役割を担っています。

1つめは地域の法律相談センター,権利擁護センターとしての機能です。都市の市民の法的な駆け込み寺として,一般的には受任が難しい少額の事件でも,法テラスなどと連動し,積極的に相談,受任に応じています。

2つめは刑事対応機能です。前記2-2の北千住パブリック法律事務所は,被疑者国選弁護の拡充,裁判員裁判に備え,質量ともに刑事事件に十分に対応することを主たる目的として設立されています。

3つめは若手弁護士の育成支援と過疎地への派遣の機能です。多様な事件の処理を通じて若手弁護士を鍛錬育成し,入所後1年ないし2年で過疎地の公設事務所等に派遣しています。

4つめは弁護士任官推進と判事補の弁護士経験の機能です。弁護士が任官をするためには依頼者や顧問先に迷惑を掛けぬよう抱えている事件に解決の目処をつけることが必要ですが,公設事務所に所属することにより,円滑な事件引継が可能となります。また,都市型公設事務所は事件の種類も多く,判事補が弁護士の職務を経験するうえで適していると言えます。弁護士経験を終え裁判所に戻る際も,円滑な事件引継が可能です。

5つめは,後継者養成機能です。法科大学院と連携,協力し,学生を受け入れエクスターンシップを実施するなど,法曹養成の機能があります。前記2?の渋谷パブリック法律事務所は,國學院大學内法科大学院棟1階に事務所があり,臨床法学教育(リーガルクリニック)を主たる目的として設立されています。

4 都市型公設事務所の事務所形態

都市型公設事務所の事務所形態としては,ベテラン弁護士を所長とし,中堅弁護士数名と若手弁護士多数といった弁護士構成が多いようですが,前記2-9の弁護士法人すずらん基金法律事務所の場合,所長制を採用せず,運営委員会の支援を受けながら,若手弁護士のみが事務所を運営している点に特徴があります。

5 都市型公設事務所の今後について

現在,日弁連は,弁護士偏在の解消を最優先の課題の1つとして取り組んでいることから,今後,都市型公設事務所は全国に広がっていく可能性が大きいと考えます。

実際,東北弁護士会連合会及び仙台弁護士会は,過疎対策と刑事2009年問題対応のため,都市型公設事務所の設置を検討しているとのことです。

今後,九弁連や当会でも,偏在問題等の解消のために都市型公設事務所の検討がされることになると思われます。

以上

2006年8月12日

ITコラム

会員 大庭 康裕

1 はじめに

ホームページ委員会からITコラムを書いて欲しいというご依頼がありましたが、私はITに関する知識が殆どないので、最初は丁重にお断りする予定でした。しかし、その夜、スーパーサニーで買ったお豆腐1丁、ひじきと大豆とこんにゃくの煮つけなどで夕食をとりながら考察したところ、人生の夜長に興を添えるために、何か意見を述べておくのも悪くはないと思ったので、お引き受けした次第です。

2 私のIT歴

ITの代表と言えばパソコンですが、私はもともとワープロに慣れ親しんでいたせいか、パソコンがぽつぽつ普及し始めても頑固にワープロに拘っていました。携帯電話さえも贅沢品であり不必要だという意見で持っていませんでした。けれども、私が司法修習生になった頃、福岡地裁、福岡地検では既に大きなディスクトップのパソコンが導入されていました。そこで、私も後期修習に入る前にノートパソコンを購入して(当時はまだ高価でしたが)パソコンの練習を始めました。

本格的にパソコンを使用し始めたのは、修習を終えて森竹彦先生の事務所に就職してからです。森先生は知る人ぞ知るパソコンに造詣の深い方で、私にとってはまさに闇夜の光でした。

平成12年に独立して事務所を構えてからは、業務上の必要性を認識して(無料で電話機をもらえたからでもありますが)ようやく携帯電話を購入しました。また、私の事務所は狭いことから、場所を取らない薄型ディスクトップパソコンが登場し始めていたので渡りに船と導入しました。そして、弁護士のパソコンと事務局のパソコンをLANでつなぐなどして効率的な仕事を心掛ける傍ら、メールやインターネットを利用して仕事や趣味の充実を図っています。

