弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

社会

2014年6月24日

NHKが危ない


著者  池田 恵理子・戸崎 賢二ほか 、 出版  あけび書房

 近ごろのNHKは、本当になんだかおかしいですよね。
 集団的自衛権について、その反対運動の全国的な盛り上がりをNHKがきちんと報道したとはとても思えません。政府公報をたれ流しているのではありませんか・・・。
 原発問題や特定秘密保護法についても同じです。あれだけ国会周辺で反対の集会やデモ行進がしきりに盛り上がっていても、その大半をNHKは無視していました。
この本に籾井会長の記者会見の詳細が紹介されています。本当に腹立たしい暴言の限りです。この会長は商社出身のようですが、営業は出来ても日本史や日本社会について、まともな常識を持っているのか疑うばかりです。
 特定秘密保護法について、「まあ通っちゃったんで、言ってもしょうがないのではと思いますが。決まったことに対して、ああだこうだ言ってもしょうがない」
「民主主義に対するイメージで放送していけば、政府と逆になるということはありえないのではないかと。議会制民主主義からいっても、そう言うことはあり得ないと思います」
「尖閣諸島、竹島という領土問題については、明確に日本の立場を主張するのは当然のこと。時には政府の言うこと、そういうこともありますよ。政府が右と言うことを左というわけにはいかない」
 これでは、NHKはまるで安倍内閣の一宣伝機関だと宣伝しているようなものではありませんか。表現の自由を駆使する言論人の自覚など、そのカケラもない人物です。従軍慰安婦についても、橋本市長と同じようなことを言って、「どこの国にもあったこと」と言い切ります。そして、同じようなものとしてオランダの飾り窓を持ち出すのです。とんでもありません。
 この人が、「どこの国」というとき、アメリカ軍もあてはまるのでしょうか。さらに、「日韓条約で全部解決している」などと事実に反することを述べています。
 放送の仕事は、その基底に弱い立場の人たち、虐げられた人たち、声を上げられない人たちに寄り添い、その声を代弁する志が求められる。
 籾井会長の居

2014年6月18日

約束の海


著者  山崎 豊子 、 出版  新潮社

 海上自衛隊、そして潜水艦の乗員が主人公の話です。
 東京湾内で潜水艦が釣り船と衝突し、多くの死者を出してしまうのです。さあ、どうなるでしょうか・・・。
潜水艦乗りの仕事は、6時間毎の三交代制。深い海の中で、長いときには1ヵ月以上も潜ったまま作戦行動に従事するには、タフな神経の持ち主でなければつとまらない。身体面はもちろん、心理適性検査をくぐり抜けた者だけが選択される。
 潜水艦の乗員は、水雷科、船務科、航海科、機関科、補給科、衛生科のいずれかに属している。そして潜水艦の運航とは関わりのない補給科の庶務員や経理員もふくめて全員が三つの哨戒直(ちょく)グループのどれかに属し、幹部のつとめる哨戒長のもと、任務につく。潜水艦の食事は6時間の哨戒直のローテーションにあわせて、1日4回で回ってくる。朝の6時、夜の6時は重めの食事、正午と零時は軽めのメニューが基本だ。アルコール禁止の船内では、食べることだけが楽しみだ。
 「ようそろ」という掛け声を感じにすると、宜候。「テー」は撃て、のこと。
潜水艦では、真水は海水を蒸留してつくる。その熱源である電池の減りを少しでも防ぐため、シャワーの回数は3日に一度あれば良しとしなければならない生活が続く。
 乗員はスニーカーで、リノリウム張りの床を音もなく歩く。潜水艦は、いわば海の忍者だ。だから、自ら音を発するのは厳禁。
静かに深く潜航して、不審な音を数十キロ以上離れたところから拾い、そこに忍び寄って音源を確認する。この警戒監視が、平時における潜水艦の最大の任務である。
 海上自衛隊は16隻の潜水艦を有しているが、その三分の一は修理に、また三分の一は、基本トレーニングにあたっており、出動するのは、残る三分の一でしかない。これでは、足りなさすぎる。
 長く潜水艦に乗っていた乗員には、ディーゼル・スメルがする。ディーゼル・オイルと艦内の生活臭が混ざった臭いだ。
潜水艦乗員の給与は高い。航海手当のほか、俸給の4割もの潜水艦手当という、いわば危険手当が上乗せされる。だから、手取りは月26万円ほど。
 潜水艦乗りの身辺調査は厳しい。機密保持にシビアなだけ、徹底的に調べられる。本人、親兄弟はもとより、親密に交際している友人にも調査が及ぶ。外国人と抜き差しならぬ関係にある場合には潜水艦乗りから、外される。
 自衛隊の訓練は、基本的には人を殺しことを目的としている。潜水艦乗りは、不測の事態に備え、全員、遺書が要求される。
山崎豊子が亡くなったことにより「約束の海」は第一部だけで終了してしまったのは残念です。第二部、第三部と続く計画だったようです。丹念な取材による貴重な本だと思います。
(2014年2月刊。1700円+税)

