福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

月報記事

取調べの可視化シンポジウム

刑事弁護等委員会 委員長 德 永   響(50期)

第1 平成27年2月14日(土)午後1時30分から、「それボク」は過去の話?~取調べの可視化の現在(い ま)~と題して、取調べ可視化のシンポジウムが開催されました。
言うまでもなく、「それボク」とは周防正行監督の映画「それでもボクはやっていない」を指していて、シンポジウムに法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会委員を務められた周防正行監督をお呼びして、広く市民への参加を呼びかけた結果、レソラ天神5階「レソラNTT夢天神ホール」に150名を超える参加者を集めることができました。
刑事弁護等委員会では、当番弁護士発足○周年というシンポジウムや可視化のシンポジウムを複数回開催していましたが、久方ぶりのシンポジウム開催となりました。
この時期に大規模なシンポジウムを開催したのは、2014(平成26)年7月に新時代の刑事司法制度特別部会の改革案がとりまとめられましたが、可視化の対象となる事件が極めて限られていることなどから、国会審議を前に市民を巻き込んだ大きな議論をしておく必要があるからに他なりません。

第2 シンポジウムは3部構成で、第1部は冤罪被害者(「バス痴漢冤罪事件」「爪ケア冤罪事件」)の方々のインタビュー形式による体験談(インタビューアーは当会の丸山和広弁護士・天久泰弁護士)、第2部は袴田事件の冤罪被害者である袴田巖さんのビデオレター(説明者は当会の美奈川成章弁護士)、第3部はパネルディスカッションという構成です。
1 冤罪被害者の方々の話は、体験した者でなければ語り得ない生々しい被害の実情を訴えかけるもので、冤罪被害者の苦しみ、絶望感、疎外感を参加者に感じさせる内容でした。
バス痴漢冤罪事件では、捜査官が「私の仕事は君を有罪にすることだ」「認めないの?なら出さない。」「君が罪を認めないと裁判で苦しむよ」と告げられ、自分の言い分を信じてもらえないことに絶望する心情が語られ、「車載カメラに(犯行が)写っている」「目撃者がいる」と自白を迫られる状況が赤裸々に語られました。爪ケア冤罪事件では、明日のことすらわからない状況におかれる被疑者が、弁護士ではなく、むしろ刑事の方が自分のことを分かってくれるかのような錯覚に陥って自白してしまう危険性が明らかにされました。
取調べの全過程が録音録画によって可視化されていれば、冤罪被害の発生を防止しえたことも明示されて、取調べの可視化の必要性がはっきりと参加者に伝わりました。

2 パネルディスカッションでは、周防正行さん、大阪弁護士会で特別部会委員の小坂井久弁護士、当会の天久泰弁護士、元裁判官の立場から当会の陶山博生弁護士がパネリストとして参加され、当会の甲木真哉弁護士がコーディネーターとして議論を進行させました。
周防さんは、調書が捜査官の作文であるにもかかわらず、重要な証拠となることに驚きと同時に恐怖を感じたことに加え、検察のあり方をきっかけに議論を始めたにもかかわらず、警察はこれまでの捜査で悪いところはないというスタンスに立ち、有識者意見を無視しようとする動きに危機感を覚えたことをお話いただきました。
その他のパネリストからも、冤罪事件は虚偽自白とセットになっていること、可視化されていない取調べにおいて刑事の見立てに逆らう供述をすることは困難であること、調書の任意性に関する水掛け論は可視化するしかなく、可視化で裁判は変わること、可視化したDVDを有罪認定のための実質証拠とすべきでないことなどの意見が出されました。

3 最終とりまとめでは、取調べの録音録画の対象とされる事件が少なく、冤罪を防止するためにはあまりにも不十分なものであることが確認され、より広い範囲での取調べの全過程の録音録画が必要であることを参加者に訴えかけ、制度改革が少しずつしか実現しないとしても、改革の歩みを止めてはならないことを確認してシンポジウムは幕を閉じました。

第3 有識者として特別部会に参加された周防さんの話は、まさしく一般市民の感覚に裏付けられた視点であると同時に、自らのなまった感覚を戒めるものでした。この月報が出るころには「それでもボクは会議で闘う」というような題名で特別部会の様子を出版されるようで、楽しみにしています。
一般市民の感覚を持って、特別部会に参加した周防さんは、「対象が小さくとも、取調べの全過程の録音録画を法律で導入できれば、その価値は小さくない。」、「今後は、対象事件の拡大と共に、普通の判断を普通にできる裁判官に大きな期待を持っている。」と話されていたことが強く印象に残りました。
密室での取調べと調書裁判からの脱却には実務家が取り組まねばならないと決意を新たにしました。
なお、紙幅の都合で、パネルディスカッションの中身等を明らかにすることはできませんでしたが、現在、本シンポジウムの詳細な内容を冊子にして会員に配布する作業中ですので、ご期待ください。

2015年2月 1日

「転ばぬ先の杖」(第12回)  顧客情報外部流出への備え

ホームページ委員会 委員
是 枝 秀 幸(60期)

