弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物

2023年1月23日

ウォンバットのうんちは、なぜ、四角いのか?

(霧山昴)
著者 高野 光太郎 、 出版 晶文社

 オーストリアに生息する可愛らしいウォンバットは知っていました。でも、そのうんちが四角いだなんて、知りませんでした。写真でみると、なるほど四角いのです。切り餅(もち)みたいです。そして、その四角い形には意味があります。
 立方体のフンは、自分の存在をアピールするためのマーキング効果をもつもの。同じ場所に長時間フンを留まらせるのに、サイコロ型のフンは最高に役立つ。丸いと、風が吹いたり、雨が降ったら、どこかへコロコロと転がっていって、なくなってしまう。
 でも、どうやって四角い形のフンをつくるのか...。それは、腸壁の硬さが場所によって違うことによる。腸壁の硬くて厚いところと、薄くて柔らかいところを交互に通過していく。すると、便には角と面が形成されていくのだ。うひぇーっ、こ、これには驚きました。そんなことが可能になるなんて...。
 ウォンバットの腸は6~9メートルもある長さで、最長14日間もかけてゆっくり消化される。排泄されるフンは基本的に非常に乾いている。
 オーストラリアにすむコアラも、ウォンバットの近縁種で、共通の祖先をもつ。
 ウォンバットは、単独行動をする生き物。野生下での寿命は長くて15年。動物園では33歳まで生きた例がある(大阪の五月山動物園)。
ウォンバットは、コアラやカンガルーと同じ有袋類。つまり、お腹の袋の中で子育てをする。
 著者は日本の大学には進学せず、オーストラリアのタスマニア大学に進学して、そのままウォンバットの研究をしています。高校を卒業して、一人でオーストラリアの大学に入って生活するなんて、とても勇気はありますよね。そして、今もオーストラリアでウォンバットの研究に従事しています。すごい、すごーい。今後も研究の成果をぜひ日本で発表してください。
 とても面白い本でした。
(2022年10月刊。税込1760円)

日曜日、フランス語の口頭試問を受けました(準1級)。3分前に問題文を渡されます。ウクライナでの戦争は日本にどんな影響を及ぼしているか、ストライキに賛成か反対か。この2問のうち1問を選んで、3分間スピーチをするのです。私は戦争の影響をフランス語で話すのは難しそうなので、ストライキのほうを選びました。
 ストライキは憲法で定められた権利だ。40年前に大きなストライキがあって以来なくなり、組合指導者がストライキをしようとしていないのは残念だ。などを、とつとつと話しました。分かってもらえたようですが、どうでしょうか。若い人がストライキをしようとしないのはなぜかと質問されましたが、私には分からないと答えるしかありませんでした。難しいことを話す能力はありませんので...。ともかく10分足らずの試験は終わりました。
この1ヶ月ほど、必死でフランス語漬けの頭にしていましたので、本当に解放感でいっぱいです。最高のボケ防止になっていると思います。

2023年1月16日

もえる!いきもののいくつ


(霧山昴)
著者 中田 兼介 、 出版 ミシマ社

 いきものたちの驚きの生態を面白く伝えてくれる軽いエッセイです。
 カササギは、わが家の周囲によく見かけますし、庭にも夫婦連れでしばしばやってきます。そんなカササギの学名が、ピカ・ピカというのを知って驚きました。
 蚊に吸われると腹立たしいこと言うまでもありません。なので、庭仕事は蚊のいない冬が一番です、でも、冬にはあまり花が咲いていません。それが残念です。さて、その蚊ですが、蚊だって叩かれたくないので、人間の皮膚にとまって吸おうとしたとき叩かれた記憶があると、人間を割けるようになる、つまり学習するというのです。いやあ、本当かなあ...。
 小ブタは、生まれてから数週間は、鼻をつきあわせて押しあうようなケンカのまねごとをして遊ぶ。戦いゴッコでたくさん遊んだ。メスの子ブタは、大きくなって、誰が強いかを決めるための本当のケンカをしたときに勝者になることが多い。
 ところが、オスはメスの逆で子ブタ時代によく遊ぶと、大人になってケンカに負けてしまう。というのは、オスの大人ブタは、子ブタのときにはまだない牙を使ってケンカするので、戦いゴッコではケンカの技術は身につかないから。
 なるほど、ですね。ルールというか、ケンカの手法が違うのですね。
 ミツバチは、アルコール入りの液体を飲む。そこで、3週間、アルコール入りのエサを与え続け、その後、3日間、アルコール絶ちをさせると、どうなるか...。
 すると、ミツバチたちは、アルコールを混ぜた砂糖水に激しく食いついた。これはミツバチたちが禁断症状にあったことを示している。
 世界の動物行動学者たちの最新研究が面白く紹介されています。
(2022年7月刊。税込1980円)

