弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

社会

2015年12月13日

小泉今日子・書評集

(霧山昴)
著者 小泉今日子  、 出版  中央公論新社

  歌手であり、女優としても有名な著者の10年分の書評が本になりました。
  キョンキョンというそうですが、テレビを見ない私には、どんな女性なのか全然知りません。
  「あまちゃん」に母親役で出演していたそうですね。
  でも、この書評はよく出来ていると感嘆しました。文章が生きています。思わず手にとって書評で紹介されている本を読んでみたいと思わせます。そして、著者の息づかいとともに著者の日常生活の一端が伝わってきます。そして、それによって著者を身近に感じることが出来て、親しみを感じるのです。
  紹介されている97冊のうち、私が読んだと思った本は9冊しかありませんでした。
  私は毎年500冊以上の本を読んでいますので、10年間だと5000冊になります。そして、10年以上にわたって1日1冊の書評を書いていますが、それでもわずか1割しか本が重ならないのですね。これは、ホント不思議な気がしました。でも、読書傾向が異なると、そうなるのでしょうね。
  私は、知りたいから読むという感じが強いのです。何を知りたいのかというと、世の中の仕組み、そして人間なのです。まだまだ探求の旅は続きます。
  本を一冊読み終えると心の中の森がむくむくと豊かになるような感覚がある。その森をもっと豊かにしたくて、知らない言葉や漢字を辞書で調べてノートに書き移した。
  本を読めば勉強になるし、頭の中のことではあるけれど、どこにでも行くことができる。未来でも過去でも、ここにはない世界にでも。ただ文字が並んでいるだけなのに、不思議だなって思う。
  同じ日本語を使っているのに、作家ごとに全然違う世界がつくられているというのもすごいこと。
  家から一歩もでなくても、宇宙でもどこにでも行ける。そして、本を読みながら、自分のこと、誰かのことを考える。それが自分にとって大事だった。
  小説はタイムマシーンだ。ページをめくれば、どこにでも、どの時代にも旅することができる。とても贅沢で、かけがえのない時間が、そこにある。
  本は、心を豊かにしてくれます。そして、そんな本を紹介してくれる書評の本です。
  私も、この書評コーナーを2001年から始めました。


(2015年11月刊。1400円+税)

2015年12月 4日

涙のあとは乾く

(霧山昴)
著者 キャサリン・ジェーン・フィッシャー 、 出版  講談社

  日本に住むオーストラリア人の女性がアメリカ軍の兵士にレイプされ、不屈にたたかっているというのは、ときどきのニュースで読んで知っていました。今回、その真相と女性の心境を知ることができました。
 痛ましい話です。誰かが飲みものにデートレイプドラッグを入れたというのです。これって、本当に許せませんよね。冗談として見過ごせる話ではないと思います。
 問題は、日本で起きたレイプ事件が刑事手続でどう処理されるのか、ということです。
 まず、犯人がアメリカ兵だということです。結局、アメリカ兵は、公務遂行とは何の関係もないのに、日本の法と法廷で処罰されることなく、アメリカ本国へ帰ってきました。ひどい話です。日本政府は、それを許しているのです。
 アベ政権が日本国民の安全を守るために安保法制が必要だと言っていますが、それが真っ赤なウソだというのは、これだけでも明白です。
 そして、レイプ被害者は、レイプ状況の再現を求められます。これが「第二のレイプ」と言われるものです。ある意味で仕方のないことではありますが、それにしても、被害者への温かい配慮は必要ですよね。
 そして、著者は日本にレイプ被害者の助けを求めるセンターがないことを憤ります。なるほど、ですよね。著者の怒りはあまりにも正当です。
日本人がアメリカの将兵によって被害を受けたとき、実は日米政府の密約があって、アメリカ人は刑事上も民事上も責任を負うことはない仕組みになっているのです。これが現実の日本地位協定の運用です。日本って、本当にアメリカの従属国なのですね、、、。日米安保条約は、本当に不平等条約そのものです。でも、日本政府さえしっかりしていれば、日米安保条約は通告によって廃棄できるのです。
 アメリカ頼みの平和って、危ないばかりではありませんか。
 個人の安全だけでなく、国の安全までよくよく考えさせられる本になっています。
(2015年5月刊。1600円+税)

