弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

人間

2019年11月 5日

皮膚はすごい


(霧山昴)
著者 傳田 光洋 、 出版  岩波科学ライブラリー

人間の身体がいかに良くできているか、またまた認識が深まりました。
人間の先祖であるアウストラロピテクスは全身が体毛で覆われていた。つまり、いまのように体毛がなくツルツルの肌というのではなかったのです。では、いつ体毛がなくなったかというと、120万年前のこと。体毛がなくなり、皮膚がむき出しになったことから、人間に何が起きたのか・・・。表皮を環境にさらすことで、さまざまな情報が全身を覆う表皮からもたらされるようになった。
人間の全身を覆うケラチノサイトの数は1層で200億あるので、少なくとも1000億個以上はある。これは脳の神経細胞数と同じレベル。その一つ一つが温度や圧力や電磁波などの物理現象、化学刺激のセンサーを複数もっていて、情報処理施設であり、かつ、身体や脳に指示を出す能力がありことを考えると、表皮からもたらされる環境情報は膨大な量になる。
瞬時の情報処理は、表皮とせいぜい脊髄でなされ、脳にもたらされた情報のあるものが記憶として脳に保存される。
表皮は可視光のみならず、紫外線から赤外線まで感知できる。音については、耳の限界、2万ヘルツを超えた超音波まで感知できる。表皮は大気圧を感じ、酸素濃度を感知し、地球の磁場程度の弱い磁気も感知し、電場にも応答する。
人間は、本来、自分の身体を守るためのものだった表皮から体毛をなくし、あえて外界にさらし、世界を、そして宇宙を知る装置に変えた。いわば、皮膚を世界に宇宙に向けて開放したと言える。
人間の皮膚やトマトの皮の表面は、死んだ細胞が重なって出来ている。
人間の皮脂には、水をはじくスクワレンという脂質が入っている。
人間の皮膚にいちばん似ているのはカエルの皮膚。
激しく運動したあと、身体を冷やすために汗をかくのは人間と馬だけ。
人間が体毛を失ったことの結果なのか、それを目的として体毛をなくしたのか、それも知りたいと思ったことでした。とてもとても知的刺激にみちた本です。
(2019年9月刊。1200円+税)

2019年11月 4日

秋元治の仕事術


(霧山昴)
著者 秋元 治 、 出版  集英社

私は、『こち亀』を読んだことは1回もありませんが、それが毎週連載を40年間も続けていた人気マンガだということは、もちろん知っています。
その著者が40年間も休まずに毎週連載を続けられた理由を大公開した本です。
読んでみると、著者の才能が大前提ではありますが、なるほどと思うことばかりでした。
マンガの世界は先のことが予想できない。突然、終わりを迎えてもおかしくない。そこで、とにかく面白いものを描き、1回1回、乗り切っていくことだけを考えてやってきた。先のことまで考えない。変化を恐れず、常に新しいネタを仕入れ続けてきた。
好きなことだけをやってきた。仕事を苦痛だと思ったことは一度もない。
漫画家はネタを考えるのが仕事の根幹。ネタを考えるのが不得意な人は、漫画家には向いていない。
漫画家はリスキーな職業なので、深く考えることができる人なら、まず選ばない道。
何事もなかったかのように、変化なくずっと毎日続ける。これこそが集中力を持続させるコツ。いつまでもくよくよ悩まず、ある程度悩んだら、さっと切り換えて次に行く。
『こち亀』のレギュラー連載は、十分なストックをもっていたので、落ちるというピンチを感じたことはなかった。
この書評も20年近く続けていますが、この間、1日たりとも切れていません(ときに飛んだのは、アップ担当者が急に休んでしまったからで、私が原因なのではありません)。
そのためのスケジュール管理を厳密にやっている。時間は、自分から積極的に生み出さないといけない。1本の『こち亀』に初めは7日間をかけていたが、6日間に短縮し、5日間で仕上げるというペースを確立した。
仕事をするのは朝9時から夜7時まで。昼と夕には食事のための休憩時間を1時間ずつとる。残業はなるべく少なくし、徹夜はしない。社員も、きちんと休みをとり、タイムカードで出退勤管理をしている。
著者は午前2時までには就寝し、起床は7時半。このようにして時間をきちんと守ると、社会的つきあいもできるようになる。
ギリギリの仕事はしない。原稿はいつも早めに担当者に渡す。
ながら族で仕事をする。マンガを描くときにはFM放送(ラジオ)を流しっぱなしにしている。ラジオから、新商品の情報や最新のニュースが頭に入ってきて、次のマンガのネタになっていく。
ネットでの評価は見ない。そしてつまらない批判は無視する。ファンレターは読む。
本屋には気分転換をかねて出かける。
眠いときは、無理をせず、しばし仮眠をとる。健康を保持し、仕事を続けるための一番の特効薬は、悩まないこと。
私より4歳だけ年下の著者ですが、私の考えと著者のやっていることに共通するところが多く、大変共感を覚えました。180頁あまりの本ですが、立派な仕事術がぎっしりの本ですので、あなたにも一読をおすすめします。
(2019年8月刊。1200円+税)

