弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
アフリカ
2019年12月 4日
アフリカを見る、アフリカから見る
(霧山昴)
著者 白戸 圭一 、 出版 ちくま新書
日本のメディアではアフリカについての報道・ニュースがとても少ないですよね。ルワンダで大虐殺が起きた、スーダンに自衛隊が派遣されたということは断片的に報道されますが、アフリカの各国が今いったいどんな様子なのか、さっぱりわかりません。
アフリカが登場するのは、相変わらず自然公園内の野生動物たちばかりのような気がしますが、今、アフリカでは中国の存在感がすごいようです。
21世紀初頭のアフリカで起きた最大の「事件」は、アフリカ諸国に対する中国の影響力の劇的な増大である。2015年までの15年間で、サハラ砂漠以南のアフリカ(サブサハラ・アフリカ)から中国への輸出は11倍に、中国からの輸入は12倍になった。中国は、今やサブサハラ・アフリカにとって最大の貿易相手国である。
2017年の中国の対アフリカ投資残高は430億ドル。フランスは640億ドルなので、それには及ばないものの、日本の90億ドルの5倍に近い。エチオピアの首都アディスアベバにあるアフリカ連合(AU)本部ビルは中国の援助で建設された。
日本では、そうはいっても中国はアフリカで嫌われているという認識が根強いが、果たしてそうなのか・・・。
実は、ナイジェリア人の85%、ガーナ人の67%、ケニア人の65%が世界に対する中国の影響を肯定的にみている。日本人は「信じたくない」ものかもしれないが、実は全体として中国は、アフリカで肯定的に評価されているのだ・・・。
それは中国のインフラ投資や開発を評価(32%)、中国製品は安い(23%)、中国のビジネス投資(16%)が根拠となっている。
「中国はアフリカで嫌われている」という日本の認識は、「中国はアフリカで嫌われていてほしい」という日本人の願望の反映でしかない・・・。
日本は素晴らしい国だと見る人は、世界の客観的な状況に目をつぶっているのではないか・・・。
自衛隊も恒久的基地を置いているジブチには、アメリカと中国の基地がある。そして、北朝鮮もアフリカに進出している。エチオピアには、北朝鮮の技術支援を受けている兵器工場がある。ウガンダの警察官4万3千人のうち1万7千人近くが北朝鮮の講師100人から訓練を受けた。
安部首相は毎月のように海外へ出張していますが、その外交で成果をあげた話は見えてきません。アフリカ諸国とも交流していても、パッとしない話ばかりです。平和憲法をバックとして、軍事ではなく平和外交を強めたら、アフリカ諸国とももっといい関係がもてると思うのですが、軍事一辺倒の安倍首相には無理な注文のようです。
アフリカの実際を知ることのできる貴重な新書でした。あなたも手にとって読んでみてください。
(2019年8月刊。820円+税)
2019年7月17日
すべては救済のために
(霧山昴)
著者 デニ・ムクウェゲ 、 出版 あすなろ書房
ノーベル平和賞を受賞したアフリカ(コンゴ民主共和国)の医師が自分の半生を語った本です。
女性へのむごい性暴力の実際、著者自身が何度も九死に一生を得て助かった話など、読みすすめるのが辛くなる本ですが、なんとか最後まで読み通しました。
コンゴの女性虐待はすさまじいものがあります。
レイプは始まりにすぎない。その後に暴力行為が続く。膣に銃剣を突き入れる。棒にビニールを被せ、熱で溶かしてから挿入する。下腹部に腐食性の酸を注ぐ。性器内に銃身を差し入れて撃つ。目的は、殺すのではなく、徹底的に傷つけること。その結果、被害女性の多くは糞尿を垂れ流す状態となる。
汚物にまみれて悪臭を放ち、日常の仕事をこなすのにも苦労する。性の営みをもつなど問題外。子どもは産めない。夫からは穢(けが)れ者とみなされる。無理やり犯された事実など関係ない。社会から締め出されてしまう。
コンゴでは、性暴力自体が最大の武器となっている。なぜか・・・。