2015年12月 2日

下流老人

(霧山昴)
著者  藤田孝典 、 出版  朝日新書

  いま、日本に下流老人が大量に生まれている。下流老人の存在が日本社会に与えるインパクトは計り知れない。
  下流老人とは、生活保護基準相当でクラス高齢者とその恐れがある高齢者のこと。
  下流老人には、次の3つがない。
  第1に、収入が著しく少ない。
  第2に、十分な貯蓄がない。
  第3に、頼れる人間がいない。困ったときに頼れる人間がいない。
65歳以上の一人暮らしが増えている。1980年には、男性19万人、女性69万人だった。2010年には、男性139万人、女性341万人。
  下流老人は、あらゆるセーフティネットを失った状態。
  下流老人には、日本人の誰もがなりうる。つまり、私たちの問題なのである。
  団塊世代より上の層の老人には、日常生活力が驚くほど乏しい。仕事一筋できた男性は老後に離婚しないこと、されないことが必要。
  これからの日本社会には、もはや中流は存在しない。いるのは、ごく一握りの富裕層と大多数の貧困層だ。
  自己責任論、努力不足論が、明日のあなたを殺す。
  下流老人になったのは怠けていたからだ、自己責任だと現役の正規労働者の多くが考えている。しかし、現実はそうではない。
  自民党の片山さつき議員は、生活保護を受けるのを恥ずかしいと思えと言わんばかりのことを言っている。しかし、社会保障制度を利用するのは憲法上の権利であって、何も恥ずかしいことではない。国会議員のインチキパーティーなどで金もうけしているほうがよほど恥ずかしいことではないでしょうか・・・。
  生活に困ったら、困る前に、変なプライドなんか捨てて、公的援助制度を利用すること。
  私も本当に、そう思います。軍事予算が5兆円をこすというのは、福祉や教育予算を切り捨てたうえでのことです。とんでもないアベ政治は許せません。

(2015年10月刊。760円+税)

2015年12月 1日

「大国」への執念、安倍政権と日本の危機

(霧山昴)
著者 渡辺治・岡田知弘ほか 、 出版  大月書店

  アベ政権は本当に怖いと私は考えています。ところが、一般的な支持率が4割もあるというのです。不思議でなりません。安保法制とかTPPや、労働法規制などでは、圧倒的に不評なのですが・・・。
  安倍政権は、戦後の歴代政権のなかで特異な性格を有する政権である。その特異性とは、安倍政権が一方では保守支配層が長年にわたり実現を待望しながらできなかった課題を強行する支配層待望の政権であると同時に、保守支配層が望まないことまでやってのけるという、きわめて扱いにくい政権だという二面性があるから。
  安倍政権は、発足以来、つねにマスメディアに話題を提供し続けている。
  欧米のメディアが注目しているのは、アベ政権のタカ派的言動への警戒と懸念である。
  もう一つは、アベノミクスへの関心である。
  なんとも厄介な政権だということは、一方で、アベでなければ出来ないことをやってくれるが、他方、その制止を振り切って歴史修正主義にこだわるから。
  二つの顔は、当のアベにとっては何ら矛盾していない。それどころか、どちらの顔もアベにとって、なくてはならない顔なのである。
  アベ首相の目指す「大国化」は軍事大国になることを意味する。そのためには、自衛隊の海外派兵の自由は不可欠の土台である。
  アベ政権は、日本の大国化を、あくまで対米従属、つまり日本同盟の枠内で、日米同盟を強化する方向でしか展望していない。アベ首相の言う「強い国家」とは、第日本帝国以外にない。
アメリカのオバマ政権も日本の財界も決断した。こんなアベでなければ、長年の課題達成は無理だ。アベの見るからに危険な顔を前面に出さないようにコントロールしながら、アメリカ政府はアベ政権をいつものように、なんとかの一つ覚えのように全面的に支えてきた。
  アベ政権は、官邸主導の集権的意思決定の体制をつくりあげている。
  自民党は弱体化し、新自由主義の抵抗体とはならなくなった。
  自民党って、かつての民主党と同じほど、古臭くて、非民主的な政党ですよね。
  アベ首相は、全世界を専用機で飛び回っています。しかし、残念なことに、そのとき憲法9条の素晴らしさ、教訓がまったく生かされていません。
「政治主導」を標榜し、官僚機構に敵対した民主党政権のもとで、むしろ、政権の依存度は高まった。
  アベ内閣の閣僚のほとんどが日本会議の国会議員である。
  アベ政権内でハト派の政策と政治的影響力が低下している最大の原因は、グローバル競争国家に対抗する独自の国家構想がないからだ。
  先の9月国会で「成立」した安保法制法については、古賀誠、与謝野馨、加藤紘一、山崎拓など自民党の元有力議員が名前を出して否定ないし消極だった。
                  (2014年10月刊。2400円+税)

