弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

社会

2017年2月15日

入社一年目の教科書

(霧山昴)
著者 岩瀬 大輔 、 出版  ダイヤモンド社

司法試験に合格しながら弁護士にならず実業界に入り、アメリカでMBAプログラムに入って学んだりしたあと、今では生命保険会社の副社長として活動している著者の本です。
後進に対して実践的な心がまえを説いた本ですが、私にも、なるほどと思うところが多々ありました。
まず、3の原則があると強調しています。
第一は、頼まれたことは、必ずやりきる。
第二は、50点でいいから、早く出す。
第三は、つまらない仕事はない。
他人(ひと)から信頼されたら、仕事がまわってくるようになるというのは本当です。
メールへの返信は、対応が早いだけで、2割増しの評価が得られる。返信は途中報告でもよい。
そうなんです。ですから企業相手の仕事をしていない私は、メールはお断わりしています。そのあいだに他の仕事をしたいため、原則として報告は郵便で送ります。
メールの内容は簡潔に整理されたものにする。
これは、なるほどと思います。何事もくどくど書いてはいけません。要点をズバリつたえるのが一番良いのです。
交渉したり、打合せしたら、最後に、書き出して確認しておく。
会議では、新人でも必ず発言する。私は弁護士1年生から、ともかく参加した会議では発言するようにつとめてきました。何も分からないので、初めは質問ばかりでしたが、それでいいのです。そうすると、私が参加していることをアピールすることにもなりますし、そのうち意見を言えるようになります。
仕事と人を選ぶ基準は、一緒に働きたい人かどうか。これも、なるほどです。一緒に働いて楽しくなければ続きません。
コミュニケーションは、電話と対面こそ重視すべき。メールか電話ではなく、電話を基本とする。直接会って話すことこそ、もっとも有効なコミュニケーションを生む。
本はじっくり、1冊をあわてずに読む。そこから一つ学べればいいという軽い気持ちで読んだらいい。私は、これに反対するわけではありませんが、私のように乱読・多読しても、得るものは多々あるものです。その出会いがうれしくて、年間500冊以上の本を30年以上よんでいます。
新聞紙は毎日よむ。そして、勉強し続けることが大切。そうです。私は毎日、5紙よんでいます。
休息をとるのも仕事のうち。睡眠は最低6時間は確保する。私も実行しています。
230頁ほどのコンパクトな本ですが、さすが出来る人の言うことは、いちいち合理的で、納得できます。ツイッターで何人もの人をフォローしているとのこと。私はFBのみです。あまりネットに時間を奪われたくない気持ちが強いのです。
(2015年2月刊。1429円+税)

2017年2月 8日

限界マンション


(霧山昴)
著者 米山 秀隆 、 出版  日本経済新聞出版社

うわっ、マンションがスラム化するなんて、信じられません。マンションって、ずっとずっと住んでいるっていうのは難しいものなんですね。この本を読んで、マンションをめぐる諸問題の深刻さを考えさせられました。
全国にマンションが613万戸。このうち1981年6月前につくられたマンションが106万戸。さらに1971年4月前でも18万戸ある。
マンションの空室率は古いほど増える。1974年前は10%、1969年前だと15%になっている。初期マンションの老朽化がすすみ、マンションの終末期問題に、いよいよ日本社会は直面しつつある。
マンションは、冷静に考えたら資産としての価値は高くない。ところが、マンション供給業者にとって、分譲マンションは、開発に要した資金を早期に回収できるメリットがある。
日本では、戦前は借家が中心で、戦後は持ち家中心に変わった。戦前の日本人は持ち家にこだわらなかった。戦後は、政府が公営住宅の供給を怠ったため、人々は自力で住宅を確保せざるをえなかった。そして、国民に持ち家の取得を促すことで、意識の保守化を狙った。
マンションは、かつては全国で年に20万戸のペースで増えていたが、今は半減して8万戸から10万戸になっている。
マンションは、時間の経過とともに、建物の老朽化に加えて、区分所有者の高齢化も進んでいく。マンションが直面する2つの老いである。
マンションに住んでいる人が60歳以上の割合は、1970年より前のマンションだと50%、1980年までのマンションでは44%。
マンションは、時間の経過とともに空室化、賃貸化がすすんでいく。
マンションでは、建物の老朽化とともに、区分所有者の高齢化や空室化が進行していくため、管理機能も落ちていく。
賃貸戸数の割合は、古い物件ほど高く、1970年より前のマンションでは20~50%の賃貸率が19%、50%以上の賃貸率が6%に達する。
管理組合の機能が著しく低下したら、マンションがスラム化する危険がある。
古いマンションでは、管理組合がないところもある。
タワー(超高層)マンションは、大規模修繕や将来の終末期問題でより大きな困難に直面する。
日本のマンション寿命が短いのは、初期マンションではコンクリートにも問題があった。水分の多いコンクリート(いわゆるシャブコン)や、海砂をつかっていて塩分から鉄筋がさびていったりする。また、内部配管の耐久性にも問題がある。
定期借地権つきマンション(定借マンション)は、借地期間が満了したあとは、必ず取りこわされることになっているため、途中の改修が困難となりやすい。
既に老朽化しすぎて、空室ばかりのマンションに老夫婦と、安く賃貸するので不法滞留外国人と寮として使われているという事実もあります。
マンション問題の深刻さに目を大きく開かされた思いがしました。
(2015年12月刊。1600円+税)