村を制圧しようとするとき、最初に標的となるのは女性だ。社会全体での女性の地位は低くても、家の仕事をほとんどこなしている女性は、家庭では重要な地位を占めている。女性に暴力を振るうことは、必然的にその家族を傷めつけているのと同じこと。
働き者で責任感の強いコンゴの女性は、家族がつつがなく暮らしていけるよう毎日、心を砕いている。そんな女性を襲うことは、家族全体を攻撃し、その安全を損なう行為でもある。同時に、夫を深く傷つける方法でもある。多くの男性にとって、凌辱された妻と暮らすことほど屈辱的なことはない。
村々を破壊し、蹂躙するのに戦車や爆撃機は必要ない。女性をレイプするだけでよいのだ・・・。
ムクウェゲ医師の活動を紹介しているドキュメンタリー映画『女を修理する男』(2015年、ベルギー)がDVDになっているそうです。みなくてはいけませんね・・・。
生命の危険にさらされながら奮闘しているムクウェゲ医師の活躍に頭が下がります。
それにしても、長く独裁者として君臨していたモブツ大統領が中国の毛沢東個人崇拝をとり入れていた、というのには驚きました。そして、この独裁者の統治方式を他のアフリカ諸国の独裁者がとり入れて広がったといいます。恐ろしいことです。
コンゴでは豊富な地下資源があり、それを狙って各勢力が争っているようです。ケータイ(スマホ)の重要な部分もコンゴのレアメタルのおかげのようです。大虐殺のあったルワンダは、今では平和で落ち着いているとのこと。コンゴも早く安定した社会になってほしいものです。そのためには武器に頼らない平和的な取り組みをすすめるしかないと思います・・・。
アフリカの実際を知るために欠かせない本だと思いました。
(2019年6月刊。1600円+税)
2019年2月 1日
国境なき助産師が行く
(霧山昴)
著者 小島 毬奈 、 出版 ちくまプリマ―新書
「国境なき医師団」って、すごいですね、心から尊敬します。先日は女性看護師の活動を紹介しましたが、今回は、同じく日本人女性ですが、助産師です。
2014年から、6ヶ国で8回も出動しているそうです。本当に大変そうな仕事を著者が生き生きとやっている様子に心を打たれます。中村哲医師が活動しているパキスタンのペシャワールに著者も助産師として出動しました。
パキスタンの女性は、とにかく多産。最高記録は16人。5人目、6人目の出産はあたりまえ。女性が人として価値を認めてもらえるためには、出産して多くの子どもをもつこと。それだけ・・・。
トイレがない、汚い、そんな状況にあわせるため鍛えあげられた著者の肛門はウォシュレット不要になっているとのこと。いやあ、信じられない訓練です・・・。
日記を書いて、思ったことを吐き出す。そして、ウクレレをひいて楽しむ。さすが、です。
MSFに入る前は年収600万円をこえていたのに、月給手取り11万円のNGOスタッフの身分。いやはや、すごい覚悟ですね・・・。
現地スタッフと折り合いをつけるのも容易なことではないようです。それはそうだろうと私も思います。だって、生まれ育った環境がまったく違うわけですから、日本からちょっと出かけて簡単に仲良くなれるはずはありません。スタッフに何かというとお菓子を配って、ごきげんとりをするメンバーもいたようです。もちろん、悪いことではありませんが、次の人が困ることもありますよね、それって・・・。
レバノンの難民キャンプに行ったとき、この国で謙虚な人はつぶされる。日本では謙虚な人が高く評価されるけれど、レバノンではまずは自己主張が必要。どんな人と知りあいで、どれだけの資産をもって、持ち家があるか、どれだけの高級車に乗っているのかによって、人としての価値が大きく左右される。
レバノンでは、治療費だって交渉して負けてもらう。半額から4分の1ほどに・・・。医療もビジネスという精神が定着している。
2016年から2017年にかけて、8000人近い難民がリビアからイタリアに向けて地中海を渡る途中で亡くなっている。大変なことですよね、これって・・・。
船上で出会った妊婦の半分以上は、売春やレイプからの妊娠。
