弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
人間
2017年7月 9日
うんちの正体
(霧山昴)
著者 坂元 志歩・鱈 耳郎 、 出版 ポプラ社
毎日お世話になっている「うんち」の本です。へそのゴマから話が始まる面白い絵本です。子ども向けのようでいて、実は大人向けの健康教本です(私は、そう思いました)。
まず、病気を治すのに、健康人の「うんち」を薄めて、病人の鼻からチューブで腸へ注入するという治療法があるというのに驚きます。つまり、腸内の菌を殺すのではなく、腸のなかの菌の多様性を増進することによって、病気を治すのです。その病気は大腸炎ですが、なんと、この方法で9割以上が治るというのです。
大腸には、100兆個もの菌がいて、全身になると1000兆個もの菌がいる。これに対して、ヒトの身体は37兆個の細胞から出来ている。
へそのゴマには、2368種もの菌がいて、そのうち1458種が新発見の菌の可能性があった。ヒトのへそに共通の菌はいなかった。
宇宙飛行士は、宇宙船のなかで、おならをし、便を排せつする。その処理は大変だ。無重力の世界では、おならもゲップも、吐い息さえも、まとまって動く。しかも、おならには、燃える成分だって含まれている。
宇宙船のなかで、「うんち」が爆発したり、漂ってしまった事故が2度も起きた。「うんちバッグ」のなかで、殺菌剤とよく混ぜあわせておかないと、破裂してしまうのだ。
快食・快眠そして快便が私たちの健康を支えてくれます。この本は、そのなかの快便について、分かりやすいマンガつきで解説してくれています。子どもと一緒に読める楽しい絵本です。
(2015年2月刊。1300円+税)
2017年7月 7日
世界の産声に耳を澄ます
(霧山昴)
著者 石井 光太 、 出版 朝日新聞出版
身体を張った突撃取材で定評のある著者が、今回は世界各地の出産事情を取材するのです。知らないことが多々ありました。
タイでは代理母出産です。日本人も多く利用しているようです。アメリカだと代理母出産は1500万円。インドでは3分の1の500万円ですんでいた。ところがインド政府が規制を強化したら、タイへ移っていった。タイでも500万円かかる。
代理母の女性への報酬は122万円。分割で支払われる。契約時に10万バーツ、妊娠期間の9ヶ月間に1ヶ月ごとに1万バーツ、残りは出産後に支払われる。ただし、女性は20代に限る。30歳をすぎたら代理母にはなれない。
ヨルダンの難民キャンプ。ここでは物価が町より安くて、2分の1とか3分の1。そこで、品物をここで買い、難民キャンプの外へ持ち出して転売すると、利益が出る。難民キャンプには、いろいろな利権がある。
そして、難民キャンプでは出産が増えている。その母親は十代も多い。親からすると、厄介払いの面もある。そして、出産には帝王切開が多い。これだと予定日がずれるということがない。
アフリカのスワジランドは、HIV大国と呼ばれるほど、エイズ患者が多い。出産のときに母子感染することがある。18歳から49歳までの3人に1人がHIVに感染している。平均寿命は49歳。13歳から24歳までの女性の3分の1がレイプを体験している。性的暴行は膣を傷つけるので、一般の性行為よりHIV感染率が4倍も高い。HIVは、子どもから両親を奪ってしまう。エイズ孤児は、5万人以上もいる。
フィリピンでは母乳をのむと病気になるというデマが横行している。そのため、母乳をやって子どもを病気にしないために民衆は粉ミルクを求める。そして、実は、粉ミルクを母親が与えるのは、母親である女性がタバコやお酒、そして、シンナーやドラッグをやっているからでもある。
子どもを安心して出産でき、安全・快適な環境のもとで育てていける環境づくりこそ、世界平和の基礎だと痛感させられました。
安全に気をつけて、これからも突撃取材に励んでください。
