弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
生物
2019年12月 2日
愛犬家の動物行動学者が教えてくれた秘密の話
(霧山昴)
著者 マーク・ベコフ 、 出版 エックス・ナレッジ
私は犬派です。猫はわが家の周辺を絶えず巡回していて、ときに庭に無断侵入するので家人が大声を出して追い払おうとします。が、何してるの・・・とばかり、悠然と立ち去っていきます。そのふてぶてしさに家人はさらに腹を立てます。ところで、私の住む団地住人の高齢化がすすみ、犬を散歩させている人が以前に比べて目立って減りました。
車を走らせているとき、犬を散歩している人を見ると、どんな犬かと私は気になります。ひところはシベリアン・ハスキーが大人気でしたが、今はとんと見かけません。ラブラドール・レトリバーも最近はあまり見かけなくなりました。今は、なんといっても柴犬です。たまに、チワワとコーギー犬がいます。わが家でも、子どもが幼いときには雑種の柴犬を飼っていました。
犬が喜びや悲しみを感じるのは分かっているが、羞恥心や罪悪感といった複雑な感情があるかどうかはよく分からない。犬という素晴らしい動物にも、まだまだ分からないことがたくさんある。
犬はオオカミから進化して家畜化された種になった。すべての犬が生まれつき犬だ。家畜化されたオオカミだけが犬なのだ。
世界の犬の75%は自分で暮らしている。
犬は人間と同じく無条件に愛したりしない。犬も人間も選り好みする。
深刻な虐待を受けた犬は、人間やほかの犬への無条件の愛を与える信頼感を二度と取り戻せないことがある。
犬は人間と比べて、近くをはっきりと見ることができない。犬は静止しているものより、動いている刺激に敏感に反応する。
犬は、ときどき大はしゃぎで遊ぶ。犬は、文字どおり疲れきるまで遊びに没頭する。
犬は単独でも遊ぶ。遊ぶことは、それ自体がごほうびなので、必ずしも遊び相手のいる「社会的遊び」である必要はない。
多くの犬の得意なことは、友だちと遊ぶこと。
仔犬が社交性を身につける時期には、ほかの犬や人間と遊ぶことが大切だ。
遊びは滅多に本物の攻撃に発展しない。
犬社会において、順位はたしかに存在する。
ドッグパークなどで40年以上にわたって犬を観察してきた著者による犬解説の本です。
(2019年11月刊。1800円+税)
2019年11月11日
精霊の踊る森
(霧山昴)
著者 嶋田 忠 、 出版 講談社
私は『ダーウィンが来た』を欠かさずみています。ふだんテレビはまったくみませんが、この番組だけは録画したものを週1回、寝る前にみています。世界各地の生き物たちの驚くべき映像に接して、大自然の営みの豊かさを実感させられます。
この写真集も『ダーウィンが来た』で紹介された鳥たちを見事に切り取っていて感動そのものです。
極楽鳥と庭師鳥について、「進化しすぎた鳥たち」と評されていますが、なるほどすごい色と形、そして求愛ダンスと愛の巣づくりのすばらしさに、ただただ圧倒されて声も出ません。
タンビカンザシフウチョウの求愛ダンスで示す色と形は神秘そのものです。誰が一体こんなデザインを考えついたのでしょうか、不思議でなりません。
カンムリニクシドリは、高さ2メートルにもなる求愛用のアズマヤのタワーを森の中に築き上げます。
オウゴンチョウモドキでは、若鳥たちは成鳥オスに見習って踊りを練習します。成鳥になるのに5年もかかり、その間、一生けん命に成長オスの踊りを見て学ぶのです。
真紅の円形の頭に白い目に黒い瞳がじっとこちらを見すえている写真が表紙を飾ります。ド迫力です。
