弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

社会

2016年8月30日

鉄客商売

(霧山昴)
著者  唐地 恒二 、 出版  PHP研究所

 国鉄が解体して、JRという民間会社になり、良い面だけが一方的にもてはやされる風潮に私は納得できません。私の好きなフランスでは、いまもフランス国鉄ががんばっています。もちろん労働組合もストライキもフランスでは健在です。
 今や日本ではストライキは死語同然。労働組合というのも労務担当(労務屋)の別称で出世階段の一つというイメージが強くなっています。労働組合が弱くなって大きな社会問題になっているのが非正規雇用とワーキングプアーです。
 若者にとって正規社員として就職する可能性がないとか、ブラック企業で死ぬまで酷使されていても耐えるしかないというのは、どう考えても異常な社会です。
 この本は国鉄解体をすすめ、営利本位になったことを自慢している本だと言って切り捨てることも出来ます。労働者は、経営者の言うままに働く存在であればいいという考えが底流にあるのでしょうね・・・。
 まあ、そんな先入観をもって読んでも、商売の論理を実践した本だと割り切って読むと、たしかに参考になるところがあります。
 ただ、「JR九州大躍進の極意」とサブタイトルにありますが、やっぱり列車は安全第一で運行してほしいし、事故対応もきちんとしてほしいという不満を私はもっています。ホームの無人化だなんて、最悪ですよ。安全性無視はいけません。
 1992年度のJR九州の飲食店は大赤字をかかえていた。原因は何か・・・。「気」がない。覇気がない。活気がない。元気がない。やる気がない。気づきがなり。死んだような店になっている。外食事業部門は、はじき飛ばされた人間が中心になって支えていた。
 ノウハウ本の大切な読み方は二つ。
 一つは、気に入った本を一冊、何回も読み返す。
 二つは、書かれていることをまるまる信じ、書かれているとおり全部を実行する。
 半信半疑で、適当につまみ喰いしても、うまくはいかない。
 会社の強さは店長会議で決まる。店長会議では、トップが一人で、方針のすべてを繰り返し語る。聞き手は前の話をほとんど忘れているから、トップは大事なことを何度も語る。
 売上に対して原価率が30%、人件費率が30%あわせて60%というが、もうかる店の標準だ。飲食店の従業員の大半がパートかアルバイト。
 その割合の全国平均は90%いろんな分野で、金持ち層をターゲットにした商業が発展しています。JR九州で、いうと「ななつ星」です。高収入を目ざすには良いことなのでしょうが、そんな超高級の旅行とは縁のない人々も多いということを、JR九州としても忘れてほしくないと思ったことでした。くり返しますが、駅の無人化はやめてください。とりわけ新幹線駅の無人化なんて怖すぎます。
(2016年6月刊。1500円+税)

