福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

月報記事

「転ばぬ先の杖」(第32回) みなさま、弁護士会の法律相談をご利用ください!!

法律相談センター運営委員会 委員長 池田 耕一郎(50期)

【1】はじめに

福岡県弁護士会では、全国で最多の県内17箇所に法律相談センターを開設しています。地図にありますように、福岡、北九州、筑後、筑豊の各地区にまんべんなく配置されています。当会は、「地元の弁護士」が地域密着で市民にきめ細やかな法的サービスを提供することを理念として掲げていますが、法律相談センターの運営は、その最たるものといえます。

【2】相談予約申込方法

弁護士会の法律相談の特色は、【1】の相談場所の多さとともに、相談枠の多さ、それに伴う相談予約のとりやすさ(枠が空いていれば、当日や翌日の相談も可能)ではないかと思います。そのことが、後で述べる相談実績につながっています。

法律相談センターは17箇所ありますが、相談申込みの利便性の観点から、電話番号は、ナビダイヤル0570−783−552(なやみ ここに)に統一しています。こちらの番号にかけて、ガイダンスに従ってボタンを操作していただくと、各地域の基幹センターにつながり、最寄りのセンターで法律相談を受けることができる仕組みになっています。

電話だけでなくインターネットを通じてのWEB予約も承っています。

詳しくは、「福岡県弁護士会」のホームページをご覧ください。

【3】無料相談

法律相談センターでの一般相談は、相談料30分あたり5000円(及び消費税)を頂戴しています。

しかし、相談者の置かれた立場や相談内容によって、無料相談を実施しています。これも、ぜひホームページでご確認いただければと思います。

【4】チケット制

当会は、自治体、各機関・団体の皆様と連携した市民サービスを提供すべく活動していますが、その一環として、自治体から委託を受けて弁護士を派遣する制度のほか、自治体から地元住民に法律相談の無料チケットを配布し、そのチケットを法律相談センターにお持ちいただいた方については無料相談を実施する「チケット制」を実施しています。

法的課題を抱えているのに何から始めてよいかわからないという方は多くいらっしゃいます。チケット制は、自治体にとって、悩みを抱える住民への支援として位置付けられるものです。チケット制を導入している自治体は次のとおり24箇所あり、関係者から、住民サービス向上につながっていると高く評価していただいています。まだ導入されていない自治体におかれては、ぜひチケット制の導入をご検討いただければと思います。

○福岡地区(5箇所)

・福岡市 ・古賀市 ・福津市 ・筑紫野市 ・糸島市

○北九州地区(4箇所)

・豊前市 ・築上町 ・上毛町 ・吉富町

○筑後地区(2箇所)

・久留米市 ・広川町

○筑豊地区(13箇所)

・飯塚市 ・嘉麻市 ・桂川町 ・田川市 ・添田町 ・糸田町 ・香春町 ・川崎町 ・大任町 ・福智町 ・赤村 ・直方市 ・宮若市

【5】相談件数

関係各位のご理解・お力添えをいただき、当会の各法律相談センターで昨年度(2016年度)実施された相談件数は8726件でした。

当会は、各委員会が活動内容に応じたバラエティに富む相談活動に取り組んでおります。それら件数を合わせますと、当会が実施している相談件数は1万件を優に超えます。

【6】最後に

当会は、「市民と共に」を目標に掲げ、市民のみなさんが日頃抱える不安を安心に変えてほしいという思いから、「不安を、安心に。」というキャッチフレーズで相談事業に取り組んでいます。

これからも、会員一同切磋琢磨して、相談事業に取り組んでまいります。 ぜひ、当会の法律相談をご利用ください。

「転ばぬ先の杖」(第32回) みなさま、弁護士会の法律相談をご利用ください!!.jpg

専門職によるくらし・事業なんでも 相談会(6/3)

会員 吉原 俊太郎(65期)

平成29年6月3日(土)、午前10時から午後4時まで、福岡市健康づくりサポートセンター(あいれふ)の10階講堂にて、「専門職によるくらし・事業何でも相談会」が開催されました。

本相談会の主催は、福岡専門職団体連絡協議会(さむらいネットワーク福岡)であり、構成団体は、日本公認会計士協会北部九州会、九州北部税理士会、福岡県司法書士会、福岡県土地家屋調査士会、福岡県不動産鑑定士協会、福岡県行政書士会、福岡県社会保険労務士会、日本弁理士会九州支部、福岡県弁護士会の各士業団体です。

福岡専門職団体連絡協議会(専団連)とは、各士業の専門職が、相互に知識や情報を交換し、共同研究や共同相談を実施して社会的ニーズに応えるとともに、専門職同士の交流を図ることを目的とする団体です。

専団連では、福岡市地区では毎年6月、9月、12月に、北九州地区、筑後地区、筑豊地区では毎年6月に、「くらし・事業なんでも相談会」を開催し、前記9士業が、無料で相談に対応しています。

本相談会の特徴は、複数の専門家が相談に応じるという点にあります。

例えば、相続の相談であれば税理士と司法書士、土地の境界に関する相談であれば土地家屋調査士と弁護士など、1回で複数の専門家に相談できるのです。

そのような特徴に加えて、無料で相談できることから、本相談会には、毎回たくさんの方々にお越しいただいております。

なお、今回の相談会は、福岡会場(あいれふ)のほかに、北九州会場(北九州市立商工貿易会館2階)、筑後会場(久留米市役所3階会議室)、筑豊会場(イイヅカコミュニティセンター2階)の各会場でも相談会が開催されましたが、私は相談会の運営委員として参加させていただきました。