(2017年5月刊。1500円+税)
2017年7月 3日
すっきりした朝に変わる睡眠の本
(霧山昴)
著者 梶本 修身 、 出版 PHP研究所
世の中には眠れないと訴える人が本当に多いと思います。私の場合には、夜7時以降にコーヒーかお茶を飲むと眠れません。
ぐっすり眠って、さわやかな目覚めというのは最高ですよね。この本は、睡眠の目的は前日までの疲れを完全に消し去ることにあるとし、そのため、朝、すっきり目覚めるためには、どうしたらよいかを具体的に解説しています。
睡眠は量より質が大切。必要十分な睡眠時間は、個々人の睡眠の質によって異なる。
脳にある自律神経中枢の細胞で活性酸素が発生し、酸化がおこることで疲労が生じる。
いびきは、自律神経の中枢を回復させる唯一のチャンスを奪う。
日本人の睡眠時間は年々、短縮していて、2010年は、平均して7時間14分。1960年の8時間13分と比較すると、50年間で1時間も短縮している。日本は先進国のなかで一、二位を争う睡眠時間の短い国だ。
寝始めの3時間に、成長ホルモンが多く分泌されるから、この3時間が重要なのだ。
6時間睡眠が10日間続くと、徹夜明けと同じ程度にまで認知機能が落ちる。
決まった時間に起きることが大切。ヒトは起きた時間によって、ほぼ眠くなる時間が決まる。
目を覚ましたあと、太陽の光をしっかり浴びると、眠気が吹き飛ぶだけでなく、夜もぐっすり眠れることにつながる。太陽光は、屋内の照明より数倍から数十倍も強い。時間的には数分間でもよい。
昼寝は20分以内にとどめる。それ以上寝ると、深い睡眠に入ってしまい、目覚めたときに強い眠気を感じることになる。昼寝する前にカフェインをとるとよい。カフェインの効果があらわれるまでに20分以上かかるから。
眠気を感じるまではベッドに入らない。眠れないときには、ベッドから出るのがよい。
寝室は真っ暗でなく、人がいるかどうかは分かるけれど、誰がいるかは認識できないくらいの暗さが理想。
寝返りできる布団がいい。
とても分かりやすく、実践的な睡眠の本です。
(2017年5月刊。1400円+税)
2017年6月24日
キッチハイク
(霧山昴)
著者 山本 雅也 、 出版 集英社
世界の人々が、家庭料理として、どんなものを毎日食べているのか、やはり知りたいですよね。
東京生まれの32歳。早稲田大学を卒業して博報堂に入社した著者が、退社して、「80日間、世界一周」ならぬ、「450日かけて世界一周」、キッチンヒッチハイクしてまわった偉大というか画期的な記録です。
まあ、一読というか、一見の価値があります。よほどお腹が丈夫なのでしょうね。わずか一回だけトイレにこもったという失敗談が紹介されるだけです。
著者がキッチハイクを始めたのは、2013年6月のこと。マレーシアを皮切りにシンガポールへ向かった。
アジアの国々、南北アメリカ、北アフリカそしてヨーロッパ、よくぞまわりましたね。韓国にも台湾にも行っています。
家庭料理をつくっている場面の写真、そして出来あがった料理を前にポーズを決める人物写真など、眺めているだけでも楽しくなってきます。
この本は、世界中でキッチンをヒッチハイクした男の食卓交遊録であると同時に、人を訪ねてごはんを食べる時代の始まりを告げる本である。
なーるほど、そうも言えるのですね・・・。
そして、今、昔は、この趣旨でWebサービスを展開しているそうです。
それにしても、家庭のなか、それも台所にまで入り込んで、食事をともにするとは、大胆かつ勇気ある行動ですね。若くなければ、絶対に出来ませんよね。
(2017年4月刊。1600円+税)
2017年6月 8日
人生の悲劇は「よい子」に始まる
(霧山昴)
著者 加藤 諦三 、 出版 フォー・ユー
子育てとは、楽しいものですが、過ぎ去ってしまえば、まさしく恥ずかしいことの数々です。