2016年8月28日

当選請負人、千堂タマキ

(霧山昴)
著者 渡辺 容子 、 出版 小学館文庫

東京・横浜のベッドタウンでの市長選挙の実情の一端を描いた小説です。読ませます。
選挙とは、自分の主義主張と心の内面をこれでもかというほど裸にして、それを公衆の面前にさらけ出して審判を受けるという厳粛なる儀式である。
本当は、そうなんですよね。でも、実際には、イメージ選挙のほうが先行しているし、強いです。その根本的な理由は、「べからず選挙」とまで言われる公選法による規制です。戸別訪問を禁止するなんて、とんでもない間違いです。選挙のときこそ、国民が自由に政治を語るべきなのです。
そして、マスコミです。お金さえあれば、マスコミ操作は出来ます。それに権力がともなえば、マスコミなんて、ちょろいものです。かの「アベさまのNHK」に堕してしまった悲惨さは、残念無念というほかありません。
「選挙で勝つには、政策も大事です。ポスターもビラも決しておろそかには出来ません。ですが、もっとも大切なのは、候補者の人間力なのです」
現実には、候補者に「人間力」が全然なくても当選する人が少なくありません。「政策は当選したら勉強します」と臆面もなく言ってのけて当選してしまうタレント候補が昔も今も少なからずいます。
地上戦とは、支持者・支持団体を回って投票を訴え、地道に票を掘り起こしていく活動をいう。空中戦とは、選挙カーや街頭、そしてインターネットを介して広く世間に政策を訴え、浮動票の獲得を図る戦術をいう。
マイクを握るのは左手が基本。右手、また両手でもつと、集まった人々から握手を求められたときに、マイクを持ち替えなければいけない。
「カクダン」とは確認団体のこと。選挙期間中に、特定の政治活動をすることが認められた政党その他の政治団体をさす。
カクダンのビラには、選挙活動用のビラと違って、枚数や回数に制限がない。何枚配ってもOK。ただ、ビラには候補者の名前や顔写真は載せられない。
選挙には多くの人がかかわっているから、誰かのシナリオや思惑どおりに物事が運ぶなんていうことはありえない。それどころか、選挙期間中には、自陣のミスや相手方のミスによって、まったく予期していなかった事件やハプニングが必ず起きる。
想定外の出来事がおきたとき、どれだけ冷静に、かつ素早く事態を掌握し、状況を脱するための方策を練るか。どんなピンチに陥ったときでも、頭を使えば、最悪の状況を打破して、それをチャンスに変えてしまう面白いアイデアがひらめくものだ。
実は、私も、選挙には何回もかかわりました。もちろん、候補者としてではなく、後援会の役員として、です。ですから、街頭での訴えの難しさは身にしみています。歩いている人の足を停めさせるような話をしたいのですが、なかなか出来ません。自分の体験を語り、自分の言葉で候補者への支持を訴えるようにしています。
結局、自分の身近な体験した話題を切り出して、話を具体的に展開するしかないと思いました。
日本人は、もっと真正面から政治とか司法のあり方を議論すべきだと思います。
政治になんか関わりたくないと思っても、政治のほうは私たちを放っておいてくれません。その意味で、投票率54%でしかないという現状を変える必要があります。
(2014年9月刊。670円+税)

2016年8月27日

大脱走


(霧山昴)
著者 荒木 源 、 出版 小学館

就職に苦労した末に入社できた住宅リフォーム会社は典型的なブラック企業。
そんな会社に入ったとき、どうしたらよいか・・・。
とにかく契約をとること。新人がまずやらされるアポインターというのは、アポをとるのが、すべて。そのためには、まずたくさん「叩く」。
インターホンを押し続ける。200枚の名刺をわずか半月で使い切る。
アポインターは、あとを引き継ぐクローザーが、客と商談をすすめる材料を集めるお膳立ても整えておかなければいけない。
どんな仕事でも、仕事のない恐怖に比べれば、まだまし。
もちろん、サギまがいの住宅リフォーム会社に騙される客ばかりが世の中にいるわけではありません。逆に、騙したはずの客に会社が脅かされてしまうことだってありうるのです。そんなときには、会社は、それは現場の人間が社の方針とは違ってやったことで、社は責任がないと突き放してしまいます。怖い仕組みです。
そんなことを許していいのか・・・。社員が結束してブラック会社を変えよう。そう思っても、一緒に行動してくれる人はほとんどいない。みんな、自分の身が可愛い。じゃあ、どうする、どうなる・・・。
救いのあるような、ないような、身につまされるストーリー展開の本でした。
なかなか、こんなブラック企業って、なくなりませんよね。どうしたらいいんでしょうか・・・。
(2015年11月刊。1400円+税)