写真をとった人は、私と同じ団塊世代(1949年生)。ニューギニア島に通い続けているのです。パプアニューギニアでは、今も昔ながらの原始的な生活をしている人々がいるようです。祭りのときには極彩色に顔と身体を飾りたてます。まるで鳥たちと競いあうようです。
極楽鳥の求愛ダンスは日の出前後にあるので、日の出前の暗いうちに機材をかついて森の中に入り、撮影用の特製テント(ブラインド)に入って、じっと待つのです。なんと5日目に決定的瞬間の撮影に成功したといいます。テントのなかに隠れてじっと音も立てずに待ち続けるのです。大変な根気のいる仕事です。おかげで居ながらにして、こんな素晴らしい写真を拝むことができます。ありがたいことです。
手にとって一見する価値が十分にある写真集です。3600円が高いと思う人は、ぜひ図書館に注文して手にしてみて下さい。世界観が大きく変わること間違いありません。
世界は生命の神秘にみちみちていることを実感させられます。ぜひぜひ後世にそのまま残したいものです。
(2019年7月刊。3600円+税)
2019年11月10日
フクロウの家
(霧山昴)
著者 トニー・エンジェル 、 出版 白水社
フクロウのことが、なんでもよく分かる本です。
フクロウは、南極以外のすべての大陸に分布している。サボテンフクロウは砂漠に棲み、アナホリフクロウは地下に穴を掘って巣をつくり、シマフクロウはシベリアの極寒の地にも耐えられる。フクロウは、その生息する環境にあわせて生態が多様化し、今日では世界に217種ものフクロウが存在している。
『ハリー・ポッター』にもフクロウが登場している。シロフクロウのヘドウィグは、ハリー・ポッターが信頼を寄せる友人だ。配達をまかされているフクロウもいる。
メンフクロウは、人間と共生している。1年目までに75%が死亡するものの、34年も生きた個体がいる。
フクロウは場所に関する記憶力に優れ、ほとんど真っ暗な中でも木々の枝をすり抜けるように巧みに飛翔する。探究的にで、情熱的で、攻撃的で、欺瞞的、そしてときにきわめて勇敢な生き物だ。喜びや恐怖を感じ、ひとたび雌雄の関係を築いたら離れることがない。
カップルは歌を鳴きかわし、互いの羽づくろいをする。そして、そのあと交尾する。交尾瞬間は短いが、何回もする。また、雄は雌に贈り物をする。
卵を抱卵中の雌は、あまりにお腹がすいてくると、洞の中から勢いよく飛び出してきて雄に体当たりして、止まり木から突き飛ばし、餌を取りに行くよう求める。
フクロウは、タカやワシ、ハヤブサとは類縁関係にない。しかし、身体面や行動面でよく似た特徴を発達させてきた。
フクロウの聴覚は鋭い。しかし、やはり目が何より重要である。頭を素早く270度も回転できるため、音や動きに即座に反応して獲物を見つけることができる。
フクロウは獲物をかみ砕くための歯はなく、代わりにくちばしでつぶす。少し柔らかくなったところで、一気に呑み込み、あとは消化過程で栄養物と不要な部分とを選り分ける。
フクロウはネズミが好物なので、果樹園などのネズミ退治にはもってこいの存在である。
270頁ほどの、フクロウ全書とも言える楽しい本でした。
(2019年2月刊。3000円+税)
2019年10月28日
魚たちの愛すべき知的生活
(霧山昴)
著者 ジョナサン・バルコム 、 出版 白揚社
魚をめぐる驚きの本です。なんと魚は、ゆたかな生活を営んでいて、知覚し、意識し、苦痛を感じる生きものだというのです。ええっ、そ、そんな、嘘ではと、つい叫びたくなりますが、どうやら本当のようなんです。だったら、刺身とか、踊り食いなんて、食べられませんよね・・・。
魚は、ただ生きているのではない。魚には魚の生活がある。魚は、ものではなく、生きて暮らしている。一匹ずつ性格と個性と社会関係をもつ、一個の存在なのである。計画し、学習し、感じ、創造し、なだめ、企む。恐怖やたのしさや痛みを感じ、遊び心もある。よろこびだって魚は感じ、知っている。