以下では、福岡会場についてご報告させていただきます。

当日は、晴天に恵まれ、朝早い時間帯からたくさんの方々にお越しいただきました。

特に午前中は、相談待ちの方が常におられる状態で、9つ設けたブースは常に埋まっており、相談員の先生方には、1つの相談が終わると、息をつく暇もなく、次の相談に入っていただきました。

結果として、福岡会場の当日の相談件数は60件でした。とても多くの方々にご相談に来ていただき、また、相談員の先生方の丁寧なご対応に、ご満足いただくことができたと思います。

相談会後は、49名もの先生方に参加していただき、懇親会が盛大に開催されました。懇親会の場では、他士業の先生方との交流を深めていただけたと思います。なお、相談会終了後、懇親会までの間に、0次会を開催される先生や、懇親会後、さらに、二次会、三次会と楽しまれる先生方もたくさんおられます。

他士業の先生方と相談を行うという機会はそれほど多くはないと思いますし、懇親会も非常に盛り上がりますので、まだ参加をされたことのない先生方は、是非ともご参加ください。

子どもの日記念電話相談について

会員 山室 卓也(69期)

1 はじめに

5月13日に子どもの日記念電話相談がありました。私は、午前中を担当しましたが、午前中に電話がかかってきたのは2回で、そのうちの1回を私が担当しました。1件だけの相談でしたが、私にとっては大変貴重な経験となりました。以下この電話の内容、私の感想等について書かせていただきます。

2 子どもからの相談

電話をかけてきてくれたのは小学生の女の子でした。相談内容は、同級生からからかわれたりするのが辛いので、保健室登校したいが、どうやったら保健室登校できるかというものでした。その子は、保健室登校を考えるに至った経緯を「1点目は~をされたこと、2点目は~をされたこと、3点目は~をされたことで、学校に行くのが嫌になったけど、学校には行かないといけないと思うので、保健室登校したいと思いました」とその子なりに整理して一生懸命話してくれました。また、話そうと決めたことを全部話そうと、早口になっていたことも印象に残りました。

私は、小学生の相談を受けたことは初めてだったので、どういう言葉遣いで対応するのか、どういう言葉をかけたらよいのか等色々と考えました。私としては、できるだけ優しく、平易な言葉で、その女の子の気持ちに寄り添えたらよいと考え、「それは辛かったね」「嫌だったね」といった言葉をかけました。

幸いその子は、同級生から、からかわれたりしていることは、親や先生に相談できており、親には、保健室登校したいことも伝えてあり、親もその方向で考えているとのことでした。

このような状況でしたので、私からは、小学生の女の子に対し、アドバイスとして「学校の先生に保健室登校したいことを伝えてみるといいよ」と言いました。

通話したのは、5分にも満たない時間でした。今顧みると、もう少し長い時間をかけて色々な事情を聴いて、その女の子の辛い気持ちを受け止めてあげればよかったと思います。

今回のケースでは具体的な法的なアドバイスをすることよりも、女の子の気持ちを受け止めてあげることが期待されていた役割ではないかと思います。

3 柏餅

午前中、電話は合計2回しかかかってこなかったので、待機時間が長かったです。その間、サポートで来てくださった小坂先生に差し入れいただいた柏餅(モチモチしていて、とても美味しかったです。)を食べながら、子どもの権利に関する書籍を読んだり、小坂先生や私と同じく午前中の担当であった石川先生と子どもの権利に関する熱い(?)話をしたりしていました。電話がたくさんかかってきたほうがもちろんよかったですが、待機時間も有意義に活用することができました。

4 子どもの日記念電話相談の今後について

午前中にかかってきたもう1本の電話も子ども(中学生)からでした。この子達がどういう経緯で、この電話相談を知ったのか分かりませんが(電話で確認すればよかったのですが、失念しておりました。)、今後さらに子どもからの相談が増えて、子ども自身の問題解決、悩み解消にこの電話相談が少しでも役に立てばよいのではないかと考えております。そのためには、どういった経緯で、相談が来ているのかを認識し、分析し、よりたくさんの子どもから相談が受けられるようになるとよいと思っております。

5 おわりに

電話相談に対する私の回答がその女の子にとって、どれだけ役に立ったかは正直分かりませんが、私にとっては、この電話相談が良い勉強の機会になりました。私としては、子どもの悩みの解決のためだけでなく、新人弁護士にとっての貴重な機会としても今後も子どもの日記念電話相談が継続、発展していけばよいと考えております。

2017年6月 1日

あさかぜ基金だより

弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 社員弁護士 田中 秀憲(69期)

自己紹介

平成29年5月にあさかぜ基金法律事務所に入所しました、田中秀憲と申します。

私は大阪出身であり、司法修習も大阪で行いました。これまで大阪を出たことがなく、このたび弁護士として初めて福岡の地にやってきました。

ロースクール入学前は大阪で警察官として3年ほど、交番と機動隊に勤務しました。警察官として最も印象に残っているのは交番勤務です。私が勤務していた警察署は大阪府内では忙しい警察署で、日々、多くの市民が困りごとの相談のため交番を訪れていました。市民の相談には難しい問題もありましたが困りごとが解決に向かったときに見せる府民の安心した顔を見られることは警察官としてのやりがいにつながっていました。