2022年12月26日

「死んだふり」で生きのびる


(霧山昴)
著者 宮竹 貴久 、 出版 岩波科学ライブラリー

 人間が最前線の戦場で死んだふりして助かったという体験記を読んだことがあります。同じことを昆虫など、いろんな生物がしていること、その意味を探求している学者の本です。
「死んだふり」について研究している学者は世界中探しても20人ほど、だそうです。まあ、きっとそうでしょうね...。
 いったい生物の「死んだふり」なんか研究して、何の役に立つのか...。そんな疑問を持つ人に対しては、実は、パーキンソン病の治療に役立つかもしれないと書いてあります。また、果樹の外注防除にも役立つようです。樹木に振動を与えると、害虫が死んだふりをするので、樹木にしがみついていた害虫が落下するというのです。
 死んだふりをする個体にとって、死んだふりが本当に役に立っているのかどうか、統計的に十分な検証でもって定量的に示した研究はなかった。そこに目をつけた学者って、ホント偉いですよね...。
 「腹が減っては死にまねはできない」。これは観察するなかで明らかになった事実です。死に直面している昆虫は、悠長に死んだふりなんてする余裕はない。死んだふりをする生物は、そのことによって生命が助かる確率は高まる。ところが、じっとしているとメスとの出会いがないという二律背反が存在している。
 そして、長く死んだふりを続ける個体はストレスに弱い。
死んだふりをする生物は多い。オポッサムもそう。ニワトリだって死んだふりをする。二ホンアマガエルやサメもする。
 いやあ、すごいです。ダルマさんが転んだ、の世界があるのです。死んだふりではない、フリーズをする種もいるそうです。
 一見すると、なんてバカバカしい研究だと思えても、実は偉大な発見だったこともあります。好奇心をもった学者には、今も憧れがあります。
(2022年9月刊。税込1430円)
 11月に受験した仏検(フランス語検定試験、準1級)の結果を知らせるハガキが届きました。恐る恐るめくってみると、「合格」の文字が目に飛び込んできました。ヤッター、良かったー、と思いました(昨年は不合格だったのです)。合格最低点が62点のところ、66点とって合格することができました。ところが、実は私の自己採点では71点だったのです(120点満点)。いつもは6割が合格点(72点)になります)なのですが、今回は5割が合格点になっていますので、いつもより少し難易度が高かったということです。
 1月末に口頭試問を受けます。3分間スピーチです。難関です。話す訓練に励むことにします。年末年始の課題になりました。ボケ防止のつもりでがんばります。