生まれてホヤホヤの新生児を抱いている母親は、本当にいい顔をしている。新生児を抱いているときにしか出ない、何とも言えない柔らかい表情が最高。
母体死亡の理由の多くは出血。多児の出産は、産後多量出血になることが多く、一度出血すると、水道の蛇口をひねったようにとめどなく続いてしまう。
南スーダンの非難区域にある病院の現地スタッフは500人。みな生き生きと働いている。仕事があること、自分が求められている存在であることは、たとえどんな環境にいても生き甲斐になる。
日本人も、海外で、こうやって献身的に人道支援活動をしていることを知ると、うれしくなります。アベ首相がしているような「軍事の爆買い」なんかやめて、日本政府も本格的な人道支援こそやるべきです。
(2018年10月刊。840円+税)
2019年1月24日
紛争地の看護師
(霧山昴)
著者 白川 優子 、 出版 小学館
「国境なき医師団」というものがあり、世界各地の紛争地で人道的見地から地道な活動を展開していることは知識として知っていましたが、日本人の女性看護師が活躍していたことは知りませんでした。シリア、イラク、イエメン、南スーダンほかに8年間で17回も派遣されたというのです。砲弾が頭上を飛び交うなかの医療活動です。その勇気と心意気に心から拍手を送ります。
小心者で臆病な私には、とてもできません。せめて、ささやかなカンパを捧げたいと思います。アフガニスタンでがんばっている中村哲医師をつい思い出しました。こういう人たちによって平和憲法をもつニッポンが高く評価されているのですよね、本当にありがたいことだと思います。
行けば自分も危険にさらされるかもしれない。活動中の生活環境は厳しく、戦時下での医療がスムースにおこなえるとも限らない。苦しんでいる人たちがたくさんいるのに、医療すら自由に施せない戦争とは、本当に残酷なものだ。
「何もあなたが行くことはない」
「日本でだって救える命はある」
では、誰が彼らの命を救うのだろう。彼らの悲しみと怒りに、誰が注目するのだろう。
医療に国境はない。国、国籍、人種をこえた、同じ、人間としての思い、報道にもならない場所で、医療を求めて、また医療が届かずに泣いている人との痛みや苦しみを見過ごすことはできない・・・。
外国人の女の子が患者として運ばれてきた。モスルで外国人の子どもといえば、身元は明らか。ISの戦闘員の子どもだ。両親は自爆テロで亡くなり、その女の子だけが残された。
モスルを3年間も恐怖に陥れたIS戦闘員の子どもに、スタッフたちは心から優しく接した。
戒律を課し、ときに残酷な処刑も辞さない。市民の多くが、自分の家族や親戚の誰かを殺されていた。生活から自由を奪われ、みなが傷ついていた。当然、モスル市民にとってIS戦闘員は憎い相手であるに違いない。その憎き相手であろうISの子どもの世話に、モスル市民が一生懸命になっている。
そうなんですが、そういうこともあるんですよね、大変な仕事ですね。でも、必要なんですよね、こういうことって・・・。
ラッカで収容する患者の地雷被害には、いくつかの特徴がある。
一度に運ばれてくる患者は、みな同じ一族だ。脱出するときは、家族、親戚ぐるみで決行するから。亡くなるのは、先頭を歩く一家の主(あるじ)。そのうしろを行く2人目も亡くなるか、四肢切断などの重傷を負う。列の後方になるにしたがって、傷が浅くなっていく。うひゃあ、地雷原の脱出行って、そんな痛ましい状況に陥るのですね・・・。
ラッカの外気温は50度。ところが、宿舎には冷房がない。不眠不休で仕事をしていても、猛暑が眠りにつかせてくれない。夜になると、蚊やダニに刺された箇所が気が遠くなるほど痒くなる。身体中、200ヶ所は刺されていた。47キロあった体重が41キロになった。
著者は7歳のとき「国境なき医師団」の存在を知り、あこがれたとのこと。それを30年かかって実現したのです。すごいですね、偉いです。