しかし、同時に私は警察官として職務に従事するなかで社会において法律が占める重要性を実感しました。たとえば、拾得物の権利関係については、遺失物法や規則に詳しく規定されていますし、道交法違反があったときには刑事事件や行政事件が問題になることがあります。

私は警察官の職務を通じて法律の奥深さに思い至り、より専門的に勉強したいと考えるようになりました。そこでロースクール進学を決意したのです。

あさかぜに出会ったきっかけ

司法修習中に就職活動をしているときに、弁護士過疎地という地域があることを初めて知りました。私の出身地である大阪には多くの弁護士がいるため、日本に弁護士過疎という実態が存在することに、とても驚きました。どのような弁護士が弁護士過疎地で活動しているのかを調べていたところ、弁護士過疎地に赴任するための弁護士を養成しているあさかぜ基金法律事務所があることを知りました。

あさかぜに入所しようと決心

警察を利用する方の多くは、本当に困っていて、どうすればよいのか分からないと助けを求めてきていました。警察官時代には困っている人の役に立てることに、とてもやりがいを感じていました。

弁護士として活動するときにも困っている人のために役立つことでやりがいを感じたいと考えています。弁護士過疎地で法律的問題に直面している人たちは、困っているけれど、どうしたらいいか分からないという状況にあるように思います。司法試験に合格し、司法修習を終えた今、弁護士過疎地で生活する人たちのために役立てることをやりがいとして活動する弁護士になりたいと考えています。そのために弁護士過疎地に赴任する弁護士を養成しているあさかぜ基金法律事務所に入所したいと決心しました。

私の決意

このたび、縁あって福岡のあさかぜ基金法律事務所で弁護士として活動させてもらうことになりました。あさかぜ基金法律事務所は多くの人たちの支援により成り立っている事務所です。支援を受けながらも、これに甘えることなく、来たる弁護士過疎地への赴任に向けて日々努力を重ねる所存です。これからのご指導、ご鞭撻、何卒よろしくお願いします。

2017年5月 1日

ITコラム

会員 柏 真人(63期)

今年の4月1日、

「将棋電王戦 佐藤名人が人工知能に敗れる」
というニュースをネット記事で見かけました。これまでも、プロ棋士がコンピューター将棋ソフトに敗れたことはありましたが、現役のタイトルホルダーでありしかも「名人」位にあるプロ棋士が将棋ソフトに敗れたことは、私にとって衝撃的な出来事でした。人工知能恐るべしです。

恐るべしなのは、なにもプロ棋士に勝利したからだけではありません、将来、人工知能いわゆるAIは、われわれ弁護士にとって代わる可能性を秘めているのです。今回は、弁護士業務は人工知能にとって代わられるのか、について考えてみたいと思います。

ネットの記事などを見ると、アメリカの大手法律事務所などでは、すでに人工知能の導入が始まっており、破産のアドバイスなどを弁護士が人工知能から受けていたりするらしいです。この波はやがて日本にもやってくるでしょう。

弁護士の思考過程を具体化すると、いろいろなご意見があると思いますが、概ね(1)事実の把握、(2)法律構成を考える、(3)あてはめ、(4)実際の解決の合理性の判断、といったところに集約されるのではないでしょうか。人工知能の得意分野は、(1)や(3)といった思考過程の分野でしょうか。事実を整理したりするのは得意そうですね。複雑な時系列を瞬く間に整理してくれそうです。また、判例検索なども得意そうです。そうなってくると、ある程度の定型的処理の可能な、過払い案件などの債務整理や知財分野では、人工知能は強力なライバルになりかねません。

ですが、上述の思考過程で、多くの弁護士が一番苦労しているところは、依頼者にとって一見不利に見える事実や不自然に見える事実を何とか依頼者に有利な(もしくはそれほど不利でない)事実に見せていくのか、といったところではないかと思います(少なくとも私はそうですが・・)。人間には、合理的に説明できない何かがあり、なにかをきっかけに不合理な行動をとってしまう時がある。それを弁護士になっていやというほど経験しました。そのような人間の「人間臭さ」を人工知能が理解し弁護していくのはまだまだ至難の業なはずです。そうなってくると、合理的な行動が求められる企業間取引・契約などの分野においては人工知能が優位な気がしないでもありません。他方、あくの強い依頼者をなだめすかし、辛抱強く打ち合わせを重ねる作業が必要な、いわゆる「町弁」は人工知能がライバルとなる日はまだまだ先の話のはずです。

と、電王戦第2局で佐藤名人が将棋ソフトを鮮やかに打ち破ることを期待しつつ、しがない「町弁」にすぎない私の先入観と希望が多分に入った今回のコラムを終了したいと思います。

「転ばぬ先の杖」(第30回) 子どもの加害行為と親の民事責任

会員 小坂 昌司(52期)

このコーナーは、弁護士会の月報を読まれる一般の方に向けて、役に立つ法律知識をお伝えするものです。今回は、子どもの権利委員会が担当します。

子どもは失敗しながら成長します。子どもが興味を持つことには、積極的に取り組ませてあげたいものです。その中で子どもが失敗をしたときには、それを成長の糧とできるように親が見守っていくことが必要です。