2019年11月 2日

極北のひかり


(霧山昴)
著者 松本 紀生 、 出版  クレヴィス

1年の半分をアラスカで過ごし、厳寒のなかで動物やオーロラを撮影する写真家の体験記です。
クマを用心し、蚊の大群と戦い、猛吹雪に耐える生活です。ところが、日本では写真を撮らないという徹底ぶりにも驚きました。
この本を読んで、クマよりも寒さよりも、何より蚊との戦いこそが、もっとも大変だと想像しました。アラスカに発生し生息する蚊は、なんと17兆匹。これはアラスカの総人口の2400万倍だ。
蚊をおびき寄せるのは、汗、体温そして呼吸。テントの真上5メートル付近の空洞が黒く染まり、揺れ動くほどの蚊の大群にテントは包まれる。外で用を足そうとして下半身をむき出しにしたら蚊の格好の餌食となる。うひゃあ、これはたまりませんね・・・。
蚊の対策はネットで頭を覆う。そして、アメリカ陸軍が開発した薬(ディート)を使う。
蚊はカリブーにも襲いかかる。カリブーが蚊にやられて衰弱していく。
食事は、朝も夕も同じ、豆雑炊。異なるのは、ふりかけの種類だけ。なぜ、豆雑炊なのか・・・。軽量で安価。腐らないので長期保存できるうえ、あっという間に調理できる。そして、匂いを発しないので、クマを誘引することがない。
アラスカのキャンプは食事を楽しむ場ではない。そう割り切る。いい写真を撮るためにここにいるのだから・・・。
クマ対策として、食料専用のテントを生活用テントから100メートルほど離して設営する。そしてクマよけの電気柵で取り囲んでおく。
いやはや良い写真を撮るためには大変な努力が、そして工夫と忍耐力が求められるのですね。おかげで、自宅でぬくぬくとしながらオーロラのすばらしい写真をみることができるわけです。ありがとうございます。
(2019年4月刊。1600円+税)