銃創のときには爆傷とちがって、手術にならない可能性がある。ところが、空爆や砲撃などの爆弾による患者だと、問答無用で手術が必要になる、しかも、負傷箇所は銃創とちがって多数のことが多く、損傷も激しい。無数の破片物が身体中に突き刺さっていることも多い。
紛争地では、酸素ボンベを決して保持してはいけないという鉄則がある。万が一の攻撃によって酸素に引火したら爆発するからだ。
規則正しい連続した銃声だと祝砲だ。不規則に続く銃声は争いの可能性がある。
MSFが支援する医療施設では、一切の武器の持ち込みを禁止している。しかし、銃は、イエメン社会では男性の象徴とされている。
いやはや、本当に頭の下がる大変な活動です。生き甲斐を見失っている日本の若者に、もっと広めたいものです。
(2018年10月刊。1400円+税)
2018年12月 4日
シエラレオネの真実
(霧山昴)
著者 アミナッタ・フォルナ 、 出版 亜紀書房
読みすすめるのが辛くなる本でした。
著者が10歳のとき、父親は逮捕され、翌年、国家反逆罪で絞首刑となりました。
父親はシエラレオネで生まれ育ち、イギリスに渡って医師となります。スコットランド出身の白人女性と結婚して、シエラレオネに戻って医師として活躍するのですが、腐敗した国内政治を立て直すために政治家となり、財務大臣をつとめるのです。ところが、権力者の首相とそりがあわず、ついに辞表を出し、首相からぬれ衣を着せられて逮捕・有罪(死刑)となったのでした。
シエラレオネはアフリカ大陸の西側にある共和国で、面積は北海道よりも小さい。人口は1975年当時300万人で、現在は720万人。1961年4月にイギリスから独立した。シエラレオネはダイヤモンドを産出し、その利権をめぐって国内の民族を背景とする党派が激しく争った。映画『ブラッド(血)ダイアモンド』に状況が描かれています。
ユニセフ親善大使として黒柳徹子もシエラレオネを訪問していますが、子ども兵士がいたり、腕や脚を切断するなどの残虐行為も横行していました。
ガーナのエンクルマ大統領が一党制国家を提唱した。複数政党制民主主義は民族の分断を助長し、社会や経済の発展のために本来の仕事からあまりに多くのエネルギーを奪うとした。ケニアのケニヤッタ、タンザニアのニエレレ、ザンビアのカウンダ、アラブのバンダが単一政党制の政府をつくった。いずれも独裁政権をつくって腐敗していったのです。これって、いまのアベ「一強」と似たところがありますよね・・・。
著者の父は、被告席に立たされ、感情をこめて演説した。しかし、それはムダだった。そこには法も正義もなく、あったのは、ためらわずに前進し、みんなを圧倒したままにする、腐敗した巨大な法律の罠だけだった。死刑を宣告された父は、命乞いすることは拒んだ。判決の翌日、絞首刑を執行された。刑務所の前で棺の蓋を開いて公開された。墓地に運ばれると、酸をかけて集団墓地に投棄された。
アフリカの民主化というのはなかなか苦難の道をたどっているようです。暴力に頼っていては何事も解決しないと思うのですが、理性をみんなが発揮する日が来るのはまだ遠い先のことなのでしょうか・・・。暗然とした気分になりました。
(2018年10月刊。2400円+税)
2018年8月 4日
ピラミッド
(霧山昴)
著者 河江 肖剰 、 出版 新潮文庫
ピラミッドは誰が、何のために、どうやってつくったのか・・・。その知的好奇心をズバリ満足させてくれる文庫本です。
ピラミッドをつくったのは奴隷ではないようです。4000人の労働者が2班に分かれて、その2000人は20人の小隊が10組で中隊をつくり、10の中隊から成っていた。そして、これを支える労働者がいたはず。
労働者は長屋に住み、1日に1回パンが焼かれ、人々は4日に1度、巨大なパン(9494キロカロリー)を1個うけとっていた。パンとビールの他にも、肉やニンニク、玉ネギなどの食料が配給されていた。これでは奴隷とは考えられない。大量生産による大量消費を享受していた労働者たちによってピラミッドは築造された。巨石を運ぶ労働者だけに意欲ある人々をきちんと統率しなければピラミッド築造という成果をあげることは難しいこと。