2014年6月15日

いちえふ(1)


著者  竜田 一人 、 出版  講談社

 福島第一原発で働いている現役作業員がマンガで仕事を紹介しています。
 写真より、もっと臨場感がある気がします。現場作業員が実際に働くまでには、毎日、大変な手順をかけることを改めて知りました。頭から靴まで、全身を汚染からガードするために完全防備するのです。これでは息苦しくてたまりません。夏には、炎暑のため、汗だくだくになるそうです。
 そして、ヘルメットをかぶると、たとえば鼻の先がかゆくても、かけないのです。ガマンするしかありません。これって辛いですよね・・・。
 そして、この本では、福島第一原発の作業員になる大変さも紹介されています。
 ハローワークには、たくさんの求人広告が出されているようです。ところが、そのなかにはインチキ会社も混じっているようなのです。そして、運良く採用されたとしても、すぐに原発の現場作業に入れるとは限りません。
 なにしろ、東電の下の下の下の下の下の下あたりの会社に入ることになり、日給2万円のはずが、日給7千円とかになってしまうのです。そして、そこから宿舎の費用や弁当代が差し引かれるというのです。現場作業では熱中症にかかったり、いろいろ大変のようです。マンガで、その大変さがリアルに紹介されています。イメージとして、よく伝わってきます。
 「原発事故は収拾した」なんていう政府発表なんて、まったくのインチキだと言うことも実感できるマンガです。
 現場作業員の実際が絵に描かれていますので、原発事故の対応の全体像が描かれているわけではありません。だから、その恐ろしさが十分に伝わってこないという恨みがないではありません。それでも、暑さのなかでの全身防護服での作業をしていることの大変さ自体は、よく伝わってきます。
 日本人、とりわけ原発輸出に賛成している人には、必見のマンガなのではないでしょうか。
 あなたにも、この原発災害の復旧現場で働く覚悟がありますか?
 私は申し訳ありませんが、その覚悟はありません。ただただ、原発の即時廃止に向けての工程表を一刻も早く確立すべきだと主張するばかりです。
(2014年1月刊。580円+税)

2014年6月 8日

伊藤彦造、降臨!神業絵師


著者  松本品子・三谷薫 、 出版  河出書房新社

 剣戟(けんげき)場面の挿絵は実にリアルで、迫真的です。これが新聞の挿絵だったら読まれること間違いないでしょう。私も、伊藤彦造の名前こそ覚えがありませんでしたが、この絵はなんとなく見覚えがありました。
 ともかく迫力があり、真に迫っています。それもそのはずです。一刀流の開祖である剣豪・伊藤一刀斉の末裔として生まれ、幼いころから父親より剣の手ほどきを受け、小学4年生からは真剣で修行していたのです。
 ですから、そこには壮絶な死を予感させるような緊迫した剣戟シーンがつくり出されています。そして、濃密なペン画ですから、緊迫感が画面いっぱいにあふれています。
 66歳で絶筆し、2004年に100歳で亡くなるまで、絵を描かなかったというのもすごいことです。絵の迫力が違います。すごい日本人がいたものです。ぜひ、絵をみてみてください。
(2013年12月刊。1800円+税)