2017年2月 3日

量子コンピュータが人工知能を加速する

(霧山昴)
著者  西森 秀稔・大関 真之 、 出版  日経BP社

 さっぱり分からないなりに、なんか分かるところがあるかもしれない。そう思って、最後まで読みとおしました。
あるようでない。ないようである。そんな不思議な世界が、量子の世界である。
量子コンピュータは、これまでのコンピュータに比べて、1億倍の高速。
量子コンピュータは、1980年代に考案され、開発がすすめられてきた。
量子コンピュータは、量子力学の特徴を生かし、「0」と「1」の両方を重ねあわせた状態をとる「量子ビット」を使って計算する装置。この「0」と「1」を重ねあわせた状態とは、「0であり、かつ1である」状態ということ。これは、直観に反するけれど、フツーの常識が通用しないのが量子力学の世界なのだ。
ただし、量子コンピュータは、ある特定の目的でしか使えない。
量子コンピュータは、これまでのコンピュータとは構造がまったく異なる。CPUなどのプロセッサ(処理装置)、メモリー、ハードディスクなどの外部記憶装置は存在しない。
量子コンピュータでは、超電導回路を絶対零度(マイナス273.15度)に限りなく近くなるまで冷やす必要がある。超電導回路による実現している量子ビットの数は1000以上。小さな回路を絶対零度近くまで冷やすと、右回りの電流と左回りの電流が同時に存在する状態になる。これが2つの状態の重ねあわせになっているということ。重ねあわせ状態は、とても不安定で熱や電磁波などの影響を受けて、すぐに壊れてしまう。
世界中でITが消費する電力は、世界発電量の10%に相当する。これは、日本とドイツの総発電量の合計に匹敵し、全世界の航空機が消費するエネルギーの総量の1.5倍にあたる。
アメリカの大手ローファームでは、人工知能(AI)を導入して膨大な過去の判例から、現在の案件に何を適用するのが最適かを判断している。
量子コンピュータは、カナダのベンチャーが商用化したが、そのアイデアや要素技術には、日本で発明されたものが多く用いられている。
最後まで読んでも、残念ながら納得と理解は得られませんでした。それでも、無駄だったとは思いません。なんとなく別世界が分かったのを良しとしました。
(2016年12月刊。1500円+税)