著者たちは、このような労働者居住区の発掘に成功し、パン焼き工房を探しあて、当時の原材料で出来るパンを再現・復活したのでした。すごいです。
労働者居住区はクフ王やカフラー王のピラミッドの近くに存在していたのでした。彼らは決して奴隷ではなかったし、何十万人という人数でもなかったのです。
では、どうやって巨石をピラミッドの上へ積み上げていったのか・・・。
巨石はすぐ近くから切り出し、人工的につくり出した傾斜路で運びあげていった。労働者をきちんと統率できれば、クレーンなどを使わなくても可能なことが、現代科学で証明されている。要は労働者の統率力があるかどうか、だというのです。
ピラミッドが王の墓であることは、今日では学界の定説になっているようです。
ピラミッドをつくったクフ、カフラー、そしてメンカウラーは、まだファラオと呼ばれていなかった。ファラオと呼ばれ始めたのは、1000年もあとのトトメス3世のころから。
ファラオは、ペルアアというエジプト語から発生している。これは、大きな家、大宮、王家の土地を意味した。それが聖書でパロと訳され、いつしかファラオと発音されるようになった。
ピラミッド周辺の発掘にずっと従事している学者なので、その体験にもとづいて大変わかりやすくピラミッドを解説してくれています。
(2018年4月刊。630円+税)
2018年5月29日
ジハード大陸
(霧山昴)
著者 服部 正法 、 出版 白水社
アルシャバブやボコ・ハラムなど、アフリカのあちこちで凄惨なテロを敢行しているジハーディストに肉迫したルポルタージュです。
イスラム過激派がアフリカ各地で猛威をふるっている背景には、若者たちに職がなく、貧富の格差がますます激しくなっている深刻な現実状況があります。ですから、武力で制圧したり、テロリストのリーダーをドローンで暗殺しても何の解決にもなりません。第二、第三のリーダーが次々に生まれてくるだけなのです。
どの国に行っても、一般のイスラム教徒はテロを支持していないし、共感もしていない。イスラム圏の伝統文化がしっかり根づいている地域のほうが、イスラムの教えにもとづくモラハ社会規範がしっかりしているため、ほかの宗教が多数派の地域と比べても、むしろ治安がいい。
アルシャバブとは、アラビア語で若者を意味する。ふつうのソマリ系住民、ふつうのイスラム教徒は、アルシャバブを支持しておらず、両者は同一視できない。
アルシャバブの活動資金は、砂糖や木炭の密輸である。
アフリカへの進出が著しいのが中国だ。中国はアフリカに積極的に投融資をしている。中国はその見返りとして、アンゴラの石油を得た。アンゴラは、中国への最大の原油供給国となっている。アンゴラの経済成長率は15%にもなり、首都ルアンダのホテルは1泊400ドル(4万円)もする。
ジハーディストというテロ集団は、南アフリカの正規のパスポートを利用・横流ししている。
ジハーディストが若者を勧誘するときの決め手は二つ。一つは、洗脳だ。大義のために死ぬことの崇高さ、そして、死後にはたいへんな幸福が待っていると説教する。そして、もうひとつがカネ。リクルーターには成功すれば10万円がもらえる。新規メンバーは8万円もらえる。
ソマリアへ旅行にやってきた外国人が簡単に殺されるのは、事件が世界各地に放映されて、ソマリアは危険で、まだ安定していないというイメージをつくりたいからだ。
ジハーディストたちの資金源として大きいものに誘拐による身代金というものがある。身代金の総額は累計で1億2100万ドルにもなっている。
ジハーディストたちは、こう叫ぶ。
ヨーロッパは、これまでアフリカから資源などを盗んできた。アフリカ人は、今、それを取り返そうとしているだけなのだ。
これは、まさしく、本当にそのとおりなんですよね。
著者は1989年、大学1年生のとき、19歳のときに、アフリカ各地を一人で旅行してまわったとのことです。今となっては、古き良き時代だったと言うしかありません。現代アフリカでは考えられません。
(2018年2月刊。2200円+税)