1 顧客情報外部流出

昨年起きた大きな出来事の一つとして、大手通信教育業者が保有していた顧客情報を外部へ多数流出させたことは、皆さんも記憶に新しいと思います。

顧客情報は、事業規模にかかわらず、多くの事業者において、営業活動のための情報として、日々、取得・使用されています。

もし顧客情報が外部へ流出してしまえば、流出を食い止めたり情報を回収したりすることは困難で、事業者は、相当期間にわたり、顧客情報を保有していたことによる競業他社に対する優位性を喪失するとともに、顧客からの信用も著しく失墜することとなるでしょう。

とはいえ、顧客情報は、事業者において、日々、取得・使用しているもので、外部へ流出することを完全に防止することはできません。

本稿では、顧客情報外部流出の発生の機会や影響をできるかぎり限定するための備えについて、何をすべきか、簡単に紹介したいと思います。

2 機密書類に「秘」印を押しておけばよい?

顧客情報外部流出への備えとしては、不正競争防止法上の営業秘密として管理することや個人情報保護法上の安全管理措置を講じること等が考えられ、経済産業省もガイドラインを公表しています。
経済産業省の営業秘密管理指針によれば、概ね、次のとおりです。
(営業秘密管理指針より、一部変更のうえ、抜粋)

【秘密管理性の判断要素として着目すべき点】
  • アクセスできる者が限定され、権限のない者によるアクセスを防ぐような手段が取られている(アクセス権者の限定・無権限者によるアクセスの防止)
  • アクセスした者が、管理の対象となっている情報をそれと認識し、またアクセス権限のある者がそれを秘密として管理することに関する意識を持ち、責務を果たすような状況になっている(秘密であることの表示・秘密保持義務等の設定)
  • それらが機能するように組織として何らかの仕組みを持っている(組織的管理)
【Aに関する具体的な管理方法】
  • アクセス権者の限定
  • 施錠されている保管室への保管
  • 事務所内への外部者の入室の禁止
  • 電子データの複製等の制限
  • コンピュータへの外部者のアクセス防止措置
  • システムの外部ネットワークからの遮断
【Bに関する具体的な管理方法】
  • 社員が秘密管理の責務を認知するための教育の実施
  • 就業規則や誓約書・秘密保持契約による秘密保持義務の設定等
【Cに関する具体的な管理方法】
  • 情報の扱いに関する上位者の判断を求めるシステムの存在
  • 外部からのアクセスに関する応答に関する周到な手順の設定

以上のとおり、秘密管理性等は、具体的な管理方法等を踏まえ、総合的に判断されるものです。

機密書類に「秘」印を押しておけばよい、という簡単なものではありませんので、注意が必要です。

3 弁護士にご相談を

顧客情報外部流出への備えを実施するためには、情報技術的な事項に関してIT事業者に相談するとともに、秘密保持義務の設定等の法技術的な事項に関して弁護士に相談することが望ましいでしょう。

秘密管理性等は、具体的な管理方法だけでなく、事業規模、業種、情報の性質、侵害態様等を踏まえ、総合的に判断されることになります。
顧客情報外部流出への備えは現実的に可能な範囲で一応実施しているという場合には、弁護士に法的観点から検証してもらうとよいかもしれません。

片山昭人判事講演会

会 員 岡 田 美 紀(66期)

1 はじめに

昨年平成26年12月5日、福岡高裁の片山昭人判事による講演会が行われました。

片山判事は、昭和62年に判事補任官、平成2年からは弁護士としてご活躍された後、平成19年に弁護士任官で判事に任官されました。

実は、片山判事には一昨年もご講演いただいたのですが、その際のお話が大変好評を博し、再度ご講演いただきたいとの要望が多く寄せられたことから、今回の講演会を開催する運びとなりました。昨年1月号の月報にも片山判事が執筆された記事が掲載されておりましたので、ご存じの先生方も多いのではないでしょうか。

講演会当日は、師走の大変忙しい時期、しかも金曜日の夜だったにもかかわらず、弁護士会館3階ホールの席が足りなくなるほどの大盛況でした。中には県外から足を運ばれた先生もいらっしゃったようで、片山判事のご講演に対する期待の大きさが窺われました。

2 講演

片山判事には、「"後発"は明確に優れていなければならない~若手弁護士への期待」をテーマにご講演いただきました。

(1) 人間力

まず冒頭で、一流の法律実務家に必要な実力とは、知力・胆力・体力を総合した「人間力」であるとのお話しがありました。若手は自らを鍛え、この「人間力」を高めていかなければならないのですが、成長する上で大切なのは、大変な状況に置かれたときに、弁解や不満ではなく「HOW(どうすればいいか?)」を考えることだといいます。「厳しい制約の中でこそ成長の余地がある」という片山判事の言葉に、苦しいことから逃げ出してしまいがちな私は大変反省させられました。

(2) 訴訟追行能力

続いて、我々弁護士にとっても気になる、訴訟追行のポイントについてのお話しがありました。

訴訟追行とは、裁判所を説得することであり、説得の方法、説得材料である証拠収集の方法、収集した材料を基にしたプレゼンテーションの方法等について、ご自身の経験談も交えながら具体的に解説していただきました。