2017年2月 2日

利益を追わなくなると、なぜ会社はもうかるのか

(霧山昴)
著者 坂本 光司 、 出版  ビジネス社

著者は私と同世代ですが、いつも読んで元気の湧いてくる本を書いてくれます。うん、そうだよね、会社って、自分のこと、自分の利益しかも目先の利益を考えるだけではダメなんだよね、つくづくそう思います。
たとえば、三井鉱山という強大な会社がありました。大牟田市を植民地のように支配し、君臨していました。三池炭鉱を経営していましたが、地元の大牟田市には鉱害など負の遺産は残しただけで、美術館ひとつつくりませんでした。研究所や大学もつくっていません。利益はすべて東京へ吸い上げ、地元への還元というのはまったくやりませんでした。地元に残したのは、人々が集団で敵対し、いがみあうような仕組みだけです。まさしく分断して統治せよ、という支配の論理を貫徹したのです。そして、今では三井鉱山という会社はありません。
会社の成長エンジンは人以外にありえない。人財が新しい価値の唯一の創造的な担い手である。
管理型の経営ではダメ。組織にギスギス感が生まれてしまう。そうではなく、ぬくもりがあり、仲間意識が醸成されているアットホーム的な社風こそが優れたモノづくりのできる社会をつくりあげる。
働き甲斐こそが会社を強くする源泉である。強くなった会社は景気の変化に影響されることなく、経営が安定して長く継続する。
お客様を大切にするあまり、社員とその家族が犠牲になるような経営は正しくない。
「お客様第一主義」は大切。しかし「お客様偏重」では、会社がいびつになってしまう。
現在、日本の会社の7割は赤字で、日本全体の会社の利益率は、平均したら1.5~2%。
真に強い会社は、いきすぎた競争は求めないし、社員のあいだに大きな格差をつけることもしない。チームのため、自分の所属する組織のための努力、協力を惜しまない。いきすぎた成果主義、能力主義で人事を決めていて業績を安定して伸ばすことはできない。
200頁の本ですし、さらっと読めますが、とても大切なことが書かれた本です。年俸10億円というカルロス・ゴーン社長の従業員をふみつけるばかりのコスト・カッター方式とは真逆のやり方だと思いました。
(2016年11月刊。1200円+税)

2017年1月29日

読書と日本人

(霧山昴)
著者 津野 海太郎 、 出版  岩波新書

著者は、20世紀を読書の黄金時代と名付けています。なぜか・・・。
本の大量生産と読み書き能力の飛躍的向上によって、知識人と大衆、男と女、金や権力をもつ者ともたない者の別なく、社会のあらゆる階層に読書する習慣が広がり、だれであれ本を読むというのは基本的にいいことなのだ、この新しい常識が定着したのは20世紀なのである。
なーるほど、そういうものなのでしょうか・・・。
14.15世紀は、日本社会において文字が画期的に普及した。鎌倉時代の後期から室町時代にかけて、村の大名、主だった百姓は、だいたい文字が書けた。
16世紀、織田信長のころ、フランシスコ・ザビエルたちはキリスト教を普及するにあたって「きりしたん版」として知られる活版本を刊行した。
ほかのアジアの国々と違って、日本人の多くは読み書きができる。だから文字による布教や宣伝が効果的だと判断したのだろう。
ルイス・フロイスは、こう書いている。「ヨーロッパでは女性が文字を書くことはあまり普及していない。日本の高貴の女性は、文字を知らなければ価値が下がると考えている」、「日本では、すべての子どもが坊主の寺院で勉学する」
江戸時代には「正坐」という言葉は存在しなかった。明治になって礼法教科書に書かれ、大正から昭和初期に定着した言葉だ。それまでは、本を読むときには、ピタリと正坐していたのではなく、自由に膝をくむし、立て膝で読むことが多かった。
うひゃあ、そうだったんですか・・・。
明治に海外から来た外国人は、日本人の車夫や馬丁が本をむさぼり読んでいるのに驚嘆した。
明治のころの読書は、基本的に声に出して読む音読ばかりだと私は思っていまいした。それまでは、今と同じで黙読していたと考えていたのです。ところが素読に親しんでいた当時の人たちは音読を好んでいたようです。
しかし、著者は、実は、黙読も昔の日本にあったと主張しています。音読と併存していたというのです。
欧米中心の世界で本格的に始まった「読書の黄金時代」としての20世紀に、やや遅れ気味に日本も加わることになった。
大正から昭和にかけての雑誌「キング」は初版50万部でスタートし、90万部から140万部へ増えた。
この新書を読むと、日本人の読書好きはすごいと思います。ところが、今は電車のなかでは大半がスマホを眺めたり、いじったりしています。テレビを見ていたり、ゲームをしている人も少なくありません。以前のように本を読んでいる人は滅多に見かけなくなりました。若者にかぎらず、活字離れがすすんでいるようです。そして、電子書籍。いったい紙の本はこれからどうなるのでしょうか。私は絶対的な紙の本の愛好者です。なくなってほしくはありません。
昨年(2016年)は、単行本を550冊よみました。今年も500冊をこえるつもりです。
(2016年10月刊。860円+税)