梅雨入り前の五月晴れの日曜日でした。午後からジャガイモを掘りあげました。少し早いかなと心配しつつ2月に植えました。5月に白い花が咲き、葉や茎が黄色く枯れた状態になりましたので、梅雨入り前に掘りあげることにしたのです。畳2枚分くらいの広さに4つのウネをつくっていました。掘り上げると、ごろごろ大小のジャガイモが姿をあらわしてくれました。
つるんと細長いメークイン、ごつごつしたジャガイモ顔のダンシャク、ダンシャクに似て丸っこいけれど、ところどころに紅いしみのようなものを身につけているキタアカリの3種類です。
幸い、これまでジャガイモ栽培で失敗したことはありません。植えたあとは雑草とりをしたくらいで、美しいジャガイモを食べることができました。
次々に掘り上げ、ザルが足りなくなりました。2人では多すぎるし、かといって配って歩くには少なすぎる量でした。暗室保存がいいとのことですので、ダンボール箱に入れて、階段下の物置きに保管することにしました。
とりあえず小さいジャガイモをオーブンで焼いて、バターの香りとともに札幌の街角で売られているジャガバタを思い出しながら、食べました。 あとは、コロッケそしてポテトサラダでいただきたいものです。
夜8時近くになり暗くなってきましたので、恒例のホタル見物に出かけました。歩いて5分のところにある小川にたくさんのホタルが今年も元気よく、フワリフワリと音もなく飛んでいました。
小川のそばにガードレールがあり、そこで2度も転びそうになったので、今年は十分気をつけました。
ここのホタルはこぶりです。ゲンジボタルと聞いていますが、ヘイケボタルかもしれません。フワリフワリとすぐ近くも飛んでいますので、手のひらに乗せてみます。あわてる様子もなく、手のひらに乗ってじっとしています。息を吹きかけると、またフワリフワリと飛んでいきます。
一斉明滅を繰り返す夢幻の里が近くにある暮らしっていいものです。
2018年5月20日
コンゴ共和国、マルミミゾウとホタルのいきかう森から
(霧山昴)
著者 西原 智昭 、 出版 現代書館
ゴリラは平和主義者です。大きな身体だけど静かな気性、不器用だけど、きれい好き。隣のグループとも、いたって平和的。泥沼に肩まで浸かりながら、幸福そうに目を細めて大好物の水草を食べる。
ゴリラは歌をうたう。ハミングで、うまい。ヨーロッパの民謡みたいなメロディーで、人間そっくり。草食性のゴリラの糞は草っぽい匂い。これに対して、肉を食べるチンパンジーの糞は人間と同じで臭い。ゴリラはチンパンジーとちがって肉は食べないが、アリやシロアリは食べる。
アフリカで生活するとき、マラリアには予防接種はない。予防薬をのみ、蚊にむやみに刺されないよう用心するしかない。しかし、村から遠く離れた森のなかで生活していると安全。人が住んでいないので、マラリア蚊がいないから・・・。
アフリカのジャングルにすむ野生動物は一般的に危険がない。基本的におとなしく、想像されるほどの危険はない。こちらがひどく相手を驚かさない、静かにしている、相手に異常に接近しない、武器をもたない、そうすると加害を加えてくることはまずない。危険なのは、視界の悪い森のなかで急に鉢合わせしたときくらいのこと。
あえて危険な動物をあげるとなると、ヘビだろう。
アフリカで何より怖いのは、東京のド真ん中と同じで、人間。内戦があって殺し合いが始まると、その前に逃げ出すしかない。
アフリカの森に無数のホタルが明滅する森があるといいます。ぜひ行ってみたいです。
学者って、森の中でじっとゴリラを観察し続けるのですよね。その忍耐強さに驚嘆します。
(2018年1月刊。2200円+税)
2018年4月11日
避けられたかもしれない戦争
(霧山昴)
著者 ジャン・マリ―・ゲーノ 、 出版 東洋経済新報社
国連PKOの責任者だったフランス人が世界各地の紛争現地の実情をふまえて、国連のなすべきことを提言した貴重なレポートです。