もっとも、子どもの失敗が、ときに、他人に損害を与えてしまうことがあります。もし、そのような事態になったときには、親は、まずは子どもと一緒に被害者に対して真摯に謝罪をするべきです。そして、同じようなことを繰り返さないように子どもを指導して自覚させることが必要でしょう。

被害者との関係では、謝罪をすることで許される場合も多いのですが、ときに法律上の責任問題に発展することがあります。

子どもの加害行為が犯罪に該当するような場合には、刑事上の責任として、子どもの年齢によって、家庭裁判所の手続きの対象となります。年少の子どもの場合には、児童相談所の指導の対象になります。

また、他人に財産的な損害を与えた場合には、民事上の責任として賠償の問題が発生します。そして、このような場合、加害行為をした子どもだけでなく、親が賠償の責任を負うことがあります。

以下では、どのような場合に、親が賠償責任を負うか考えていきます。

まず、民法は、故意または過失によって他人に損害を与えた者は、その損害を賠償する義務があると定めています。従って、未成年者も含めて、わざと、あるいは不注意で行った行為(これを「不法行為」といいます。)で第三者に損害を与えた場合には、その損害を賠償する義務を課されます。

もっとも、民法は「未成年者が、自分の行為の責任を理解する能力を備えていなかったときには賠償の責任を負わない」としています。この「能力」(これを「責任能力」といいます。)を備えているかどうかの明確な基準はありませんが、おおよそ12歳くらい(小学校を終える頃)から、この能力があると判断される場合が多いようです。

さらに民法は「子どもが(責任能力がなくて)責任を負わない場合には、子どもを監督する法律上の義務を負う者が賠償義務を負う。」と定めています。つまり、子どもの年齢が低く、責任能力がない場合には、子ども自身には賠償責任はなく、法律上の監督義務者である親が子どもに代わって賠償責任を負うことになります。なお、「法律上の監督責任を負う者」としては、親以外にも、例えば、児童養護施設の施設長や未成年後見人など、親に代わって子どもの監督をする立場にある人も含まれます。この親の責任は、親が監督義務を怠らなかったこと、あるいは、監督義務を果たしていても子どもの加害行為を防止できなかったであろうことを証明すれば免除されますが、これまでの裁判では、親が責任を免れることは稀でした。

なお、最高裁判所まで争われた事件で、当時11歳の子どもが小学校の校庭で友人とサッカーをして遊んでいたところ、蹴ったサッカーボールが校庭から路上に転がり出て、このボールを避けようとしたバイクを運転中の高齢者が転倒して最終的に亡くなったというものがあります。

この事件について地方裁判所と高等裁判所は親の責任を認めました。しかし、最高裁判所は、本件で子どもがしていたのはゴールに向かってサッカーボールを蹴るという通常の行為であり、一般的には他人に危害が及ぶとは考えられない行為であることや、親が危険な行為をしないように日ごろからしつけをしていたことなどを考慮して、親は責任を負わないと判断しました。平成27年に出されたこの最高裁判所の判決が裁判実務に影響を与える可能性があります。

次に、子どもの年齢が一定以上で、子どもに責任能力があるとされ、子ども自身に賠償責任が認められる場合でも、同時に親にも賠償責任が認められる場合があります。先に述べた「子どもに代わって責任を負う」という場合とは違って、親自身に課されている監督義務に違反したこと自体を不法行為と考えるのです。

子どもには賠償するための資力がない場合が多いので、被害者にとっては、親に賠償責任が課されるほうが、実際には損害の補填がされやすいという事情があります。従って、大きな被害を受けた場合には、子どもとともに、親に対しても賠償責任を追及する場合が多くなります。

実際に裁判となった例としては、高校2年生の子どもが友人から借りた原動機付自転車を、夜間に前照灯を付けずに走行させ、道路を歩いていた被害者をはねて死亡させたという事案があります。この子どもは、この当時生活が乱れ、夜間に外出して仲間と徘徊することが多く、バイクに無免許で乗ったり、シンナーを吸うなどの問題行動を繰り返していました。親はそれに気づいて何度も注意していましたが、子どもは親の指導を無視して従いませんでした。

この事案について裁判所は、親の教育、指導、監督が十分であったとは言い難く、常態化していた夜遊びと本件事故との間には密接な関係があるとして、親の賠償責任を認めました。この事案では、親は子どもに対して注意はしていました。他の有効な手立てを思いつかなかった可能性があり、親の責任を認めることは親にとって厳しいものとも考えられます。

なお、子どもの問題行動が収まらない場合には、親だけで悩むのではなく、児童相談所や少年サポートセンターなど、非行にかかわる専門機関に相談する方法もあります。そのようなことをしているかどうかによって、親の責任についての判断が異なる可能性もあると思われます。

以上のように、子どもが第三者に加害行為をした場合に親が責任を負うかどうかは、子どもの年齢、子どもがした行為の内容、普段の子どもの行動や親の指導状況などに応じて、かなり微妙な判断になります。

子どもが起こした事件・事故で他人に損害を与えてしまうと、親としては、被害者への対応に頭を悩ませることになるでしょう。もし、こうした問題が生じたときには、賠償責任などの難しいことは専門家に相談し、親としては、子どもの指導や加害者への謝罪に力を注ぐことが、子どもの成長のためにも重要です。法律的なことは迷わず弁護士に相談されることをお勧めします。