日本の訴訟制度上、証拠収集には様々な制約がありますが、片山判事はそれをカバーするために様々な工夫をされており、経験の少ない若手弁護士にとっては大変勉強になりました。裁判所の説得にあたっては、核心を突いたシンプルな主張を行うことが大切なのですが、シンプルな主張をするためには、時間をかけて十分に証拠を収集・整理し、事案を分析しなければならないのだということを改めて実感いたしました。

(3) 弁護士任官

冒頭でもご紹介したように、片山判事は弁護士任官者でいらっしゃいます。片山判事は、弁護士任官制度の意義として、裁判官が体験しないことを体験している弁護士が任官することで、裁判所に複眼的な思考をもたらすことなどを挙げられていました。今回の片山判事のご講演も、裁判官・弁護士双方の立場を踏まえた多様な視点からの内容で、弁護士任官者ならではのものだったように感じます。

今後、弁護士任官者が増え、裁判の質がさらに向上していくことを願っております。

3 おわりに

片山判事は、抽象的な事柄であっても、端的なキーワードを使ってわかりやすく説明されており、すっと頭に入る上、記憶にも深く残りました。ご講演の内容はもちろんですが、巧みな話術は、まさに「説得する力」にほかならないと感じました。
片山判事をはじめ、優秀な諸先輩方から学ぶことができるのも、"後発"である私たち若手の特権です。多くを学び、人間力を高めて、優れた法曹実務家を目指していきたいと思います。

紛争解決センターだより ~医療ADRを「おススメ」する、3つの理由~

あっせん・仲裁人 弁護士
南 谷 敦 子(51期)

昨年夏、福岡県外に住む当事者(患者遺族)が医療ADRを申立てました。申立てを受けたのも、県外の病院です。九州の他県の弁護士会には医療ADRがないため、患者遺族は当会の医療ADRを利用したとのこと。

3名の会員弁護士が関与し、4回にわたるあっせんの末、事件は和解が成立し、病院側は一定の謝罪をするとともに、和解金の支払いにも応じることとなりました。

医療側に立つ私としては、当初、一定の抵抗も感じはしましたが、和解が成立すると何とも表現しがたい、シンプルに言えば「嬉しい気持ち」になるものです。

さて、当会の医療ADRを「おススメ」する3つの理由を挙げます。

理由(1) 患者側・医療側の専門性を利用できる。

医療ADRは、3名の弁護士があっせん・仲裁を行います。うち1名は、元裁判官の弁護士が委嘱されることが多く、残る2名は、患者側代理人として活動する弁護士と、医療側代理人として活動する弁護士。その3名が一体となって協力し、解決のために知恵を絞ります。

当事者は、この3名のそれぞれの専門性を利用することができます。

理由(2) コストが圧倒的に安い。

申立手数料は金1万円。3人の弁護士が1回あたり数時間かけてADRに臨むこと、天神弁護士センターの比較的ゆとりある空間を利用できること、等を考えると、申立人のコストは圧倒的に安い。手数料減免手続もあります。

理由(3) 弁護士に依頼しなくても、本人がひとりで利用できる。

弁護士に着手金や報酬を支払って依頼しなくても、本人がひとりで手続きを利用できます。カルテや診断書、損害を裏付ける資料の準備は最低限必要ですが、それが揃えば自分でできる。

会員の先生方も、患者側あるいは病院側から医療過誤関連の相談を受けたとき、受任をためらうことがあるかもしれません。そんなときこそ、医療ADRをご紹介下さい。

ところで、医療ADRである以上、相手方の出頭は任意であり、強制力がない点は致し方ありません。司法手続でない以上、どんなADRにも内在するものです。

そんなADRながら、世に起きる人と人との紛争は、いずれ解決する時が来るものです。

紛争が解決する、たった一つの「条件」

それは、当事者双方が、「ここで解決したい(してもいい)という思いがあること」に尽きます。

3名のあっせん委員弁護士は、双方にこの「思い」があることを感じ取るや否や、一体となり連帯感を持って、解決へ向けて力を注ぎます。

この思いが、あっせん委員弁護士の連帯感も伴って、遂にひとつの意思の合致をみるとき、そこに何ともいえない気持ちのいい調和(ハーモニー)が生まれると私は感じています。

複数の人間が同時に「ラーーー♪」という音声を発生するとき、当初、音はバラバラで不協和音を生みますが、不思議と、ある瞬間から一つの同じ音程になりますね。

普段は医療側の立場で交渉・訴訟を遂行する私も、今回のADRでは第三者の立場からこの調和(ハーモニー)が生まれたことに、安堵と小さいながらも暖かい喜びを感じました。