3 ITのメリット

電子メールの普及は、他の弁護士と共同して事件を受任できる余地を大幅に拡大しました。準備書面などを添付ファイルでやり取りできるので、他の弁護士の作成した文書の訂正が容易になりました。それゆえ、わざわざ共同事務所にしなくても他の弁護士と仕事をしやすくなりました。

各種メーリングリストの存在は、私のような弁護士一人事務所を経営する者にとっては大助かりです。いろいろな大先生に事件処理上の問題点をお聞きすることができ、しかも適切な回答を得ることができるからです。

インターネットによる情報収集は、地方と中央の情報の格差を大幅に縮小したと思います。地方に居ながら東京あるいは世界各地のいろんな情報が入手できるからです。

4 ITのデメリット

パソコンにせよ携帯電話にせよ、備わっている機能を全て使いこなせる人は少ないと思いますし、技術の進歩も早過ぎます。最近、老若男女を問わず異常な行動を示す人が増えたと言われていますが、それはITに代表される種々の技術の進歩があまりに早すぎるので、とてもついていけないからではないかと思っています。

また、コンピューターウイルスにいつ侵入されるかわからないので、対策ソフトを導入し、しかも毎年更新しなければならないなど厄介です。

ウイルスではないにせよ、ジャンクメール(海賊メール)が毎回送りつけられるので削除するのに往生します。「貴方を50万円で買いたいという女性がいます。すぐご連絡を!」などというメールが何度も来ますが、「私の値段は50万円か」と苦笑しています。

そして、携帯電話が普及したことで、「弁護士は出張で連絡が取れません」などという言い訳が次第に成り立たなくなっています。どこにいても仕事に追い回される状況になっています。

5 結 論

ITそのものは我々の生活における便利な道具の一つにすぎません。これに振り回されることなく上手に付き合っていきたいものです。

公益通報者保護制度研修

会員 植松 功

平成18年6月23日、日弁連消費者問題対策委員会のPL・情報公開部会の部会長である山本雄大先生を講師に、公益通報者保護制度についての研修がありました。

ご承知のように、公益通報者保護法が本年4月1日に施行されておりますが、実はこの法律が成立する過程で、公益通報者のための相談窓口の充実に関し、「日本弁護士連合会に協力要請する」と名指しで国会の附帯決議がされており、現に昨年7月20日には内閣府から要請があり、これを受け日弁連も各弁護士会に「公益通報者支援制度を設置されたい」という依頼文書を出しており、我々弁護士はいわば外堀を埋められた形で公益通報者保護制度に主体的な役割を果たさねばならない事態となっているもので、その結果、我々は少なくともこの法律はきちんと知っておかなくてはならないということになっていて、今回はそのための研修だったわけです。

そこで、研修を受けてみて、私は、細かいことはさておき、徹底的にスリム化してこの法律を理解しようとすると、以下の三つのポイントに尽きるのではないかと思いましたので、紹介することとします。

1 ポイント1

この法律は、「労働者」を保護するための法律である。

要するに、公益通報者保護法というものの、公益となる情報の提供の全てを保護していこうというものではなく、あくまで公益通報をした「労働者」が解雇や労働者派遣契約の解除、不利益取扱を受けないようにしたもので、「労働者」の保護であるということです(法2条)。したがって、不当な不利益取扱等の労働問題について、労働者側が利用できる法律ができたと理解する必要があると思います。

2 ポイント2

この法律は、「こういう場合は、通報者は確実に保護される」というケースを定めているだけで、「こういう場合しか通報者は保護されない」ということではない。

つまり、この法律の狙いは、労働者が安心して通報できる範囲(竹中大臣の言葉を借りれば「安全地帯」)を明確にするということに目的があり、その範囲を外れたとしても、解雇権濫用の法理(労働基準法18条の2)のような一般法理による通報者の保護は十分に可能なのです(公益通報者保護法6条)。