2015年11月27日

老後破産

(霧山昴)
著者  NHKスペシャル取材班 、 出版  新潮社

  いまの政治は「貧乏人」に本当に冷たいですよね。まともに税金を払っていない大企業には法人減税をどんどんすすめ、庶民には消費税10%を押しつけようとしています。
  政治って、弱者を保護するために必要なものだと思うのですが、アベ政権のやっていることは弱者切り捨てそのものです。そして、自分もその弱者になるかもしれない人たちが、その自覚のないまま「自己責任」論に踊らされています。
  この本を読むと、老後破産というのが、多くの日本人にとって、「明日は我が身」という状況にあることがよく分ります。その状況はあまりにも寒々としています。
  今のNHKは、モミイ会長の下で、アベ政権にタテつかない報道がひどくなっていますが、それでもまだ、こんな良心的な番組が残っているのを知ると、ほっとします。
  いま、超高齢社会を迎えた日本で「老後破産」ともいえる現象が広がっている。
  「お金がないので、病院に行くのをガマンしている」
  「年金暮らしなので、食事は1日1回。1食100円で切り詰めている」
  現に「老後破産」状態にある人も、実は、みな若いころには、そんなことはありえないと考えていた。元気に働いているし、税金も払っているから、自分の老後は政府がなんとかしてくれるはず・・・と、幻想を抱いていた。
  お金がないから、電気をまったく使わないで生活している人がます。もちろんテレビは見ません。乾電池で聴けるラジオだけ・・・。なんということでしょうか。
  年金を10万円(月額)うけとっているので、生活保護の適用はないと考えている人がいる。まったくの誤解。そして、自宅(持ち家)があるから生活保護は受けられないと考えている人が多い。これも誤解。
  大阪の橋下市長は「生活保護は甘すぎる」と攻撃していますが、とんでもありません。生活保護を受けられるはずの人の多くが申請すらしていないのが日本の現実です。実に冷たい人物です(橋下氏が弁護士だというのが本当に残念です)。
  貧乏したら何が辛いかって、周りの友だちがみんないなくなること。だって、お金がないから食事会やら旅行に参加することができない。誘われるたびに断っていると、次第に断ることが辛くなる。そうすると、顔をあわせなくなる。そのうち誰からも誘われなくなる。
  東京では年収150万円が生活保護の水準。3割をこえる人がそれに該当する。
  配偶者を亡くすと、年金が一人分減ったために生活を維持していけなくなる。
年金も介護保険も、家族と同居するのがあたりまえの時代につくられたもの。今は違う。しかし、制度の見直しはされていない。
  餓死者まで頻発する現代日本社会をとらえたNHKの番組が本になっています。本当になんとかしなくてはいけません。年金一揆が起きて不思議ではないのです。
(2015年8月刊。1300円+税)