また、子どもの加害によって生じる賠償責任について、一定の場合は保険で賄える場合もありますので、保険への加入も検討する必要があります。

連載/高齢者障がい者の権利擁護と弁護士~権利擁護法務の実務解説 最終回/福岡県弁護士会の高齢者・障がい者分野における取り組み

高齢者・障害者等委員会委員 大町 佳子(62期)

今回をもちまして、高齢者障がい者の権利擁護と弁護士~権利擁護法務の実務解説~の連載を終了いたします。そこで、最後に、福岡県弁護士会の高齢者・障がい者の権利擁護に向けた取り組みを紹介したいと思います。

1 高齢者・障害者法律相談

福岡部会では、あいゆう相談として、無料電話相談を実施しています。無料電話相談には、電話をかけると天神センターで待機している弁護士が直接に対応するもの(毎週火曜・金曜の午後1時~4時)、天神センターの職員が受付をして担当弁護士から折り返すもの(平日の午前10時~4時)があります。相談は、高齢者・障がい者からの相談のみならず、その家族や支援者(施設等)からの相談も受け付けています。

無料電話相談では、相談担当弁護士が面談相談の必要性について判断し、面談相談が必要で、かつ、相談者が希望する場合は、面談担当弁護士へと相談を引き継ぎます。

その場合、面談相談が実施されることになりますが、面談相談には担当弁護士の事務所への来所相談と出張相談(高齢等の事情で担当弁護士の事務所への来所が困難な方のみ)があります。なお、出張相談は、法テラスの民事法律扶助制度の無料法律相談の資力要件を満たすか否かを問わず初回は無料となっています。これらの相談については、登録研修(登録継続研修を含む)を実施したうえで、登録要件を満たした弁護士に相談を担当してもらっています。

筑後部会では、毎週木曜日の午後1時から午後4時まで、「高齢者障害者無料電話相談」を実施しています。高齢者、障がい者ご本人のみならず、御家族、福祉関係の支援者等も対象にして、高齢者、障害者に関わることであれば相談内容を問わずに電話相談を行っています。

北九州部会では、弁護士会(あいゆう)の無料電話相談等は行っていません。ただし、北九州市と連携しており、北九州市各区役所で、1か月に1回、「高齢者・障害者あんしん法律相談」を実施しています。これにより高齢者・障がい者関係の法的問題を抱えている市民の方は、無料で弁護士による法律相談を受けることができるようになっています。

2 高齢者障がい者虐待対応チーム

福岡県弁護士会は、公益社団法人福岡県社会福祉士会と協力して、高齢者や障がい者の虐待事案について、市町村の活動・施策をサポートするために、各市町村との契約に基づいて、各市町村からの要請に対して、ケース会議へ弁護士と社会福祉士をペアで派遣しています。なお、各市町村へ派遣する弁護士と社会福祉士については、登録研修を受講してもらったうえで、高齢者障がい者虐待対応チームに登録してもらっています。

3 あいゆう研修

毎年、福祉職などの、弁護士以外の方も参加可能な形で、高齢者障がい者の福祉業務の専門家や弁護士による講義形式の研修を開催しています。昨年は、障がいを理由とする差別の解消の推進に関する法律や、成年後見制度における本人の意思決定支援について研修をしました。

4 高齢者・障がい者の消費者被害研修への講師派遣

福岡部会では、消費者委員会と協力して、高齢者・障がい者の消費者被害を防止すべく、研修会に講師派遣をしています。この研修会は、福岡市の地域包括支援センターの管轄区域を対象にしており、その区域の民生委員やケアマネージャーが研修を受けられています。研修会の内容は、消費者被害の実態や防止方法、成年後見制度の説明などです。

5 成年後見人等候補者推薦制度

福岡部会では、福岡家庭裁判所本庁と協力し、家庭裁判所が弁護士を後見人等として選任する際の候補者名簿を作成し、候補者を推薦しています。

6 その他

その他、福岡県弁護士会では、福岡市医師会とのパートナーシップに基づく勉強会などを実施しており、高齢者・障がい者の特性の理解や、社会的制度の在り方について相互に理解を深めたうえでの連携を目指しています。

また、福岡部会では、法テラス福岡の弁護士ナビゲーションに対して相談担当弁護士の名簿を提供しています。さらに、福岡部会では、地域包括支援センターとの連携を目指して、地域包括支援センターでの法律相談を実施すべく、福岡市との調整を図っているところです。

北九州部会では、北九州市や行橋市で、包括支援センター等の職員に対する法律相談を実施しています。

筑後部会では、筑後地区の各自治体の高齢者、障害者関係部署、社会福祉協議会等と「筑後地区高齢者・障害者支援連絡協議会」を組織し、3か月に1回の頻度で各自治体の担当職員等との事例検討会に高齢者・障害者委員会所属の弁護士が参加して、実際の事例に基づいて対応方法等を検討しています。

7 最後に

これまで、この連載をお読みいただきありがとうございました。これからも、高齢者・障がい者の権利擁護に対するご理解とご支援・ご協力をいただきますよう、何卒、よろしくお願い申し上げます。

「実務に役立つLGBT連続講座」番外編/マンガで知ろうLGBT

両性の平等委員会・LGBT小委員会委員 石田 光史(53期)

■ これまで6回にわたり、実務に役立つLGBT基礎知識をお送りしてきました。ただもしかしたら会員のみなさんの中には、「そうは言っても、自分の周りには(自分はそうであるとカミングアウトしている)LGBTの方がいなくて、実感として何だかよく分からん。」という方もおられるかも知れません。

そういう自分の経験の不足を補ってくれるのは、今も昔も、小説であり、映画であり、マンガです。今回はLGBT講座の番外編として、筆者の好きなマンガという分野から、LGBTを知るためにうってつけのマンガをセレクトしてみました。もっとも、このジャンルは最近非常に流行りのようで、とても多くのマンガが出ています。今回は字数の関係上、厳選5つのご紹介ですが、もし興味を持たれたら、ご自身でも探してみてください。

■ 志村貴子『放浪息子』全15巻(エンターブレイン)

「女の子になりたい男の子と、男の子になりたい女の子のおはなし」。そう紹介すると、これまでこの連載を読んでくださった方は、ああ、トランスジェンダーの話ね、と思うかも知れませんが、このマンガは、そう一筋縄ではいきません。マンガの中で、トランスジェンダーとか性同一性障害という単語は、ただの1回も出てきませんし、様々な性自認・性的指向を持った人が登場します。女の子になりたいという願望を持ち、男の子が好きな男の子。男の子になりたいと思っているわけではないけど自分が着たいからと学生服を着る女の子。女の子になりたいと思う主人公を好きになる女の子。はっきりと描かれてはいないけどおそらく性別適合手術を受けているのではとうかがわれるMtoFの人。

私は、研修などで、「LGBTというのは分かりやすくひとくくりにした言葉だけど、本当はそんなに4種類にきっちり分けられるものではなくて、みなそれぞれ、性自認・性的指向でいろいろな傾向を持っているんだ。」と聞くたび、理屈としては分かるけど今ひとつ実感としてピンとこないところがありました。が、このマンガを読んで、その意味がよく分かったような気がします。

このマンガは、主人公2人の小学生時代から高校卒業までの成長を描いたものであるだけでなく、彼・彼女らを取り巻く友人や家族など非常に多くの人物が登場する一大群像劇です。LGBTの知識といった観点を離れても、マンガとしてとても読み応えのある、イチオシの作品です。

※ちなみに、ジュンク堂福岡店の4階マンガコーナーに、この『放浪息子』の原画が展示されています。お好きな向きはぜひチェックを!

■ 熊鹿るり『とある結婚』全1巻(太田出版)

ロサンゼルスに住む日本人の早紀とドイツ系アメリカ人のアンナ。2人はレズビアンのカップル。同性婚を禁止したカリフォルニア州の「提案8号」を無効とする連邦最高裁判決(ちなみにこの訴訟については3月29日に原田執行部の提案で上映会を行った映画「ジェンダー・マリアージュ」に描かれています。)を機に、アンナは早紀にプロポーズします。しかし早紀は、これまでレズビアンであることを家族に打ち明けておらず、また上司に自分がレズビアンであることを知られて憎悪の念を向けられたことなどから、このままアンナと結婚できるんだろうか、アンナと結婚するということはずっと周囲からそういう目で見られるかも知れないということなんだ、と不安を感じ、結婚に前向きになれず・・・。

2人の隣には、ゲイで、一緒に暮らしていたパートナーを亡くしたショーンと、ショーン(と亡くなったパートナー)の養子・コニーが住んでいます。舞台であるロサンゼルスはLGBTが多くフレンドリーな地域と言われていて、その雰囲気が伝わってくるマンガです。

■ 田亀源五郎『弟の夫』1~3巻(双葉社)

主人公の弥一は、妻との離婚後、娘の夏菜と2人暮らし。そこに突然、弥一の亡くなった弟・涼二と結婚していたというカナダ人男性・マイクが訪れます。弥一は、突然の訪問者に戸惑い、時に迷惑に思いますが、涼二を偲んで日本を訪れたマイクを突き放せず、3人での同居生活が始まります。他方、夏菜は、叔父の同性の結婚相手というマイクに強い興味を抱き、偏見のない目でマイクと交流を始めます・・・。

弥一は、弟がゲイであることを本人から知らされていました。そのときに弥一は、あからさまな嫌悪の感情を見せたり否定したりはしなかったけれど、それから自分は弟に対してよそよそしく接してきていたのではないか、それで良かったのか、と思います。「自分はLGBTに偏見はない。」と言い、そう思っていても、いざ身近な人にカミングアウトされた場合、あなただったら、どう接していきますか?