3 ポイント3

この法律による保護の要件は、通報先ごとに異なる。

この法律の保護の枠組は、ポイント1の発想であるため、限定的なのですが、特に我々が注意すべきは、通報先が三つに限定され、しかもその通報先ごとに保護の要件が異なるという点です。とりわけ、我々がこれから通報しようという人の相談を受けるときは、やはりこの法律によって保護を受ける「安全地帯」であるかどうかを適切に判断したうえ、アドバイスすべきですから、この要件の理解は不可欠となりそうです。

まず、三つの通報先とは、・労務提供先もしくは当該労務提供先があらかじめ定めた者、・通報対象事実について処分権限を有する行政機関、・通報対象事実の発生もしくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者です。具体的にどのようなところが上記・〜・に該当するかは、どんな本にでも解説されているので研究いただくとして、ここでは今回の研修で紹介のあった「処分権限を有する行政機関」を調査するのに便利な内閣府ホームページ公益通報者保護制度ウェブサイト(http:/www.consumer.go.jp/koueki/kensaku.html)をお知らせしておきます。

次に、保護の要件ですが、法律第3条1号、2号、3号に規定されているので、詳しくは条文を精読していただくとして、とりあえず「・、・、・の順番で要件がどんどん厳しくなっていく、だから相談を受けたときは、ちゃんと条文を確認しよう。」ということにしておけばいいでしょう。

筑後弁護士会館完成!

松本 佳郎

筑後弁護士会館が、遂に完成しました。
筑後弁護士会館

鉄骨造4階建て、延床面積648.88・、1階に事務室、応接室外、2階に相談室3、弁護士談話室、弁護士執務室外、3階にADR委員会室1、ADR当事者待合室2、委員会室、評議委員会室外、4階には大会議室(74名収用)の堂々たるものです。

6月1日、筑後部会員による内覧、点検の後、一部修正変更の工事をへて、正式に引渡を受け、同月25日に備品等を搬入、30日に間借りしていた裁判所の一室の控室兼弁護士会室、法律相談センター(パークノヴァ)からの引っ越しを終え、7月3日から、正式に供用を開始しました。

思えば、当会館の建設は、平成12年の部会忘年会の酒席における某先生の裁判所隣の空き地に弁護士会館を建てればいいのにという無責任な、いや貴重な一言に端を発したものでした。もちろん、筑後部会員が50名を超える会員数を擁することが現実のものになっており、誰もが独自の会館の保持についてはその必要性は感じていたところでした。ただ、用地の取得は? 財源は? 会員の負担は? 建設までの手続やスケジュールは? 等々の難問が山積みであり、皆頭に描いてはいるものの言い出しっぺが火中の栗を拾うことになることにもなりかねず、誰も正面切って言い出すことはなく、何らの現実の行動には結びついてはいませんでした。従って、この瓢箪から駒の一言は、貴重な一言でした。

筑後弁護士会館

これを聞きつけたのが、次期県弁会長に決まっていた永尾先生でした。当時の春山県弁会長とともに、早速、会館建設のプロジェクトが始動しました。

しかしながら、当部会においても堺紀文会員を委員長として会館建設委員会を立ち上げたものの、当初は用地の取得すらままならず、計画は遅々として進みませんでした。他方、当部会においても上記のような有様であり会館建設のための準備資金などの積立も行っておらず、財政をどうするかの議論も詰めないままで、内部の意思統一も不十分なままで動き出したというのが実情です。

この流れが一気に加勢したのは、平成16年1月に用地取得がなってからでした。この時点において、ようやく会館建設のイメージが部会員全員に共有され始めました。

その後の経緯等については、これまで月報等でお知らせしてきたとおりです。

なお、新たに興味深い史実が判明しました。

まず、関ヶ原の戦いがあった1600年頃、本部会会館敷地には、久留米城主毛利が建立したキリスト教会堂があったことです。当時、久留米とその周辺には約7000名ほどのキリシタンが在住しており、教会堂には一人のパードレ(宣教師)と二人のイルマンが駐在していたとのことです。その後、キリシタン弾圧があり、教会堂の歴史は終焉しました。