2016年8月26日

奪取、振り込め詐欺・10年史

(霧山昴)
著者  鈴木 大介 、 出版  宝島スゴイ文庫

 この本は、一人でも多くの人に読まれるべきだと強く思いました。
 騙されないように気をつけましょう。銀行のATM操作でお金を受け取るつもりが送金させられてしまいかねません。郵パックで現金送れは詐欺です・・・
 そんな警告をいくらしても、詐欺被害は一向になくなりません。なぜなのか・・・。
 この本は加害者側の分業体制がすすんでいる内情を明らかにすると同時に、騙される側の情報がなぜ「犯人」たちに筒抜けになっているのか、名簿屋の最新の情報入手先を明らかにしています。そして、なぜ、被害者が被害を申告しないのか、多くの人が泣き寝入りしている、その理由も究明しています。
 私も、弁護士として何件もの被害者からの相談を受けましたが、大半は泣き寝入り状態で、被害回復はほとんど出来ていません。すぐに口座凍結はするのですが、すでに引き出されてしまっているものばかりですから、ほとんど実効性がありません。
 振り込め詐欺は何段階も進化をとげている。思いもよらないほど大きな組織と巧妙に仕組まれたネットワークがある。
 末端の集金役としての「ダシ子・ウケ子」。被害者に電話をかけるプレイヤー。それらを統括する番頭。組織の外部協力業者としての「名簿屋」と「道具屋」。天上人として現場に直接たずさわらず、組織に種銭(たねせん)を投げて収益を得る「金主」。犯罪である以前に、あくまで営利を追求する組織だ。
 何があっても頂上の金主だけは摘発されないという至上命題の下、組織は巧妙に合理化され、より多くの収益を上げるために詐欺のシナリオやターゲットの絞り込みを極め、現場要員の育成も徹底する。その企業活動としての振り込め詐欺組織の理念や組織論は、もはや一般の企業がぬるいと思えるほど卓抜したものとなっている。
 名簿屋の最新の入手先は二つ。一つは訪問介護事業者。介護事業の現場で働くホームヘルパーから、詐欺に適した高齢者の情報が商品として売られている。
 もう一つは、住宅のバリアフリーリフォームをした顧客リスト。バリアフリーが必要になる年齢で、リフォーム代金をポンと出せる人の名簿だ。
 そして、「下見屋」がこする。こするとは、情報を精査する作業のこと。
 かたり調査というのは、国勢調査とか市役所からの調査を装って電話をすること。高齢者は、暇で寂しいから、雑談をまじえると、どんどん必要ないことまで話してしまう傾向がある。
 つまり、名簿屋も親名簿をひっぱってくる収集班、下見班そしてパッケージの3段階に分かれている。
 最近すごく高値で取引されているのは「三度名簿」。詐欺で3回だまされたことのある人だけをのせた名簿。3度やられた人は、リスクも高いけれど、4度目も騙される可能性は高い。
 詐欺ではなく、恐喝まがいの脅し文句で迫るケースもある。声だけで怖い奴がいる。ターゲットの家の住所、携帯番号どころか、息子や孫の名前、勤め先を会話の端々に出す。もう逃げられない。報復が怖い。とりあえずお金さえ言われるまま支払っておけば、この問題から逃げられる。被害者が怯えてしまっているケースだ。
 いやはや本当に勉強になる本でした。ぜひ、みなさん、ご一読ください。

                   (2015年3月刊。720円+税)

2016年8月25日

これから戦場に向かいます

(霧山昴)
著者  山本 美香 、 出版  ポプラ社

 4年前の夏(2012年8月)シリアで取材中に銃撃を受けて亡くなった女性カメラマンの文と写真です。その尊い犠牲を少しでも無駄にしてはいけないと思って写真集を買って眺めました。
 さすが戦場カメラマンです。緊迫した状況がひしひしと伝わってきます。
 でも、彼女の言葉が良いのです。まったくそのとおりです。平和のための戦争が大好きなアベ君に、よく言いきかせてやらなくてはいけません。
 一度動き出した戦争の歯車は簡単には止められない。
 だからこそ、戦争を始めてはいけない。
 ミサイルも爆弾も、まだ普通に生活していた人々の上に落ちた。そこで死ななければならなかった人たち。あまりにも無念だ。
 力でねじふせるやり方は、即効力があるから、表面的には効果があるように見える。しかし、人間の心に刻み込まれた憎しみは何かの拍子に爆発し、暴走するだろう。
 戦場で何が起きているのかを伝えることで、時間はかかるかもしれないが、いつの日か、何かが変わるかもしれない。そう信じて紛争地を歩いている。さあ、現地に到着だ。
 45歳という、油の乗り切った若さで、「戦死」してしまった彼女の無念さを私たちはきちんと受けとめなければいけないと思います。
 戦場でたくさんの人を殺した人ほど英雄視されるなんて、間違っています。
 自爆犯を志願する若者に、ほかにやるべき何かがあることをみんなで伝えたいものです。
 私は、戦場の無惨な写真を見るたびに中村哲さんのアフガニスタンでの、砂漠を緑の大地に変える壮大な取り組みを想起します。こんな取り組みこそ、日本が官民あげて協力すべきこと、もっと日本の若者を現地に送り出したいものだと思います。自衛隊員をアフリカに送るより、素手の日本人が砂漠の緑化工事に関与できる状況を一刻も早くつくり出したいものです。
 貴重な大判の写真集です。 ぜひ、あなたも手に取って眺めてみて下さい。
(2016年7月刊。1600円+税)