今回、特にご尽力いただいた小林洋二先生も、暖かく成立まで粘っていただいた宮良允通先生も、きっとそうですよね?お導き、ありがとうございました。

*仲裁手続きについて、補足*

あっせん以外にも、仲裁手続きがあります。これは、あらかじめ、当事者が仲裁合意(紛争解決を仲裁人に委ね、かつ、その判断[仲裁判断]に服する旨の合意)をする必要があります。この場合、確定判決と同一の効果が得られます。

2015年1月 1日

「転ばぬ先の杖」(第11回)  事業者のみなさんへ~事業承継対策の必要性

中小企業法律支援センター委員長
 池 田 耕一郎(50期)

1 事業承継対策の必要性

私たち弁護士が中小企業の経営者から相談を受けていますと、以前と比べて、事業承継対策の必要性を意識している方が多くなったように感じます。

しかし、「事業承継の話はまだ先」と考える経営者が依然多いのも事実です。実際、事業承継対策の必要性は認識しつつも、対策が進んでいない企業が6割もあるという調査報告もあります。

企業経営者にとって、後継者にバトンを渡す「事業承継」は重要課題の一つです。後継者へのバトンタッチがうまくいかなければ、企業の成長が止まり、業績の停滞を招くおそれがあります。最悪の場合、廃業に至るケースもあります。また、事業承継対策は、単にその経営者個人の問題ではなく、従業員やその家族の生活、地域活力を維持することにもつながります。取引先からの信用評価という観点からも、相手先企業の事業の継続性に対する不安がマイナスポイントになることは否定できません。

2 承継の方法

事業承継の方法には、一般に、(1)親族への承継(親族内承継)、(2)従業員等への承継(企業内承継)、(3)第三者への承継(社外から次期経営者を迎え入れる、M&A等)の3つがあるとされています。

独立行政法人中小企業基盤整備機構の「事業承継実態調査報告書」(平成23年3月)によると、「家族・親族への承継」が40.2パーセント、「役員・従業員への承継」が14.3パーセント、「第三者への承継」が2.6パーセントという結果が出ており(「明確に決まっていない」は28.8パーセント)、中小企業経営者がまず検討するのは親族内承継のようです。他人よりも身内のほうが無理がきく、という要素があるかもしれません。

M&Aときくと、かつては、将来に向けた明るいイメージよりも「身売り」のイメージが先行していたように思われますが、最近では、経営状態がよく企業価値が高いうちに事業を譲りたいという企業経営者も増え、M&Aに対する潜在的需要が増大しているようです。買い手候補として多角経営をめざして他社の事業を引き継ぎたいという企業も増えています。

中小企業版M&Aを推進する公的機関として「福岡県事業引継ぎ支援センター」が設置されていますが、国は、さらに中小企業のM&A支援策を推進するため、中小企業向けM&Aガイドラインの策定に向けた検討を始めました。

3 まずは弁護士に相談を

事業承継対策というと、税務面が頭に浮かぶという方も多いかもしれませんが、税金対策だけでは、次期経営者に安定した経営権を確保することはできません。

個人企業であれば、企業の権利関係と個人の権利関係が明確に分離されないため、相続に関する法務面の対策が不可避です。

法人企業(株式会社)の経営者であれば、相続問題とともに、株式の分散を防ぐ方策が重要な検討課題です。少なくとも取締役の選任決議を通せる過半数の株式(議決権)を、さらに合併や会社分割などの会社の行く末を決定する重要な決議を通すことができる3分の2以上の議決権を確保できる株式を次期経営者に残したいところです。株式以外に十分な資産がない場合には、種類株式の活用も検討すべきです。株式は相続分に応じて各相続人が分割取得するのではなく、遺産分割がなされるまで全相続人が共同して相続する(いわゆる準共有)状態になり、経営を不安定にするおそれがあります。遺言書の作成を含めた対策が必須です。

日常の商売(事業)をしながらでは、なかなか腰を上げるのが難しいかもしれませんが、事業承継対策は、企業経営者にとって避けては通れないテーマです。まずは、どこから取りかかるべきか、ワンポイントアドバイスだけでも受けてはいかがでしょうか。前述したように、事業承継対策にはすべて法律問題が絡みます。弁護士に相談することで、普段は子細に検討することの少ない部分も含め、事業全体の状況を明確に把握でき、事業承継のスキームづくりが見えてきます。

福岡県弁護士会では、中小企業の事業承継対策を積極的に支援しています。

弁護士の事務所で気軽に相談できる事業者のための相談窓口「ひまわりほっとダイヤル」を開設していますので、ぜひ活用してください(初回面談相談無料)。

ひまわりほっとダイヤル

電話番号 0570-001-240
(申込受付時間 盆・正月、祝日を除く月曜日から金曜日の10時から16時まで(12時から13時を除く))

武装より女装 ~集団的自衛権の市民集会に参加して~

会 員 吉 原 育 子(64期)

1 はじめに

去る昨年11月22日、福岡県弁護士会主催の「憲法違反の集団的自衛権について考える市民集会」に参加させていただきました。

非常に熱気あふれる集会でしたので、年をまたいでその熱気をリポートさせていただきたいと思います。

2 熱気あふれる集会

集会は、福岡市・天神の都久志会館で行われました。

まず、会場に行って驚いたのは、640名弱入る会場が満席でロビーまで人があふれていたことです。参加されている方々の顔ぶれを見ましても、弁護士会以外の一般市民の方々が多く見受けられたように思います。