その後、町屋敷となり、火災があったこと、今回の発掘でその遺構が発掘されたことなどについては、以前、お知らせしたとおりです。

もう一つは、昭和11年、現在立て替えが進んでいる検察庁の敷地付近に久留米弁護士会館が建設されていたということです。記録によると、建設費と調度備品を含めた建設費は総額1,700円、これを部会の大先輩弁護士10名の寄付1,170円と他部会からの応分の負担で賄ったそうです。ちなみに、当時小さな一軒の借家を建てるのに300円から400円かかっていたとのことですから、当時の弁護士の懐具合なども窺い知れるところです。

福岡県弁護士会の会史(上巻)によると、この頃から弁護士の数が急増し、弁護士が貧窮していったことが記されています。中には、着手金ゼロ、成功報酬一割を謳った広告により客集めを始めた弁護士も現れてきたそうです。

何か咋今の状況と似ており、今後の司法改革の行方と行き着くところが気になるところです。

いずれにしても、このようにして新会館は始動しました。皆さん、是非、お立ち寄り下さい。ゆったりした談話室もありますし、遠来の先生方のための執務室(個室:パソコンを持ち込んでの作業もできます。)も用意しております。

最後になりましたが、今回の建設にあたり、部会員はもとより、久留米・筑後に縁のある他部会の先生方からも多額の寄付を頂きました。深謝に堪えないところであります。本当にありがとうございました。

法律相談センターだより

業務事務局長 古賀 克重

1 天神センターの移転について

本年度は、10月の玄界弁護士法律相談センターの開設、9月の天神弁護士センター移転などが予定されています。今回は、近づいて参りました天神弁護士センターの移設準備状況についてご報告致します。

2 移転の経緯・場所

天神センターの移転は、市民サービスの維持・向上を目的に、司法支援センター福岡地方事務所の開設された南天神ビルへ移転するものです。昨年度の常議員会で承認されていました。

移転先の南天神ビルは、現在のサテライトビルから徒歩5分程度離れた場所に位置します。渡辺通り沿い「新川橋」信号横のビルです。

法律扶助協会部分がなくなりますので、その分手狭になりますが、賃料はかなり減額できました。現在の広々としたセンターからすると、やや狭い感じも受けますが、デザインで工夫する等して効率的な維持運営を心がけて参ります。

なお、新会館が建築された際には、法律相談センターにおける一部機能の移転も視野に入れております。

3 移転時期・無料相談会

移転日は、9月16日(土曜日)から18日(月曜日)となります。翌19日(火曜日)からは、通常通りの相談業務を再開致します。

9月28日(木曜日)には、移転先のセンター内において、お披露目パーティーをこじんまりと行う予定にもしています。

なお、この天神センターの移転を記念しまして、11月9日(木曜日)10日(金曜日)の両日、県下の相談センターにおいて、一斉無料相談会を実施することに致しました。あらためて広報させて頂きますので、その節にはご協力のほどよろしくお願い致します。

2006年7月18日

今秋も「合同事務所説明会」を開催します

業務委員会委員  鶴 利絵

今年も、昨年に引き続き、第60期司法修習生を対象として、福岡県弁護士会主催の「合同事務所説明会」を開催いたします。

福岡県弁護士会主催の「合同事務所説明会」は、昨年始まったばかりで、あまり周知されていません。

そこで、今回は、担当させていただいております鶴が、この紙面をお借りして、「合同事務所説明会」のご説明をさせていただきます。

近年、司法修習生の増加に伴い、東京や大阪など大規模弁護士会だけでなく、各地で事務所説明会が開かれており、隣県の熊本でも4年前から事務所説明会が開催されています。

福岡県でも、昨年11月5日に、弁護士会主催の事務所説明会が開かれ、福岡県内の約20事務所が参加し、県内外の約100名ほどの司法修習生が集まりました。

福岡県の各弁護士事務所の採用状況を見ると、近年は、事務所ホームページ等で採用情報を掲載している事務所もありますが、修習先の事務所の紹介や、知り合いの弁護士の紹介などによる場合が多いのが現状です。