2016年8月20日

作家はどうやって小説を書くのか・・・Ⅱ

(霧山昴)
著者 パリ・レヴェー・インタヴュー 、 出版 岩波書店 

登場人物の名前は、どうやって決めるのか?
電話帳とか死亡広告の記事とか・・・。
そうなんです。私も名前には苦労しています。主人公の名前はありふれておらず、印象に残りやすいものに工夫します。そして、その他、大勢の人は印象薄い名前でいいのです。
ハリウッドのお金は、お金じゃない。あれは、凍った雪なんだ。手にもつと溶ける。自分以外のなんにも残らない。
ヘミングウェイは立って書く。タイプライターと書見台が、ちょうど胸の高さで相対する。作品に取りかかるときは、いつも鉛筆から始める。書見台の上に斜めに紙を置き、左腕で書見台を支え、手で紙を固定し、手書きで紙を埋めていく。
タイプライターに切り替えて、書見台を省略するのは、速く順調に書けているときが少なくとも彼にとってシンプルな、会話を書いているときだけ・・・。
文章を書く作業は、プライベートな孤独な作業であって、書き上がるまでは証人など必要としない。これがヘミングウェイの考えだ。
毎朝、明るくなったら、できる限り早くから書きはじめる。そして、まだ活力が残っていて、なおかつ次の展開が分かっているところで書くのを止め、なんとか我慢して翌日まで待ち、また取りかかる。毎日、前日に書き終えていたところをまず書き直す。それから先に進む。ゲラで最後の書き直しをする。
作品を仕上げるには自分を律する力が要る。規律が必要だ。仕事を邪魔するのは、電話と来客だ。私も書面と格闘しているときには、なるべく電話に出ないようにしています。思考の中断を恐れるからです。
作品の出来がいちばんいいのは、もちろん恋をしているときだ。これには、私もあやかりたいと常々考えています。
健康でないのは良くない。それはいろんな悩みを生み出すきっかけになるし、悩みは意識下の領域を攻撃して才能をつぶす。
読書は絶えることのない活動であり、喜びである。いつも本を読んでいる。あるものを、ありったけ。せっせと補充している。こっちの貯えがなくならないように。作家は、観察をやめたら、おしまいだ。
私は、道行く人の顔と表情をよく見るようにしています。いろんな顔と表情があり、これを文章にしたらどんな言葉になるのだろう・・・と考えるのです。これってとても難しいですよ。
作家も商売をしている、大工が家を建てるように、話をつくる者は、読者が時間をムダにしてしまったと思わないようにする。読者の余暇の時間を拝借するのだから・・・。
ジャーナリストは、メモをいっさいとらずに長時間会話をすること。あとで、その会話を思い出して、自分の受けた印象を書く。目の前でテープレコーダーがまわっていると、意識してしまう。
私は、大学時代のセツルメント活動のなかで、1時間あまりのグループでの会話を記憶のみによって文章で再現する訓練を課し、なんとかモノにすることができました。これは、いま弁護士の仕事にとても役に立っています。
物書きは、みんなそうだけど、小さいときから本を読むのが大好きで、手あたり次第、それこそ食べ物を食べるみたいに本を読んでいた。
私も、まったく同じです。小学校以来、図書室は一番心の休まる、ワクワク感のある場所でした。
(2015年11月刊。3200円+税)