2014年6月 6日

亡国の安保政策


著者  柳澤 協二   、 出版  岩波書店

 安倍首相の狂ったような暴走ぶりは、まったく度しがたいものがあります。この本のオビに、日本にとって最大の「脅威」は安倍政権だ、とありますが、本当にそのとおりです。
 韓国・中国と対立・反目しあい、アメリカからは大いに失望されている安倍首相の支持率が6割近いだなんていったい、日本人は何を考えているのでしょうか・・・・。
 昨年12月に成立した「特定秘密保護法」については、その必要性に疑問を唱えてきた。その秘密の範囲があいまいで、政府が恣意的に「秘密」を指定する可能性がある。そして、いったん指定された「秘密」が永久に公開されないおそれがある。また、一般国民を対象として犯罪者として恣意的に取り締まる危険性があるから。
国家の安全は、国民の知る権利(これは、国民主権を意味する)に優先すると自民党の有力議員が発言したが、とても信じられない。
安倍首相は、次のように言った。
 「今の憲法解釈のもとでは、日本の自衛隊は、アメリカが攻撃されたときに血を流すことはない。そういう事態の可能性は、きわめて小さいが、それでは完全なイコールパートナーとは言えない」
「血を流す」というのは、自衛隊員の生命が失われること。自ら生命の危険に身をさらすことのない立場の人間が、日本人である自衛隊員の命にかかわることを軽々に口にすることに怒りを覚える。
 今日の尖閣諸島をめぐる日中対立の原因は、中国の強硬路線への転換に主因があり、日本外交の失敗がこれを顕在化させた。尖閣問題は、戦に日本が弱腰だから発生したわけでも、日本が強腰なら解決するわけでもない。それは、双方のナショナリズムの発露なのであった。
 安倍政権は、小泉政権のポピュリズムの流れを引き継いだ。メディアという「劇場」で、分かりやすい「敵」を設定し、その敵をやっつける「ヒーロー」を演じて、大衆を陶酔させる。そこで求められているのは論理ではなく、感情に訴えることである。
 安倍首相は、アメリカとの軍事的双務性をすすんで追求し、アメリカのと対等な関係を築くことによって、大国としての日本を「取り戻す」という「報酬」を求める型のパワーポリティクスへ転換しようとする。ところが、このパワーポリティクスこそ、タカ派と言われた中曽根首相をはじめとして、歴代の自民党政権が露骨に追求することを避けてきた手段であった。この手段をとれば、憲法に真正面からぶつかる必然性がある。その点、安倍政権は、歴代の自民党政権とは明確に異なる指向性をもつ。日本にはその実力がなく、あったとしてもアメリカが同調することはなく、日本の国益にも反する歴史認識と尖閣問題は、安倍政権についてのアメリカの一貫した懸念事項であった。
 2013年10月に来日したケリー国務長官とヘーゲル国防長官は、アメリカの閣僚として初めて千鳥ヶ淵戦没者墓苑に参拝した。この千鳥ヶ淵参拝には、歴史認識に関して日本がアジアの情勢における緊張要因とならないようにアメリカがアメリカが釘を刺すという意味があった。にもかかわらず、それが無視された。安倍首相の靖国神社参拝は、アメリカとの矛盾を顕在化させ、政権維持のよりどころである与党・公明党の反発を招いた。安倍首相が本来の「安倍カラー」を出さなければ強固な支持層の失望を招き、出せばアメリカと連立パートナーとの矛盾が表面化せざるをえないところに、安倍政権のかかえる構造的な脆弱性がある。
 砂川事件の焦点は、在日米軍基地の拡張であり、日米安保条約による米軍への基地提供が問題とされていた。
 集団的自衛権は、現実の世界では、大国が小国に軍事介入することを正当化するための論理として使われてきた。
 集団的自衛権を行使する国というのは、「普通の国」ではない。それは「大国」以外にありえない。いま考えるべき一番重要なことは、日本が真にやる必要があるのは、他国の軍隊を守ることなのか、住民や文化を守ることなのか、ということ。つまり、海外に展開する米軍に対する攻撃のため、日本が出動するということがあっていいのか・・・・。それは、無用の戦争に日本が巻き込まれてしまうことを意味している。
 日本政府は、戦後一度もアメリカの武力行使に反対したことがない。
 「総理大臣の総合判断」ということに歯止めの役割を期待することはできない。
 尖閣諸島に「武装した集団」の上陸があったときには、日本に対する侵略として、防衛出動で自衛隊が出動して排除することができる。これは個別的自衛権であって、集団的自衛権ではない。
 安倍首相のいう「積極的平和主義」というのは、憲法解釈変更への国民の抵抗を減らすためのトリックにすぎない。
 日本が、歴史認識や尖閣諸島をめぐって強硬な姿勢を貫けば、アメリカだけでなく、日本自身の国益を損なうことになる。今日の北東アジアでは、日本ばかりでなく、韓国も中国も、政権の正統性を守るため、国民感情をあおり、戦争を避ける方向とは逆の方向で行動している。危機の本質はそこにある。国民の感情を必要以上に掻き立てないことが求められている。
 著者への講演を開いたことがありますが、いたって冷静、かつ防衛現場の実情をしっかり踏まえた内容でしたので、とても納得できました。
 いま、大いにおすすめの本です。
(2014年4月刊。1400円+税)