しかしながら、今後は、このような従来型の採用方法では、激増する司法修習生の就職活動に対応しきれない可能性があります。

その具体的理由として、まず(1)2007年には、従来の約2.5倍の約2500人から2600人が司法修習を終了します(従来の修習である60期(2007年8月登録)、及び、今年9月に合格する新60期(2007年11月登録))。その大多数が弁護士登録を希望することが予想されます。

この激増した司法修習生の就職活動に対して、中規模弁護士会である福岡県弁護士会において、従来の個別的交渉に任せておけば、司法修習生の就職活動に混乱を生じ、司法修習生が就職を希望しながら就職できないという事態や、また採用を希望しながら採用できない事務所が発生する等の支障が生ずる可能性があります。

また、(2)新司法試験に完全に移行されるまでは、旧司法試験合格の司法修習生と新司法試験合格の司法修習生との修習地が、東京などの大規模庁を除き、まったく分離されることがあります(例えば、本年度、福岡県では、旧司法試験合格の旧60期の修習生が修習することになっていますが、隣県の熊本県は、新司法試験合格の新60期の修習生のみが修習することになっています。)。

この新司法試験合格の新60期の就職活動に関しては、修習先の事務所の紹介などに期待することは困難であり、弁護士会としての配慮が必須と思われます。

このように、中規模弁護士会である福岡県弁護士会でも、各事務所の採用活動及び激増する司法修習生の就職活動がスムーズに行われるよう、合同事務所説明会を開催する次第です。

そこで、今後の予定ですが、合同事務所説明会の開催日時が決定し次第、各事務所にご連絡し、同時に、アンケートの実施や福岡県弁護士会のホームページへの掲載等で広報していく予定です。

対象とする司法修習生は、現在修習中である旧司法試験合格の旧60期、及び、今年9月に合格する新司法試験合格の新60期です。

「合同事務所説明会」の趣旨をご理解いただき、何卒、多くの事務所の参加をお願い申し上げます。

ITコラム

会員  菅藤 浩三

サービスパック2の悪夢

1 わたくし自身は、パソコンは道具と割り切っているので、ITの仕組みは全く勉強していません。パソコン1人1台をようやく実現し、LANも今年の6月にようやく設定した有り様です。

とはいえ、自動車の構造を知らずとも自動車の運転をできる人がほとんど、ITも同じだという理屈で日々行動しています。が、自動車の構造を知らずに自動車をいじるとトンデモ事態になるぞ、というエピソードを紹介します。ちなみに、この原稿を書いている時点でもそのトラブルは解消していません。

2 弁護士業界でのIT環境に関するスタンダードは、行政の発行した東京弁護士会編集【弁護士業務マニュアル第3版】に記されているレベルだと思います。少なくとも福岡では、ここに掲載されている程度のIT環境を、業者や知り合いに委託して整えていれば、たとえITのことを知らずともいっぱしのIT環境を持つ弁護士と自負してもよいのではないでしょうか。といっても、さすがにIT環境を持っているくらいで「IT弁護士」と名乗るべきではないと思いますが。

3 わたくしは同書66頁に触発され、業務専用のクレジットカードを用意して、電子内容証明の導入を試みました。日本郵政公社のホームページから圧縮ファイルをダウンロードして解凍。では早速、第1号の電子内容証明送付の操作にとりかかったところ、意味の分からないエラーが出てきました。ホームページの表紙にさかのぼり、よくあるご質問のコーナーを覗くと「電子内容証明のソフトはサービスパック2の環境下には対応していません。サービスパック2を削除するか、別の動作する環境で利用してください」と記されています。