2016年8月15日

重火器の科学

(霧山昴)
著者  かの よしのり   出版  サイエンス・アイ新書

 著者は、国民が銃の使い方を知っていることは、民主主義の基礎だと主張します。
 徴兵制がなく、戦争放棄を定める平和憲法の下で育った私には、とても違和感のある主張です。
 軍事を理解するには、重火器を理解しなければならない。現代の陸戦では、死傷者の4分の3は砲爆弾によって生じており、重火器をつかった戦闘に勝利できれば、もう小火器をつかう戦闘をする前に勝敗は、ほぼ決している。
 軍事は、政治の重要な部分であり、民主主義国家の主権者たる国民は、軍事を理解しなければ主権者失格である。
 これは正論なのかもしれませんが、実際には、軍事のことが新聞・テレビで語られることはほとんどありませんので、軍事だなんてまったく別世界の話でしかありません。
 大砲はカノン(加農)砲、榴弾砲、臼砲に三分類される。カノン砲は、砲身の長さが口径の30倍以上あり、弾の速度が速いもの。水平に近い角度で発射し、弾速も早いので、弾道は低伸する。
 榴弾砲は、砲身の長さが口径の10倍以上、20倍未満で、射程の長さよりも、大きな弾を飛ばすことを重視している。弾道は、いかにも放物線という形をとる。
 臼砲は砲身の長さが口径の10倍未満で、文字どおり臼(うす)のように太く短い砲身から弾を発射する。極端に上向きの角度で発射されるので、敵にとっては真上から弾が落ちてくる感じになる。射程は極端に短い。
 榴弾(りゅうだん)は、内部に爆薬を仕込んだ砲弾のこと。徹甲弾は、ほとんど鉄の塊で、爆薬は少ししか入っていない。貫通力を強めるため。
 劣化ウラン弾は、爆発するのではなく、比重が大きいので貫通力がある。
 砲身命数は、大口径ほど、また弾の速度が速いものほど短くなる。
 重火器の初歩として、少しだけ知ることができました。
(2014年12月刊。1200円+税)

2016年8月14日

世界一のおそうじマイスター

(霧山昴)
著者  若月 としこ   出版  岩崎書店

 私も羽田空港の利用者の一人ですが、「世界一美しい空港」に選ばれているとのことです。たしかに、羽田空港にはチリひとつ落ちていませんし、トイレも清潔感にあふれ、安心、快適です。そこで、清掃のプロとして働いている新津春子さんの半生と清掃の極意が紹介されています。
 清掃の仕事は誰でも出来そうだし、「下等な仕事」と見下されそうですが、プロ意識をもって日夜を問わず働いている大勢の人がいることを知ると、決して生半可な仕事ではないことが理解できます。
主人公の新津春子さんは17歳のときに日本へやってきた(帰国した)在留孤児の一人です。中国でいじめにあったり、日本でも大変な苦労をされたようですが、素敵な笑顔で毎日がんばっています。頭の下がる思いです。
 新津春子さんは、ビルクリーニング技能競技会で、日本一になりました。見事な技です。
 羽田空港の利用者は毎日20万人。従業員は3万人。そして清掃チームが500人。
 職業訓練校には建築物衛生管理系ビル衛生管理科という部門があるそうです。新津春子さんは、そこに入って学びました。
新津春子さんは、1個5キロのダンベルを左右にひとつずつ持って、顔の前で、上下に動かす運動を毎朝20分間も続けているそうです。これで両腕だけでなく胸筋、腹筋、背筋をきたえているのです。そして毎日1万7千歩は歩いています。
 新津春子さんがつかっている洗剤は80種類以上もある。用途別に使い分ける。
 さすが清掃のプロです。
 小学校高学年から一般向けの本です。大人が読んでも、もちろんいいのですが、子どもたちが読むと、清掃することの意味を再認識させられ、とても意義深くなると思いました。
(2016年4月刊。1400円+税)