この本を読みながら大いに反省させられてしまいました。といっても、とき既に遅しで、今や孫たちとの接点を楽しむくらいになっています。
子どもが抱く恐怖心のなかに、親から見捨てられることに対する恐怖というものがある。子どもにとって、それは大変な恐怖なので、そのため自分の本性すら裏切ることがある。そして、それは後々まで、その人の人生に尾を引き、大きくその人を支配する。
幼いころ、このような恐怖にさらされながら生きた子どもは、大人になっても、なかなかこの影響から脱することが出来ない。見捨てられるのが怖いから、見捨てられまいと緊張する。「見捨てられる恐怖」をもった子どもは、いつも心理的に不安定である。不安であればあるほど、人は相手にしがみつく。
「明るく素直なよい子」とは、精神的死をもって人生を始めた人たちのこと。
自分の内面を信頼できない子どもは、親を喜ばすことによって自分を認めてもらおうとする。親を喜ばせれば自分は賞賛されるということを学び、この態度を大人になってからも持ち続ける。相手の気に入る人間になろうとすればするほど、自分に対する信頼感は失われていく。親の期待する役割だけを演じていると、そのうちに自己を喪失してしまう。
ある教育学者は、最低の父親とは、子どもに感謝を要求する父親であり、最低の母親とは、「ママのこと好き?」と訊く母親であるとする。つまり、感情的に要求が過大だということ。こんな親には、親自身に愛情飢餓感がある。
子煩悩で、とても子どもを愛しているように見える親が、実は極めて支配的なタイプだということもありうる。そのとき、その愛情の真の姿は支配欲なのだ。
本当に子どもを愛している親というのは、子どもが離れていくことに、それほどの衝撃を受けない。
助けを求めたときに自分を見捨てた母親ですら、子どもは優しい母親と思わなければならない。見捨てられたときに感じた驚きと恐怖と絶望の体験は、すべて抑圧しなければならない。なぜなら、自分の身が危険な世界では、人を悪く思うことは、さらに危険なことだから・・・。
そこで、すべての人たちの都合のいい存在になることで、自分の身を守るしかない。つまり、「よい子」になって、すべての人の精神的奴隷になるのだ・・・。
家庭内暴力の少年は、母親に暴力を振るいながら、裏では母親の愛情を求めている。だから、家庭内暴力はしつこい。いつまでも、うじうじと母親をなぐるのは、裏で愛情を求めているから・・・。なるほど、なるほど、そうだったのかと思いいたりました。
あなたを世話するのは、こんなにうれしいと子どもに伝える親と、あなたを世話するのはこんなに大変だと子どもに伝える親とでは、子どもの心理的成長にとって、親の意味は、まったく違う。こんなに楽しいという顔をして子どもを世話したら、子どもは自分の存在に自信をもつことができる。
子どもを世話するときの、親の満足した表情は、社会人になってから大成功することより、その子供にはるかに自信をもたらす。
大変深い洞察がなされていて、驚嘆して一気に読みあげました。本箱の奥に隠れていたのを引っぱり出して読んでみました。良かったですよ・・・。
(1990年9月刊。)
2017年5月29日
僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう
(霧山昴)
著者 山中 伸弥、羽生 善治ほか 、 出版 文春新書
実に面白い本です。私も大学生のころを思い出して、一気に読みすすめました。いやあ、若いって、いいですよね。若いときには、いろんなことをしてみて、いろいろ失敗してみると、それがあとになって生きてきます・・・。そのとき、どんなに苦しくても、必ず得られるものがあるのです。といっても、そのときには、ただ苦しいだけなんですが・・・。
各界の第一人者が、若いころの不安、焦燥、挫折を語っています。うひゃあ、この人でも、こんなことがあったのかと驚きます。みなさん、苦労知らずに栄冠を勝ちとったというのではないのですね・・・。