2022年12月17日

キリンのひづめ、ヒトの指


(霧山昴)
著者 軍事 芽久 、 出版 NHK出版

 ヒトの大腿骨はまっすぐな骨ではなく、10度ほど傾いている。ヒトは直立すると、股関節は身体の横のほうにあり、膝は身体の中心線上に位置する。だから、大腿骨が斜めになっているのも当然のこと。うひゃあ、そ、そうなんですか...。
 ヒトは、この構造のおかげで身体の重心の真下に足をつくことが可能になり、安定した歩行・走行ができるようになった。
 チンパンジーには大腿骨の傾斜はなく、ヒトの新生児にもない。足はむしろ外側に広がるようになっているが、これは母親に抱きつきやすくするため。
 キリンの足は、半分が「足の裏」。足の裏に相当する部分の長さは70~80センチもある。
 キリンやウマと同じく、いずれも地面についているのは指先だけで、かかとは浮いている。
 キリンの首の長さは2メートル。キリンもヒトも、首の中にある頸椎という骨の数は7個。一つひとつの長さが異なるだけ。哺乳類の頸椎の数は、みんな7個。ただし、ナマケモノとマナティは違う。
 ところが著者は、キリンの8番目の首の骨を発見しました。大発見です。本来なら動かないはずの第一胸椎が15度ほど動く。キリンの首元にある8番目の「首の骨」は哺乳類の頸椎は7個という基本ルールを守ったまま、首の可動範囲を広げて、高いところの葉を食べる、地面の水を飲むという二つの目的を同時に達成することを可能にした。
 胃でセルロースを分解する動物たちより、大腸で分解する動物たちのほうが巨大な体をもつように進化したものが多い。大腸内に微生物を飼う動物たちの消化は、「多少の無駄には目をつぶり、たくさん食べて、たくさん出す」ことを可能にするやり方だ。
 ゾウは大量の植物を食べ、森を切り拓(ひら)きながら生きている。同時に、さまざまな場所でウンチをして、新たな森へとつながる「種まき」もしている。
 キリンの45センチもある舌は黒っぽい。これは舌の日焼け大作ではないかという仮説がある。
 ヒトは、血液が体内を1周するのに20秒かかる。キリンはもっと遅くて1周45秒ほど。
 キリンは身体の大きさの割には肺が小さい。肺の容積はヒトの8倍ほど。体重はヒトの15倍ほどもあるのに...。
 前の『キリン解説記』(ナツメ社)がとても面白かったので、その続編と思って読みました。とても面白く、知的刺激にみちた本でした。
 
(2022年10月刊。税込1650円)

2022年12月12日

小さな里山をつくる


(霧山昴)
著者 今森 光彦 、 出版 アリス館

 この春、私の庭の一隅にフジバカマを5株だけ植えつけました。夏の日照りと強風のせいで、うち1株は枯れてしまいましたが、残り4株はすくすくと育ってたくさんの小さな花をさかせました。白っぽい小花とチョコレート色の小花がぎっしり咲いたのでした。
 ところが、残念なことにアサギマダラは来てくれませんでした。それでも、少し離れたところに住む知人が、もう何年も庭に来ていたアサギマダラが今年は来なかったと嘆いていました。そこは、そんなに広い庭ではありませんから、うちにだってアサギマダラは来てくれるはずだと大いに期待しています。今年は早々にフジバカマをネットで注文して取り寄せました。一気に、とはいきませんが、幅1メートル、10メートルの長さのフジバカマ畑をつくってアサギマダラを招くつもりなのですが...。
 著者は、なんと75種類ものチョウのすむ(やってくる)庭というか、里山をつくっています。絵本のような、写真集のような本書に、もちろんアサギマダラもうつっています。少し紹介します。
 秋には、旅人のお客さんがやって来る。著者のつくったチョウの庭にすみついているのではなく、成虫だけが訪れる。アサギマダラだ。暖かくなると北上し、涼しくなると暖かい地方に南下する、旅をするチョウだ。毎年やってくるが、滞在するのは、ほんの数日間だけ。根っから旅好きのチョウなのだ。
 いやあ、驚きますよね。このアサギマダラは、台湾から長野県までを行ったり来たりしているというのです。
 アサギマダラの羽にはリンプンがないので、羽に油彩ペンでナンバリングできるのです。その記号によって、いつ、どこにいたというのを後づけで知ることができます。とても気の長い根気のいる作業です。それでも全国にそんな人たちの観察努力によって、アサギマダラの飛翔行為の全容が判明したのですから、たいしたものです。
 著者はチョウたちを呼ぶ庭づくりをはじめました。すごいです。木を植え、花を植えていきます。
 チョウにも好みがあります。たとえば、アゲハチョウはボタンクサギの常連客です。このボタンクサギは、わが家の庭にも自生していますが、自生能力が高いのはいいとして、ともかく臭いのです。なので、私は、見つけ次第にひっこぬいています。ところが、クロアゲハの大好物のようです。ちっとも知りませんでした。
 それにしても、たくさんのチョウの名前をよく知っていること、その特性・好みを生かした庭(里山)づくりをするなんて、すごいことです。秋から冬にかけて、枝打ちもしますし、大きな木も伐採することもあります。そんなときにはチェーンソーを使うのです。慣れてないと恐い作業です。
 久しぶりに手にとって見直しました。楽しい、大判の写真集です。
(2021年5月刊。税込2640円)

