福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

声明

2024年10月25日

能登半島地震に関し、法テラス支援特例法の制定等による法的支援の継続を求める会長声明

第1 声明の趣旨

1 国は、令和6年能登半島地震(以下「能登半島地震」という。)について、東日本大震災における対応と同様、被災地に住所、居所、営業所又は事務所(以下「住所等」という。)を有していた者であれば資力を問わず日本司法支援センター(以下「法テラス」という。)における法律相談援助、代理援助等を受けられること、裁判所の手続のほかにADRなどについても代理援助・書類作成援助の対象とすること、事件の進行中は立替金の返済が猶予されること、などを含む法テラスの業務に関する特例法を制定すべきである。
2 国は、現在1年以内とされている総合法律支援法第30条第1項第4号における政令による指定期間を柔軟に延長することが可能な法改正をし、令和7年1月1日以降も法テラスにおける能登半島地震の被災者に対する資力を問わない無料法律相談の実施を可能とすべきである。

第2 声明の理由

1 能登半島地震の発災から約10か月が経過した。内閣府の非常災害対策本部の発表によれば、令和6年10月1日時点での被害状況は、死者・行方不明者が404名(うち災害関連死が174名)、負傷者が1336名、半壊以上の住家被害が2万9244件となっており、平成23年に発生した東日本大震災以降最大の被害が発生している。また、10月1日時点において、石川県内では、依然として348名の被災者が避難所での避難生活を余儀なくされている状況である。
被災地では、復旧に向けた関係各位の懸命な活動が続いており、徐々に復旧が進みつつあるが、被災地へのアクセスの困難さや自治体、関係事業者のリソース不足もあり、公費解体の遅れ等の問題も生じている。
2 能登半島地震は、令和6年1月11日に、政令により、総合法律支援法第30条第1項第4号に規定する非常災害に指定されており、法テラスにおける「大規模災害の被害者に対する法律相談援助制度」(以下「被災者法律相談援助制度」という。)の適用対象となっている。この制度は、政令で非常災害と指定された災害について、発災後最長で1年間、被災地域に住所等を有する者に対し、資力を問わずに法テラスにおける無料相談を実施する制度であり、過去には、平成28年の熊本地震、平成30年7月豪雨、令和元年東日本台風、令和2年7月豪雨にも適用された。
能登半島地震の被災地では、法テラスの事務所における相談に加えて、事務所へのアクセスが困難な地域には移動相談車両(法テラス号)を派遣するなどの対応がとられており、被災者法律相談援助制度は、能登半島地震の被災者の法律相談ニーズに応えるうえで重要な役割を果たしている。
3 上記のとおり、被災者法律相談援助制度は、発災後最長1年間という期間が定められており、能登半島地震についても、令和6年12月31日までの期間が定められている。
その一方で、上記1でも述べたとおり、発災後約10か月が経過した現時点においても、依然として多くの被災者が避難を余儀なくされており、公費解体も十分には進んでいないなど、生活再建の入り口にすら立っていない被災者も多数存在する。被災者支援制度の基礎となる罹災証明書についても、判定そのものやその基礎となる資料の情報公開等について問題が指摘されており、被災者からの相談も継続すると考えられる。また、被災地では、災害関連死の認定数も増加しており、災害関連死の申請に関する相談や対応も継続する可能性が高い。これらに加えて、各種の支援金の申請、地震に起因する紛争の解決、自然災害債務整理ガイドラインに基づく債務整理を含む債務の処理など、さらに多数の相談ニーズや紛争処理のニーズが生じることが容易に予想される。
さらに、能登半島においては、令和6年9月20日からの大雨によって、激甚災害(本激)に指定される規模の災害が発生し、能登半島地震の被災者が復興途上で再び被災するという事態も生じている。
特定非常災害に指定される規模の大地震と、激甚災害に指定される規模の大雨との複合災害という、極めて稀かつ酷な事態に直面した被災者に対する法的支援の必要性は、同大雨の前よりも一層高まっている。
このような状況であるにもかかわらず、被災者法律相談援助制度が1年間で終了するとすれば、被災者に対する法的支援としては十分とは言えないものと考えられる。
4 平成23年に発生した東日本大震災の際には、上記の総合法律支援法に基づく非常災害の指定の制度はまだ存在しなかったが、発災から約1年後の平成24年3月23日に、「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」が制定され、同年4月1日から施行された。この特例法による制度は、被災地に住所等があった者であれば、資力を問わず法テラスにおける法律相談援助、代理援助等を受けられること、裁判所の手続のほかにADRなどが代理援助・書類作成援助の対象となること、事件の進行中は立替金の返済が猶予されることなどの特色があり、当初は3年間の時限立法であったが、令和3年3月31日まで期間が延長された。
能登半島地震については、東日本大震災以降最大規模の被害が生じていることに加え、上記のとおり、災害からの復旧や生活再建が様々な事情から停滞していることからすれば、同地震に関しても同様の特例法を制定し、法テラスによる支援を継続すべきである。
5 また、今後も確実に生じる被災地における法律相談ニーズに十分に応えるため、総合法律支援法の改正により、現在1年以内とされている同法第30条第1項第4号における政令による指定期間をより柔軟に延長することを可能とし、令和7年1月1日以降も法テラスにおいて能登半島地震の被災者に対する資力を問わない無料法律相談の実施を可能とすべきである。
この改正は、能登半島地震のみならず、今後発生する可能性がある大規模な自然災害への対応を考えても、必要な法改正であると考えられる。