■ 鎌谷悠希『しまなみ誰そ彼』1~2巻(小学館)

高校生のたすくは、夏休みに入る2日前、同級生に「お前、ホモ動画観てたん?」と言われます。「お前、そうなん?」同級生の続けての問いに対し、必死にごまかすたすく。もう終わりだと思い、崖から飛び降りようかと思っていたたすくは、「誰かさん」と呼ばれる不思議な人物に導かれるように、「談話室」を訪ねます。そこは、ゲイ、レズビアンなど様々な人々が集う場所でした。

印象的なシーンを2つ。1つは、冒頭の、友人に同性愛の動画を見ていたことがばれたときのたすくの反応です。「兄貴が送ってきた釣り動画だよ。」と何気ないふりをして否定しますが、顔は引きつり、それでも必死で作り笑いを浮かべます。お前はホモっぽいと思っていたとさらに続ける同級生に対し、「バカじゃねーのホモなんて。きもいわ、そんなの。」・・・たすくは、自らを守るために、自分を否定する言葉を口にせざるを得なかったのです。

もう1つは、女装をする小学校6年生の男の子、美空。美空は、男性が好きというわけではないようです。女装について、「僕が着たいから(女性の服を)着るんです。」と堂々と述べる美空。しかし、女の子になりたいのか、と問われた美空は、「さあ。」としか答えられません。さらに問われた美空は、「僕のことなんか、僕にも分からん。誰にも。何にも分からん。」と、体を震わせてただ泣くだけでした・・・。

まだ2巻までしか出ていないので、今後どのように話が展開していくか分かりませんが、とても楽しみなマンガです。

■ 平沢ゆうな『僕が私になるために』全1巻(講談社)

このマンガの作者は、性同一性障害の診断を受け、タイで男性から女性の体になるための性別適合手術を受けました。これは、その過程を自らマンガ化したものです。

当然ながら、トランスジェンダー、性同一性障害の方には、その方ならではの辛さや苦悩、受けてきた差別的言動などがあるわけですが、このマンガでは、多少はそういった記載もあるものの、そのあたりよりも、性同一性障害の診断が出てから性別適合性手術を受け、戸籍の性別変更に至るまでの出来事を具体的に描写することに重点が置かれています(あとがきには、このマンガではあえてそのような方針をとったことが書かれています。)。したがって、「話には聞くけれど、実際にはどんな感じなんだろう?」と思っていた点が克明に描かれていて、とても興味深いマンガでした。

特にタイでの性別適合手術について頁を割いて紹介されており、「ええ!そんなことするの!?」とか、「うわ~、痛い~、やめてくれ~!」とか、それはもう、実際に体験した人でなければ描けない、冷や汗もののリアル描写が絶品です。どういうことが描かれているかは、ぜひどうぞ、実際に本を手に取ってみてください。

シンポジウム「子どものいのちを守るために~学校現場における自殺予防を考える~」のご報告

自死問題対策委員会 松井 仁(44期)

2017年3月12日(日)午後2時から、天神ビルで、福岡県弁護士会主催「子どものいのちを守るために~学校現場における自殺予防を考える~」が開催されましたので、その内容をご報告します。

我が国では、年間自殺者数が3万人を下回ったものの、なお交通事故死者数の約5倍という高い数値にあるうえ、15歳~24歳の層においては自殺率はむしろ増えています。メディアでは、いじめ等を苦にした子どもの自殺事例が繰り返し報道され、社会問題となっています。そこで、本年のシンポジウムは、小学生から高校生までの子どもの自殺予防をテーマに開催いたしました(因みに昨年は大学生を中心とした若者の自殺予防のシンポを行いました)。

会場には、日曜日の午後にもかかわらず、学校関係者、行政職員、医療専門職、法曹関係者、一般市民の方など、60名以上の多数の参加があり、熱心に聞いておられました。

基調講演では、兵庫教育大学大学院教授・精神科医の岩井圭司氏に、子どもたちの自殺のリスクにはどのようなものがあるか、子どもたちのSOSに対して、大人がどのように対応すればよいのか、自殺予防のためにどのような教育をすべきか等についてお話しいただきました。

岩井氏によれば、学校において「死」「自殺」というテーマを扱うことを現場の先生方が避ける傾向にあり、文科省発行の副読本「心のノート」でも、命の大切さばかりに頁が割かれ、死についてはほとんど触れられていない問題を指摘されました。他方で、兵庫県では、家族を亡くした犯罪被害者がその思いを語る授業が展開されており、それを聞いた生徒から「実は死にたいと思っていたけど、生きようという気持ちが湧いてきた」といった感想が出ているとのことでした。つまり、「死」を正面から見つめることが必要であること、また、命を大切にしましょうという道徳を語るよりも、エビデンス(証拠)を示すことが重要だということです。

また、岩井氏は、子どもから例えば「死にたい」と言われたときの対応の原則として、(1)誠実、(2)話をそらさない、(3)傾聴、(4)感情を受け止める(説教や激励はしない)、を挙げられました。また、子どもに気持ちを聞き出すのに、「あなたは今死にたいですか」と聞いても答えにくいので、「ひょっとして最近、死にたくなるほどつらいことがありましたか」と聞いてみる、といった言葉の工夫も紹介していただきました。

基調講演のあと、当会自死問題対策委員会の阿比留真由美弁護士から、当会が運営している自死遺族法律相談制度、自死問題支援者法律相談制度の概要とこれまでの実績、いくつかの相談事例の紹介を行いました。

休憩をはさみ、パネルディスカッションを行いました。当会自死問題対策委員会の佐川民弁護士の進行のもとで、パネリストとして、岩井氏に加え、2人の有識者の参加を得て、子どもの自殺予防について議論しました。