2017年1月28日

籠の鸚鵡(かごのおうむ)

(霧山昴)
著者 辻原 登 、 出版  新潮社

30年ほど前だったと思いますが、和歌山県の小さな地方自治体で収入役が商品先物取引(相場)に手を出して何億円も公金を横領(使い込み)したという事件がありました。その自治体は破産寸前になったと思います。相場の恐ろしさ、自治体の公金が個人によって簡単に引き出され、横領・使い込みによって自治体財政が破綻するという前代未聞の事件でした。
この本は、先物取引(相場)ではなく、暴力団が背後にいて色仕掛けで和歌山県の小さな町の出納長が陥落し、あられもない姿を写真に撮られて、それを恐喝の材料とされ、公金を使い込んでいくというストーリーです。
こういうことは、いったん「悪」の恐喝に屈してしまうと歯止めが利かなくなるものですよね。そこらあたりの心理描写が、見事に小説として再現されています。
山口組の組長がヒットマンによって殺害されるという事件が起きた当時を舞台とした小説ですが、今は暴力団はもっと巧妙になっているような気がします。そして、当時よりもさらに強大かつ潤沢な資金をもっているようです。
その最大の資金源が相変わらず大型公共土木工事の3%と言われる裏金だと思われます。暴力追放の官製市民の集会もいいですけれど、公共工事の談合と、その背後にうごめいている暴力団の姿をマスコミは勇気をもって暴き出し、報道して明るみに出してほしいと思います。
ストーリーのほうは、ネタバレはよろしくないと思いますので紹介しません。
特殊被害詐欺の手口もさらにブラッシュアップして巧妙になっているようです。その一端が、この本にも反映されています。
「クライム・ノヴェル」(犯罪小説)ですから、読んだら重苦しい気分になってしまうのも当然です・・・。
(2016年9月刊。1600円+税)

2017年1月17日

役者人生、泣き笑い

(霧山昴)
著者 西田 敏行 、 出版  河出書房新社

私と同じ団塊世代です。私にとっては、正月映画の『釣りバカ日誌』のハマちゃんですね。お正月には、家族みんなで寅さん映画をみて、さらに時間に余裕があれば『釣りバカ』をみていました。
森繁久弥のアドリブに対して即興で対応できたというのですが、宴会の席でも即興で歌をつくってうたったというのですから、たいしたものです。
役者としてヒットする前は、六畳一間のアパート生活。風呂も電話もない。二人分の銭湯代がなくて、妻を銭湯に行かせて、本人は水道で身体をふいてすませていた。小さな冷蔵庫のなかはいつも空っぽ状態。
「今に冷蔵庫の中をおいしいもので一杯にしてあげるからね」。夢のまた夢のようなことを妻に言っていた。5キロ入りの米袋がカラになると、芝居仲間の家に「もらいメシ」に二人して出かけていた。
私は司法修習生のときに結婚したのですが、貧乏な新婚旅行だったので、同じクラスの修習生の新婚家庭(長崎)に泊めてもらうなどしていましたが、途中で所持金がなくなり、奈良の修習生宅にたどり着いて、そこで借金して、なんとか東京まで帰り着くことが出来ました。ですから、友人さえいれば、お金がなくても生きていけるという実感があります。
中学生までは福島の学校で人気者だったのが、東京に出て高校生活を始めると、福島なまりが恥ずかしくて、コンプレックスの塊になってしまった。だんだん暗い、表情のない少年になっていった。そこでとった解決策は、東京の人間になろうという努力はやめて、カッペとして開き直るというもの。
実はスマートに見えていた同級生だって、実は本当はカッペばっかりだったということが分かってきた。それからは、著者は、人間として地を出して演技をして、それが受けるわけです。そうすると、役者として演じている自分が、どちらが本当の自分なのか、自分でもよく分からなくなるのだそうです。なんとなく分かる話です。
『釣りバカ日誌』は三國連太郎とともに22作も「ハマちゃん」を演じたのですから、本当にすごいことですね。
著者は歌はうたえるけれど、音譜は読めない。聞こえるままを真似で、それを丸暗記してうたう。
こりゃまた、すごいですね。私も音譜は全然よめませんが、ともかく目で活字を確認しないと頭に入ってきません。耳だけで丸暗記なんて無理です。ですから、語学も苦手なのです。
著者は小学生のころから、たくさんの映画をみていたそうです。私も親に連れられて映画館にはよく行きました。
著者もこの本に書いていますが、鞍馬天狗の映画では、杉作少年が悪漢に捕まりピンチになっているところを、白馬にまたがった鞍馬天狗が街道を疾走してくるのです。映画館内は騒然として、大人たちもみな立ち上がり、拍手、大拍手そして大歓声です。
拍手のなかで、鞍馬天狗は悪人どもをやっつけるのでした。胸がスカッとして、みんなで胸をなでおろして帰路に着くのです。その役者ぶりをみて著者は役者にあこがれ、一人で東京まで行ったことまであるというのですから、驚きです。
今日の著者をつくったのは、もちろん本人のその後の努力もあるでしょうが、少年時代に体験したことが生きているのだとつくづく思ったことでした。
西田敏行の初の自伝だということですが、私は仕事の行き帰りに、車を停めて「道の駅」でコーヒーを飲みながら一気に読了しました。至福のときでした。
ただ、心筋梗塞で倒れたりしたこともあるようですから、もう暴飲暴食はほどほどにして、今後も末長く役者人生を歩んでほしいと思いました。
(2016年11月刊。1600円+税)