4 サービスパックとは何ぞやといいますと、ウィンドウズXP発売後に発見されたバグ修正ソフトをまとめてパッケージにしたものだそうです(ちなみに、この解説は別のホームページからそのままひっぱったものなので、門前の小僧の習わぬ経と同じでわたくしには正確な意味は不明です)。

「あっそう、アンインストールしたら電子内容証明が利用できるのね」自動車の構造を知らず自動車を運転しているわたくしは、コントロールパネルからプログラムの削除を選択し、このパソコンがサービスパック2の環境下にあることを確認すると、アンインストールをポチッとしました。

やれやれ、これで電子内容証明郵便が使用できるゾ。

おや?オヤオヤ??ブラウザソフトが起動しないぞ…

あれれ〜(叫びが長く続く)。何と、サービスパック2をアンインストールしたことで、ブラウザソフトが起動しなくなっていたのです。要するに、インターネットがまったく見られないのです。とはいえ、メールソフトは普通に動いていたので、ITから完全に隔絶される、拘置所のホリエモン状態は辛うじて免れることができました。

5 まさに悪夢です。知り合い何人かに問い合わせしたところ「サービスパック2を削減するなんて怖くてできない(=素人は怖いもの知らず)」とか言われる始末です。わたくしはホームページ委員会の中で、会内IT研修を担当しています。

この原稿の中でIT研修の一環として「行く末の読めぬ操作はするな!」と強く訴えさせてください。

犯罪被害者相談研修

会員  岡室 恭輔

1 去る平成18年6月14日、弁護士会館三階にて犯罪被害者相談研修が行なわれました。この研修は、資格研修と位置づけられ、受講した弁護士は、天神センターの犯罪被害者相談の担当弁護士として登録ができるほか、日本司法支援センターの犯罪被害者支援業務における犯罪被害等に関する精通弁護士として登録されることになるというものでした。

2 研修では、当会の犯罪被害者支援に関する委員会の委員長の芦塚先生の御挨拶の後、同委員会の委員の先生方によるロールプレイが行なわれました。

設定としては、それぞれ少年事件、交通事故で子供を亡くした親が弁護士に相談に来たというものでした。

ロールプレイにおいて相談を受けた弁護士は、相談者から、子供が死亡した事件の真相を知りたくて民事訴訟を提起することを考えているという相談を受けたにもかかわらず、経済的な観点から訴訟提起の是非を述べるに終始し、あるいは、弁護士が相談者の質問を遮り、自分の聞きたいことのみを聞き、後は自分に任せておけばよいという態度で相談を受けていました。

これらは、分かりやすくするために多少誇張されてはいたものの、本質的な点を捉えているものだったと思います。

それは、弁護士は何よりまず相談者の話を十分に聞かなければならないということです。そうでなければ依頼者が本当に何を期待して相談に来ているのか分からず、結果として十分な回答ができないことになります。

特に、犯罪の被害者やその家族の場合、ある日突然犯罪の被害に遭うのであり、自分がどうしたらいいかのみならずどうしたいのかさえ分からずに相談に来ることもあると思います。また、相談をしている間に考えが変わっていくこともあるそうです。したがって、30分間の相談では非常に難しいことではありますが、極力じっくり話を聞いて一緒に方向性を見出していく必要があると思います。

3 その他には、福岡県警が犯罪被害者の心のケアのための相談窓口として設けている「ミズ・リリーフ・ライン」からカウンセラーの方をお招きして講演をしていただきました。

私はこの存在をこれまで知らなかったのですが、犯罪被害に関係する人であれば、性別や被害者本人であることなどを問わずに相談でき、専門の心理カウンセラーが話を聞いてくれるのだそうです。

カウンセラーの先生のお話によりますと、犯罪被害者の心理は時間や相談を経るにつれてかなり揺れたり変化したりするそうです。このことだけでも理解していれば、我々が相談を受けた際、前回と言うことが違っていたとしても、相談者がなかなか決断をしてくれなかったとしても、それにイライラしたり相談者を責めたりせずにいられるでしょう。