2016年8月12日

キリンビール高知支店の奇跡

(霧山昴)
著者  田村 潤 、 出版  講談社α新書

 売れているビジネス書なので、どこか参考になるところがあるだろうと思って羽田空港の書店で買い求め、読んでみました。
私はビールを飲むのを5年前に止めましたし、飲んでいたときもキリンとアサヒ、サッポロの味の違いは分かりませんでした。エビスだけは味がなんだか違うなとは思いましたが・・・。
だから、キリンのラガービールがキレのいい味だったと言われても、そうなのかなと、思うだけです。そして、アサヒのスーパードライの味も違いが分かりません。ちなみに私はビールを飲むのを止めてからはノンアルコールのビールも一切飲みません。
海外で日本企業がたたかうにしても、日本の地方のあるエリアで勝ち方をきわめていることが非常に大事なこと。そのエリアをよく見て、エリアの特性や住んでいる人、国土とかチャンネル全部をひっくるめて、もっとも適切な正しい手を打って実績をあげることが出来た人間こそ、海外にいっても通用する。
 ふむふむ、なるほど、恐らくそういうことなのでしょうね・・・。
価格営業とは、安売りのこと。価格を下げたり、リベートを厚くしたりすると、一時的にはそれで売上伸びるかもしれないか、長続きはせず、自分の首を締めるだけ・・・。
 それまでのキリンのラガービールは、喉にガツンとくるコクと苦味が特徴だった。それをスーパードライと同じように若者や女性層に受けようと、飲みやすいタイプに変えた。これが大失敗だった。
上に立つリーダーは、自分が考えて確証の持てることしか部下に言ってはいけない。
また、総花的な営業もダメ。多くの施策を適当にこなしているだけで、競争に勝てるはずもない。大切なことは、約束した目標を達成すること。
結果が出なくても、ガマンして4ヵ月も営業の外まわりを続けていると、みな身体が慣れてきた。すると、いい反応がすこしずつ返ってくるようになった。
ほとんどの客は、ビールの味にはそれほど差がないと思っている。ビールは情報で飲まれている。
高知の人は、なんでも「いちばん」が大好き。離婚率が全国第1位から2位に下がっても悔しがるというのが高知の県民性。
 ええっ、本当でしょうか・・・。
 営業マンの行動スタイルを変えることができるかどうかは、簡単にいうと、視点や心の置き方を変えてみられるかどうか。人によっては身を捨てられるかどうかということなのだ。
1997年に37%に落ち込んでいたシェアは1998年に反転し、2001年に44%となり、高知県では、トップの座を奪回した。ところが、同じ2001年に、キリンビール全体では、40数年ぶりに2位に転落した。
高知支店のがんばりを紹介する本なのですが、あっと驚くような奇抜な策がとられたわけでは決してありません。
著者は高知から名古屋へ転勤し、名古屋でしたのは、会議廃止。
 会議を廃止したため、内勤の人数を減らし、現場の営業を増やすことが出来た。
 日本企業の勝ちパターンは、ひとりひとり、個人では勝てなくても、チームでならば勝てるということ。部分最適の考えを捨てて、全体最適を達成する。そこに成長がある。
 さすがです。売れる本には、なるほど学ぶべきところがたくさんあると感心しました。
(2016年4月刊。780円+税)

2016年8月11日

戦車の戦う技術

(霧山昴)
著者 木元 寛明 、 出版 サイエンス・アイ新書 

著者は防衛大学校を出て、自衛隊に入り、戦車一筋の人生を過ごしています。
戦車小隊長、戦車中隊長、そして戦車大隊長、戦車連隊長をつとめました。
乗った戦車は、アメリカ軍供与のM4A3E8戦車、国産の61式、74式、90式戦車です。最新の10式戦車は引退したあとなので、乗らなかったようです。
国産の61式戦車は100%マニュアル。74式戦車はオートマチック操縦。90式戦車は完全オートマチック操縦。コンピュータ制御による射撃統制システム。10式戦車となると、ほとんどロボットに近い戦車。
戦車の世界は人車一体。火力、機動力、防護力と乗員がコラボしなければ、戦車は単なる鋼鉄のかたまりに過ぎない。
戦車のもっとも強力な敵は戦車。現代の戦車は120ミリ級の長大な戦車砲を搭載し、最新式の徹甲弾を発射する。徹甲弾は、マッハ5(秒速1600メートル)という猛スピードで飛翔する。
90式戦車の暗視能力は3000メートルで敵戦車を発見し、射撃できる。これに対してロシア軍の主力戦車T-72とT-80の夜間暗視能力は1000メートルしかない。
90式戦車のサーマル・センサは、目標(戦車)が発する熱と周囲の温度差により映像を形成するパッシブ型暗視装置。
劣化ウラン弾は、安価で貫徹力が大きいので、徹甲弾の弾芯として使われている。装甲板に命中すると、高熱で貫通し、酸化ウランの金属微粒子(放射性物質)を周辺に飛散させる。
90式戦車は砲塔上部まで水没させることができる。
ロシア軍の戦車は、水深5~6メートルでも潜水渡渉できる。これは、ヨーロッパの大河を想定しているため。
戦車というものの初歩を学びました。
(2016年6月刊。1100円+税)

前の10件 57  58  59  60  61  62  63  64  65  66  67

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー