弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

社会

2015年7月 2日

ルポ・居所不明児童

                              (霧山昴)
著者  石川 結貴 、 出版  ちくま新書

 居所不明児童、きょしょふめいじどう。
 居所不明の子ども、単に不就学というだけでなく、生活上に必要な行政支援にも結びつかない恐れがある。
 文科省のデータでは、1961年から2014年までの54年分の居所不明児童の累計は2万4000人に達している。2014年の居所不明の子どもは383人となっている。しかし、実際には、それをはるかに上回っているだろう。
 実の母親と一緒に生活しながら、居所を転々とし、学校にろくに通っていない亮太(仮名)が紹介されています。実母とその夫が、亮太にお金を騙しとってくるように命令し、そのお金で一家三人が生活するという悲惨な話です。
 亮太が祖父母を殺して事件になったという実話にもとづいています。私も弁護士として、ありうる話だなと思って読みすすめました。
 子どもが、自分は親に愛されて育っているという実感をもつことがなかったなんて、最悪の人生体験です・・・。
 学習性無力感があるそうです。いかにも悲しいコトバです。
長期間欠席している全国の小中学生のうち、「学校も他の機関の職員等も会えていない」子どもが1万人いる。そのうち4分の1、2500人は、「保護者の拒絶」「居所不明」「連絡がとれない」ということで、状況も所在も不明だ。
 2013年に行方不明届けが受理された不明者は日本全国に8万4000人。9歳以下が1000人、10歳代が2万人。不明者の4分の1を占めている。
 読みたくなかった本の典型です。こんな本なんて、読みたくない、もっと楽しく、心が浮き浮きしてくる本を読みたい。そう思います。でも、でも、現実から目をそらすわけにはいきません。涙が出てくることもないほど悲しい物語のオンパレードです。
(2015年4月刊。820円+税)

2015年7月 1日

どうして就職活動はつらいのか

                             (霧山昴)
著者  双木 あかり 、 出版  大月書店

 この本を読んで、ようやくシューカツの問題点を少しばかり分かりました。私自身はシューカツを真面目にしたことがないので、ぴんと来なかったのです。
 私が大学を卒業したのは40年以上も前のことになりますが、そのころは、学生のほうが企業を選べていた時代でした。本気じゃない私も、一社だけは就職面接に友人に同行したことがあります。本気ではなかったというのは、私の本命は司法試験だったということです。
 この本は、2009年4月に一橋大学に入学した女性が、シューカツの苦しみを体験に基づいて語ったものです。本当に大変だったんだなと身につまされました。
 就職失敗で自殺した大学生は、2008年に22人、2012年には45人にのぼった。14%もの学生がシューカツでうつ状態に陥っているという調査もある。
 シューカツの不安の根源には、若者の日本社会への強い不信がある。
 その点は、弁護士でもある私にもよく理解できます。大企業本位、若者の使い捨てを賞賛するような企業論理ばかりが横行するなかで、きちんとした会社には行って正社員になりたいと考えるのは、誰だって当然です。でも、それが、至難の状況になっています。
シューカツが大変なのは、新卒採用という、ほぼ一度きりの機会に限定されていることになる。
 シューカツが深刻なのは、その過密なスケジュールによる具体的・精神的な疲労である。大学4年生になったら、4月以降の予定は、まったく立てられなくなる。
 シューカツでは、電話やメール・就活サイトのチェックが不可欠となる。ガラケーではダメで、スマホが必須だ。
大学では思考力をきたえろといわれるのに、シューカツでは考えることをしていない体育会系が有利だという・・・。
 私は、この点、大変な反発を覚えてしかたありません。私は体育会系と反対のセツルメントという泥臭い活動をしてきましたので、それがシューカツで否定されるのは、どうしても納得できません。
 シューカツの面接では、そんなにたいしたものではない自分を、さもたいしたものであるかのように話し続けなくてはならない。これは自分をだましているようなもの・・・。
 シューカツ生(就活生)は、身体も精神も思考も人間関係も、自信のすべてをシューカツに投じることを強いられ、その全人格を評価にさらす。そのため、その評価結果は、すべて自分ぜんたいに返ってくる。
 現在のシューカツは、自分の全てを注いで熱心に活動する学生ほど、失敗したときに深く傷つき自己否定に陥ってしまう。それを回避するためには、まず全人格をシューカツに投げ込むことを防ぐ必要がある。
 シューカツとは関係のないところで、ただ自分を受けとめてくれる人の存在が大切だ。
 シューカツの大変なつらさを一刻も早く解消しないと日本に未来はない、そう思いました。
(2015年4月刊。1600円+税)