2019年10月19日

ヒト、犬に会う


(霧山昴)
著者 島 泰三 、 出版  講談社選書メチエ

大分の山中で、猟師が7頭の犬を連れてイノシシ狩りに行くのに著者は同行します。
先導する犬にはGPS発信器をつけ、全頭に発信器を装着しておく。
洋犬は獲物の臭跡を追跡する。しかし、和犬は耳と目も使ってイノシシを点で追う。点で追うことでイノシシを奇襲し、パニックにおとす。著者は道なき山中を平気で踏破できるのです。山中で野生猿を追いかけた経験があるからです。
イヌは1万5000年も前に、他の家畜に5000年より早く家畜化された。なぜか・・・。
イヌ亜目は肉食にこだわらない食性を開発した食肉類。
イヌに近いクマは足裏をかかとまですべて地面につけて歩く蹠行(しょこう)性。これは人間やサルも同じ。これに対してイヌは、趾行(しこう)性で、かかとの部分は地面から遠く離れ、つま先立ちして歩く。これは、長距離を疲れを知らずに走り、歩くことに特化したもの。爪も、ネコのような鋭い突き刺す爪先ではなく、地面を蹴るのにふさわしい頑丈な爪となった。
イヌの長い鼻面も、そこを流れる血液を冷却するのに効率が良く、地上で長距離を走る能力を高めている。
犬は世界をかぐ手段を気体液体と2重にもっている。
犬は塩をほしがることはない。
犬には水の味に適応した味蕾がある。人間にはない。犬は、その敏感な音や臭いの受容能力、さらには瞬間的な動きを解析できる能力によって、人間のごくささいな動きや臭いや音から、伝達されるべき情報を探りあてることができる。こうやって、犬は主人の意図を正確に感じとる。イヌは人間が思う以上に繊細な感覚で人間とコミュニケーションをとろうとしている。人間の側が、それを分かっていない。
犬には妄想はない。
著者の動物そして孫を観察して書きつづられる言葉には、どれも深い含蓄があり、考えさせられます。私の大いに尊敬する素晴らしい動物学者なのですが、東大闘争を扱った『安田講堂』だけは、残念ながら事実に反した失敗作です。あの本だけはぜひ一刻も早く絶版することを願っています。
(2019年7月刊。1750円+税)

2019年9月18日

かこさとしの世界


(霧山昴)
著者  加古 里子PT 、 出版  平凡社

絵本『どろぼうがっこう』は大傑作です。子どもたちに何度よんでやったかしれません。校長のくまさか先生は、歌舞伎役者そのもののいでたちで教壇に立ちます。教室に座って授業を受ける生徒たちは、いずれおとらぬ典型的なヤクザのおっさんたち。よく小学校に見かける小さな机と椅子におとなしく座っているのも愛敬です。そして、抜き足さし足で大きな建物に忍び込むのです。そして、その大きな建物とは・・・。
いやあ、こんなのって、子どもの教育上よくないんじゃないの・・・、そんな非難も受けたそうですが、子どもが絵本の楽しさを味わえるなら、いいじゃないですか・・・。少しくらい「プチ悪」のほうを子どもは好むものです。いつだって品行方正というのは面白くないし、長続きしませんよね。
そして、絵本『からすのパンやさん』も大人気でした。黒くて不気味なカラスは身近な鳥としては不人気そのものです。でも、こうやって絵本になると、どうしてどうして可愛らしいものです。それに、いろんなパンが登場してきて、楽しいのです。
絵本『だるまちゃんとてんぐちゃん』も楽しいですよ。わが家でも大人気でした。
下手(へた)うまと言ったら、怒られそうですが、飛び抜けて絵がうまいわけではありませんが、ともかく親近感のあるだるまちゃんとてんぐちゃんですので、子どもたちは目を離せなくなるのです。
かこさとしは東大工学部を卒業して昭和電工に入り技術者として仕事しながら、なんと川崎市古市場でセツルメント活動として子ども会に関わったのです。私も同じ古市場で若者サークルとかかわる青年部に所属していました。私の入ったサークルは「山彦サークル」といいますが、そのときの仲間に「かっちゃん」がいます。つい先日、50年ぶりに突然、「かっちゃん」から電話がかかってきて大変おどろき、また、うれしく思いました。
かこさとしは古市場のセツルメント子ども会活動のなかで、紙芝居をつくって披露しました。ところが、子どもたちは正直です。つまらないと思えば、紙芝居を放ってどこか別のところへえ遊びに行ってしまうのです。かこさとしは、ではどうやったら子どもたちの心をつかめるのか、研究を重ねました。それが絵本作家の道につながったのでした。
川崎(古市場)セツルメントの大先輩として、心より敬意を表したいと思います。みなさんも、ぜひかこさとしの絵本を手にとって読んでみてください。きっと圧倒されますよ・・・。いえいえ、子ども心に立ち戻れて幸せな気分に浸れますよ。
(2019年7月刊。2000円+税)