2015年11月21日

その時、名画があった


(霧山昴)
著者  玉木 研二 、 出版  牧野出版

  私はテレビは全然みませんが、映画は月1本のテンポでみるようにしています。福岡ではKBCシネマ、そして東京では日比谷シャンテか岩波ホールです。やはり大画面の迫力には圧倒されます。この本は、私より3歳だけ年下の新聞記者による映画評をまとめたものです。その映画がつくられた時代背景やら、日本で封切り上映されたときの社会情勢まで紹介されていますので、2倍楽しめます。
映画と言えば、すぐに出てくるのはチャップリンですよね。私は市民向けの法律講座30年以上も続けていますが、初めのころはチャップリンの喜劇・短編を上映していました。自分がみたかったからです。チャップリン「街の灯」だとか「独裁者」とか、心にしみる映像には心が揺れ動かされます。
 そして、日本映画では、「七人の侍」ですね。私は福岡・中州の映画館でのリバイバル上映もみました。あの雨のなかのすさまじい斬りあいが、なんと東京、世田谷のスタジオにセットを組んで撮られたとは、信じられません。
黒澤明の「生きる」は志村喬の熱演が心に刻み込まれます。人間、何のために生きているのか、しみじみ考えさせてくれます。
 そして、「二十四の瞳」も素晴らしい映画です。少し前に弁護士会のシンポで部分的に上映しようとしたら、そんなことは許されないというのも知りました。
 「男はつらいよ」は、私が大学3年生の5月、東大・本郷の学園祭(五月祭)のとき、教室で第一作をみた覚えがあります。東大闘争が終わってまもなく、学内にまだ殺伐とした雰囲気が残っているなか、腹の底から笑いこけました。映画館で上映されたのは、8月27日からだったとのことです。寅さんが、小学校の同窓会に出たたき、みじめな思いをさせられた話があるそうです(28作)。いい映画でした。
「幸福の黄色いハンカチ」は1977年10月に封切られたとのことですから、もう40年近く前になるのですね。青空に黄色いハンカチが画面いっぱいにはためく様は泣けてきました。高倉健は、これでやくざ映画から脱却できたのでしょうね。
「火垂るの墓」は、わが家ではこれを見なければ大人になったとは言えないと子どもたちに話してきたものです。可哀想で、二度とみたくありませんが、日本人ならみなければいけない映画だと思います。ざっと、いくつかの映画を紹介してみました。私としては、ほかにも「初恋の来た道」とか、いろいろ取りあげてほしい映画もあるんですが、、、。
(2015年8月刊。2200円+税)

2015年11月18日

民主主義ってなんだ?

(霧山昴)
著者  高橋源一郎、シールズ 、 出版  河出書房新社

  シールズの自己紹介から始まっています。
  シールズの奥田くんの父親は北九州の牧師で、ホームレス支援している。NHKの「プロフェッショナル」でも紹介された。その息子として、奥田くんは中学生のときから自宅を出て、沖縄の島で生活し、高校も島根県の小さな町に通っている。たしかに立派すぎる父親をもつと、子どもにとっては息苦しい、息が詰まってしまうのかもしれませんね。
  シールズの前の反原発の運動のときには、ICUと明治学院大学が多かった。
  実は、私の娘もICUの卒業生なのです。ICUって、ちょっと変わった個性をもつ人材を輩出していますよね。
  高橋源一郎は、作家であり、教授です。私より少しだけ年下になりますが、激しかった学生運動のなかで活動していたようです。
  私たちのころは、個人の言葉がなかった。これは、私もまったく同感です。あのころは「我々は・・・、たたかうぞ」と、リーダーが叫ぶのに唱和するだけでした。
  今は、「私は、○○大学の○○です」と名乗りをあげて話し出します。まったく違います。だから、卑劣な個人攻撃も受けやすくなるのです。「ネトウヨ」って本当に嫌な人種ですよね・・・。
  「昔の左翼は、権威を嫌いすぎた。国家権威を忌避しすぎた」 
  これって、どうなんでしょうか・・・・。だって、今の沖縄の状況をみたら翁長知事は県民の総意を受けて正当な職務権限の行使をしていますが、安倍や菅という連中は、権力と税金を私物化していますよね。こんな現実を直視したとき、権威とかが国家権威を嫌ったり、警戒したり、反発するのは当然ではないでしょうか・・・。
  シールズって、組織的なことを何もしていない、あくまでも自然発生的な運動体かと思っていました。ところが、その組織には、たくさんの班があるのですね・・・。デザイン班、デモ班、サロン(イベント)班、コンテンツ班、インターナショナル班、広報班、出版班、物販班、映像班、コールセンター、会計、あとは副司会官。
  私が大学生のころには、学内の集会やデモ行進となると、何千人も集まっていました。全都集会となると、軽く1万人をこしました。それが、その規模までにはいきませんが、今、ようやく近い人数にまで発展してきました。その中心にすわっているシールズの面々の話は、今どきの大学生の気分を知るうえで、大変参考になりました。