2015年6月24日

牛と土

                              (霧山昴)
著者  眞並 恭介 、 出版  集英社

 3.11のあと、福島第一原発の近くで飼われていた牛たちが、その一部は今もそのまま生き残っていて、その面倒をみている人々がいるのです。驚きました。もう、この牛たちには商品価値はありません。私も、食べたくはありません。
 では、なぜ、牛たちの面倒を今なおみているのか・・・。
 浪江町の牧場に双子の兄弟牛がいる。3.11がなければ、とっくに牛肉になっていた筈なのに、3.11のあと4年たっても生きている。この双子の兄弟牛たちは、原発から10キロ地点の牧場で暮らしている。ここの線量は毎時30マイクロシーベルト。人間は、そこに1日半もいると、年間1ミリシーベルトをこえてしまうほどの高い放射線量だ。
3.11当時、警戒区域内に牛3500頭、豚3万頭、鶏4万羽がいた。
 牛のオスには漢字で、メス牛にはひらがなの名前をつけるのが慣例だ。
 選ばれた牛の精液は、冷凍保存されて、十数年間にわたって交配につかわれる。
 そして、99%のオスは生後2~5ヶ月で去勢され、いわゆる肉牛となる肥育素牛(もとうし)として飼われる。
 繁殖用のメス牛は、2歳で初産し、その後、10年ほど子牛を産み続ける。15産もの出産をするメス牛も珍しくない。
 子牛が母牛と別れるのは、5ヶ月くらいが最適。そして一週間ほどかけて親子を切り離すのが健康にいい。
 恐れの感情は牛の成育を阻害する。だから、牛飼は、牛をどなったり、叩いたり、けったりしない。牛の首をなでながら語りかけ、ストレスのない快適で清潔な牛舎環境に配慮している。
 牛は記憶力が良く、恐ろしい体験は決して忘れない。安楽死させられる危険性を察知した牛は、たとえおいしそうな餌がおいてあっても、捕獲用の柵内には入らない。仲間が捕獲され、二度と立ち上がらなくなるのをみていた牛、自ら安楽死寸前にまでいって逃げ出した牛は、餌の誘惑とたたかいながらも決して警戒心を失わない。
 子牛はすぐに下痢をする。人間が手をかけてやらないと育たない。
 福島の地で牛を飼い続けるということは、人間が福島に住み続けるかどうかと同じことなんだと私は思いました。政府の「収束宣言」で3.11は終わったかのような幻想がふりまかれ、原発の安全神話が復活しています。とんでもないことです。
 安倍首相と、自・公政権の大臣の家族に、「フクイチ」の周辺に住む覚悟がありますかと私は尋ねたいと思います。
 ちなみに、私ははっきり断ります。そして「収束宣言」なんて、インチキだと考えています。
(2015年3月刊。1500円+税)

2015年6月23日

「あなたこそ たからもの」

                               (霧山昴)
著者  いとうまこと、たるいしまこ 、 出版  大月書店

 伊藤真弁護士による憲法の絵本です。
 本文は、全部ひらがなです。とてもいい文章です。そして、思わず心が軽く浮き浮きして、ステップしたくなるような絵のオンパレードです。子どもたちが歌い、遊び駆けめぐっています。楽しい絵本です。
 でも、しっかり、子どもたちに伝えようとしています。憲法と平和の大切さを・・・。すばらしい絵本だと思いました。
 みんなおなじで、みんなちがう。
 金子みすずの詩を思い出します。
 みんな違って、みんないい。
 せんせいだって、お父さんだって。「これがきみのしあわせだよ」なんて、決めることはできない。
そして憲法。
わたしたちのくにには、けんぽうがある。つよくて、ちからのあるひとたちにつけたブレーキ。それが、けんぽう。いちばんつよいルール。
せんそうにまけたあと、けんぽうにかいた。
 「もう、せんそうはしません。ぐんたいもいりません」
 あなたがにっぽんじんで、けんこうでふつうのせいかつができて、がっこうにかよえるなら、それは、つよいがわにいることになる。
 けんぽうがひつようなのは、よわいがわにいるひとたち。
 みんなとおなじに、たいせつにされるように。けんぽうは、ちからをだす。
 ひとりひとりに、かけがえのない、いのちと こころがある。
 あなたこそ たからもの。
 すばらしい絵本です。ぜひ、あなたも、子や孫に読んであげてください。絵を見せてください。こんな素晴らしい憲法を自民・公明の安倍政権がこわそうとしています。弁護士会は全力をあげて阻止すべく取り組んでいるところです。どうぞ、あなたも、ご一緒に・・・。
(2015年5月刊。1300円+税)

2015年6月22日

ポッキーは、なぜフランス人に愛されるのか?

                               (霧山昴)
著者  三田村 蕗子 、 出版  日本実業出版社

 この本を読むまで、日本のスナック菓子が、世界中で愛されているなんて、ちっとも知りませんでした。
香港の即席麺市場の6割を「出前一丁」が占めている。香港人の舌にあわせて現地化された「出前一丁」だ。いま世界では年間1050億食の即席麺が生産されている。そのうち2割の200億食を生産しているのが、サンヨー食品。あの「サッポロ一番」だ。
 原料調達から商品が店頭に並ぶまで安心安全を追及し、大量生産で味をムラなく均質に保ち、使い勝手のいいパッケージに包む一連のプロセスは、世界のどの国にも真似できない日本の強みだ。お菓子ほど、日本の製造業の良さが、凝縮された産業はない。
 なくても決して死にはしないが、あればうれしい。手にしたら楽しい。おいしいお菓子を食べていると思わず顔がほころび、幸せな気分にみたされる。
 スナック菓子には面白さや楽しさ、新鮮さが絶えず求められるのが日本だ。
 2009年、カルビーは、オーナー経営の会社から、外資系の経営手法を取り入れた企業へ変身した。カルビーが年間に使用するジャガイモの量は、日本全体の収穫量の10%にあたる。これをカルビーは日本国内契約栽培農家から調達している。
 アメリカでは、カルビーは、豆をつかったスナック菓子を売り出している。
 森永製菓の「ハイチュウ」は、キャラメルでもなく、ガムでもない。日本で生まれた不思議な食感のソフトキャンディー「ハイチュウ」はアメリカで大人気だ。「ハイチュウ」はアメリカの野球選手たちが、チューインガムの代わりに口に入れている。ガムのように捨てる手間がいらないのだ。
 江崎グリコの「ポッキー」は、グローバルブランドとして堂々たる王道を歩いている。「ポッキー」の全世界販売個数は年間5億箱。売上高4億ドル。そのうち3億箱が日本で、残り2億箱をヨーロッパとアジアなど海外30ヶ国で売っている。フランスでは、「ポッキー」は「ミカド」として売られている。
 「ポッキー」は、食べながらおしゃべりできる。しかも、手が汚れない。
 ロイズの生チョコも海外で売られている。商品は、すべて日本で製造して冷凍コンテナをつかって輸出している。
 「柿の種」は、アメリカではわさび味で売られている。
日本のお菓子が世界で、こんなに愛され、売れているのですね。もちろん、それには現地のヒトの舌になじめる工夫もされているわけです。あまりに面白くて、ついついひきこまれてしまいました。
(2015年4月刊。1500円+税)

 きのうの日曜日(21日)、仏検(一級)を受けてきました。午後2時から5時まで3時間、みっちり絞られました。大甘の自己採点で70点(150点満点)です。
 前回3割だったのが、4割越したように思います。合格するには6割ですから、まだまだです。
 文法関係はほぼ全滅し、長文読解と書き取り、聴き取りで点を稼ぎます。
 予習として、過去問をするのですが、何と1995年から受験してるのでした。もう20年も一級に挑戦しているのです。我ながら、すごいことです。ですから、過去問の仏作文を全部やり直すのに、相当の時間がかかりました。頭のボケ防止に必死なのです。

2015年6月21日

サイエンス・インポッシブル

                                (霧山昴)
著者  ミチオ・カク 、 出版 NHK出版 

 科学の進歩が、毎日の生活にどのような影響をもたらすのかを論じた本です。なるほど、なるほど、と思いながら読みすすめました。
 ウソ発見器は、自分の行為に何らの罪悪感を覚えない異常人格者には通用しない。
 たとえば、CIAにいた二重スパイのオールドリッチ・エイムズは、数十年にわたってCIAのウソ発見器による検査を何度もくぐり抜けている。
 また、50人近い女性を殺した連続殺人犯のゲーリー・リッジウェイも検査をうまくすり抜けている。ウソ発見器は、不安の程度しか測れないのだ。
 長期間の宇宙旅行をすると、身体から貴重なミネラルや化学物質が予想以上に早く失われてしまう。厳しい運動の日課をこなしても、宇宙ステーションに1年も滞在したロシア人宇宙飛行士は、骨や筋肉が大幅に衰え、骨の劣化、赤血球生成量の減少、免疫反応の低下、心血管系の機能低下が避けられない。
 本書では、セブンデー・アドベンチスト教会、そしてエホバの証人についても触れられています。
 アメリカで、ウィリアム・ミラーが1,843年4月3日に最後の審判の日が訪れると予言した。1833年に最大級の流量雨が華々しく夜空を照らしたので、ミラーの予言は、威力を高めた。
 しかし、なにごとも起きなかった。そこで、次には1874年、さらに1914年、そして、今は・・・?
 セブンスデー・アドベンテスト教会の信者は1400万人、エホバの証人は600万人もいる。その分派は、1993年、FBIと対決して、27人の子どもをふくむ76人の信者と教祖のデイヴィッド・コレシュが焼死した。
 世界は不思議にみちみちています。しかし、それがカルト(宗教)とつながるかと言えば、それは違うでしょう。不可能なことを可能にするのも限度がありますよね・・・。
(2012年11月刊。2400円+税)

2015年6月20日

荒木飛呂彦の漫画術

                               (霧山昴)
著者  荒木 飛呂彦 、 出版  集英社新書

 私は、目下、40年以上も前の弁護士見習い(司法修習生)のころを小説にすべく挑戦中なのです。これは「法服の王国」に触発され、また、江上武幸弁護士(久留米)にけしかけられて思いたったのです。
 小説というからには、読まれなくてはなりません。毎年500冊以上の単行本を読んでいる私ですので、読み手の気持ちは、しっかり理解しているつもりです。やっぱり、なんといっても、ハラハラドキドキ感が必要です。この次は、どんな展開になるのだろうか・・・という緊張感をもって頁をめくる楽しさが欠かせません。そして、読み終わったときのホッとする安堵感が大切なのです・・・。
 とは言っても、それを文字にするのは大変です。口で言うほど、やさしくはありません。
 この本は、漫画家が、その企業秘密を惜しげもなく公表しているので、とても勉強になりました。
 キャラクターを作る時には、絵になる前に、必ず身上調査書を書く。これによって、キャラクター造型に矛盾を感じさせる事態を防ぐことができる。
 身上調査書は、キャラクターの属性という、あいまいで目に見えないものを可視化する。
 私も、7巻ものの長編小説を書くときには、私なりの身上調査書をつくっていました。しかし、書いているうちに、どんどん話が発展していって、矛盾は避けられませんでした。それが、プロとアマの違いなのかもしれません・・・。
 ストーリーつくりの鉄則は、主人公をなるべく早く登場させること。
読者が求めているのは、アゲアゲのプラス・ストーリーである。がんばっても、がんばっても勝てないという、マイナス続きの本は、誰だって読み続けたくはない。
 そうか、そうなんだ・・・、と反省せられました。読み手の気分や感情にあった本を書こうと思いました。
 セリフは、自然体であること、これに尽きる。
 モノカキを自称する私にとって、とても役立つアドバイス満載の新書でした。
(2015年4月刊。780円+税)

2015年6月18日

清張映画にかけた男たち

                               (霧山昴)
著者  西村 雄一郎 、 出版  新潮社

 面白い本でした。というか、映画好きな人には、たまらない魅力あふれる本です。そして、九州は佐賀に少しでも関わりがあれば、読みはじめたら止まらない本なのです。
 たとえば、私の幼いころの映画館での記憶です。「クラマ天狗」の映画です。シューサク少年が危機に陥ったとき、「クラマ天狗」のおじさんが白馬に乗って街道を走って少年を助けようと駆けていく場面になると、映画館にいる人々が総立ちになります。走れ、走れ、がんばれー・・・。そのあふれる熱気は、今も忘れることが出来ません。画面上の人々と映画館内の人々は一体だったのです。
ですから、私が弁護士になってまもなくのとき、東京の銀座で、映画「男はつらいよ」を静かな雰囲気で観て、ええっ、違うんじゃないの、これはっ・・・と、すごい違和感がありました。
 それはともかく、この本は松本清張原作の「張り込み」を佐賀でロケしたときのことが中心に書かれています。なにしろ、佐賀ロケを観ようとして、3万人もの人々が佐賀市内に押し寄せたというのです。
 私より少しだけ年齢(とし)下の著者ですが、私も、そのころの時代雰囲気はよく分かります。テレビなんてありませんから、映画をみるというのは最高のぜいたくです。その映画をとる現場が観れるというのであれば、みんなが観に行くのも当然です。
 著者は、その佐賀ロケのときに映画スタッフが泊まった旅館の子どもだったのです。
 松本清張の妻の実家は、佐賀県の吉野ヶ里に近い神崎(かんざき)駅の近くにあった。
 このあたりの情景をよく知っているから、清張は「張り込み」の情景描写につかった。
「張り込み」の女優は、あの有名な高峰秀子なんですね。「24の瞳」の高峰秀子が、「張り込み」にも主演していたとは、知りませんでした。
 この映画「張り込み」の監督は、野村芳太郎。当時38歳。「絶対に妥協しない」と高言して撮りはじめた。撮影期間は3ヶ月のはずだったのに、なんと7ヶ月も遅れた。その間、撮影「中止」に2回もなっている。
 「張り込み」のときには、山田洋次も、フォース助監督だった。
 野村芳太郎は、早撮りの監督と思われていた。ところが、この「張り込み」では、まったく違った。
 映画の「張り込み」の撮影にあたっては、佐賀県と佐賀市が全面的に協力した。
 佐賀警察署の場面を撮るシーンではクレーンが使われた。このとき、それを観ようとやってきた野次馬は、なんと1万人。観光バスを仕立ててやってきた。おかげで、佐賀市内は臨時に商品が大いに売れた。
 野村芳太郎監督は酒はダメ。甘いものもダメ。タバコとコーヒー党。
 山田洋次監督も、師匠の野村監督と同じで酒を飲まず、コーヒー党。
 九州ロケは、当初は、わずか10日間のはずだった。それが1ヶ月半をこえていた。佐賀だけでなく、熊本の温泉にまで足を延ばしていた。
 映画人の映画にかけている愛情の深さがよく分かる本です。
 それにしても、佐賀市内のロケ現場に1万人とか3万人の見物人が集まっていたなんて、今では想像もできませんよね・・・。
 映画好きな人、清張の本なら一通り読んだという人には欠かせない本だと思います。
(2015年11月刊。2000円+税)

2015年6月 7日

スギナの島留学日記

                             (霧山昴)
著者  渡邊 杉菜 、 出版  岩波ジュニア新書

 高校生活というのは人格形成にとって、とても大切な時期だと思います。受験にだけ追われるのではなくて、自然と社会の双方に目を開けることが大切です。
 この本は、私がまだ行ったことのない隠岐(おき)にある島前(どうぜん)高校で学んだ、兵庫県出身の女子高生の体験記です。わー、うらやましいな、そう思いました。
 島根県立高校です。そして、寄宿舎があるのです。女子寮に40人、男子寮に25人います。なぜ、男子より女子が多いのでしょう・・・?
 食堂は男女共同です。私も大学に入ってから3年間ほど寮生活を送りました。うち2年間は、6人部屋でした。楽しい日々です。今ふり返っても、天国のような日々を過ごしました。いじめなんて、もちろんありません。みんな、上も下もなく、仲間です。マンガ週刊誌をまわし読みし、夜食を食べに夜遅く寮の外へ出かけていきました。大学生ですから、門限なんて、もちろんありません。20歳前でしたけど、アルコールも制限なし、です。
 高校生の寮だと、そういうわけにはいきません。勉強時間も決まっています。でも、写真を見ると、本当にみんな楽しそうです。
 この高校では、国語、英語、数学の授業は習熟度でクラス分けされていて、一人ひとりに応じた授業を受けられる。先生は、生徒一人ひとりが、どういう状況にあるのか、しっかり把握している。すばらしいですね。こんな高校で勉強したいですよね。なにしろ、先生1人、生徒4人という授業もあるというのですから・・・。
 1学年50人、全学年2クラス。1年生は、実質3クラス、2年生は4クラス。こりゃあ、たまりません。県立高校で、これほど手厚い授業を受けられる生徒は、幸せです。
 休日も充実しています。島の人々との交流も盛んです。人々との深いつながりを実感できるのです。まさに夢のような高校生活を過ごすことができます。
 私も、もっと早く知っていたら、こんな高校に我が子を入学させたかったと思いました。
(2014年12月刊。800円+税)

2015年6月 3日

「わたしの日本語修行」

                             (霧山昴)
著者  ドナルド・キーン 、 出版  白水社

 ニューヨークで生まれて、ニューヨークで育った著者が、今は日本に住み、日本語ペラペラなのです。
 あまりにも成績優秀なので、著者は大学には16歳で入りました。信じられませんね。高校生が、そのまま大学に入ったというようなものですね・・・。
 著者は、徹底した反戦主義者です。にもかかわらず、海軍の日本語学校に入学します。でも、平和主義者であることと海軍へ入ることに著者は矛盾を感じませんでした。日本語を勉強するために日本語学校に入ったというだけなのです。軍隊については、何も学びませんでした。
 わずか11ヶ月で、日本語の新聞を読み、手紙を書き日本語で会話できるようになりました。すごいですよね、日本語をマスターするのに1年もかからなかったというのです。とんでもない速さです。
 海軍の日本語学校では、日曜日を除いて毎日4時間の授業があった。2時間は読解、1時間は会話、そして残る1時間は書き取り。一番むずかしかったのは、書き取り。
 そして、ハワイに派遣されて、日本兵の日記の解読に従事した。
 日本人の日記に感銘を受けた。日本兵は、新年ごとに日記を支給され、日記を書くことが、むしろつとめとされていた。外国人が日本兵の日記を読むことへの警戒心はなかった。
 兵士は、自分の本当の気持ちを書いたので、夢中になって読んだ。兵士のなかには、自分の死を覚悟し、これがアメリカ兵によって発見されることを見こして、最後の頁には英語で伝言が記されていた。
日本語を勉強するときには、はじめから漢字と一緒に覚えたほうがいい。はじめはローマ字のテキストを使うというのには反対だ。
 すごいアメリカ人がいたものですね。これでは、日本はアメリカに勝てるわけがありませんよね・・・。
(2014年11月刊。1800円+税)

 日曜日の午後、庭のジャガイモを掘りあげました。2月に植え、早過ぎてダメかと心配しました。地上部分の葉と茎が枯れたので、梅雨に入る前に掘りあげることにしたのです。立派なジャガイモがたくさんできていました。感動します。メークインとキタアカリです。さっそくオーブンで焼いて、バターをのせていただきました。昔、札幌の街頭で食べたジャガバタを思い出し、あつあつを美味しく食べました。至福のひとときです。
 暗くなってホタルを見に行ったのですが、途中の道路工事現場で足をすべらせ、地面に顔面を激突させてしまい、せっかくの美顔が台無しです。
 とっさに手を出して顔をかばえなかったのは、やはり反応が鈍くなったせいでしょう・・・。クスン。

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