2014年6月 1日

もう一度、天気待ち


著者  野上 照代 、 出版  草思社

 あの黒澤明監督の下で働いていた著者による大スターたちの生態は興味深いものがあります。
 クロサワがミフネの演技にわずかにしても不満を抱いたのは、おそらく『赤ひげ』が初めてだろう。
 三船敏郎の主演する映像では、なんといっても『七人の侍』ですよね。かなり前ですが、福岡の映画館でリバイバル上陸があったのを見ました。やはり大きなスクリーンで見ると迫力が違います。家庭のテレビ画面とは迫力が違います。仲代達代と三船敏郎が出演する『椿三十郎』にも度肝を抜かれました。血しぶきのすさまじさに圧倒され、声も出ません。
 三船も仲代も、セリフを手書きで書いて、丸暗記していたようです。やっぱり、すごい努力のたまものなのですね・・・。
 しかし、三船と仲代はロケ先で口論し、その後は競演していない。
 三船敏郎の酒乱は有名だった。日頃は、とても気をつかうので、お酒を飲むと、その反動で、爆発したのだった。
 『七人の侍』で撮影現場になったのは、東宝撮影所の前の田圃。今は、団地になっている。雨の合戦にしたのは、西部劇には雨がない。よし、雨で勝負だと黒澤監督が考えたから。撮影したのは2月。田圃には氷が張り、消防車8台を借りて、ホース40本。足もとは、膝まで埋まる泥んこで、馬が暴れるから身動きもできない。三船敏郎は裸同然で寒さに震えて、歯をガチガチいわせていた。
 『七人の侍』には、老人ホームの素人にも登場してもらっているとのこと。映画のお婆さんたちがそうです。
戦後まもなく、ヒロポンが禁止されていなかったころ、撮影現場では、ヒロポンが堂々と注射されていたという話には驚かされます。ヒロポンは、今の覚せい剤みたいなものでしょう。もちろん、今では厳禁です。
ガチンコは、画と音をあわせるための唯一の手がかりだ。画面と録音された音をあわせると、セリフと物音が同時に再現される。
 三船敏郎のように周囲に気を配ってばかりいる人には映画監督はできない。優れた映画監督というのは、たいてい我がままで、他人が何を言おうと気にしない。自分が撮りたい対象をつくるためには、他人の迷惑なんかかえりみないという人なのだ。
 さすが、世界的巨匠であるクロサワ監督の身近にいた人による鋭い観察だけある本でした。
(2014年2月刊。1900円+税)

2014年5月28日

虚像の政商(上・下)


著者  高杉 良 、 出版  新潮文庫

 いつものことながら読ませます。この著者の筆力には、進むたびに驚嘆するばかりです。ぐいぐいと修羅場に引きずり込まれ、ついつい憤慨してしまったりするのです。
 今回の舞台は、政商です。いつの世にも、政治をビジネスチャンスとしか見えない守銭奴のような人間がいます。でも、まあ、それが軍需産業でないだけ、まだ平和な社会なのかもしれません。といっても、安倍首相は、武器輸出三原則を緩和してしまいましたから、おいしい軍需産業が大型公共事業にとって代わるのかもしれません。いやですね、というより怖いことです・・・。
 解説文を紹介します。
 ある銀行のトップが、こう言った。
 「池井戸潤も許せないが、高杉良はもっと許せない」
 高杉良は銀行にとってのタブーに挑戦している。池井戸は銀行を取りまく「闇」にはアタックしていない。闇に踏み込むには、作者にも危険を恐れない覚悟がいる。高杉良は、見ていてハラハラするほど、それを当然のものとして小説を書いてきた。
 百田尚樹は、出光佐三を偶像視しているのに、高杉良は、労働組合のない、社員にとって息苦しい会社をつくった男として出光佐三を描いている。
 この小説のモデルは、オリックス会長の宮内義彦。高杉良の『週刊新潮』の連載が終わったとき、宮内義彦は、「ホッとした」ともらした・・・。
 宮内義彦は、まさしく政商の典型です。規制緩和のかけ声に乗って、自らビジネスチャンスをつくり出して、大もうけしていったのでした。本当に許せません。まさに、宮内義彦は「利権を食うひと」でした。
 公職につく者が、その地位により誰より早く得られる情報を活用して事業を推進すれば、それがどんなに崇高な精神で行われたとしても、うさん臭いものに墜落してしまう。ましてや、崇高な精神なんて、全くなかったとしたら・・・。
 「改革」とは名ばかり、大きな虚業を生み出して、日本経済をむしばんでいった・・・。
 宮内義彦が組んでいた竹中平蔵については、次のように断罪されています。まったく同感です。
 「デフレ不況のさなかに無用なまでに厳しい資産査定を断行し、日本経済の屋台骨を支える多くの中小企業の息の根を止めた男だ。自らの失敗を恥じるどころか、円安による輸出企業の好調で、マクロ経済が底を打ったことを、銀行の不良債権処理による功績とすり替えた、稀代の詐欺師と評する向きもある」
 こんなロマンのない男たちを書きながら、その部下を主人公としてロマンを感じさせつつ、一気に展開し、さらにリース業界の専門用語まで駆使するのは、さすが、さすがと言うほかありません。
(2014年4月刊。750円+税)

2014年5月26日

カヤネズミの本


著者  畠 佐代子 、 出版  世界思想社

 かわいいネズミの話です。いえ、家の中をうろちょろするイエネズミではなく、水辺に棲息する小さなネズミです。
 カヤネズミは小さくて軽いので、バッタのように草の葉の上に乗れる。胴体の長さは6センチ。尾の長さは7センチ。尾が長いのが特徴で、体重は7~8グラム。
 寿命は半年から1年ほど。人間が飼育すると、最長3年。でも、素人が飼うのは難しい。
 雑食性で、イネ科の種子や昆虫を食べる。天敵は、ヘビやカラス、モズ、イタチやネコなど、たくさんいる。
 カヤネズミの骨の重さは、体重の5%で、鳥と同じくらいに軽い。カヤネズミは、草の上で子育てをする。
 カヤネズミの巣は、草の上につくる。カヤネズミは、葉を植物から切り離さずに編む。巣は草だけで作られる。球形に近く、巣穴は小さい。これに対して、鳥の巣は、別の場所から巣材を運んできて、草に架ける。「編む」と「架ける」とは違う。
カヤネズミは夜行性で、夕方から明け方にかけて活発に活動する。日中は巣のなかで休息している。
カヤネズミの子育ては、巣作りから子のケアまで、すべてメスのみで行われる。
子どもは生まれて17日から19日目に、育った巣を離れて巣立ちする。カヤネズミは危険を感じると、その場にじっとして動かない(フリーズ)習性がある。この習性は、空から襲う敵、モズやカラスなどの鳥類から身を守るのに役立つ。それでも危ないと思ったら、草の上から飛びおりる。
 カヤネズミは、イネに付くバッタやイナゴを好んで食べる。だから、カヤネズミはイネにとって、多少は良い働きをしている。
 土手をコンクリートで固めてしまう護岸工事がされると、カヤネズミは生活できない。絶滅危惧種になりつつあるカヤネズミの生存できる環境を守るのは、人間にとっても大切なこと。
 それにしても、カヤネズミの顔って、可愛らしいですね。これからも、ヘビに注意して観察を続けてくださいね。
(2014年2月刊。2200円+税)