2019年9月17日

犬からみた人類史


(霧山昴)
著者 大石 高典・近藤 祉秋・池田 光穂 、 出版  勉誠出版

犬と人間との関わりについての百科全書です。夏休みの高速道路の行き帰りのSAで一気読みしました。めったに高速道路を長く走ることはありませんが、SAは夏休みの子ども連れでどこも大変にぎわっていました。子連れをみるとうらやましい限りです。
人間にとって犬は他の動物とは違った特異な存在である。形態上は似ていないが、視線を共有するなど、深いコミュニケーションができる関係だ。
人は犬の純粋さを信じるが、犬を裏切ったりもする。
犬は飼い主に殺されることになっても、最後まで人を信じようとする。
この最後のところで、私は泣けました。猟犬が病気になったら、保健所に引き渡して殺してしまう。でも、狩りの場でケガしたら、動物病院に連れていって治療してもらい、死んだら神様として丁寧に祭る。そして、犬肉を食べる地方は少なくない・・・。
イヌとオオカミは、よく似ているけれど違う。遺伝的基盤が異なる。オオカミをイヌのように育てても、完全にイヌのようにはならない。
今の犬にはたくさんの種類があるが、その多くは、ここ200年から300年のあいだに人間がつくり出したもの。
仔犬が生まれて3週間からr12週間のあいだに人間に会わないで育った犬は、人間を極度に恐れたり、攻撃的になったりする。この「社会化期」のうちに、仔犬は、どんな動物が自分の仲間なのかを学ぶ。イヌが人に慣れ、人の「友」になれるのは、この時期に人と接する経験をするから。
縄文時代の人々は、イヌを使ってイノシシ猟をしていた。
イヌは、人の目を見て、ヒトの視線を見る。イヌは、黒目強調型の眼となり、人に対して、「怖くない」存在であること、「幼い」存在であることをアピールした。
忠犬ハチ公が秋田犬だというのはよく知られています。しかし、秋田犬も危うく絶滅しかかっていた時期もあったようです。今では、秋田犬をロシアのプーチン大統領やザトキワ選手に贈ったりして、ますます有名になりました。私は、フランスのロワール河に旅行したとき、シャトーホテルのレストランで食事をしているとき、隣のテーブルのマダムから、「秋田犬はすばらしいわ」と声をかけられたことがあり(もちろんフランス語です)、びっくりしました。テーブルに下に、大きな秋田犬がおとなしく寝そべっていました。いやあ、こんなところでも秋田犬がいて、日本の犬だと知っているフランス人女性がいるのだと感動してしまいました。秋田犬は、とても賢くて、忠実だと最大級の賞賛の言葉を聞かされました。
犬と人間との関わりの百科全書ですので、ここでは書くのをはばかる類の話まで書かれています。犬好きの人には、たまらない本です。
(2019年5月刊。3800円+税)

2019年9月16日

そしていま、一人になった


(霧山昴)
著者 吉行 和子 、 出版  集英社

私にとって著者である女優の吉行和子とは、山田洋次監督の映画『東京家族』、そして『家族はつらいよ』の祖母というとぼけた役者だというイメージです。
ところが、1957年(昭和23年)、22歳のとき、劇『アンネの日記』の主人公アンネの役を演じたというのです。それも主役が風邪をひいて声が出なくなったので代役として登場し、見事にセリフを一度もつかえずに言えたというのです。立ち稽古には参加していたのですが・・・。すごいですね、著者自身が不思議がっています。それから劇団民芸の若手ホープになったのでした。
舞台が楽しかったことは一度もない。ただ責任感だけだった。私なんかですみません。そんな感じで、申し訳ない気がしていた。
いやはや、とんでもないことですよね。
宇野重吉は著者に言った。
「きみはヘタクソだから、他人の何倍も何百倍も、役について思いなさい。そうすると、その役の心が、客席に伝わっていくものなのだよ」
山田洋次監督は、こう言った。
「科白(セリフ)は、心のなかの思いがひとりでに出てくるようにしてください。表情をつくったり、言い方を変えたり、そういうのではなく、心とつながって自然に言えるようにしなくては、その人間を表現することができません」
「あぐり」で有名な母あぐりは107歳まで生きて、見事に天寿を全うした。そして、兄の作家・吉行淳之介は70歳で病死した。エッセイや対談の名手としてメディアでもてはやされ、女性読者に絶大な人気があった。私は、ほとんど読んだ覚えがありません。
なんだか、しみじみした思いになる家族の思い出話でした。
(2019年7月刊。1700円+税)