この本を読むと、つくづく日本のなすべきことは、他の国と違って戦争放棄を定めた憲法をもつ平和国家としての提言であり、その立場からの貢献だということです。要するに、アフガニスタンでがんばっている中村哲医師のような地道な活動をこそ日本のなすべきことです。日本が他の国と同じように武力で紛争の現場に出かけたところで、何の力にもならないことは明らかです。
日本は軍事力という現実を認めながらも、対話と外交の価値を推進するという平和の文化を築くことに、国家としても、これから国連で働く日本人職員の手によっても、大きく貢献できる立場にある。著者は、このように強調しています。
アフガニスタンに注ぎ込まれた数十億ドルもの資金は、たいていムダにされた。現実には、その資金のほとんどは、本来の目的のためには使われなかった。たとえば、日本からの資金援助で、莫大な費用をかけて環状道路の一部が敷設された。しかし、その効果的な維持管理対策は講じられなかった。過酷な冬が、この投資をダメにしている。
軍隊だけではアフリカの紛争地帯に平和をもたらすことはできない。
国連にあってほかの国にないものは、自分たちが公明正大であるという信用を築く力である。それは、きわめて厳格で規律ある武力行使が求められる。
国連も高度な訓練を受け、迅速に反応できる部隊をもつ必要性を痛感した。何より肝心な要素は、和平を支える政治基盤なのである。
アフリカの腐敗したエリート層は、自分の財産を先進国の銀行に預け、先進国の法律から恩恵を受けている。自国の無法状態のおかげで、利益を独占し、恩恵を受けている。
脆弱(ぜいじゃく)国家からは優秀な人材が流出していく。欧米で暮らしたら、母国にいるより豊かになり、自分も子弟も高い学歴が得られるからだ。
国連が助けようとしている国に成功をもたらすことが出来るのは、その国の人々だけ。
グローバル化した世界では、愛国心はますます古臭く見えるが、実は愛国心がなければ失敗する可能性は高い。
600頁をこす大著ですが、国連PKO担当事務次長として世界各国の紛争の現場に立った体験をふまえている本なので、説得力があります。著者は私と同じ団塊世代です。1968年に起きたパリのカルチエ・ラタン騒動の世代でもあります。
(2018年1月刊。3400円+税)
2018年2月10日
ヤナマール
(霧山昴)
著者 ヴュー・サヴァネ 、 バイ・マケベ・サル 出版 勁草書房
セネガルの民衆が立ち上がるとき、というサブタイトルのついた本です。
2011年6月23日、アフリカ大陸の西端にあるセネガルの首都ダカールに、大規模な民衆騒乱が発生した。市民の広範な抗議行動を主導したのは、社会運動体「ヤナマール」。あくまで非暴力の市民的不服従を訴える社会運動体だ。
ヤナマールは、フランス語で、もう、うんざりだという意味。
政権は、反対勢力を骨抜きにして服従させ、統制を企ててきた。だから市民側が警戒を怠ってはいけない。ホワイトカラーが処罰されない一方、ちっぽけなこそ泥たちには、異例の厳しさで司法の剣が振りおろされている。庶民がしばしば飢えや必要に迫られて、あわてて仕出かす犯罪に、司法は道理にあわないほど、情け容赦のない態度を示す。ちょっとした窃盗を犯した庶民が刑務所に何年も服役する一方で、数十億CFAを不正に巻き上げる連中には、目を瞑らせるか、無罪になる。これって、まるで今の日本と同じです。「アベ友」はやりたい放題で捕まらず(アベに見捨てられたカゴイケ夫妻は半年も拘置所ですが・・・)、コンビニの万引きは容赦なく逮捕して刑務所へ・・・。
国家は、金持ちになるためのたんなる手段。支配をめざすエリートたちの賭金になりさがった。カケコータローが記者会見することもなく(奇妙なことに週刊誌の突撃取材もありません)、カゴイケ氏は半年近くも冷たい拘置所のなかに・・・。この差別扱いはひどすぎます。
ヤナマールは、この人、あの人といった個人のものではない。ケータイとスマホで、呼びかけあう運動体だ。
ちょっと読みにくい本ですが、アフリカ諸国で民主化運動が始まっている状況が紹介されています。やはり、何事もあきらめてはいけないのですよね。
(2017年8月刊。2500円+税)