集会の第一部は、東京からお招きした憲法学者の青井未帆教授と小林節教授の講演でした。講演は、憲法の根本に立ち返った内容であり、かつ非常に明快な内容でした。

第二部は、パネルディスカッションが行われました。

先の講師のお2人に加え、高校生1名、大学生2名及び社会人代表として、いのうえしんぢさんがパネリストとして加わりました。

いのうえしんぢさんは、イラストレーターで、今回の集会のチラシのデザインをして下さった方です。添付の写真のとおり、人目をパッと引くデザインで、今回の集会に彩を与えてくださった立役者でもあります。

ディスカッションは学生らしい率直な意見が交わされました。

非常に耳に残ったのは、「将来、私達が戦争に参加しなければならない。」「私たちはまだ選挙権がない。」(高校生)、「集団的自衛権行使容認の閣議決定はいつの間にか決まってしまった。民主主義とはいえない。本来、憲法は権力者を抑止するものであるはずだ」(大学生)などという言葉です。今回の問題の本質をついた意見が出され、会場は熱気に包まれました。

3 武装より女装?!

会場を沸かせる名言もありました。

いのうえさんは、イラストレーターだけでなく、自らの主義・主張を奇抜なファッションでパレードやデモにて表現してきたそうです。そして、「普段から意思表示をすることが大事。」「武装より女装だ」と。

「武装より女装」の言葉に会場からはドッと笑いが起きました。小林教授も暗い話題が明るくなる、といのうえさんの言葉に共感されていました。

いのうえさんからは、表現の自由が奪われたことが戦争につながったという指摘もありました。憲法21条で保障されている表現の自由の重要性を改めて感じることのできたディスカッションでした。

4 DJパレード

熱気も冷めやらぬうちに天神を闊歩するパレードが始まりました。このパレードは、通常のパレードとは少し趣きが異なり、今どきの音楽に乗せて、若者がDJ風に「戦争反対!」「9条壊すな!」という掛け声をしながらパレードするというものでした。

ちょうど三連休の初日であったため、天神周辺の人通りはかなり多かったです。

携帯電話で写真を撮っている方を何人も見かけました。私も、当日の突然のオファーにより、なぜかよくわからないまま(?)博多ぶらぶらの衣装を着てパレードに参加しました。

5 今回の集会の大いなる意義

今回の集会とパレードの実施は非常に意義の大きいものであったと思います。「集団的自衛権」という言葉自体難しく、今、政府が何をしようとしているのか一般国民には分からないことが多いです。

しかし、だからこそ、この問題を肌で感じることが重要であると思います。そういった意味で、今回の集会は、次世代を担う高校生や大学生が参加し、またパレードも若者に向けたメッセージ性の強いものであり、市民の方々に与えたインパクトは強かったと思います。

「集団的自衛権」という言葉はどうやら昨年のユーキャンの流行語大賞を受賞したようです。しかし、一過性の話題に留まるだけでは意味がありません。 私たちや私たちの子ども・孫の世代が決して外国の戦争にいくことのないよう、さらなる活動が必要であると切に感じた市民集会でした。

特定秘密保護法施行直前シンポジウムのご報告

会 員 吉 田 純 二(60期)

1 100人を超える聴衆

特定秘密保護法に対しては、国民から「知る権利」を侵害し、民主主義社会の根幹を揺るがす希代の悪法であるとの反対意見、危惧が多く聞かれ、日弁連また当会を含む全国の各弁護士会もこれまで同法の成立、施行に一貫して反対し、意見表明、街宣行動、シンポジウムなど様々な運動を行ってきました。

しかし、反対の声をよそに平成25年12月6日、同法は成立し、昨年12月10日、施行されてしまいました。その後の報道によると、外務防衛両省だけでも秘密指定が計6万件にも上る見通しとのことです。

さて、同法施行を目前にした平成26年11月8日、当会では秘密保護法について考えるべく「秘密保護法で社会はどう変わる?−この道はいつか来た道、とならないために−」とのシンポジウムを開催しました。会場の弁護士会館3階ホールは計100名を超える市民、会員、報道関係者等が来場し、熱気に満ちた雰囲気となりました。

2 田島教授の基調講演

三浦会長の挨拶の後、我が国のメディア法研究の第一人者で、同法に反対してこられた田島泰彦教授(上智大学)が「特定秘密保護法施行前に−問題点と課題を考える。」と題した基調講演をされました。

田島教授は、本法成立の経緯として約30年前の中曽根内閣時に構想され反対に遭い成立しなかったスパイ防止法、2006年の第一次安倍内閣におけるカウンターインテリジェンス(防諜活動)の強化、という流れがあったことを説明された上で、この法律の制定は、表現の自由規制、自衛軍創設、秘密情報機関(日本版CIA)、憲法改正と政府が構想しこれから展開していく流れの第一歩であると指摘されました。