2017年1月 8日

アマゾンと物流大戦争

(霧山昴)
著者 角井 亮一 、 出版  NHK出版新書

 宅配便の便利さは捨てがたいものがあります。旅行のときには、行く先々で宅配便を利用して、読み終わった本を自宅へ送ります。そのとき、その地方の土産品も一緒に送るのです。すると、カバンの中は軽くなり、新しい本を求めることも出来るのです。
 日本の宅配サービスのレベルは非常に高い。全国どこでも、ほぼ翌日配送にすることができる。しかも、配達時間帯の指定ができる。アメリカでは時間指定はできないし、土日祝日もダメ。さらに、日本では、日時指定の再配達も可能。ただし、宅配便の現場では、再配達に泣かされているようです。
宅配便はヤマト運輸が突出した力をもっている。かつて40社もあった宅配便の会社が、現在では21社。そしてヤマト運輸(45%)、佐川急便(33%)、日本郵便(14%)で、上位3社で92%を占める。
トラック運転手の給料が低下したことから、トラック運転手の確保が難しくなっている。
アマゾンは、全品送料無料をやめた。アマゾンにとって、配達費の増加は悩みのタネ。
アメリカでは、アメリカの通常配送は注文してから3~5営業日以内というのが標準。
 アマゾンは、単なるネット通販企業から、巨大なグローバル企業に代わった。アマゾンは、あらゆる手段を用いて物流を効率化し、それを低コストでの運用につなげている。アマゾンは、新車や中古車といった自動車まで売り始めている。
ネット通販では、お客が選んだ商品を販売している側が倉庫から取り出し、丁寧に梱包し、お客の自宅へ宅配する手続きをしなければいけない。誰が1220万もの膨大な品目の中から注文された商品をピッキングし、大きさも材質もさまざまな商品を梱包し、配送するのか。もちろん、それをするのはアマゾンであり、ネット通販会社である。
ロジスティクスでビジネスを制している企業として、著者は、ヨドバシカメラ、アスクル、カクヤスなどをあげています。
 私の事務所でも、アスクルは頻繁に利用しています。やはり便利さにはかないませんから・・・。

(2016年11月刊。740円+税)