魚の4種に1種(8000種)は、なんらかのかたちで子の世話に励む。卵を守ったり、ひ弱な稚魚をしばらく世話したり・・・。
サメは胎盤のあるものもいて、胎仔は母体を出るまで、へその緒を通して栄養物質を与えられる。
魚には、音の調子、とくに旋律を聞き分ける能力がある。
コイもキンギョも、音をつかって意思伝達している。
人間と同じように、魚にも舌と味覚受容体がありこの受容体から、神経を介して脳に味覚の信号が送られる。魚の味蕾のほとんどは、口と喉にある。
魚は、よく楽しそうに互いに触れあう。
キンギョは色を識別できる。
魚は、ずっと前のことを覚えている。
魚は柔軟で、好奇心も旺盛だ。
魚には社会性のある生きものだ。一緒に泳ぎ、姿やにおいや声などの感覚情報で、他の個体を識別し、つかう相手を選び、協力する。
魚の群れには、ショールとスクールの二つがある。
魚の世界で子育てを主として担っているのは、メスではなく、オスのほうだ。
魚たちについての驚きの話が一杯のショッキングな本です。面白いですよ、ぜひご一読をおすすめします。
魚釣りが好きな人、寿司屋によく行く人も、ぜひ読んでほしいものです。
(2018年11月刊。2500円+税)
2019年10月21日
進化の法則は北極のサメが知っていた
(霧山昴)
著者 渡辺 佑基 、 出版 河出新書
びっくりするほど面白い本です。登場するのは、サメ、ペンギン、そしてアザラシなどです。
途中で理解困難な計算式が出てきたりもしますが、そんなものは読み飛ばします。生命の神秘が一番心惹かれるところですが、実はそれを探究するために極地へ出かけたりする冒険旅行記がスリル満点で、読ませるのです。
著者にとっての最大の謎は、生命活動がシンプルな物理で説明できるのに、なぜ地球上にこれほど多様な生物が満ちあふれているのか、この二つがなぜ両立できるのか、ということです。さすがに、謎の提起が鋭いですよね・・・。
著者は、ヒマな時間をもてあまさないよう、けん玉1級の技能をもっているとのこと。うらやましい限りです。孫が来たとき、私も昔とった杵づかでエエカッコしようと思って実演してみせたのですが、トホホでした。世の中は、そうはうまくいかないものです・・・。
ニシオンデンザメは、超大型のサメで、体長6メートル、体重1トン。低温に適応しており、水温がゼロ前後という海の中で暮らしている。ニシオンデンザメは、体温が低いだけでなく、超低温環境下で獲物をとらえて、巨大な体を維持している。
ニシオンデンザメの遊泳スピードは、平均して時速800メートル。人間の歩くスピードの6分の1しかない。2日に1回だけ獲物を追いかけるだけ。
ニシオンデンザメのメスは、体長4メートルで性成熟するが、その大きさに育つまで150年もかかる。そして、寿命は、400歳。うひゃあ、声も出ません・・・。
人間にとっての1日は、ニシオンデンザメの1ヶ月半に相当する重みをもっている。ニシオンデンザメの視点から人間をみると、まるで映像を47倍速で再生したみたいに、ちょこまかと動き、あっという間に子どもを産んで、あっという間に死んでいく哀れな存在にうつるだろう。
マグロやホホジロザメなどの中温性魚類は、同じ大きさの変温性魚類に比べて2,4倍も遊泳スピードが速い。体温が10度上がるごとに、代謝量は2~3倍になる。
生物体は、一つの巨大な化学工場である。
温度が上がるほど、分子一つ一つの動きが活発になり、異なる分子同士の出会う確率が増えるため、化学反応は促進される。
体重25キロの小学生と、体重65キロの大人を比較すると、時間の濃度は子どものほうが11.3倍も濃い。大人の薄い時間に換算すると、子どもは1日が31時間、つまり7時間も余計にあるようなものなのだ。