2024年(令和6年)10月25日
福岡県弁護士会
会長 德永 響

2024年9月26日

「袴田事件」再審無罪判決を一日も早く確定させることを求めるとともに、改めて速やかな再審法改正を求める会長声明

1 本日、静岡地方裁判所(國井恒志裁判長)は、いわゆる「袴田事件」について、袴田巖氏(以下「袴田氏」という。)に対し、無罪を言い渡した。二度にわたる再審請求を経て再審開始が確定し、再審公判が開かれ、本日、無罪判決が言い渡されたものである。当会は、本判決を高く評価し歓迎する。
2 「袴田事件」は、1966年(昭和41年)6月30日未明、静岡県清水市(現:静岡市清水区)のみそ製造販売会社専務宅で一家4名が殺害され、同宅が放火されたという事件である。静岡県警は、1966年(昭和41年)8月18日に同社従業員であった袴田氏を本件の犯人として逮捕した。袴田氏は、当初無実を主張していたものの、その後関与を認める自白をしたことなどもあり、起訴された。袴田氏は一審の公判では否認していたものの、静岡地裁は、1968年(昭和43年)9月11日に袴田氏に死刑を言い渡した。控訴及び上告も棄却され、1980年(昭和55年)12月12日に同判決が確定した。
しかし、その後も、袴田氏は無実を訴え、再審請求を続けてきた。その再審無罪判決までの闘いは非常に長期に及んだ。
3 第1次再審請求は約27年間もの長期に及んだが、棄却されて終わった。第2次再審請求について、静岡地裁(村山浩昭裁判長)が再審開始を決定し、併せて死刑及び拘置の執行停止を決定したのは2014年(平成26年)3月27日のことであった。
ところが、この再審開始決定に対して検察官が即時抗告をするなどしたため、同決定の確定まで9年もの期間を要した末に再審公判が開かれ、本日、無罪判決がなされたものである。
逮捕当時30歳であった袴田氏は現在88歳である。実に逮捕から58年以上もの長きにわたって犯人であるとの汚名を着せられ続けたことになる。人生の大半を自己のえん罪を晴らすための闘いに費やさざるを得なかったその余りの残酷さは筆舌に尽くしがたいものがある。このような残酷な立場に袴田氏を置き続けたことについて、検察官はもとより、刑事司法に携わるすべての者が深く猛省せねばならない。
4 そこで、当会は、検察官に対し、更なる有罪立証がもはや許されないことを自覚し、本日の無罪判決を尊重して上訴権を放棄し、直ちに無罪判決を確定させる所要の措置を講じることを強く求める。
5 なお、わが国では、死刑判決が確定した後、再審によって無罪判決が出された事件が過去に4件ある(免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)が、今回、「袴田事件」がこれに加わることとなる。
死刑は、人の生命を奪う不可逆的な刑罰であって、死刑判決がえん罪であった場合、これが執行されてしまうと取り返しがつかない。「袴田事件」は、その危険性に改めて警鐘を鳴らすものである。
誤った死刑判決に基づく死刑の執行を防ぐには、死刑制度を廃止する以外に途はない。当会は、引き続き死刑制度の廃止を強く求める。
6 同時に、「袴田事件」は、現行の再審法の不備を改めて浮き彫りにしている。現在の再審法には再審請求審の手続をどのように進めるかという再審請求手続における手続規定が定められておらず、証拠開示のルール(再審における証拠開示の制度)も設けられていない。
現に、第1次再審請求の即時抗告審である東京高裁(安廣文夫裁判長)は、事実の取調べ(刑訴法43条3項、445条)として証人尋問等を実施するか否かは裁判所の合理的な裁量に委ねられるべき問題であり、証拠開示についても同様であるとしていた。
このような問題は、他の再審事件でも同様に見られるところであり、まさに制度的・構造的な問題であるといわざるを得ない。
そこで、当会は、「袴田事件」のみならず、「大崎事件」や「日野町事件」などについて、繰り返し再審請求手続における証拠開示の制度化、再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止、再審請求手続における手続規定の整備を含む、再審法の全面的な改正を求める会長声明を発してきた。
ここに改めて、政府及び国会に対し、再審法の改正を強く求める。

2024年(令和6年)9月26日

福岡県弁護士会

会 長  德 永   響

2024年7月10日

旧優生保護法最高裁大法廷判決を受けて、全ての優生手術被害者に対する被害回復の実現を求める会長声明

2024年(令和6年)7月3日、最高裁判所大法廷は、旧優生保護法違憲国家賠償請求訴訟について、同法のいわゆる優生条項が憲法13条及び14条1項に違反することを明らかにした上で、被害者らの賠償請求を認容する判決(以下「本判決」という)を言い渡した。

旧優生保護法は、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」として1948年に制定された法律である。
同法が個人の尊厳と人格の尊重を定める憲法13条、法の下の平等を定める憲法14条に違反することは明白であるが、1996年に母体保護法に改正されるまでの48年間もの長きにわたって存続し、その間、少なくとも約2万5000人に不妊手術が実施されたほか、優生思想に基づく教育がなされるなどの優生政策が推進されたのである。
その結果、日本の社会には優生思想が深く浸透し、今もなお障がいを有する人々に対する根強い偏見差別が存在している。
国は、優生保護法が改廃された後も、不妊手術の実施なども「かつては合法であった」などと強弁し続け、国連や日弁連の勧告などにも耳を貸さなかった。
それでも、2018年に不妊手術を受けさせられた被害者が仙台地裁に国家賠償請求訴訟を提起したことがきっかけとなって、いわゆる一時金支給法が制定されるに至ったが、真の権利回復にはほど遠い状況であった。
しかも、国は、各地の同種訴訟において、旧優生保護法の違憲性を認めることを回避した上で、改正前民法第724条後段の除斥期間の経過により被害者の損害賠償請求権は消滅したと主張してきた。

しかし、本判決は、このような国の主張を一蹴し、国が除斥期間の経過を主張して損害賠償責任を免れることは著しく正義・公平の理念に反し、到底容認できないと述べた上で、国の除斥期間の主張は信義則違反又は権利の濫用で許されないと判断した。15人の裁判官が、全員一致で、国の主張の根拠とされてきた最高裁判所平成元年12月21日第一小法廷判決を見直すことを明言し、これにより、全ての被害者の権利回復の途がひらかれたのである。まさに、画期的な判断である。
当会は、最高裁判所が旧優生保護法による被害者の声を正面から受け止め、人権保障の最後の砦としての役割を果たしたことを高く評価する。
国は、本判決を厳粛に受け止め、旧優生保護法による全ての被害者に謝罪するとともに、被害の全面救済に向けた取り組みを早急に開始すべきである。
当会としても引き続き、旧優生保護法による全ての被害者の被害回復の実現に向けて、必要な提言、相談会の実施等の取り組みを行っていくとともに、今なお社会に存在する優生思想に基づく障がい者に対する差別・偏見を解消すべく活動していく決意である。

2024年(令和6年)7月10日

福岡県弁護士会

会長 德 永 響

飯塚事件第2次再審請求審の再審請求棄却決定についての会長声明

1 いわゆる「飯塚事件」の第2次再審請求事件において、福岡地方裁判所(鈴嶋晋一裁判長)は、2024年(令和6年)6月5日、再審請求を棄却する旨の決定(以下「本決定」という。)をした。
2 「飯塚事件」は、1992年(平成4年)2月20日に福岡県飯塚市において通学途中の女児2名(いずれも当時7歳。以下「被害女児」という。)が失踪し、翌日甘木市内(当時)の山中で被害女児がそれぞれ遺体となって発見された事件である。福岡県警は、その約2年7ヶ月後に、久間三千年氏(以下「久間氏」という。)を死体遺棄の被疑事実で逮捕した。久間氏は一貫して無実を主張していたが、福岡地検は死体遺棄罪、略取誘拐罪及び殺人罪で久間氏を起訴した。福岡地裁は、1999年(平成11年)9月29日に久間氏に対して死刑を言い渡した(以下「確定判決」という。)。控訴及び上告がそれぞれ棄却され、2006年(平成18年)10月8日、第1審の死刑判決が確定した。
確定判決は、久間氏が犯人であることを直接に証明する証拠がないことを認めつつ、情況証拠の積み重ねによって久間氏が犯人であることについて合理的疑いを超えて認定できるとして、久間氏を死刑に処した。有罪認定における重要な証拠として、①被害女児の遺体から採取された血液の中に、犯人に由来すると認められる血液が混在し、その血液から検出されたDNA型が久間氏のそれと一致したとする警察庁科学警察研究所の鑑定結果(MCT118型鑑定)のほか、②事件当日に拐取現場とみられる通学路上で被害女児を目撃したとする供述調書や、③遺留品発見現場とされる地点付近で事件当日に久間氏の所有車両と特徴が一致するとみられる車両を見たとする目撃証言などが挙げられた。
久間氏はその後も無実を訴え、再審請求を準備していた。しかし、死刑判決の確定から2年後の2008年(平成20年)10月28日、久間氏に対する死刑が執行された。そのため、久間氏の遺志を引き継いだ久間氏の遺族によって再審請求が行われていた。
3 ところが、①に関して、第1次再審請求において、DNA型鑑定結果については写真の改ざん等の重大な欠陥があったことが明らかとなり、その信用性に疑問が呈されたものであったが、他の証拠を総合すれば、結論として確定判決の有罪認定が揺らぐことはないとされたのである。
そこで、今般の第2次再審請求においては、主として2名の供述証拠が新証拠として提出され、これらについて新たに証人尋問が行われた。②との関係では、事件当日に被害女児を目撃した旨供述していた目撃者(②の供述者)は、被害女児を見たのは事件当日ではないこと、当時の供述は警察官による強引な誘導によってなされたものであることなどの証言をした。③の証明力を減殺するものとして、事件当日に不審車両を目撃した別の目撃者は、事件現場近くのバイパスで、小学校低学年の女児2名が後部座席に乗車している犯行車両と思われる不審車両を目撃して翌朝警察に通報したが、その際に目撃した車は久間氏の所有車両の特徴と異なる白のライトバンであったこと、犯人と思しき人物の外見が久間氏の外見とは全く違っていることなどの証言をした。
4 本決定は、これらの証言の信用性を認めず、それぞれ確定判決が有罪認定に用いた各証拠の信用性を減殺することはなく、確定判決の認定は揺るがないとして、いずれの新証拠について明白性を否定し、再審請求を棄却した。本決定は、新証拠がそれ自体で確定判決の有罪認定を揺らがせる程度に高度な信用性を備えていることを要求するものと理解せざるを得ない。まさに明白性の有無や程度の判断において、新証拠がそれ自体で確定判決の有罪認定を決定的に揺らがせるものでなければならないとする孤立評価説そのものであって支持できない。本決定がこのように各証言の信用性を否定したその結論には重大な疑問があり、新証拠としての明白性を否定した点は、「疑わしいときは被告人の利益に」の鉄則が再審開始の要件である新証拠の明白性の有無を検討する際にも適用される旨を示したいわゆる白鳥・財田川決定に違反する判断であり、到底是認できない。
5 なお、第2次再審請求の審理においては、裁判所が、請求人の求めに応じて、検察庁に警察からの送致文書リストを開示するよう文書で勧告したところ、検察官は裁判所にそのような勧告を行う権限がないとしてこれを拒絶した。このような検察官の対応は、真実を探求し、正義を実現するという検察官の使命に背くものであり、全く許されないことである。
こうした背景には、現行の刑事訴訟法には再審請求審における証拠開示の明文規定がなく再審請求の審理に関して裁判体による格差が生じていることで裁判所の勧告に検察官への拘束力が生じないということが挙げられる。まさに当会が2022年(令和4年)8月24日付け会長声明で宣明しているとおり、えん罪被害救済に向けた再審法改正の早急な実現が不可欠であることを示している。加えて、当会は2020年(令和2年)9月18日に、政府及び国会に対して、死刑制度を廃止すること、死刑の代替刑として終身刑を導入すること、死刑制度廃止のための関連法案が成立・施行されるまで、死刑執行を停止することを求める「死刑制度の廃止を求める決議」を行っているところ、その理由中にも述べているとおり、本件は、えん罪の疑いのある事件であるにもかかわらず、再審準備中に死刑が執行されており、死刑制度の非人道性を改めて浮き彫りにしている。
当会は、本件の再審請求につき注視するとともに、これまで以上に、死刑廃止及び再審請求事件における証拠開示の制度化を含む再審法改正等、えん罪を防止・救済するための制度改革の実現を目指して全力を尽くす決意である。

2024年(令和6年)7月10日

福岡県弁護士会 会長  德永 響

2024年6月20日

最低賃金額の大幅な引上げ及び地域間格差の解消を求める会長声明

福岡県においては、昨年度、福岡県最低賃金を前年度比41円増額の時間額941円とする改正が行われた。しかし、時給941円は、1か月の平均所定労働時間の上限173.8時間で計算しても月額16万3500円程度と、未だ、いわゆるワーキングプアと呼ばれる水準にとどまっている。
原材料価格の高騰や近年の極端な円安の進行、食料品・日用品や光熱費など生活関連品の価格が昨年に引き続き上昇傾向にあることをふまえると、労働者の生活を守り、経済を活性化させるためには、全ての労働者の実質賃金の上昇を実現する必要があり、そのためには最低賃金額を大きく引き上げて賃金全体の底上げを図ることが不可欠である。

同時に、最低賃金法第9条以下の地域別最低賃金制度を抜本的に見直し、地域間格差の解消に向けて全国一律最低賃金制度の導入についても検討されるべきである。
中央最低賃金審議会は、昨年度、地域別のランク制度を4段階から3段階に改定し地域間格差の解消を図ったが、その効果は限定的である。2023年度(令和5年度)の最低賃金は、最も高い東京都で時給1113円であるのに対し、福岡県では時給941円、12県では時給890円台にとどまり、時給格差はなおも縮まる傾向を示していない。
地域の最低賃金の高低と人口の増減には強い相関関係があり、最低賃金の格差は、最低賃金が低い地域の人口減ひいては経済停滞の要因ともなっている。地域間格差の解消は、地域経済にとってもプラスの影響をもたらしうるものである。また、地域別の労働者の生計費の差についていえば、最近の調査によれば、都市部と地方の間でほとんど差がないという分析がなされている。この点からも、地方の最低賃金を都市部の水準にまで引き上げることが検討されるべきである。

一方で、地域経済を支える中小企業への支援策も不可欠である。最低賃金の引き上げと同時に、中小企業が最低賃金を引き上げても円滑に企業運営を行うことができるよう十分な支援策を講じることが必要である。例えば、社会保険料の事業主負担部分を免除・軽減することや、賃上げを実施したすべての中小企業が対象となる利用しやすい助成金制度の創設、原材料費等の価格上昇を取引に正しく反映させることを可能にするような公正取引規制の徹底などの支援策が考えられる。

ここ数年、全国の地方公共団体において、最低賃金の引き上げと中小企業支援の拡充を求める意見書を採択する動きが相次いでおり、福岡県内でも福岡県及び60市町村のうち22市町村において同様の意見書が採択されている(全国一律を求める意見書の採択は17市町村)。
当会は、各地域との連携も図りつつ、引き続き、国に対し、中小企業への十分な支援策を求めるとともに、本年度、中央最低賃金審議会が、厚生労働大臣に対し、地域間格差を縮小しながら全国すべての地域において最低賃金の引上げを答申すべきこと、福岡地方最低賃金審議会が、福岡労働局長に対し最低賃金の大幅な引上げを答申すべきことを強く求める。


2024年(令和6年)6月19日

福岡県弁護士会         

会 長  德 永   響  

2024年4月10日

札幌高裁・東京地裁(二次)判決を受け、直ちに、すべての人にとって平等な婚姻制度の実現を求める会長声明

1 同性間の婚姻ができない現在の婚姻に関する民法及び戸籍法の諸規定(以下「本件諸規定」という。)の違憲性を問う一連の裁判において、2024年3月14日、札幌高等裁判所及び東京地方裁判所において、判決が出された。
  一連の訴訟は、札幌・東京(一次・二次)・名古屋・大阪・福岡の各地裁で提訴され、東京二次訴訟を除き、地裁レベルの判決が出され、いずれも原告側が控訴していたところ、今回の札幌高裁の判決は、高裁における初の判断である。また東京地裁は、二次訴訟についての判決であり、これをもって全ての地裁の判断が出そろったこととなる。

2 札幌高裁判決は、これまでの一連の判決からさらに踏み込んだ、極めて画期的なものであった。
  札幌高裁判決は、本件諸規定は、憲法24条及び14条1項に違反するとした。
  同判決は、本件諸規定が憲法13条に違反すると認めることはできないとしつつ、性的指向及び同性間の婚姻の自由は、憲法上の権利として保障される人格権の一内容を構成し得る重要な法的利益として、本件諸規定が同性婚を許していないことが憲法24条の定める立法裁量の範囲を超えるものであるか否かの検討にあたって考慮すべきと述べる。
  そして、性的指向及び同性間の婚姻の自由は、個人の尊重及びこれに係る重要な法的利益であるのだから、憲法24条1項は、人と人との間の自由な結びつきとしての婚姻をも定める趣旨を含み、両性つまり異性間の婚姻のみならず、同性間の婚姻についても、異性間の場合と同じ程度に保障しているとした。そして、本件諸規定は、異性間の婚姻のみを定め、同性間の婚姻を許さず、これに代わる措置についても一切規定していないことから、個人の尊厳に立脚し、性的指向と同性間の婚姻の自由を保障するものと解される憲法24条の規定に照らして合理性を欠く制度であり、少なくとも現時点においては、国会の立法裁量の範囲を超える状態に至っていると指摘した。
  憲法14条1項に関しても、国会が立法裁量を有することを考慮するとしても、本件諸規定が、異性愛者に対しては婚姻を定めているにもかかわらず、同性愛者に対して婚姻を許していないことは、現時点においては合理的な根拠を欠くものであって、本件諸規定が定める本件区別取扱いは、差別的取扱いに当たるとして、同項にも違反するとした。
  当会は、後記のとおり、2019年の「すべての人にとって平等な婚姻制度の実現を求める決議」において、憲法13条、14条、24条や国際人権自由権規約により、同性カップルには婚姻の自由が保障されていると論じたが、この判決は、それとほぼ同趣旨と評価でき、全く正当なものである。特に、憲法24条1項が、同性間の婚姻についても異性間の場合と同程度に保障しているとの判断は、一連の訴訟における判決の中でも初めてのものであり、初の高裁判断という点も含め、その意義は極めて重大である。

3 また、東京地裁(二次)判決では、本件諸規定が、同性カップル等の婚姻を認めず、また、法律上、同性カップル等が婚姻による法的利益と同様の法的利益を享受したり、社会的に交渉を受ける利益を享受したりするための制度も何ら設けられていないのは、同性カップル等が、自己の性自認及び性的指向に即した生活を送るという重要な人格的利益を、同性カップル等から剥奪するものにほかならないのであるから、本件諸規定及び、上記のような立法がされていない状況は、個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理的な理由があるとは認められず、憲法24条2項に違反する状態にある、との憲法判断が示された。
  これは、類似の判断を示した、東京地裁(一次)、名古屋地裁及び福岡地裁の一連の判決の流れを踏襲した判断といえる。

4 前記のとおり、この東京地裁(二次)判決をもって、一連の訴訟の地裁レベルの判決が出そろった。その結論は、違憲2件(札幌地裁・名古屋地裁)、違憲状態3件(東京地裁(一次・二次)・福岡地裁)、合憲1件(大阪地裁)であり、合憲判断である大阪地裁判決でも、将来的に違憲となる可能性を指摘していて、同性カップルについて、異性カップルと同様、婚姻(家族として法的に保護するための制度)が必要であるとの司法判断の流れは確定し、もはや動かしがたい。
  そして、札幌高裁においては、憲法24条1項が、同性間の婚姻についても異性間の場合と同程度に保障しているとの判断が示されており、今後の高裁判決においても、この流れはさらに加速していくものと思われる。
  これらの判決を踏まえれば、国は、さらなる高裁判決、ないしその先の最高裁判決を待つことなく、速やかに立法をもってこの違憲の状況を解消すべきであることは、明らかである。

5 しかし、本問題に関する政府・与党の姿勢は、従前と全く変わらず、極めて後ろ向きである。
  政府は、従前から、同性間の婚姻制度の導入について、「極めて慎重な検討を要する」との紋切り型の答弁を繰り返すばかりであったが、上記判決を受けても、確定前の判決であり、同種訴訟の判断を注視していくとか、判断の中身を注視していく、国民的なコンセンサスと理解が求められる、などの発言がなされ、事態を動かそうという気配は全く見受けられない。小泉龍司法務大臣は、「自治体のパートナーシップ制度の導入・運用状況などを見て、国民に議論してもらいたい。」と述べたが、いずれの判決中でも指摘されているとおり、各種世論調査の結果や自治体におけるパートナーシップ制度の広がりなど、同性婚に関する国民の認識が高まってきていることは明らかである。しかるに、国会での議論は、令和元年には野党から同性婚を法制化する法律案が提出されるも、審議されないまま廃案となるなど、極めて低調である。これだけ憲法違反を示す判断が積み重なっている中で、積極的に議論を行い、解決策を検討しなければならないのは、抽象的な「国民」ではなく、立法府たる「国会」であり、人権を尊重した施策を検討・実施すべき「政府」である。これら一連の政府関係者の発言からは、その自覚は、全くうかがわれない。

6 当会は、2019年5月29日の「すべての人にとって平等な婚姻制度の実現を求める決議」において、憲法13条、14条、24条や国際人権自由権規約により、同性カップルには婚姻の自由が保障され、また性的少数者であることを理由に差別されないこととされているのだから、国は公権力やその他の権力から性的少数者が社会的存在として排除を受けるおそれなく、人生において重要な婚姻制度を利用できる社会を作る義務があること、しかし現状は同性間における婚姻は制度として認められておらず、平等原則に抵触する不合理な差別が継続していることを明らかにし、政府及び国会に対し、同性者間の婚姻を認める法制度の整備を求めた。また、前記札幌地裁判決、大阪地裁判決、東京地裁(一次)判決、名古屋・福岡地裁判決に際しても、それぞれ2021年4月28日、2022年8月10日、2023年1月18日、2023年6月15日に会長声明を発し、政府・国会に対し、同性間の婚姻制度を早急に整備することを改めて求めてきた。
今回、札幌高裁判決は、「根源的には個人の尊厳に関わる事柄であり、個人を尊重するということであって、同性愛者は、日々の社会生活において不利益を受け、自身の存在の喪失感に直面しているのだから、その対策を急いで講じる必要がある。したがって、喫緊の課題として、同性婚につき異性婚と同じ婚姻制度を適用することを含め、早急に真摯な議論と対応をすることが望まれる」と付言した。
  東京地裁(二次)判決も、「国会において、日本社会及び日本国民の理解に根ざした、適切な同性カップル等の婚姻に係る法制度化がされるよう、強く期待される」と述べている。
  もはや、これ以上の立法・施策の懈怠は許されない。政府・国会は、直ちに、同性間の婚姻制度を整備すべきである。
  当会は今後も、性的少数者を含めたすべての人にとって平等な婚姻制度の実現に向け、努力していく所存である。

以   上


2024年(令和6年)4月9日

福岡県弁護士会     

会 長  德 永  響

2024年3月22日

離婚後共同親権の導入について、十分に国会審議を尽くすことを求める会長声明

 離婚後共同親権の導入を含む「民法等の一部を改正する法律案」(以下「改正法案」という。)が、2024年3月8日に閣議決定され、国会へ提出された。
 改正法案は、「家族法制の見直しに関する要綱」の素案を審議してきた法制審議会家事法制部会での審議過程において、部会内の採決で複数の部会委員が反対・棄権したという異例の経過を経て答申され、閣議決定を経たものである。
 改正法案は、広く国民生活、特に、子の利益に関わる基本的な事項に関するものであり、かつ、その審議過程は、立法者意思を示す資料として繰り返し参照される重要なものであるから、離婚後共同親権の導入をめぐって指摘されている以下の懸念もふまえて、十分に審議を尽くすべきである。
 まず、第一の懸念は、改正法案で「親の責務」と題する節が新設されて、親は子に対する責務を果たすべきことが定められたにも関わらず、「親権」という言葉が残され、その関係が明確にされていないことである。
 本来、親の権限は親の責務を果たすために必要な限りにおいての権限であるにも関わらず、「親権」という言葉が残ったために包括的な親の権利というものがあるという誤解を生じかねない。親権の共同行使のあり方や、共同親権であっても単独で行使できる場合とは何かということについての紛争の解決において、子に対する親の責務の履行という観点がなおざりにされれば、専ら親の権利の行使の問題としての解決に傾きかねず、子の利益の実現に困難を伴う可能性が高い。
 第二の懸念は、DV・虐待等の支配・被支配関係にある場合の危険性である。
 改正法案では、DV・虐待があるような、共同親権が不適切なケースに万が一にも共同親権が定められることにならないよう、裁判所における判断基準を定めてはいる。しかし、協議離婚においては、届出時点では裁判所が関与せず、何らの限定もない。DV・虐待によって形成された支配・被支配関係のもとで被害者が共同親権への合意を事実上強制されてしまうと、その後も加害者との関わりが継続し、同居親と子の生活の平穏が脅かされ、結局は、改正法案が目指す「子の利益」に反するおそれがある。
 第三の懸念は、単独での親権行使ができる事由が不明確な点にある。
 改正法案では、共同親権となった場合(婚姻中も含む。)でも、「子の利益のため急迫の事情があるとき」や、「監護及び教育に関する日常の行為」は、父母の一方が単独で親権行使が可能とされている。しかし、「急迫の事情」や「日常の行為」の範囲が明確ではない。特に、婚姻中にDVや虐待があったことを理由に子を連れて別居するケースが「子の利益のため急迫の事情があるとき」に該当するかどうかについては、DV・虐待等被害者支援の観点から非常に重要であるが、この点も文言上不明確であると指摘せざるを得ない。
 また、実際の子育てにおいては、子の入院や手術、歯科矯正、保育園や幼稚園への入園、高校や大学の受験及び入学、塾や習い事、同居親の転勤等に伴う転居など、子のための意思決定を行わなければならない場面がさまざまにあるところ、どこまで単独で決定できるのかが明確でなければ、後に親権行使の適法性が争われる等の心配により適時適切な意思決定ができず、かえって子の利益を害するおそれがある。
 以上のような改正法案に対する懸念に加えて、家庭裁判所の人的・物的体制の問題がある。共同親権となった後に生じる親権行使をめぐる紛争に関し、改正法案では、当事者間で協議が調わなかった場合には、家庭裁判所が判断するとされているが、これらの紛争に家庭裁判所が迅速かつ適正な判断を行うにあたって、家庭裁判所の人的・物的体制の充実が不可欠であり、その手当てなくして成り立たない制度であるといえる。
 これまでの親権制度に大きな変更を加える重大な改正について、上記の種々の懸念事項に対して、充実した議論や十分な手当がなされないままに採決されるようなことになれば、結局は、改正法案が目指す「子の利益」を大きく損なうことになりかねず、改正の趣旨を没却するおそれがある。
 上記のような異例な経過を経て国会に上程された改正法案に対しては、国会において多くの国民の意見を踏まえた十分な議論を尽くすことを求める。


2024年(令和6年)3月21日
福岡県弁護士会
会長 大 神 昌 憲

2024年2月22日

性被害者への誹謗中傷に抗議する会長声明

 日本社会のさまざまな分野で性暴力が放置されてきたことが、被害者の勇気ある告発により近年さらに明らかになってきた。しかし一方で、これまでも性加害による被害者への誹謗中傷がなされ、特にインターネット上のソーシャルメディアにおける誹謗中傷が大きな問題になっている。
 例えば、実名で性被害を公表した被害者の中には、想像を遥かに超える誹謗中傷により、外に出ることも怖くなり、平穏な私生活を送れない状態になったことや、今も心ない言葉が届くことに言及している人もいる。
 2023年、ジャニー喜多川氏による性加害について多くの被害者が勇気をもって名乗り出たことを契機として調査が行われた結果、少年たちに対する極めて多数の性加害があったことが明らかになった。しかし、この件においても、ジャニー喜多川氏による被害を告発した人々に対する誹謗中傷行為が繰り返され、中には自殺に追い込まれた被害者もいると報道されている。
 性加害を受けたことによる精神的苦痛は、被害者のその後の人生全体に大きな悪影響を及ぼし、被害者に対する誹謗中傷行為は、被害者をさらに苦しめ、死に追いやりかねない非道な行為であり、民事上のみならず刑事上も違法とされうるものである。
 また、被害を受けた時から時間が経って告発したことを理由として被害者の行動を疑問視する発信なども少なからずあるが、これもまた、誹謗中傷と同様に被害者を苦しめる面がある。2023年の刑事訴訟法改正において性犯罪についての公訴時効期間が延長されたのは、被害者が自らの性被害を認識し、申告するまでには心理的な混乱、恐怖心、強い自責の念などから長期間を要することが多いからである。
 このような過酷な状況下にある性被害者に対する誹謗中傷及びそれに準じた言動に対して何らの声も上げずにいることは、性加害を事実上黙認し二次加害に加担し、被害者の苦しみを看過することと同じであり許されない。
 そこで、当会は、基本的人権の擁護、社会正義の実現を使命とする弁護士の団体として誹謗中傷を行っている人々に対して強く抗議するとともに、ただちに誹謗中傷行為を止めるように強く求める。
 また、当会は、性被害にあったすべての人に寄り添い、関係機関・団体と連携協力のもと、性被害や誹謗中傷についての法律相談事業および権利擁護のための活動を引き続き行っていく所存である。