(2015年11月刊。1200円+税)

14日(土)午前中、いつものようにフランス語教室に顔を出しました。フランス人講師から何が起きたか知っているかと訊かれました。朝刊を読んでいましたから、地震があったことですかと答えました。鹿児島と佐賀で震度4の地震が早朝にあったのです。いやそんなことじゃないとフランス人講師はネットニュースをみせてくれました。そこで初めてパリで同時多発テロが起きたことを知りました。私もパリは何度も行ったことがあります。娘もしばらく留学していました。そのパリで、レストランや劇場、そして、サッカースタジアムが襲われたというのです。その恐ろしさに声も出ませんでした。これは戦争だと、フランス講師は繰り返していました。シリアからヨーロッパに戦争が拡大してしまったのですね、、、。
アベ首相が余計なことを再び言ってテロリスト集団を無用に刺激しないことを心から願っています。
テロリスト集団は絶対に許せません。でも、私は空爆にも反対です。そして無人機をつかってテロリストを暗殺しても、ほとんど何の解決にもならないでしょう。単に暴力の連鎖を生むだけです。
51ヶ所もの原発をかかえる日本です。テロリストが自爆攻撃したら、もう日本は破滅です。テロリスト絶滅と称して軍事行動をエスカレートさせることのないよう、心から願っています。まわり道のようではあっても、九条の精神で、本格的な民生支援しか国際社会が生きのびる道はないと確信しています。今度、この問題をフランス語で発表することになっています。

2015年11月11日

国防政策が生んだ沖縄基地マフィア

(霧山昴)
著者  平井康嗣・野中大樹 、 出版  七つ森書館

  普天間飛行場移設問題の足下で、総額5300億円にものぼる巨額の公共工事をめぐって、スーパーゼネコンをはじめとする沖縄県内外の土木建築業者、商社らが、少しでもその分け前にあずかろうとシノギを削っている。
  東開発グループの中泊弘次会長は、97年の住民投票で数千万円とも言われる内閣官房機密費を政府から受けとり、地元で差配した。
  それにしても、先日、辺野古の3地区の区長を首相官邸に招いて国が直接に地区へ交付金を渡すことを約束したというのは目を疑いました。これは民主主義国家ではありえないことです。封建制度の殿様なら、自分のお気に入りに手づかみでお金をバラまけたでしょうが、今どき、そんなことをするなんて・・・・。マスコミが、このことをあまり問題にしないのも私には理解できません。これこそまさしく税金の勝手なムダづかいでしょう・・。
  沖縄へ国からおりてくる振興補助金は一部の業者に偏っていて、談合の温床になっている。
  2014年5月、沖縄防衛局は名護漁協に5年間の漁業補助費36億円を支払う契約を結んだ。その前に24億円を提示したが、漁協が難色を示して倍額された。これで辺野古の漁民は一人あたり3200万円を受けとることになる
  実は、アメリカ軍の基地を撤去したら、沖縄の経済は大きく発展することが確実なのです。基地があることでもたらされる新興策は一時的なものでしかない。基地を撤去して、その跡地を利用することによって、雇用が100倍に増えたという実例がある。
  むしろ、アメリカ軍の基地こそ、沖縄経済の発展を阻害している最大の要因なのである。おもろまちでモノレールを降りると広大なショッピングセンターが広がっています。聞けば、ここはアメリカ軍の基地がなくなった跡地だということです。
  戦争ではなく、平和。軍事ではなく民生施設。これこそ、私たちの望んでいることだと思います。ノーモア米軍基地、ノーモア・アベ首相です。

(2015年7月刊。1800円+税)