分からないように、物理学をふまえた生物の話の面白さにぐいぐいと引きずりこまれてしまいました。よかったら、どうぞあなたも読んでみてください。
(2019年2月刊。920円+税)
2019年10月12日
くうとしの
(霧山昴)
著者 晴 、 出版 辰巳出版
不思議な写真集です。ワンちゃんとネコちゃんが顔を寄せあって気持ち良さそうに眠っています。ほっこり心の安らぎを感じさせてくれる写真集です。
このワンちゃんは、年寄りのメス犬なのですが、認知症になってしまったのでした。
皮膚病にかかった犬をまちで見つけて自宅へ連れて帰ったのが始まりです。手厚い看護のおかげで、犬は元気になりました。そしてネコちゃんもまた、町でみかけたオスの子猫。
ワンちゃんは庭で暮らし、ネコちゃんは家の中の生活。ところが、ネコちゃんがワンちゃんに一目ぼれしてしまったのです。ですから、そのオスネコちゃんがメスワンちゃんに猛烈にアタックしていくのです。その様子が実によく写真にうつっています。そして、二匹はすっかり仲良しになるのでした。
ところが、ワンちゃんは認知症を発症し、行動に異状が出はじめます。そこをネコちゃんが見事にフォローしていくのです。
ワンちゃんがダンボール囲いのなかをぐるぐるまわると、ネコちゃんも一緒について歩きます。ネコちゃんはワンちゃんを丁寧に毛づくろいしてやり、おやすみのチュッも・・・。
ネコちゃんがそばにいると、ワンちゃんは、安心した表情になってぐっすり長く眠れるのでした。
二匹が一緒にいると、いつだって穏やかでゆったりとした時間が流れていきます。
いやあ、よく写真が撮れています。心の震える思いです。
犬派の私ですが、犬と猫がこんなにも寄り添っている姿は初めてみました。犬派にも猫派にも必見の写真集です。ぜひ、あなたも手にとって眺めて、心を癒してください。
ひととき幸せな気分に浸ることができることを約束します。
(2019年8月刊。1200円+税)
2019年9月29日
世界で一番美しいかくれんぼ
(霧山昴)
著者 アンナ・レヴィン 、 出版 小学館
生きものたち、森に海に雪原に生活する生きものたちの擬態を紹介した写真集です。
まずは森のなか。ナマケモノは背景の森に溶け込むために、体の表面に緑色の藻類をすまわせている。
テルシオペロという毒ヘビは落ち葉に擬態し、じっと身をひそめて獲物を待ち伏せる。言われなければ、まったく気がつきません。
体の模様は落ち葉の葉脈や日差しによる陰影まで写しとったかのようなソメワケササクレヤモリの身体は、まさに一級の芸術品。
有名なカメレオンは皮膚の構造を変えて光の反射の仕方を変えることで、気分、体温、性的状態、攻撃性、健康状態を色で示す。オスはライバルと縄張り争いをするとき、メスを惹きつけるため、鮮やかな体色になる。
マダガスカルには、落ち葉そっくりのアマガエルがいる。体の表面に光沢があり、質感まで落ち葉にそっくりだ。
マダガスカルの森にすむテングキノボリヘビは、木の枝そっくり。日中は木にぶらさがって休み、夜中にトカゲなどの獲物に木の上から襲いかかる。
これはまるでヘビではありません。まったく木の枝そのものです。
アフリカの砂漠にすむナマクアカメレオンは、砂の色に完全に同化した体色。そして周囲の温度変化で体色を変えて体温調節している。
砂漠にもカマキリがいる。枯れ枝そっくりの姿をしている。どうやったら、これほど似ることができるのか、不思議ですよね。意思の力なのでしょうか・・・。
海の中にも上手にかくれんぼしている生き物がいます。たとえば、ハナオコゼ。海藻のじゅうたんの中にひそめば、まず、見つけられない。
タツノオトシゴの仲間のリーフィーシードラゴンは、波に揺れる海藻のまねをして、ゆっくりと揺れるような動きで泳いでいる。