同法は国家の情報の保管だけでなくその前の取得や取り扱う者の管理(適性評価制度)の段階から前のめりになって国家秘密を守ろうとするもので、これを土台として秘密国家化が増殖する。同法は原則情報の開示範囲を拡大し、例外の秘密とされる部分は最小限にしようとしている現代の国際的な民主主義の方向と逆行するものだと同法を厳しく批判されました。

また同法の予定する秘密指定・監視の仕組みについても、独立公文書管理監、内閣保全監視委員会は官僚同士が身内で監視するもので実効的な監視が期待できないこと、国会議員で構成される情報監視審査会もメンバーはほぼ与党で占められ、委員に罰則・懲戒のある守秘義務が課されるため、充分な監督が期待できないことを指摘され、いずれの監督機関も秘密指定にコミットすることができず、強制力もないため監視の実効性がないと批判されました。

3 西山太吉さんの基調講演

続いて、沖縄密約事件で有名な西山太吉さん(元毎日新聞記者)が「沖縄密約とは何であったのか−最高裁判決を経て−」と題した基調講演をされました。

西山さんは自身が原告となった沖縄密約文書に関する情報公開訴訟の最高裁判決(平成26年7月14日)までの経緯(第一審は歴史的勝訴、控訴審逆転敗訴、最高裁も控訴審を維持)を説明されました。

西山さんによれば90年代、米国政府から25年経過で開示を受けた公文書から沖縄返還交渉時日米間に密約があったことは明らかだったにも関わらず、日本政府は一貫してこれを否定し続け、文書を廃棄し、上記訴訟においても文書がないと主張してきたとのことです。上記の最高裁判決はそのような経緯から文書が廃棄された可能性が充分あると立証したにもかかわらず、原告側に現在の文書の存在の立証責任を負わせ、当時文書があったという証明ができないから敗訴となったとのことで、西山さんはこのことについて、「官僚が文書を廃棄すれば開示を免れられるという不当なことを最高裁が認めてしまっている。」と批判されていました。そしてこの判決について知る権利の重要性と秘密保護法施行後への示唆を含んだ重要なものだった。そういう観点からの報道が全くなかったとも言われていました。また、西山さんは「知る権利の保障の前提は知らせる側がいることだ。ウォーターゲート事件やベトナム戦争のペンタゴンペーパーもそうだった。この秘密保護法は知らせる側を規制するわけだから知る権利が成り立たなくなる」と警鐘を鳴らされました。

4 パネルディスカッション

その後、田島教授、西山さんに、浦川修氏(歯科医、福岡県歯科保険医協会理事)と武藤糾明会員が加わり、パネルディスカッションが行われました。浦川氏は同法が予定している秘密取扱者への精神病歴等を中心とする適性評価制度は、精神疾患者への偏見を助長し医療を受ける権利を侵害するだけでなく、医師に患者情報の提供を求めるもので医師の守秘義務という根本原則を破壊し極めて問題であるとされ、武藤会員は国際比較、歴史に照らして見て日本の秘密保護法の問題であること、立法事実もないことなどを説明しました。

更に、今回のパネルディスカッションではパネリスト以外に4つの新聞社の報道部長クラスの方々からの会場発言がありました。

ある新聞社の方は、同法に「8割賛成2割留保である」とされ、「我が国の安全保障環境は悪化しているから、勿論プライバシーや表現の自由との関係で運用に慎重さが求められるにせよ、立法は必要だと思う。必ずしも戦前に逆戻りというわけではないと思う。適性評価制度等については危険なものを取り扱う人にはそれ相応の規制があってしかるべきでいわばフグの調理師免許の様なものではないか」との意見を言われました。

他方、反対する立場の方からは、同法による規制について「メディアがチェックできず、歴史的な検証ができなくなる」「副作用が大きすぎる」「現場の取材経験では、取材対象である公務員が「秘密保護法があるからね」などと言い、施行前なのに既に萎縮効果に似た影響が出ているように感じた」などの意見がありました。

5 最後に

今回のシンポの会場の雰囲気は独特のものがあり、参加された方の多くは、「こんな重要な問題について、必要性についての国民的議論の展開も充分な説明もないまま、さっさと国会だけで決められてしまっていいのか」と怒りと危機感を感じ「何とかせねば」「何をすればよいのか」と切実な思いを持っておられたように思います。11月22日にも当会主催の集団的自衛権に関するシンポが開催されましたが、そこでも同じような雰囲気を感じ、近年あまりにも憲法の価値観が疎かにされていることについて、国民的な怒りの胎動を感じたように思いました。
しかし、その後示された民意によれば、田島教授がおっしゃっていた流れが更に加速していく可能性が高いものと思われます。しかし、このような状況であるからこそ、諦めることなくなお一層これからの展開を厳しく注視し、立憲主義的視点から市民に分かりやすく訴えていく必要性を感じています。

災害対策委員会報告(東北大震災関連) 福島現地視察のご報告(2)

会 員 池 上  遊(63期)

―前号からの続き―

4 3日目(11月3日)

この日は祝日ということもあり、視察と言いつつ、二本松市内の酒造会社「奥の松」へ伺いました。当日は、たまたまイベントが開かれていて、無料でお酒が振る舞われていました。朝から飲み過ぎてしまいました。この後もジンギスカン(昼)や中華料理(夜)を堪能して視察らしい話がまったくないので省略します。

5 4日目(11月4日)

前日のうちに福島市内に移動し、4日目は福島県(避難者支援課)及びふくしま連携復興センターとの間で意見交換会を行いました。

福島県からは、主に県外避難者への支援(ふるさとふくしま帰還支援事業)を中心にご説明いただきました。現在でも12万4661人の避難者がいること(県内外合計、平成26年10月現在)、これら避難者に対し、地元紙、広報誌等の送付、避難者支援団体への補助事業、全国的な避難者支援中間組織への業務委託事業、県内の避難者支援中間組織(ふくしま連携復興センター)への業務委託、県外への復興支援員設置を実施していることなどをご説明いただきました。

ふくしま連携復興センターは、上記の業務委託を受け、現在は、主に避難者からの相談を受けているとのことでした。今後、避難者、避難者を支援する各種の団体、行政をつなぐ役割が期待されているようです。

以上で、今回の行程を終え、行きと逆のルートで帰福しました。

6 おわりに

私は、原発事故の年からすでに6、7回福島に行かせていただきました。

いつも気になるのは、煌々とともる東京の灯りに比較して福島の灯りの少なさです。極端な言い方かもしれませんが、福島は東京に食べられた、いつも行くたびにそんな印象を持ちます。福岡では報道されることが少ないですが、福島は復興の緒にもついていません。

現在は、政府が安全性ばかりを強調して滞在ではなく帰還を勧めること、避難者を区域によって線引きしたことによって被害が拡大再生産されています。

除染したのに線量が元に戻る、避難先で子どもたちがいじめを受ける、「避難者」と呼ばれるのが辛いと感じる、なぜ避難したのかと非難される。福島の避難者からはこのような話をよく聞きます。原発事故による被害は今も生まれ続けていますし、その意味でも原発事故は収束などしていません。

11月に新たに福島県知事となった方も原発事故の過酷さと今の厳しい現状を踏まえ、県内の全原発の廃炉を国や電力事業者に求めていくと発言されています。
私としては、今後も原発事故による被害をあるがままに見つめ、消されようとしている被害者の声を聞いて、弁護士としてどのような支援ができるのかを考えていこうと思っています。

あさかぜ基金だより 退所のご挨拶

会 員 島 内 崇 行(65期)

1 離島の公設事務所について

あさかぜ基金法律事務所の所属弁護士の島内と申します。

九弁連管内の各地には、司法過疎地域が点在しており、司法過疎地域解消のために公設事務所が設置されています。そして、数多くの公設事務所の中でも、離島の公設事務所は、司法過疎地域解消にとって特に重要な存在です。離島は、島だけで1つの生活圏、文化圏が形成されて人の入れ替えが見込めません。離島での業務は、年月が経つにつれ、利益相反の問題が生じる案件が増加し、必ず受任できる事件数が減っていくのです。ですので、離島では、弁護士が定着することが非常に難しく、所長弁護士が短期で入れ替わっていく箱としての公設事務所が必須なのです。

その九弁連管内の離島の一つである長崎県壱岐市にも、壱岐ひまわり基金法律事務所という公設事務所があり、平成27年1月頃、現所長の松坂典洋先生が、任期満了で退任されます。さらには、長崎県対馬市の対馬ひまわり基金法律事務所において、任期満了による現所長弁護士の退任が、平成27年初頭に控えております。この2事務所は、設立当初から、短い期間で引き継ぎがなされており、今後も定着を見込むことが出来ない状況と思われます。

2 赴任のご挨拶

さて、冒頭で説明した壱岐・対馬のひまわり基金法律事務所ですが、私は、平成27年1月より、長崎県弁護士会に登録替えをし、壱岐ひまわり基金法律事務所の後任所長として赴任することになりました。私は、平成24年12月に弁護士登録しましたので、ほぼ2年間あさかぜ基金法律事務所に在籍することになりました。

ひまわり基金法律事務所の所長弁護士は、全国各地から応募を募り、その応募者の中から、各ひまわり基金法律事務所を支援する支援委員会による選考を経て、採用されます。

そして、壱岐ひまわり基金法律事務所につきましては、後任所長を選定する選定委員会が、平成26年8月22日、長崎県壱岐市で開かれました。私も、九弁連管内の司法過疎問題には九州で対処するという理念のもとに設立されたあさかぜ基金法律事務所の所員として、壱岐ひまわり基金法律事務所の後任所長に応募のうえ、選定委員会による選考手続を受けました。後任所長に応募した弁護士は、私を含め2名でしたが、私は、なんとか採用にたどり着くことが出来ました。