まず、パネリストのシャルマ直美氏(北九州市スクールカウンセラー、臨床心理士として同市の自殺予防教育をリードしてこられた方)から、北九州市での実践についてプレゼンをしていただきました。同市では、「だれにでもこころが苦しいときがある」のだから「誰かに相談できる力を持とう」というテーマの子ども向けパンフレットを作成し、現場の授業で利用しており、教師からも生徒からも好評であるとのことでした(実物も配布されました)。また、新たな取り組みとして「4本の木」という題材を使って、ストレスに対処するための複数の方法を示し、生徒に好きなものを選ばせて話し合う、といった授業も紹介されました。

もう一人のパネリストである石崎杏理氏(性的マイノリティの子どもや若者をサポートする団体「FRENS」代表。居場所づくりや相談事業、教育機関での講演活動も活発に行っておられる方)からは、最近よく耳にするようになったLGBTという言葉の意味についてに分かりやすい説明がありました。その中でも特にトランスジェンダーの子どもたちが、学校現場において様々な困難に直面しており(例えば、性自認と異なる制服の強制、トイレ問題、いじめや揶揄、カミングアウトの方法等々)、自殺のハイリスク群になっていることについて、プレゼンが行われました。

その後の議論では、岩井氏に若者の自殺が減らない社会的背景について分析してもらったり、シャルマ氏に、北九州市において上記の授業を受け入れてもらうための苦労話をしていただいたり、石崎氏に、トランスジェンダーであることを子どもがカミングアウトしようとするときの学校との連携の具体例について教えてもらったりしました。また、子どもに関わっている教師や親の側のメンタルの問題(苦しいのに弱いところを見せられない等)も同時に対応していかねばならないという視点も提示されました。

議論は尽きず、会場からはたくさんの質問用紙が提出されていたのですが、全部聞ききれないうちに時間切れとなりました。

以上のとおり、大変充実した内容で、聴衆の皆さんは、本シンポジウムから、子どもの自殺予防に関わる様々なヒントや勇気を得られたのではないかと思います。出口で回収したアンケートでも、参加して良かったとの声が多数寄せられていました。

(なお、岩井氏の講演や各パネリストのプレゼンの内容を詳しく知りたい方は、当日の配布資料や上映資料を提供しますので、当職までご連絡ください。)

2017年4月 1日

IT委員会だより 「OK Google!」

会員 本山 悠宇吉(65期)

1年程前に事務所で車を購入し、最近は近場の移動であれば専ら車を使用するようになりました。電車やバスの移動に比べて車が便利だと感じることの1つは、移動中に電話ができることです。スマートフォンと車のナビをBluetoothで接続すれば、ハンズフリーで通話ができますし、事務所にいる弁護士との簡単な打合せや事務員に対する指示などは運転中に済ませることができます。

先日、外出先から車で事務所へ帰っていると、突然、充電器に繋いでいたスマートフォンの音声検索機能が起動しました。一時CMでもやっていましたが、Androidのスマートフォンは、待受状態で「OK Google」と話しかけると、手で何も入力しなくても音声検索を始められる機能があるのですが(iPhoneの場合、「Hey Siri !」です)、私自身は何も話しかけていないのに、この機能が独りでに起動したのです。一体何事かと思って少し考えたのですが、おそらく、そのとき車内で流していた音楽(何の曲だったかは忘れましたが)の一部をスマートフォンが拾い、「OK Google」と聞き間違えたのだろうと思います。

私はスマートフォンの機種変更をしたときに設定して以来、この機能を使用したことがなかったのですが、折角なので何か検索してみようと思い、試しに「ここから○○まで車で」と、近くの餃子屋さんまでの道を訊いてみました。すると、「○○は現在地から車で8分です。こちらがルートです」と音声が流れ、「開始」という表示をタップすると、ナビが開始されました。勘違いで勝手に起動したりする割には、聞き取り精度はなかなか高いようで、運転中などは意外と便利なのではないかと今更ながら気づきました。

そこで、特に運転中に使えそうなGoogleの音声検索の機能を調べてみましたので、いくつか挙げてみようと思います。

  1. 「近くの○○まで」
    運転中、急にトイレに行きたくなったら「近くのトイレまで」、「近くのコンビニまで」などと音声入力すれば案内してくれます。ガソリンスタンドや駐車場を探すときにも便利かもしれません。
  2. 「○○に電話をして」
    運転しながら手で操作をしなくても電話をかけることができます。電話帳に登録しているところだけでなく、Googleで検索できるところであれば自動的に発信してくれます。
  3. 「メモをとって」
    運転中に電話をしても、同時にメモをとることはできません。しかし、通話終了後、スマートフォンに「メモをとって。明日11時に事務所で打合せ。」などと言えばすぐにメモを取ってくれます。
  4. 「リマインドして」
    「自宅に帰ったら○○に電話するようにリマインドして」などと言って登録すれば、指定した場所に来たときや指定した時間などにポップアップで通知してくれます。
  5. 「○○の交通状況は」
    どこの道が混んでいるかなども、Googleに聞けばすぐに教えてくれます。

いかがでしょうか。個人的には(3)のメモや(4)のリマインド機能などは運転中でなくとも使えそうですし、慣れればすごく便利ではないかと思います。ただ、私の場合外で携帯に向かって話しかけるのはまだ恥ずかしいので、その意味でもまずは車の中で利用したいと思います。

上記の他にもスマートフォンの音声検索でできることは色々あるようなので、利用したことがない人は是非試してください。

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