2019年9月 5日

ふるさとって呼んでもいいですか


(霧山昴)
著者 ナディ 、 出版  大月書店

1991年8月、イラン人の両親と3人の子どもがイランから日本に「出稼ぎ」にやってきた。子どもは6歳(長女)、5歳(長男)、1歳(次男)。3人とも日本語は話せず、ビザもなし。一家は強制送還されることもなく、子どもたちは34歳、33歳、29歳となった。
そして長女の著者は、こう書いています。
「イラン生まれで日本育ち、中身はほぼ日本人。これが私。イラン系の日本人なんだ」
2015年に著者が結婚した相手の男性は、日本とパラグアイのハーフで、生まれはボリビア。日本国籍。著者はイスラム教徒。今も豚肉は食べず、お酒も飲まない。夫君はキリスト教徒。
この本は、漢字すべてルビ(振りがな)がふってあります。漢字が読めない人にも読んでほしいという配慮なのでしょう。
一家が入国するとき、なんと手続に6時間もかかりました。そして、それから、目的地まで日本語も読めず、話せないなかで電車・バスに乗って、3人の幼い子どもを連れて目的地になんとかたどり着いたのです。
イラン人の両親は、なんとか工場で働けるようになった。すると、子どもたち3人は自宅で留守番。おおっぴらに外で遊ぶことはできない・・・。
言葉が通じない子どもたちは、笑顔とおじぎをまず覚えた。人に会ったら、とりあえずニコッと笑顔を見せ、次にペコリとおじぎをする。すると相手も笑顔になってくれる。
人がいないのを見はからって、子ども3人で、向かいの公園で遊ぶ。人目を避けていたつもりだが、実は、外国人の3人姉弟は近所でかなり目立っていた。
子どもたちはもらったテレビを自宅で見ているうちに、半年でそれなりの日本語を話せるようになった。イラン人の両親は働いているばかりで、テレビも見ないため、なかなか日本語は話せないまま・・・。
子ども同士で遊んでいると、「外国人とは遊んじゃだめよ」という日本人の親にも出会った。それでも、仲良しの子の母親が字を教えてくれた。そして、いじめっ子の家には、母親が乗り込み、著者が通訳した。いじめっ子の父親が、きちんと対応してお詫びしてくれた。
在留外国人は270万人。しかし、日本国籍をもつ人も含めると400万人と推定されている。
強制送還される外国人は、1990年代には毎年5万人もいた。最近では、1万人以下となっている。
「在留資格なし」でも、小学校に入ることができた。ところが、算数についていけない。漢字は強敵だ。
ケガすると、健康保険がつかえないので、自費。足首を痛めただけで1回4000円。これでは医者にはかかれない。ケガできない。
ブルマや水着はイスラム教の教えに反する。
ようやく在留特別許可がおりて、不法滞在ではなくなった。
400万人もの人々が、日本の文化と「たたかい」ながら、必死に生きている姿を想像できる本でした。それにしてもイランの6歳の女の子が弟2人の面倒をみながら、日本で立派に育っていく姿を本人が自信をもって語っているのに圧倒され、思わず心の中で拍手をしてしまいました。ちょっと疲れ気味のあなたに活力補強材として一読をおすすめします。そんな、いい本なんです。
(2019年8月刊。1600円+税)