2017年1月 6日

世界が認めた「普通でない国」日本


(霧山昴)
著者 マーティン・ファクラー 、 出版  祥伝社新書

 日本をよく知るアメリカ人が、日本の憲法は素晴らしい、その先駆的な意義を日本人はもっと自覚して大切にすべきだと強調している本です。
 著者は、ニューヨーク・タイムズの東京支局長を長くつとめていたアメリカ人です。
 アメリカの小学生のとき、テレビで日本のアニメ「マグマ大使」をみていて、なぜ怪獣をやっつけるために軍隊が出てこないのを不思議に思っていたといいます。もちろん、日本に軍隊がないから、軍隊なんて出てこれないわけです・・・。
 パクス・アメリカーナで一番優等生だったのが日本。パクス・アメリカーナの可能性をフルに活用して、日本は豊かな富と社会の繁栄を勝ちとった。
アメリカ軍が世界各地に基地をもうけて軍隊を駐留させる体制は、戦後の東西冷戦下で構築されたものだから、冷戦終結後すでに20年以上たった今日、いつ終わってもおかしくない。
トランプ新大統領の言葉は一種のモーニング・コールだ。日本は、トランプ現象について、日本が目覚めるための刑法だと受けとめたらいい。
トランプ現象とは、アメリカが世界の警察官であることに疲れたということを意味している。
 日本は戦後ずっと平和に徹してきたことによって、ある意味での貯金・資源の蓄積がある。それは捨てないほうがいい。日本は普通の国になるべきではない。世界から日本のこれまでの生き方を評価されているのだから、慎重に動いた方がいい。
 日本は、世界から高く評価されている。世界で日本ほどイメージのいい国は少ない。これほど高く評価されているのは、日本とスイス、そしてスウェーデン、カナダくらい。このことに、多くの日本人は気がついていない。
 今の天皇は、戦後日本のアイデンティティーをそのものだ。天皇の発言によって歴史修正主義の動きにも歯止めがかかっている。その意味では、道徳的なリーダーでありながら、政治的な存在でもある。
 ところが、日本のメディアは天皇の発言をあまり大きく伝えていない。安倍政権の権力が大きいので今の日本では自由に議論できない状況になっている。メディアは安倍政権の意向を忖度(そんたく)して、安倍政権が難色を示すような報道は自粛している。そんな情けない状況にあるメディアは権力からもっと自立することが求められている。
 日本の政治が機能していない大きな理由の一つが、日本のメディアが本来の役割をはたしていなことにある。報道の自由度ランキングで日本は世界11位から、なんと72位まで後退している。実におぞましい状況です。悲しくなります。
 アフリカに今、日本の自衛隊員350人が行っています。何のためでしょうか。日本の企業がアフリカに進出するのを助けるためなのでしょうか。アフリカの平和構築に役立ちたいと本気で日本が思うのなら、アフガニスタンにおける中村哲医師のような、地道な民生支援こそするべきではないでしょうか・・・。
 この本は、日本人は、もっと真剣に国のあり方について議論すべきだと提起しています。私はまったく同感です。とても読みやすくて、しかも内容の濃い本です。サッと読めますので、強く一読をおすすめします。

(2016年12月刊。800円+税)

2017年1月 4日

日本会議と神社本庁


(霧山昴)
著者 「週刊金曜日」・成澤 宗男 、 出版  金曜日

先日(2016年12月)、柳川市議会で憲法改正を求める請願が可決されたという報道がありました。恐らく、これも日本会議が全国ですすめているものの一環なのでしょう。
アメリカ軍のオスプレイが墜落しても文句ひとつ言えない哀れな安倍政権のメンバーが、日本国憲法はアメリカの押しつけだから良くないなんて言っているのですから、その頭の中はどうなってるんでしょうね。
日本会議の三代目の会長は、三好達という元最高裁長官です。この三好達という人物を私はよく知りませんが、憲法改正を求める右翼団体のトップに名前を出すとは、本当に情けない話です。いったい、裁判官在任中には日本国憲法をどう考えていたのでしょうか。こんな憲法なんて、守るべき価値はないとでも考えていたのでしょうか。もし、そうだとしたら、最高裁長官になったのは、明らかに間違いです。在任中はそうでもなかったけれど、退任してから考え方を変えたというのなら、明らかに老害というべきでしょう。
日本会議、福岡の役員構成が紹介されています。
九州電力の会長(松尾新吾)やJR九州の相談役(石原進)の名前も見えます。石原進っってNHKの経営委員長ですよね。NHKが右寄り偏向していると批判される根拠でもありますね。
福岡は、他県と違って宗教関係者が少なく、地元経済界関係者が中心になっている。なぜ福岡の地元経済界は平和憲法攻撃に手を貸しているのでしょうか。理解できません。韓国や中国との経済意交流を強めようと言っているはずなのに、こんなことでは二枚舌をつかっているとしか思えません。外国から信用されないような言動はやめてほしいですよね。
目が離せない、日本の平和と安全をこわす危ない団体の一つです。
(2016年8月刊。1000円+税)

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