2015年11月 8日

受験は母親が9割

(霧山昴)
著者  佐藤 亮子 、 出版  朝日新聞出版

  3人の息子を東大理Ⅲ(医学部)へ進学させたスーパーママの体験記の第二弾です。
その合理的な手法に目を開かされるとともに、最後まで徹底してやり抜いた実行力には驚嘆すると同時に、頭が下がります。
著者の夫が私の親しい弁護士なので、前著に引き続いて著者サイン入りの本を贈呈していただいたのでした。
きわめて合理的な子育てが実践されたのですが、それでも著者は、楽しみながら、そして息抜き、手抜きも按配・加減しているという点で大いに共感するところがあります。
受験ですから、目標ははっきりしています。それに合わせて日常生活がすべて進行していくのですが、読んでいてギスギスしたところがないので、ひょっとしたら、我が家でも出来るのでは(出来たのでは)と思わせるのです。
前著を読んで、もっと詳しく知りたいという人に向いた本だと思います。つまり、私は、まずは前著(カドカワ)を読んだうえで、本書を読むことをおすすめしたと思います。
3兄弟が通っていたのは灘(なだ)中学・高校です。奈良の自宅から神戸にある学校まで電車を乗り継いで1時間40分かかります。大人でも嫌になるほどの長い通学時間ですが、3兄弟は6年間やりとおしたのです。しかも、サッカー部にも入っていたというのですから、すごいものです。
そして、母親である著者は、毎朝、午前4時半に起床して9合のご飯を炊き、3兄弟と夫の弁当を作り続けました。3兄弟は午前6時すぎに家を出ます。朝ご飯のためには、別におにぎりを握って持たせるのです。
そして、昼間も昼寝付きの専業主婦どころではありません。子どもたちの勉強の準備をするのです。問題集をコピーしたり、大事なところにはマーカーをつけたり、、、。
夜は、子どもたちが寝るまで起きていますので、午前2時になることもしばしば、、、。
なんとタフな母親でしょうか。子育てのプロと自称しているのも理解できます。よくぞ続いたものです。私のよく知る夫の果たした役割は「1割」だということですが、それはそうかもしれませんが、見えないところで著者を大いに支えていたような気がします。
子どもを勉強させるためには、ただ「勉強しなさい」と言うだけではダメ。子どもが勉強できるように、親は徹底的にサポートする。翌日の持ち物をそろえてカバンに入れ、忘れものがないかチェックするのは母親の役割。
3兄弟と妹には、すべて名前に「ちゃん」をつけて呼び、「お兄ちゃん」とは呼ばない。兄弟すべて、いつも同じ扱いをする。これを徹底した。
子どもからすると、母親は完璧すぎない。家の中は散らかっていて、庭も荒れている。母親は割り切っている。それでも、家の中は、基本的にのびのびした雰囲気で過ごせる家庭だった。
夫婦ゲンカもあったようですが、いつも母親の勝ち。なので、一瞬のうちに終わる。
「そんなに勉強ばかりでは、かわいそうだろう」「子育ては、私の責任、口出ししないで」
いやあ、これには、まいりました、、、。
勉強するのは、人としてより豊かに生きていくためなんだ。子どもたちには、何度も話して聞かせた。うむむ、そうなんですよね、なるほど、、、。
いわゆる「東大脳」は、生まれついたものではなく、育て方で決まるもの。子どもたちは、勉強が楽しいと目を輝かせていた。塾の日は、心待ちにしている、とても楽しい日だった。
私も、小学4年生から中学3年生まで塾に通いました。学校とは違った教え方で、よく分かりました。でも、私なりの勉強法が分かりましたので、高校になると塾には通わず、Z会の通信添削のみにしました。これには大いに刺激を受け、また励みになりました。
3兄弟は、勉強するのは同じ部屋。つまり、各自の子ども部屋というのはありません。テレビを見るときは2階にあがらないといけません。1階のリビングにはテレビがないのです。我が家では、子どもたちがいるあいだテレビはありませんでした。子どもたちが家を出てしまった今はテレビがありますが、私は基本的に今もテレビは見ません。録画したものを見ることがあるだけです。
どんなテストでも、目ざすのは100点。ほめるのは、ほどほど。母親は何事にも動じず、感情的にならないことが大切。
私がこの本を読んで、あっと驚き、今でもそんなことしていいのかと疑問に感じたことがあります。それは、3兄弟が1歳から公文式教室に通って、読み、書き、計算をはじめたということです。ひょっとして、これがすべての基礎だったのかもしれません。でも、これって、本当にいいこと、必要なことなのでしょうか、、、。
とても実践的な、ぐいっと目の開かれる思いのする本です。子育てに少しでも関心のある人には強くおすすめしたいと思います。
佐藤先生、今後ともどうぞよろしくお願いします。
(2015年7月刊。1300円+税)