2019年9月 2日

本の読み方


(霧山昴)
著者 平野 啓一郎 、 出版  PHP文庫

スロー・リーディングの実践を提唱している文庫本です。
工夫次第で、読書は何倍にも楽しくなる。
オビの言葉に私もまったく同感です。といっても、私はスロー・リーディング派ではなく速読派の人間です。少なくともこの20年来、年間500冊以上の本を読んでいます。もちろん、これは単行本です。雑誌もいくつか読んでいますし、新聞は毎日5紙は読みます。FBでの情報入手にも努めていますので、スロー・リーディングというわけにはいきません。そんな私ですが、著者のすすめるスロー・リーディングの考え方には大いに心が惹かれます。
それほどまでに疲れる世の中だからこそ、私たちにはゆったりとした読書時間が必要なのである。
本当の読書は、単に表面的な知識で人を飾り立てるのではなく、内面から人を変え、思慮深さと賢明さをもたらし、人間性に深みを与えるものである。何より、ゆっくり時間をかけさえすれば、読書は楽しい。
速読家の知識は、単なる脂肪である。速読とは、「明日のための読書」である。これに対して、スロー・リーディングは、「5年後、10年後のための読書」である。
読書は、読み終わったときにこそ本当に始まる。
読書は、コミュニケーションのための準備である。
速読の一番の問題点は、助詞、助動詞をおろそかにしてしまうことだ。
分からない言葉が出てきたら、煩を厭わず(はんをいとわず)、立ち止まって必ず辞書を引くこと。
私は、これが出来ていません。反省させられます。
スロー・リーディングに最適なのは、黙読である。文章のリズムは、黙読のほうが正確に感じとることができる。気になる箇所に線を引いたり、印をつけたりする習慣をつけておくと、内容の理解が一段と深まる。
私が速読なのは、知りたいこと、情感に浸りたいことが次から次に出てくるので、それにつきあうには早く読むしかないからです。そして、一気に読んだあと、赤エンピツで印をつけたところを振り返って引用しながら書評を書いて自分のものとし、そして忘れてしまうのです。
(2019年7月刊。680円+税)

2019年8月18日

新しいチンパンジー学

(霧山昴)
著者 クレイグ・スタンフォード 、 出版  青土社

人間とチンパンジーは、どれほど違う存在なのか・・・。この本を読むと、人間はチンパンジーによく似ていることがしっかり分かります。
アルファオスの平均在位期間は4年間。アルファオスであっても、必ずしも大部分のメスと交尾できたり、ほとんどの子どもの父親になれるというものではない。
ただし、アルファオスになったことのあるオスは、他のチンパンジーよりも平均33.4歳と長生きした。他のオスは25.5歳だった。
高順位メスは、娘よりも息子の育児により時間をかけ、結果としてオスの幼児期生存率を高めている。
メスのチンパンジーは、11歳前後で性皮腫脹を経験する。おとなオスはすぐにそのメスを違った目で見るようになり、交尾が始まる。メスは、たいてい1年か2年のうちに生まれたコミュニティを出ていく。そして、13歳ころに別のコミュニティに落ち着き、残りの一生を過ごす。メスは死ぬまで、5年間隔で出産を続け、閉経を迎えることはない。
性皮腫脹期間のメスは、きわめて性的に活発で、1時間に3.5回の交尾をする。あるメスは、1日のうちの11時間に、異なる18頭のオスを相手に、65回も交尾した。10分に1回の計算だ。
すべての交尾行動のうち、4分の1はメスが開始し、オスはその80%がメスの誘いに応じた。
チンパンジーのオスは、若いメスよりも年長の雌を好む。経産メスのなかでも、若い母親より年とった母親が好まれる。なぜか・・・。高齢のメスは、若いメスよりも順位の高いことが多く、繁殖成功度も高いからではないか・・・。
チンパンジーの母親にとって出産はそれほど大仕事ではない。チンパンジーの新生児の頭蓋骨はヒトの新生児の3分の1の大きさしかない。
チンパンジーの幼子は、母親が死ぬと孤立無援の状態に陥ってしまう。野生では、チンパンジーの出生時の平均余命はわずか15~19歳でしかない。しかし、性成熟まで生きのびると、そこからさらに平均で15~24年は生きる。野生チンパンジーが老衰で死ぬことは、ほとんどない。病気のため、またヒョウに襲われて死んでしまう。
読めば読むほど、チンパンジーの世界は人間そっくりなのです。
(2019年3月刊。2600円+税)

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