ある何かが起きたときに、心底から不思議と思えるとか、心の底から驚くとかっていうのは、研究者になるための条件ではないか。予想外のことに我を忘れて興奮できるかどうか。それが研究者には大切なこと。
ノーベル賞をとった山中さんは、毎月アメリカに行っている。それは、実際に行ってみないと分からないことが多いから。アメリカの研究の中に行くと、日本にいる残りの時間よりも、はるかに多くの情報が入ってくる。
山中さんはアメリカにも研究室をもっているそうです。でも、毎月のアメリカ行いって、くたびれるでしょうね・・・。
挑戦をしていくときに大切なのは、ミスをしないこと以上に、ミスをしたあと、ミスを重ねて傷を深くしない。挽回できない状況にしないこと。
20歳前後の5年間というのは、何にも代えられない宝物みたいな時間だ。20代の失敗は、宝物であり、財産だ。
羽生善治氏は、人間は誰でもミスをするものだ、動揺して、冷静さや客観性、中立的な視点を失ってしまうとミスを重ねてしまうと語っています。
それにしても、次の一手を打つ前に4時間もじっと考え込むというのは、すごいことですね。
京都大学の山極寿一総長の入学式での祝辞は素晴らしいものでした。さすが京大です。「おもろいことやる大学にしたい」というのですが、大先輩は、「関西弁でおもろいいうのはな、もうひとつ言葉が続くんや。ほな、やってみなはれ」
うん、いい言葉ですね。
山極さんは、アフリカに行って、ゴリラの家族(群れ)のなかに入りこみます。5年から10年かかるそうです。
ゴリラは相手の顔をのぞきこむ。それは、ゴリラ流の挨拶。ニホンザルと違って、ゴリラは相手を見ることが威嚇ではない。挨拶だったり、仲直りのしるしだったり、友好的な合図を意味する。
ゴリラのドラミング(胸を両手で叩く)は、戦いの布告ではなく、興奮や好奇心の表れだったり、遊びの誘いだったり、いろんな意味をもつ重要なコミュニケーションであることが分かってきた。
ゴリラは、相手の言ってることが分かっても、その言いなりにはしたくない。相手の下に立ちたくないからだ。それがゴリラの感性。
ゴリラが6歳のときに親しくなった山極さんが、26年後、同じゴリラに会ったときの反応は信じられません。山極さんがゴリラ語で挨拶するとタイタス(ゴリラの名前です)も、それに答えた。
タイタスの目は好奇心に燃えているときのように金色に輝き、顔つきは少年のようになり、目がくりくりとしてきた。そして、土の上に仰向けに寝っ転がった。山極さんに向かって、大口を開けてゲタゲタ笑い、まったく子どものころの彼に戻っていた。
いやあ、すごいですね。見てみたかったですね、この場面を・・・。
心の震えるような、とてもいい本です。一人でも多くの若い人に読んでもらいたいと思いました。
(2017年2月刊。700円+税)
2017年5月28日
果てしなき山稜
(霧山昴)
著者 志水 哲也 、 出版 山と渓谷社
いやあ、若いってすばらしいですね。若いときにしか出来ない、無謀な北海道の冬山を山スキーで単独踏破した山行記です。寒がりの私なんか思わず、身震いしてしまいました。
山頂へ向かう鞍部にいいテントサイトを見つける。地図ではテントなんて張れそうにないと思わせるヤセ尾根上でも、現地に行くと雪庇の陰に風の当らない絶好のテントサイトを見出すことがある。しかし、風を防ごうとすると雪が積もり、除雪を嫌うと、そこは風が吹く場所だというのが常だ。
夕方から、また雪。雪は、すべてのものを美しく真っ白に覆ってしまうから怖い。
苦しかったこと、怖かったこと、寂しかったこと、楽しかったこと、いろいろあったが、そんな体験のすべてが、やがてただ自分の書いた文字や写真を通してしか思い出せなくなってしまう。文字も写真も、所詮はつくりもの。どんなに努力しても、それをとどめようとしても、どうしたって実際のときめきや感動は、記憶の上に積もる膨大な時間の中で次第に見えなくなってしまう。