2014年5月24日

サムライ・評伝・三船敏郎


著者  松田 美智子 、 出版  文芸春秋

 「世界のミフネ」の実像に迫った本として面白く読みとおしました。
三船敏郎は大正9年に中国は山東省青島に生まれた。父親は秋田県出身で、漢方医の息子だったが、親と不仲になって、満州で一旗揚げようと思って中国大陸に渡った。それで、 三船は少年時代の大半を大連で過ごした。
 昭和15年で、19歳で軍隊に召集され、終戦まで6年間の軍隊生活を過ごした。軍隊では徹底的に殴られ、シゴかれた。三船は万年上等兵だった。九州は熊本の特攻基地で教育係として、特攻隊として飛び立つ少年航空兵を見送った。
 戦後、世田谷にあった東宝撮影所で撮影の仕事に応募した。しかし、ちょうど空がなかったので、俳優のニューフェイスの方に応募した。
 そのとき、怒れるものなら怒ってみろと言われ、三船はバカヤロウと怒鳴って、たまりにたまっていたうっ憤を発散した。
 「ああいう風変わりなのが一人くらいいてもいいだろう」
 という言葉で、応募者4000人のなかで、補欠合格となった。
三船は、俳優の声がかかったとき、「僕は俳優にはなりません。男のくせにツラで飯を食うというのは、あまりに好きじゃないんです」と言って断った。
 すごい言い草ですよね、これって・・・。
 三船は、除隊するときにもらった毛布を自分で裁断して縫ってコートに仕立て上げた。
 三船は掃除が好きで、自宅内の清掃も自分でしていた。
三船は自宅では着物を一切着なかった。いつも洋装で、身につけるものは、自分なりのこだわりをもって選んだ。靴をふくめて、欧米ブランド品を好んだ。
 三船敏郎は、生涯150本の映画に出演した。そのうち、黒澤明監督と組んでつくった映画は16作。最初の『酔いどれ天使』のときに三船は28歳で、最後の『赤ひげ』のとき45歳だった。この17年間で、「黒澤天皇」となり、「世界の三船」と呼ばれた。
『無法松の一生』をとるとき、三船は毎朝7時に撮影所に入り、大太鼓を叩いた。蛙打ち、流れ打ち、勇み駒、暴れ内野4種類をマスターした。本番は一発で決まった。
三船が黒澤監督と組んでつくった16本の映画で、もっとも多く競演した女優は香川京子で、次が司葉子だった。
 三船は台本をもたずに撮影所に入った。セリフをすべて覚えてから撮影にのぞむ。スタートの合図が出たときには、すでに役になりきっていた。
 撮影所に入る時間は、他のキャストより1時間早く、持参した椅子に座って待っているのが常だった。三船は、スターと呼ばれる存在になってからも、一番乗りで撮影所に入り、衣装に着替えて待機するという姿勢を守った。手抜きを嫌い、なにより現場で他人(ひと)に迷惑をかけることを嫌う性格だった。
 三船は乗馬と車が好きだった。三船の乗馬術は誰しも認めていた。
 三船の殺陣(たて)の特徴は、迫力とあの眼光。異様なほどの目の鋭さ。立ち回りでは、刀でバシャバシャと生身の身体に当ててくる。身体にあてて、その反動で次の相手を切る。だから、着られ役は、撮影の後、全身にミミズバレが何本も入っていた。三船は飲酒すると豹変した。酔った三船が暴れるのは日常茶飯事だった。
 三船は、常人には計り知れない怒りのマグマを腹の底にすえており、飲酒によって噴出したようだ。それでも朝はきちんと出社し、二日酔いで現場に来たことはなかった。
 極端なまでの潔癖、生真面目、律義、几帳面さ。
 三船は、他者が黒澤監督の悪口を言うことは許さなかった。愛情があって不満を言うのと、ただ現場で見聞きした人間が黒澤監督への不満を話すのは、三船にとって、まったく異なった次元の話だった。
 晩年の三船は認知症にかかっていた。そして、平成9年12月24日、77歳で亡くなった。
 三船敏郎の出演する映画の多くを、残念なことに、見ていないことが分かりました。ぜひ、時間をつくってみたいものです。
(2014年2月刊。1500円+税)