2015年11月 4日

武器ビジネス(上)

(霧山昴)
著者  アンドルー・ファインスタイン 、 出版  原書房

 自民・公明の安倍政権が安保法制法を強引に成立させてしまいました。このとき、アベ首相は今後の日本の平和を守るために必要な法制だと高言していましたが、実際には、日本が世界各地の紛争に武力介入しようとするものです。その結果、日本社会の平和が大きく脅かされることになるのは必至です。
 ですから、多くの国民が安保法制法案を戦争法案だと名づけて反対してきたのも当然のことです。アベ政権が現実にすすめているものの一つが軍需産業の育成・強化です。戦車や潜水艦などの軍事品を諸外国にどんどん輸出してもうけようというのです。日本も、アメリカやイギリスそしてドイツやフランスと同じような死の商人になろうとしています。
 自分がもうかりさえすれば、自分の家族が死ななければよその家族の誰が死のうと知ったことではない。ましてや、外国人がいくら死んでも関係がない。これがアベ政権です。本当に恐ろしい人たちではないでしょうか。それこそ血も涙もありません。いえ、血もしたたる強欲の輩(やから)です。この本は、そんな戦争ビジネスの実態を世界的視野で暴いています。
 サウジアラビアの指導者たちは、臣民には厳格なコーランの教義の厳守を要求する一方で、自分たちの行いは、彼らの信仰とは、これ以上ありえないほどかけ離れていた。
 サウジアラビアがアメリカやイギリスから武器を購入するとき、王族たちは莫大な賄賂を収得していた。高級車、飛行機、高級リゾートでのぜいたくな休暇、豪華なショッピング、、、。
 これって、アベ首相たちが、高級料亭やレストランでぜいたくざんまいをしている一方で、庶民は倹約精神を押しつける道徳教育に熱心なのとまるで同じですよね、、、。
 なにしろ、月1億円、年間10億円もの使い放題の内閣官房機密費があるのですから、やめられませんよね、ぜいたくは、、、。私は、そんなアベ首相は絶対に許すことができません。戦争への道連れなんかしたくないからです。日本で自爆テロが頻発するようになってから、あのときアベ首相に反対しておけばよかったなんて後悔しても遅いのです。
 2010年、世界全体の軍事支出は総額1,6兆ドルにのぼった。地球全体で、ひとりあたり235ドル。これは、2000年から53%増加している。そして、全世界の国内総生産の2、6%にあたる。アメリカは国防予算が7030億ドルをこえ、国家安全保障に毎年1兆ドルをついやしている。大小の通常兵器の取引は、毎年、総額600億ドルにのぼる。
 アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、オランダ、イタリア、イスラエル、中国は、常に武器と軍需品の最大の製造国であり、輸出国である。
武器取引には贈収賄や腐敗行為が蔓延し、完全に公明正大な武器取引はごくわずかしかない。
 兵器産業の腐敗した秘密主義の手口は、販売国と購入国の両方で、説明責任のある民主主義を土台から揺るがしている。
武器取引は、全世界の取引の腐敗行為の40%以上を占めている。武器取引は、表向きの世界と影の世界、政府と商業と犯罪行為の錯綜するネットワークであり、我々をもっと安全にするどころか、たいていは豊ではなく貧しくする。そして、我々のためでなく、自己の利益に奉仕する少数のエリートの利得のために管理され、見たところ法律が及ぼす、国家安全保障の機密主義に守られ、誰にたいしても説明責任を負うことはない。
 政治家たちは、日本に限らず表向きはキレイゴトを口にしつつ、裏では汚い金をふんだんに我がモノにしている。その典型が武器ビジネスなのです。あまりにもおぞましいので、目を覆いたくなるほどです。でも、しっかり目を見開いて究明し、根絶したいものです。
(2015年6月刊。2400円+税)

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