なだれにあって、ぼくは奇跡的に窒息死する前に止まった。生きていることすら認識できない茫然自失の状態だった。ぼくは、むせかえりつつ、雪をコホゴホ、ゲェーゲェーと吐き出し、登りはじめた。傾斜60度の、胸まで没する雪壁を、35キロの荷を背負って。その途中にも、斜面は何回となく雪崩れ、一度はザックと別になって再び流されたりもしたが、ぼくは死にもの狂いで登った。
雪崩で遭難し、3日間は生きながらえていた人の書きつづった遺書が後になって発見されたこともある。「死んだらおしまい」とは、誰だって言える。物理的には、たしかにそうだろう。だが、情熱をもって生きていない人間にそれを言う資格があるのか。情熱をもたないで生き続ける人間よりも、たとえひとときでも情熱をもち、死んでいった人間のほうが、きっと、ずっといい。
登山は年数ではない。中身だ。どれだけ情熱をもって山に対しかだと思う。人生だって、きっと同じことだ。
この本は、1994年、著者が28歳のときの北海道縦断の山スキー記行が文庫になったものです。今では50代になった著者は、富山県に住むプロの写真家です。文庫として復刊していただいたことに感謝します。
(2016年10月刊。950円+税)
2017年5月 8日
保健と健康の心理学
(霧山昴)
著者 大竹 恵子 、 出版 ナカニシヤ出版
日本は長寿国ですが、幸福度はそれにともなっていません。
平均寿命は女性87歳(世界2位)、男性81歳(世界4位)。ところが、幸福度は世界53位。
健康心理学は、人間の健康に関するさまざまな問題を心理学の観点から検討し、そこから得られた知見を社会に役立てることを目指した心理学の応用領域の一つ。
感情は、病気にかかる率だけでなく、寿命にも影響を及ぼしている。
ポジティブ感情には、ネガティブ刺激による交感神経系の活性化を速やかに活性化させる「元通り効果」をもっている。
日常的にポジティブな感情を多く経験しているほど、中枢神経系、自律神経系、内分泌系、免疫系に良い影響を及ぼし、これらのシステムの相互作用により、結果として健康状態や寿命に良い影響を及ぼす。
日本のうつ病の患者は、平成8年に20万人、その他の気分障害をふくめて43万人だった。ところが平成20年度には、うつ病患者が70万人、その他をふくめると100万人。3倍にも増えた。
同じ心的外傷体験をしても全員がPTSDになるわけではない。レジリエンスという、一時的に心理的不健康の状態に陥っても、それを乗りこえ、精神的病理を示さず、よく適応する人がいる。
交代制勤務は、睡眠覚醒リズムを乱れさせる。乳ガンのリスクが高まり、前立腺ガンのリスクが2倍から3倍も高まる。
望ましくない出来事はコントロールできるという信念は、健康的な生活習慣やストレスへの上手な対処をもたらし、健康への悪影響を少なくする。
首尾一貫感覚(SOC)は人生経験によって形成され、とくに一貫性、負荷のバランス、結果の形成への参加という3つの経験が重要である。
ルールや責任の所在が明確な一貫性のある経験は把握可能感の基礎となり、また、処理可能感を育む。
自分だって、やれば出来るんだという感覚は大切ですよね。
やや難しいところもありましたが、私の生き方から共感できるところが多々ありました。
(2016年12月刊。3400円+税)
2017年4月17日
脳を最適化すれば能力は2倍になる
(霧山昴)
著者 樺沢 紫苑 、 出版 文響社
脳内物質を見きわめて、毎日、生き生きとしようと呼びかける本です。
絶対に24時間も戦い続けてはいけない。
これは本当にそうだと思います。会社のために過労死するなんて、ぜひやめましょう。