2014年5月23日

原発ゼロで日本経済は再生する


著者  吉原 毅 、 出版  角川ワンテーマ21

 福島第一原発事故の使用済み核燃料と放射性物質の処理をどうするのか、今でもまったく不明のままです。超高濃度の放射能が出ていることは間違いありません。ですから、いつになったら、底のほうに「こぼれ落ちた」と思われる核燃料を「始末」できるのか、誰にも分からないのです。
 そのことを抜きに、「美味しんぼ」の表現だけが問題とされるのはおかしいと思います。そして、福島第一原発の事故の後始末もできていないのに、日本が原発を外国へ輸出するなんて、気が狂っているとしか言いようのない、無責任な話です。外国で、まさかのことが起きたとき、誰がいったい責任をとるのでしょうか・・・。もちろん、そのとき「安倍首相」なんていないでしょう。ともかく、「あとは野となれ、山となれ」式の無責任さが今の日本には横行しすぎです。
 未来へのツケをまわすような原発はやめるべきだと言う著者に対して、ある財界人が次のように言ったそうです。
 「キミは、あと何年生きるつもりなの。あと10年か20年でしょう。そんな先のことを考えても仕方がないじゃないか」
 これが、東芝とか三菱重工業のような原発輸出企業のホンネなのでしょうね。今のお金もうけが出来れば、子孫がどうなっても知ったことじゃないというわけです。それは許せません。ひどいです。あまりに無責任すぎます。私は本気で心配しています。
 城南信用金庫は現職理事長が脱原発の声をあげていることで有名ですが、その理事長が書いた本です。
 三大経済団体、つまり、経団連や経済同友会そして日本商工会議所も、電力会社からお金がまわっていて、「原子力ムラ」の一員に組み込まれている。
電力会社のあげる利益の9割は一般家庭や事務所、商店の払う電気料金による。官公庁や大企業は、電力会社から買わず、かなりを自家発電などに頼っている。
 3.11のときの東電社長だった清水正孝氏は、6月28日に、その退任したが退職金として5億円以上を受けとっている。
 ええーっ、許せませんね、これって。本当は、今ごろ、とっくに刑務所に入っておくべき人ではないでしょうか。大きく悪いことをした人は表彰されるという、昔からある悪しき格言を実践しています。ひどい話です。それを許しているのが、マスメディアです。
マスコミの上層部は、電力会社の連合体である「電気事業連合会」(電事連)によって操作されている。
原発や人殺し兵器を輸出したら、お金もうけは確かに出来るでしょう。でも、それは、とてつもない不幸をもたらす災いのもとです。そんなものに頼っていたら、いつか、地球の破滅は必至です。
 みんなで、反原発の声を勢いよく、そして分かりやすい平易な言葉であげましょう。
(2014年4月刊。800円+税)

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