2024(令和6)年2月21日

福岡県弁護士会     

会 長  大 神 昌 憲

2023年12月 6日

Statement Calling for an Immediate and Permanent Ceasefire against Israeli and Palestinian Militants, including Hamas, and Urging the Japanese Government to Work toward its Implementation

The conflict between Hamas and other Palestinian militants (hereinafter referred to as "Hamas") and Israel, which escalated due to the attacks carried out by Hamas on October 7 of this year, has persisted for over two months. While a temporary cessation of hostilities is currently in place, concrete steps towards a lasting ceasefire have yet to be taken.


The damage caused by the above conflict is extremely serious. As of December 2, the death toll on the Israeli side has exceeded 1,200 (according to the United Nations Office for the Coordination of Humanitarian Affairs), and in the Gaza Strip, the reported casualties have exceeded 15,000 (as announced by local authorities in Gaza). Gaza's Health Ministry data reveals that more than 6,150 children and 4,000 women as well as at least 198 medical personnel were counted among the casualties in the Gaza Strip as of December 2. In addition, approximately 240 individuals, including around 30 children, who were held hostage by Hamas have not yet all been freed,
although some of them have been released in stages.


Parties involved in a conflict must always adhere to international humanitarian and human rights law. Specific provisions exist to protect children and medical personnel, and there is no justification for the loss of countless lives, including children and medical personnel. The actions taken by both Hamas and Israel violate international humanitarian law and international human rights law.


Fukuoka Bar Association hosted the LAWASIA Human Rights Conference in Fukuoka from September 2 to 4, and discussed the role of bar associations in time of armed conflicts on the session titled ""Armed Conflicts and Gross Violation of Human Rights: Bar Associations to Co-work for Victims". Our association cannot remain an idle spectator against this conflict that occurred immediately after the above event.


Fukuoka Bar Association calls for the immediate ceasefire against Israeli and Hamas and the immediate release of all hostages held by Hamas, and urges Israel to take immediate action toward permanent ceasefire.


Furthermore, we also call on the Japanese government to continue to persistently and directly approach both sides and to collaborate with the international community in advocating for a permanent ceasefire, the release of hostages, and adherence to international humanitarian law and international human rights law by both parties.


December 6, 2023
Masanori Ogami
President of Fukuoka Bar Association

ハマス等パレスチナ武装勢力及びイスラエル双方に対して直ちに停戦を求め、日本政府に対して停戦の実現に向けて働き掛けることを求める会長声明

 ハマス等パレスチナ武装勢力(以下「ハマス等」という。)が本年10月7日に行った空爆で激化したハマス等及びイスラエル間の紛争は、約2か月が経過し、一時的な戦闘休止がなされたものの、未だ恒久的な停戦に向けた動きはみられない。
 上記紛争による被害は極めて深刻である。12月2日時点において、イスラエル側の死者数が1200人以上(国連人道問題調整事務所(UNOCHA)発表)、ガザ地区での死者数が1万5000人以上(ガザ地区地元当局発表)とされている。また、ガザ保健省のデータによると、12月2日時点のガザ地区での死者数のうち、子どもが6150人以上、女性が4000人以上とされているほか、少なくとも198人が医療従事者とされている。さらに、ハマス等側に捕らえられたとされる約30人の子どもを含む約240人の人質について、その一部が複数回にわたり解放されているものの、未だ全員解放には至っていない。
 紛争当事者に遵守が求められる国際人道法及び国際人権法では、特に子ども及び医療従事者を保護するための特別の規定が用意されているにもかかわらず、上記のように多数の子ども及び医療従事者を含む人命等の犠牲が生じており、ハマス等及びイスラエル双方が行っていることは国際人道法及び国際人権法に違反するものであり、正当化することはできない。
 当会では、2023年9月2日から4日にかけてローエイシア福岡人権大会を開催し、「武力紛争や大規模人権侵害:被害者救済のための弁護士会の協働」というテ ーマの下、武力紛争時の弁護士会の役割について議論したところであり、その直後に発生したこの紛争を、当会は座視することはできない。
 当会は、ハマス等及びイスラエル双方に対し直ちに停戦するよう求める。ハマス等においては人質全員を即時に解放し、イスラエルにおいては直ちに恒久的な停戦に向けた行動をとるべきである。
 また、日本政府に対しては、引き続き粘り強く双方に直接働きかけるとともに、国際社会と連携して、双方に対し停戦及び人質の解放、国際人道法及び国際人権法の遵守を求めるように働き掛けることを求める。


2023年(令和5年)12月6日
福岡県弁護士会
会長 大 神 昌 憲

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