福岡では、前日の8月21日の深夜からバケツをひっくり返したような大雨が降り、私は、何度も緊急エリアメールの着信音に睡眠を邪魔され、寝不足のまま現地に向かうことになりました。また、当日は、大雨の影響で波が普段より高く、乗り物酔いに対する耐性が低い私は、簡単に船酔いすることになりました。

このような逆境にもかかわらず、採用にたどり着くことができたのは、偏に私が育成を受けたあさかぜ基金法律事務所に深く関わっていただいている皆様のご支援、ご協力のおかげでございます。

3 あさかぜ基金法律事務所について

私は、間もなく慣れ親しんだ福岡の地を離れ、壱岐に赴任します。壱岐(離島)での業務は、離島のひまわり基金法律事務所所長を経験された方々のお話を伺う限り、経営・私生活含め易しくはないようです。

しかし、私は、あさかぜ基金法律事務所で育成を受けた成果を存分に発揮し、これまでの所長弁護士と同様、又はそれ以上のサービスを提供できるよう、全力を尽くす所存です。

あさかぜ基金法律事務所は、所員一同、司法過疎問題解消への熱い思いを胸に抱きながら日々研鑽を積み、司法過疎地域への赴任の準備を着々と行っております。実際、当事務所は、これまでにも、多くの司法過疎地域に赴任した弁護士を輩出し、九州管内の司法過疎地域解消の大きな原動力となっております。
ですので、今後も、当事務所が九弁連管内の司法過疎地域解消のために存在し続けるため、皆様のご支援、ご協力を賜りますよう、よろしくお願いします。

2014年12月 1日

「転ばぬ先の杖」(第10回)

会 員 井 上 健 二(58期)

1 弁護士を活用する場合のイメージとしては、「事件の代理人として、弁護士が、自分の代理人として名前を示して、交渉や裁判で戦ってくれる」というイメージが一般的ではないかと思います。

しかし、弁護士を活用するにもいろいろな方法があり、活用の仕方によっては、紛争を防ぎ、より良く、かつより安く解決ができる場合もあります。

今回の「転ばぬ先の杖」では、一般的なイメージと違う形での弁護士活用法をあげてみます。

2 相手方との感情的なもつれが激しい場合

離婚問題や相続問題など様々な問題について、相手方との長年にわたる感情的なもつれやこじれが生じている事案では、いきなり弁護士が代理人として登場すると、さらに相手方の感情面を刺激してしまい、より紛争性が高まってしまった結果、訴訟にまで至ってしまうということがあり得ます。

そのような場合には、むしろ、最初は、弁護士を表に出さずに、弁護士から法的問題点や相手方とのやり取りの方法、紛争解決までの見通しやコストなどについて助言を受けながら、自分の名前で文書などにより意思表示することから始めてみるほうが良いこともあります。

その場合、弁護士に文書を作ってもらって、自分の名前で相手方に対し文書を出すということを検討してもよいかもしれません。そういった穏当なやり方を続けていくうちに、次第に感情面のこじれがときほぐされ、裁判にまでならずに解決する可能性もあります。

3 紛争の内容が必ずしも純粋な法律問題ではない場合

世の中で起きる紛争には、様々なものがあり、必ずしもそれらの全てが純粋な法律問題として発生するわけではありません。例えば、親族や知人などの人間関係の問題、男女の問題、近隣の問題など・・・。

弁護士は「法律の専門家」だから、法律問題以外の問題を弁護士に相談しても果たして意味がないでしょうか?その答えは、NOです。

弁護士は、「法律の専門家」でもありますが、「紛争解決の専門家」でもあります。「紛争解決」の肝がどこにあるのか、という視点から弁護士は助言できるので、その助言は役に立つことが多いでしょう。

また、弁護士は、紛争解決にとって「重要な事実」と、「そうではない事実」の切り分け作業にとてもよく長けています(訴訟における事実主張の際にそのような作業をいつも行っているからです。)。それゆえ、いかなる紛争においても、解決のために有益な視点を提示できる場合が多いように思います。

4 事業活動における活用

事業活動においては、必ずしも事業上のトラブルだけではなく、様々な場面で弁護士を活用できます。

例えば、一般的には、いわゆる「商談」に弁護士を関与させるイメージはないかもしれませんが、自社の利益を決する「値決め」交渉などにおいて、交渉の進め方の方針立案、相手方に対する提案のための文書作成、協議事項の優先順位の判断など、様々な場面で弁護士を活用することは、自社の利益を守るために有益となる場合があります。これは、日々法的交渉を業務として行っている弁護士の「交渉の進め方の勘所」を活用するものです。

また、大企業においても、「消費者の視点からみて、その企業の判断が正しいか否か」を検証する際に、消費者の目線を持った弁護士の意見を聴取することは今後これまで以上に重要になってくるでしょう。

このように、事業活動においては、弁護士の活用法として、その「法律知識」だけでなく、スキルや立場を活用することができるのです。

5 以上のように、弁護士にはいろいろな活用法がありますので、「ちょっと誰かに話を聞いてほしい」という段階からでも、是非、弁護士に相談してみてください。自分では気づかなかった解決のヒントが見つかるはずです。

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