2022年12月 5日

歌うサル


(霧山昴)
著者 井上 陽一 、 出版 共立出版

 日本で高校教師をつとめながら、マレーシアのボルネオ島に20年以上も通ってテナガザルを研究した成果がぎっしり詰まった、とても面白い本です。
 著者のテナガザル研究を家族あげて支えたことが「あとがき」に紹介されていることに、私は激しく心を打たれました。著者の妻はボルネオでの現地調査に同行し、日本でも動物園での実験を共同で実施。二男も現地調査に同行して写真を撮影。長男の妻はイラストを描き、長男と二男の妻は著者の原稿を読んでコメントした。いやはや、なんともすごファミリーです。うらやましい限り、としか言いようがありません。
 著者は京都大学農学部を卒業し、公立高校で地学を教えていました。春休みに1週間の休みがとれるので、『地球の歩き方』にマレーシアのボルネオ島の記事があるのを目にして、思い切ってボルネオ島に行ってみたのがテナガザルとの出会いでした。
 テナガザルは木の上で暮らす。地上付近から高度65メートルまで、縄張りをもつ。30年生きているのが確認されている。
 家族のつながりは深く、隣グループの他者に寛容。主食は果実で、副食は若葉。
 テナガザルは、数日かけて縄張り内の全域を移動する。テナガザルは泳げない。なので、川や池に降りて水を飲むことはしない。木の洞(うろ)に溜まった水を手ですくって飲む。トイレの場所もある程度決まっている。
 テナガザルの遊びは、追いかけっことレスリングが主。父と子、兄弟・姉妹のあいだで行われる。母と子の遊びがまれでしかないのは、母は3~4年おきに出産するため、妊娠しているか、子を抱いて授乳しているか、が多いから。
 森の一斉果実の時期には、テナガザルは1日の移動時間と行動時間をのばすが、同時に社会交渉の時間も増やした。生殖目的でない交尾行動もする。
 生活が保障されると、生きていくために必要な、食べる、移動する、休憩する、寝る、という行動に加えて、歌う、遊ぶ、グルーミングする、生殖目的でない交尾をするという、生きていくためには直接必要のない余分な行動がふえる。
 テナガザルは歌う。雄(オス)の歌はソロ、雄と雌(メス)が鳴きかわすのはデュエット。この二つがある。
 夜明け前の森に、まろやかで澄み切ったオスのソロが響く。周辺グループのオスが次々に呼応して、合唱になっていく。午前5時すぎから、夜が明けて7時ころまで。歌は数分間から、ときに3時間も続く(平均は31,5分)。夜明け前の静かな森で、隣りあうグループは、お互いのコミュニケーションをとっていると考えられる。
 デュエットは、夜明け後に始まり、午前中に歌われる。あるグループがデュエットを歌い終わると、それに続いて隣のグループが歌いはじめ、その歌が終わるとまた別の隣のグループが歌いはじめといったように、デュエットの連鎖が起きる。
 食べ物が保証され、捕食圧(食べられてしまう危険度)から解放されると、歌は複雑になる。
 著者は私たち団塊世代より少し下の世代ですが、ともかく熱帯雨林のなかでのテナガザルを20年にもわたって現地で毎朝4時に起床して、午前5時に調査助手とともに森に入り、あとは、午後4時ころまで森のなかにいるというのです。とても忙しいそうです。ともかく、脱帽というほかはありません。
 本文120頁足らずの、小冊子のような本です。ご一読をおすすめします。
(2022年9月刊。税込1980円)