私たち弁護士にとっては、法的な問題には対処できるとしても、心の問題までケアすることは容易なことではありません。したがって、相談の段階で以上のようなことを少しでも注意をした上、さらに、犯罪被害者の心のケアを専門としている機関と協力していくことが非常に重要なことだと思います。

4 私は、これまで犯罪被害者の方からの相談を受けたことはありませんでした。しかし、考えてみると、刑事事件を担当する際、多くの場合そこには被害者がいます。

そのような場合に、犯罪被害者の気持ちも考えることができれば、示談交渉においてかえって被害者を傷つけるようなこともなくなるのではないでしょうか。経験が浅く、なかなかそのようなところまで配慮できていない私は、今さらながらそんなことを思ったりしました。

2006年6月19日

ITコラム

会員  松井 仁

 私は、ワープロからパソコンに替えるのもケータイを買うのも人より遅く、概して「IT」には疎かったのであるが、二年間の英国留学では、ITの世話になりっぱなしであった。

 まず、大学選びや入学手続はほとんどインターネットで行った。各大学のウェブサイトにアクセスして、教えられている科目や入学条件などをチェックし、出願校を決めたら、願書をプリントアウトする。私が出願した五つの大学のうち、二つについてはオンライン出願もできた。画面上で必要事項を入力し、「Submit」(提出)をクリックしておしまいである。あとは、成績証明書や推薦状などを郵送で追完すればよい。地球の反対側にいるのに、あっという間に簡単に手続ができることに驚いた。願書を出したら、メールで受付の知らせが来て、その後の願書の審査状況は、ウェブサイトでチェックできる。ただし、合格通知はちゃんとサイン入りの手紙が郵送されてくる。ビザ申請にはこの原本が必要なのである。

 さて、大学での授業が始まると、並行して、図書館のスタッフによるIT講座が連続して開かれる。学生は年間を通じて、大量の予習をこなし、何本も論文を書かなければならないので、いかに効率よく文献や資料を探せるかが、授業についていけるかどうかを左右する。IT講座は、図書館(他の大学の図書館も含む)のオンラインカタログの使い方に始まり、各種データベース(論文や判例など)の紹介と情報検索のコツまで、実際にパソコンの画面をスクリーンに映し出しながら丁寧に教えてくれるのである。

 実際、私もロンドン大学LLMコースで、授業の前に読んでおくように言われる論文や英国の国内裁判所の判例を、WestlawやLexisNexisといった法律・文献・判例データベースを使って検索し、要旨をプリントアウトして読んでいた。これらは、本来は高額な契約費用のかかる有料データベースであるが、大学が一括契約しているため、学生はタダで自由にアクセスできるのである(コース終了後、学生の身分がなくなってアクセスが拒否されたときには、本当に残念だった)。他方で、国連やヨーロッパ人権裁判所のウェブサイトなど、無料で誰でもアクセスできるデータ-ベースの使い方も教えてもらったので、今後日本で人権に関する仕事をしていくうえで、たまには役に立つかも知れない。

 パワーポイントの使い方の講座もあっていた。博士課程の学生や教員のプレゼンテーションのためのものだと思い、私は参加しなかったが、(法廷でのパワーポイント使用も始まった)今になって思えば惜しいことをしたと思う。

 インターネットは、私生活でも大いに役に立った。何といっても、日本のニュースがリアルタイムで見られるのがよかった。英国の報道からは、日本の情報はほとんど得ることができない。たとえばアテネオリンピックの時も、テレビや新聞では英国選手団の結果しか分からないので、日本のニュースサイトで日本選手の活躍を毎日チェックしていた。ホークスが優勝したときも、KBCラジオのホークス中継をパソコンで聞いて、夫婦で盛り上がっていた。

 日本に帰ってきてからは、逆に、いつも聞いていたBBCラジオが懐かしくなり、インターネットで時々聞いている(http://www.bbc.co.uk/radio/)。英語を勉強されている方には、美しいブリティッシュイングリッシュが聞けるので、是非お薦めしたい。特にBBCラジオ4のニュースや評論は、世界的にも質の高さが認められている。

