労働審判制度~個別労働関係民事紛争の新しい解決制度~

労働審判制度って?

勤務先との間でトラブルが発生!!そんなときに!

会社が残業代を支払ってくれない、納得できない理由で突然解雇された‥‥等、勤務先との関係でトラブルが生じた場合、皆さんはどうしますか。

例えば、自分で労働局や労働基準監督署等に行って相談する方法もあるでしょう。

それでは、裁判所を利用して、そのトラブルを解決するということについてはどうでしょうか。

勤務先との労働契約上のトラブルは、多くの人にとって身近で切実な問題であるにもかかわらず、時間がかかりそう、費用がかかりそう等の理由から、裁判手続を敬遠してきた方は多いのではないかと思われます。

そこで、そのような懸念を解消して、勤務先との労働契約上のトラブルの解決を図ることを目的として創設されたのが、労働審判制度です。

労働審判制度について

労働審判制度は、平成18年4月1日から利用できるようになりました。それ以降、利用数は徐々に増え続けており、個別労働関係民事紛争の解決のために一定の成果を上げているようです。これまでは、個別労働関係民事紛争の解決には、時間がかかる等の理由で泣き寝入りせざるを得なかったトラブルについても、迅速かつ適切な解決を図ることを期待できると思われます。ですから、個別労働関係民事紛争については、労働審判制度の利用も選択肢に入れて、解決することを考えていただければと思います。

労働審判制度を利用するには

労働審判手続は地方裁判所で行われます。

そして、その利用を求める人が裁判所に申立をしなければなりません。

例えば、福岡県で労働審判制度を利用する場合には、福岡地方裁判所に労働審判手続の申立をする必要があります。

実際、この手続を進める場合には、労働法等の知識が必要になりますので、まずは弁護士に相談されることをお薦めします。もちろん、弁護士に依頼せずに、ご自身で申立をすることも可能です。

期間について

手続の流れを簡単に説明すると、次のようになります。

手続

この流れからもわかるとおり、労働審判手続は、(原則として)最長でも3回で終了することになります。

また、最終的には、上記(4)審判(裁判所の判断)で解決が図られることになりますが、労働審判制度は、第一には、調停(話し合いをした上で、双方が納得すること)で解決することを試みる制度です。ですから、例えば、(4)審判に行く前の(2)第1回期日で調停が成立して事件が解決することもあります。調停が成立しない場合に、裁判所が労働審判を行います。

実際、これまで福岡地方裁判所に審判が申し立てられた事件で見ると、第1回期日で調停が成立したものは全体の21%、第2回期日で調停が成立したものは34%、第3回期日で調停が成立したものは21%、審判に至ったものは21%となっています。

申立をした後の手続

これについては一概には言えませんが、福岡地方裁判所に申し立てられた事件を見ると、申立から事件終了までの平均期間は48.8日となっています。また、申立から第1回期日までの平均期間は30.1日、第1回期日から第2回期日までの平均期間は20.7日、第2回期日から第3回期日までの平均期間は14.2日となっています。

このように、労働審判手続は、従来の訴訟手続よりも大幅に期間が短縮されているといえます。

グラフ

裁判所での具体的なやりとり

まず、労働審判手続に参加するのは、主として次の人たちです。

労働審判官(裁判官)、労働審判員(労働関係について専門的な知識経験を有する人)、当事者(申立人と相手方、つまり、個々の労働者と事業主のことです)、当事者の代理人(通常は弁護士)です。この手続は、公開されないため一般の方が傍聴することはできません。

そして、第1回期日では、各当事者がそれぞれの言い分を証拠に基づいて主張します。そのうえで、労働審判官と2人の労働審判員が当事者の言い分を踏まえて、調停案を作成して当事者に提示することになります。その調停案を前提に調停の成立による解決を目指して、場合によっては第2回、第3回と期日が開かれることになります。

Q. 裁判所の審判に納得できない場合はどうするの?

A.調停が成立せずに審判が下されたものの、その審判に納得できない場合は、異議申立をすることができます(逆に、事業主から異議申立がなされることもあります)。異議申立をすると、その審判は効力を失って、別途、訴訟手続が開始します。

Q. どんなトラブルについても労働審判手続を利用できるの?

A.労働審判手続を利用できるのは、労働関係に関する個々の労働者と事業主との間に生じたトラブル(個別労働関係民事紛争)に限られます。例えば、解雇は無効として労働者としての地位の確認を求める場合や未払賃料等の支払を求める場合がこれにあたります。これに対し、ストライキのように労働者の集団と事業主とのトラブルについては、この手続を利用することはできません。

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