2022年11月28日

ナメクジの話


(霧山昴)
著者 宇高 寛子 、 出版 偕成社

 なぜか、わが家の台所にドデーンとナメクジが鎮座ましますのを発見することがあります。本当に不思議です。外から侵入してくる経路はそんなにないはずなのですが...。
 というわけで、ナメクジとは、いったいいかなる生物なのかを知りたくて読んでみました。
 とても分かりやすいナメクジの話です。でも、実のところナメクジは謎だらけの生物だということが分かりました。カラー写真がありますので、わが家のナメクジは記憶に照らしあわせると、日本古来のナメクジだと思います。
 日本にずっといるナメクジは、全体的に太くて、灰色。この本の著者が主として研究しているのは、チャコラナメクジ。背中に2本から3本の黒い線がある。
 ナメクジは貝の仲間で、タコやイカと同じ、軟体動物。ナメクジには殻はない。そして陸にすんでいるのに「貝」。陸にいる貝のうち、大きな殻をもつのをカタツムリと言い、殻をもたないのをナメクジと呼ぶ。
 ナメクジにも人間と同じように顔があり、皮膚の下には、脳・心臓・肺などがある。顔は、ふだんは体のなかに隠している。
 ナメクジの目は、明るいか暗いかが分かるだけ。においを感じる能力のほうが強い。
 ナメクジは、なんでも食べる雑食。ミミズや昆虫も食べる。
 口には、大根おろし器のように小さい歯がたくさんついた「歯舌」(しぜつ)があり、これをエサに押しあてて、ゴリゴリと削って食べる。
ナメクジは、1匹のなかにオスとメスの両方の機能をもっている。しかし、ほかの個体と交尾することによって、初めて卵をつくることができる。ナメクジは交尾したあとしばらくして卵を産む。
 ナメクジのべたべた粘液は乾燥から身を守っている。また、粘液の上で腹足を波打つように動かして前進する。だから上下に波打ったり、くねくねする必要がない。ただし、ナメクジは前にしか進めない。後退できないのですね。
 ナメクジの寿命は、短くて数ヶ月。長いものは2~3年ほど。そんなに生きるのですか...。
 ナメクジに塩をかけても溶けているのではない。水分を失って、身が小さくなるだけのようです。
 ナメクジには光周性がある。
 ナメクジを飼って育てるにはタンパク質が必要。金魚のエサや固形のドッグフードも買って与える。
 ナメクジへの多くの人々の反応は、「ギャアア...」が多い。そこで、やはり「敵」の実体を知っておくべきなのですよね、きっと...。面白い本でした。
(2022年9月刊。税込1650円)

2022年11月21日

カタニア先生は、キモい生きものに夢中!


(霧山昴)
著者 ケネス・カタニア 、 出版 化学同人

  鋭い感覚の奇妙な鼻をもつホシバナモグラが真っ先に登場します。
なに、何、このイソギンチャクみたいな鼻が、いったい何のために地中を掘って生活するモグラにあるのかな...。こんなヒラヒラするものが鼻の先について、地中を掘り進むのに、いったい邪魔にならないのかしらん。うむむ、どう考えても不思議だ、フシギ。
ホシバナモグラは、モグラの一種なのに泳ぎが得意。北アメリカのもっとも寒い地域で、冬眠もせずに生活している。
ホシバナモグラの鼻の「星」は嗅覚器官ではなく、触覚受容器。ホシバナモグラの鼻の先の星には、ヒトの手の触覚神経線維の6倍が集中している。
ホシバナモグラは、恐らく、地球上でもっとも高感度であり、高解像度の触覚系だ...。
ホシバナモグラは、世界一食べるのが速い哺乳類。これはギネス世界記録として認められている。ホシバナモグラは、小さくしてじっとしている獲物を、瞬時に見つけて食べる。しかし、高速移動する相手を追いかけて捕まえるのは、まるで下手。
魚は「見たものを信じる」のではなく、「聞いたものを信じる」。魚の聴覚は実に速い。
平原にすむミミズを捕獲する。そのためには、鉄の棒を地中20センチまで打ち込む。それから、杭の頂上を鉄の棒でこすりはじめた。低い振動音が土のなかに反響し、森中に広がる。すると、まもなく巨大なミミズが地面にはいあがってくる。モグラが掘りすすんで近づくと、ミミズは地表に逃げている。
次は獲物を麻痺(まひ)させてしまうデンキウナギ。強力な電気を、いったいどうやって発生させ、自分の身は損なうことなく獲物だけをしびれさせるなんて、まさしく神業(かみわざ)...。
デンキウナギは、全魚の体の動きのすべてをわずか3秒以内に一時停止させる。
エメラルドゴキブリバチは、ゴキブリを殺さず、一時的に麻痺すらさせなかった。このハチは、獲物となったゴキブリを何も考えずに従順に従うだけの奴隷にさせる。ゴキブリの胸部にハチは毒針を挿入する。毒針にあるセンサーを使い正確無比な第1弾をお見舞いする。ゴキブリは、生きたまま、ハチの幼虫に食べられる。ゴキブリは反撃もせず、ハチの幼虫に生きたまま食べられる。
不思議、ふしぎ、フシギ...。世界は本当に不思議に満ち充ちています。
フシギをそのまま放置せず、不思議なものとして追跡を始めようと呼びかけている本でもあります。
(2022年8月刊。税込2530円)