アドレナリンは、ピンチや危機を乗りこえるために重要な物資である反面、アドレナリンが分泌されすぎると、心臓がバクバクして極度な緊張に陥ったり、冷静さを失ったりと、よくないことも起きる。アドレナリンは、強力な味方でもあり、生命を脅かす敵でもある。
セロトニンが分泌されると、「今日も一日がんばるぞ」という気持ちになる。身体にも力がみなぎり、ハツラツとした気分になる。頭もスッキリしているので、すぐに仕事をスタートできる状態になる。セロトニンは、睡眠と覚醒をコントロールする脳内物質である。
カーテンを開けて寝ると、朝、スッキリと目が覚める。この、とても役立つ習慣は、セロトニンによってもたらされている。
私は、ホテルに泊まるときにも、窓はレースのカーテンのみにしておきます。外界の明るさを身体で感じられるようにするためです。
睡眠は「時間の長さ」ではなく、「熟睡感」があるかないかのほうが重要。朝、起きたときに、「ああ、ぐっすりと眠れた」と感じられたときには、それは睡眠の質と量が適切な証拠だ。
私も、この熟睡感を大切にしています。花粉症の季節だけは、思うようにいきませんが・・・。
熱い風呂に入るのもストレス発散によい。脳からエンドルフィンが分泌されるから。ただし、熱い風呂は心臓に負担をかけるから、ほどほどにする。
私も、どちらかというと熱めの風呂が好みです。
今の自分に満足し、現状維持で大丈夫と思ってしまうと、ドーパミンが出なくなり現状維持どころか、記録は悪くなり、人間としての成長がストップしてしまう。
脳はチャレンジを好む。チャレンジして、達成して、幸福になる。だから、常にチャレンジを続けなければいけない。
私は、このところ小説に挑戦していますし、毎朝、フランス語の上達を目ざしています。
ドーパミンは学習脳、フルアドレナリンは仕事脳、セロトニンは共感脳。
脳とうまく折り合いをつけて、楽しく充実した毎日を過ごしたいものです。
(2017年2月刊。1480円+税)
2017年4月16日
ぼくが発達障害だからできたこと
(霧山昴)
著者 市川 拓司 、 出版 朝日新書
世の中には本当に多種多様な人がいるものだと、毎日、痛感しています。私も奇人変人の一人だと自覚していますが、それでも私なんかまだまだ可愛い存在にすぎません。
この本の著者は作家です。私は一冊も読んだことがありませんが、『いま、会いにゆきます』『そのときは彼によろしく』など、私もタイトルだけは聞いて知っています。
アスペルガーであり、ADHD(注意欠陥・多動性障害)をもっています。そんな人がベストセラーになる本を書いているのですから、世の中は不思議です。面白いです。
通常、発達障害者は自分自身について客観的に観察し洞察すること、つまり自己認知ができていないことが多いが、著者はそれを深くしている。きわめて珍しい。
マンツーマンでは会話ができても、三人以上になると会話が混乱して聞きとれなくなってしまうのがAD特有の会話の不得手さ。電話で人と話すこともできない。
ADの人は自分なりの特定の習慣や手順・順番に強いこだわりがあり、臨機応変な対応ができず、変更や変化を極度に嫌う。
また、自分の興味・関心のあること、とくに視覚的な情報を記憶することは得意だが、頭の中で想像することや予測することは苦手とする。
レオナルド・ダヴィンチ、ミケランジェロ、アルバード、アインシュタインもADHDだった。
アーネスト・ヘミングウェイは典型的なADHD.宮沢賢治もADHD・アスペルガー障害を有していた。織田信長も坂本龍馬もADHDだった。
AD、自閉症、ともに遺伝的負因がきわめて強い。AD者は、通常の人より感性が豊かで、美味しいものや心地よい匂いや触感に非常に敏感だ。
この本を読んでいると、この人、とても変わっているよね、そう思われる人ほど、いえ、そんな人こそ、世の中の役に立つ、すごいことをやっているようです。
やっぱり、金子みすずの、みんな違って、みんないい、というのは真理ですね。
(2016年11月刊。780円+税)