 ところで、留学を終えて仕事に復帰してみると、弁護士会のIT化がさらに進んでいた。特に、日弁連での各種講演会が、ライブ中継で見られるのは、二年のギャップを取戻さねばならない私にとって大変助かった。福岡県弁護士会のウェブサイトも相当に充実した情報源となっているようである。

もし、ホームページ委員会で「弁護士業務に役立つウェブサイト利用術」のような講座をしていただければ、是非とも参加してみたいと思う(既に行われているかも知れませんね)。

2006年5月 6日

当番弁護士日誌

会員 桑原 義浩

1 アルセーヌルパン

58期の弁護士の桑原です。大牟田市の不知火合同法律事務所に勤務させていただいております。

私が弁護士登録してから、早くも半年になろうとしています。私が弁護士になろうと思ったきっかけのひとつに、刑事弁護をやりたいということがあります。

幼いころの私は、推理小説をよく読んでいました。なかでもお気に入りはアルセーヌルパンのシリーズでした。ホームズとルパンの対決という話も読んだ記憶がありますが、ルパンを応援しながら読んでいました。なぜ怪盗ルパンが好きになったのか、今ではよく覚えていませんが(単純にルパン三世が好きだったからかもしれません、)悪党のように見えながらも実は心優しい人物像に憧れたように思います。ルパンの影響があるのかどうかは分かりませんが、当番弁護士で面会に行っても、そんなに悪い人じゃないだろうから、何とかしてあげようと思うことがあります。 今回は、そんな私がこれまでに経験したいくつかの事案を報告します。

2 とある窃盗事件

定職もあり住居もある人が、携帯電話ショップから店頭での操作見本用の携帯電話を持ち去ったという窃盗事件がありました。話を聞いてみると、実際に通話することができなかったので友人に渡したということで、友人を通じて電話機自体は警察が保管していました。これが店に戻ればほとんど被害は生じないはずだと思い、携帯電話ショップと連絡をとると、必要な費用は3150円だといわれました。たったこれだけのために、逮捕、勾留されてしまうのか… と思いましたが、実は、飲酒運転での物損事故と銃刀法違反(魚釣り用のナイフを持ってただけのようです)があり、その処分が終わっていないということでした。

被疑者援助で受任して早急に示談を済ませ、窃盗事件は処分保留で釈放となりました。

3 否認事件

居候させてもらっていた友人夫婦の奥さんを蹴ったという暴行事件がありました。

面会すると、自分は絶対蹴っていないとのことでした。友人夫婦の夫婦仲を取りもとうとした2か月以上前の事件で、事件後も友人夫婦とは同居しており、その家にはもう1 人居候がいるという状況でした。友人夫婦や居候たちはことごとく被疑者に不利な供述をしているようでしたが、被疑者は否認を続けました。人間関係が最後までよく分かりませんでしたが、何とか実兄が引受人となってくれて、脅迫罪での執行猶予期間中という状況でも起訴猶予となりました。どうも布団の上から1回蹴ったというような話のようで、事案自体が軽微でした。

4 休日当番

休日当番では、留守電を聞いて翌日に面会に行くと、傷害事件の示談をしてほしいと言われました。無職だが、お金はある、先生の費用もいくらかかるか言って欲しいということでした。実は、暴力団組員で、組どうしの抗争で長く刑務所に入っていたようです。組員の私選の受任か、と思っていたら、奥さんが他の弁護士にすでに依頼していたということで、あえなくお役ご免となりました。

5 最後に

今回、月報の執筆依頼を受けて、当番弁護士の出動回数を調べてみると、13件ほどでした。初出動は昨年の11月末のようですので、平均すると1週間に1回くらいの割合です。怪盗ルパンのような人物には出会えないとは思いますが、極力断ることなく、迅速に出動したいと思っています。

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