2022年11月19日

もえる!いきもののりくつ


(霧山昴)
著者 中田 兼介 、 出版 ミシマ社

 いろんな生き物をめぐる不思議な話が満載です。
 托卵(たくらん)とは、たとえば、カッコウは自分で巣をつくらず、違い種類の鳥の巣に卵を産みつける。 托卵される側が、なぜ他人の子を受け入れるのか...。
 托卵を受け入れたときにはあまりない、コウウチョウによる襲撃が半分の巣で起きた。これは、みかじめ料を要求し、それを拒否した店をめちゃくちゃに壊してしまうマフィアのやり方にそっくり。ええっ、そういうことなんですか...。
 ミツバチはゼロが分かるという実験にも驚かされます。
 ミツバチは、1から4までの数を区別できる。そして、何もないという状態は、1、2、3より小さい数、つまりゼロとして扱っている。
すごいですね、学者って、いろんな実験手法を次々に考え出し、比較検討して成果をひとつひとつ積みあげていくのですね。本当に尊敬します。
 子ブタたちは戦ごっこで遊んでいると、大きくなって、誰が強いかを決めるための本当のケンカをしたとき、メスは勝者になることが多い。ところが、オスの場合は真逆で、子ブタ時代によく遊ぶと、大人になってケンカに負ける。ええっ、よく遊ぶと、ケンカに弱くなるなんて、信じられません。
 新聞に連載されていたもののようですが、とても面白い本でした。
(2022年7月刊。税込1980円)

2022年11月 7日

ゴキブリ研究はじめました


(霧山昴)
著者 柳澤 静磨 、 出版 イースト・プレス

 著者は昆虫館の職員であり、ゴキブリを研究しています。そのため120種、数万匹のゴキブリを飼育しているのです。ところが、昔からゴキブリ愛好家だったのではありません。数年前まで、私と同じように、ゴキブリが大の苦手だったというのです。それが今では、ゴキブリストに変身。いったい何が起きたのか、なぜ...?
 ゴキブリ展を2ヶ月間やったら大盛況だったとのこと。すると、ゴキブリを家で見つけて殺すと、子どもが泣くようになった。なぜか...。かわいそう。そして、ぼくもゴキブリを飼ってみたかった...。いやはや、子どもの心は、かくも純真なのです。
 ゴキブリをペットとして飼育している人が日本にもいる。1匹数万円のゴキブリもいる。
 うぬぬ、なんと、なんと...。まあ、ヘビ(大蛇)をアパートの一室で飼っているうちに逃げられたというニュースが先日もありましたから、それに比べたら、可愛いし、まあ無害でしょうね。
 ゴキブリとカマキリは共通の祖先から分岐した、近い存在。そして、シロアリもゴキブリとは非常に近い生き物。シロアリはアリとはまったく別の生き物で、ゴキブリ目に属している。
 ゴキブリは匂いを出すものが多い。食べられないよう、匂いで防御している。鼻が曲がるほどの臭い、薬品の臭い、強烈な臭い。でも、干しシイタケの香りや、青リンゴのようなさわやかな匂いのするものもいる。
 ゴキブリのなかにも鳴き声を出すのもいる。危険を感じたとき、「食べないで」、「触らないで」とアピールしている。
 エサをやると、寄ってきて一生懸命に食べる姿はかわいい。触覚もきれいに手入れしているところも、見ていると癒される。脱皮した直後の白い姿は美しい。
 ダンゴムシのように、手のひらに乗せると、くるんと丸まってしまうゴキブリ(ヒメマルゴキブリ)もいる。
 ゴキブリの目は、大きく、愛敬のある複眼。
 ゴキブリは、世界に4600種、日本に64種いる。家の中に入ってくるゴキブリは、ごくわずかで、圧倒的多数は野外に生息している。
 「キモイキモイも、好きのうち。ゴキブリ展」が大盛況だったので、本になったのでした。
 私も「敵」を知りたくて読みました。面白かったです。
(2022年7月刊。税込1650円)

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