この本の最後に登場してくるコチ科の大型種、クロコダイルフィッシュは、写真をみても、どこからどこまでが魚体なのか、とても判読できません。
まさしく世の中は、不思議だらけなことを実感させる不思議な写真集です。よくぞ、これだけの生き物を撮影したものです。心から敬意を表します。
(2018年12月刊。2700円+税)
2019年9月15日
オオカミは大神
(霧山昴)
著者 青柳 健二 、 出版 山と渓谷社
日本にオオカミがいたのは明治38年まで。アメリカでは絶滅したオオカミを移入して自然の生態系を復活させたそうです。日本だって、野生のクマがまだいるわけですから、やれないわけではないと思うのですが・・・。
日本各地の神社の前にある狛犬(こまいぬ)が、実はオオカミであったりする神社がたくさんあるということを本書を読んで知りました。日本人は、案外、オオカミに親近感をもっていたようです。ですから、この本のタイトルにあるように、日本人は全国各地でオオカミを大神(おおかみ)として祭っていたのです。これまた、知りませんでした。
そして、全国各地にあるオオカミの像といっても、いろんな形と色彩のものがあるのを見て、楽しくなります。必ずしもオオカミは怖いものではなく、愛らしい生き物だとみられてもいたようです。
著者は愛犬を連れて、現地に出向き、写真を撮って本書で紹介しています。こんなにあるのかと驚くばかりです。
オオカミは、人間にとって、むしろ田畑を荒らす猪や鹿などを追い払ってくれる益獣だった。ただし、東北の馬産地は、そうではない。オオカミ信仰は、この農事の神としての信仰から生まれた。ただし、オオカミは、神そのものではなく、多くは「眷属」(けんぞく)つまり山の神の使いだった。
東京のど真ん中、なんと渋谷駅から徒歩2分の宮益坂にある神社にもオオカミ像が鎮座しているのです。もちろん、渋谷だけでなく、都内各所にオオカミの像が今も残っています。飛騨高山の狛犬もオオカミ像なのかもしれないといいます。
犬、そしてオオカミに親近感をもつ人は意外な発見を教えてくれる楽しい写真集でもあります。
(2019年5月刊。1500円+税)
2019年8月 3日
蠅たちの隠された生活
(霧山昴)
著者 エリカ・マカリスター 、 出版 エクスナレッジ
ハエやカを殺すときには、良心の呵責(かしゃく)を覚えません。バイキン、毒、痛痒い、それらが私をハエタタキに駆り立てるのです。
ハエは、人間1人につき1700万匹もの数で存在するとのこと・・・。圧倒されます。
キイロショウジョウバエは遺伝子研究には欠かせない存在です。なぜなら、ショウジョウバエは、繁殖力が旺盛で、遺伝子操作がしやすいため、研究に適している。そこで、遺伝子疾患や薬物、遺伝子操作、環境的なストレスが遺伝子にどのような影響を及ぼすかを知るうえで、理想的な実験対象である。
ヨーロッパの戦場で、負傷者にウジ虫がわいていると、傷の治り方が良好だという経験則がありました。そこで、壊疽(えそ)を患う患者にウジ虫をつかうと、わずか1日で、傷口がきれいになった。敗血症を防いで、迅速に回復した。
ウジ虫は、アラントインという消毒薬のような働きをする物質を分泌している。このアラントインは、傷を治癒し、細胞の再生を促す作用がある。
ウジ虫が負傷者の治療に役立っているなんて、予想できませんよね・・・。
ハエはまた、授粉者でもある。チョコレートの原料となるカカオの木の唯一の授粉者は、ハエ目の昆虫。カカオの花粉を運べるのは、ヌカカと呼ばれる、非常に小さな虫だけ。
映画『ジュラシック・パーク』に登場してくる琥珀のなかに入っているのはカではなく、ガガンボ、しかもオスのガガンボだった。
ちっとも知りませんでした・・・。ハエの生活なるものを少し知ることができました。
(2019年5月刊。1800円+税)
2019年7月16日
養蜂大全
(霧山昴)
著者 松本 文男 、 出版 誠文堂新光社
ミツバチの育て方のすべてが豊富な写真とともに懇切丁寧に紹介されています。まさしく、「大全」です。そして、ミツバチを育てるのに何より必要なのはミツバチへの愛情だと強調されていますが、その愛情あふれる記述に、読んでいて心が和みます。
主としてセイヨウミツバチの飼育ですが、ニホンミツバチについても飼育上の注意が書かれていて、蜜源植物まで網羅されています。読むだけでも楽しいミツバチ百科全書です。
春の1頭(1匹とは呼びません)のハチは、10頭も20頭ものハチの世話をする。常に、1頭たりともハチの命を無駄にしてはいけないという気持ちが大切だ。
巣箱は、日当たりのよい南向きか東向きの平地がベスト。北風を受ける場所は避ける。北風が巣を冷やし、巣に戻ってくるハチが向かい風にさからうのは大変だから・・・。
湿地も避ける。カエルやムカデがいて、病気が発生しやすいから。
堆肥は積んである畑から3キロ以上離れる。密に臭いが混じることがある。ハチは静かな環境を好むので、車の往来が多く、振動があるところも避ける。
ハチは冷たい水を飲むと弱ってしまうので、秋からヒーターを入れて、日なた水の水温を保つ。
ハチを飼うなら、血筋を重視すべき。おとなしい気質、分蜂しにくい、病気に強く越冬力がある、分蜂しにくい・・・。
ハチを育てるなら、養蜂振興法にもとづく飼育届を県知事に提出する。
ハチは、そんなに人を刺さない。ハチの機嫌が悪くなるようなことをしなければ、不意に刺されることは少ない。ハチの針はメスの産卵管が変化したもの。だから、オスには針がない。
刺すのはメスの働きバチと女王バチだけ。そして、女王バチが刺すのは、ライバルの女王バチと戦うときだけ。だから、人を刺すのは、働きバチだけ。
ミツバチは、針を失うと、やがて死ぬ。刺すというのは、まさに命と引き換えの行為。
ハチが機嫌を損ねるのは、採蜜の翌日、そして悪天候の日。ハチが耳元で羽音を立てて威嚇行動をしているときは、騒いだり、手ではらったりせず、落ち着いて静かにその場を去る。
ハチの針を抜くときは、指でピンとはじいて、患部から落とす。指でつまんで抜くと、針の「かえし」によって、よけいに肌の奥に毒を入れてしまう。
スズメバチは虫取り網で捕まえるのが、もっとも確実。失敗せず1回で捕まえる。失敗すると、人を攻撃してくることがある。
ミツバチの行動(飛行)半径は2~4キロほど。1日に10回以上も繰り返して、蜜や花粉を集め続ける。小さじ一杯のはちみつを集めるには、働きバチ1頭が5日間稼働し、レンゲなら1万4千もの花を回る必要がある。
女王の寿命は3年から4年。2年目以降は産卵能力が低下するので、養蜂では1~2年で更新するのが一般的。
ミツバチは夏場は30日ほどの寿命。秋生まれだと冬を越し、4~5ヶ月働き続ける。
一般に40日ほどが働きバチの生涯。
実際には大変で、私なんかに出来るとは思えませんが、ミツバチを飼って育てるというのも楽しいだろうなと思わせてくれる写真たっぷりの大全でした。
(2019年4月刊。3000円+税)
朝、車庫のコンクリート床に干からびたモグラを発見しました。なぜか、ときどき死んだモグラを地上に見かけます。
ヘビに追われて地上に出てきたのでしょうか。わが家の庭にはモグラもヘビもいることは間違いありません。
いま、庭にネムの木がたくさん赤っぽいピンクの小さな花を咲かせていて、そこだけ華やかです。
今年は梅雨入りが遅かったせいか、セミの鳴くのも例外よりかなり遅く、心配していました。炎暑の夏が再びやって来そうで、今から心配しています。