弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物

2007年1月19日

葉の上の昆虫記

著者:中谷憲一、出版社:トンボ出版
 葉っぱの上に昆虫がとまっています。蜜を吸っているのでしょうか・・・。
 モンシロチョウのメスが交尾を拒否する姿勢を見せています。チョウチョもオスを選ぶのです。オスも、さっとあきらめたり、なかなかあきらめきれずに、その辺をウロウロしたりします。まるで人間のオスと同じです。
 アリとアブラムシ。アブラムシは植物の篩管を流れる糖分の多い栄養液を吸っている。ところが、アブラムシはその栄養液の一部しか吸収せず、たっぷり糖分を含んだ甘い液を、お尻から出してしまう。この甘露をなめようと、たくさんの昆虫が集まる。チョウやハナアブ、アシナガバチなどがやってくる。
 ほかの昆虫とちがって、アリとアブラムシは特別な関係にある。アリはアブラムシのお尻から、直接、この甘露をもらう。アリが触角でアブラムシのおなかを叩くと、アブラムシは甘い液を出す。アブラムシがアリを特別扱いするかわりに、アリはアブラムシを保護する。テントウムシなどがアブラムシを食べようと近づいてくると、アリはテントウムシを攻撃して追い払ってくれる。いってみれば、アブラムシが出す甘い液は、警備員として働いてくれるアリへの報酬なのだ。
 アリはハチの一種。翅がないだけで、からだつきはハチそのもの。その生態もハチそのもの。アリとシロアリは、昆虫という大きなグループの一員ではあるが、昆虫のなかのグループ分けでは、なかり違う。
 擬態。毒ともつ生き物のまねをして、毒があるように見せかける。簡単に毒をもつことができるのなら、毒をもって身を守ればいい。しかし、毒をもつのは実際には大変なこと。だから、見かけだけ毒のある生き物に見せかけるほうが簡単で、てっとりばやい。
 昆虫のいろんな生態がよくも微細に写真で紹介されています。昆虫好きの人には、絶対おすすめの写真集です。

2006年12月28日

マーリー

著者:ジョン・グローガン、出版社:早川書房
 アメリカで200万部をこえる大ベストセラーになった本だそうです。世界一おバカな犬が教えてくれたこと、というサブタイトルがついていますが、愛犬は人生の伴侶だということがしみじみ実によく分かる面白い本です。
 マーリーはラブラドール・レトリバーです。ところが、実は2系統あるのだそうです。イングリッシュ系は体が小さくてずんぐりしていて、角張った頭とおとなしく落ち着いた性格ドッグショーに向いている。もう一つのアメリカン系は、見るからに大きく、たくましく、流線型の体型をしている。エネルギーにあふれて疲れ知らず、気性が悪く、ハンティングや競技向けの犬。野山で真価を発揮するアメリカン系ラブラドール・レトリバーを家庭でペットとして飼うと、大変なことになる。そうです、マーリーは、まさにアメリカン系の犬だったのです。その破天荒なやんちゃぶりが、これでもか、これでもかと紹介されています。それでも、老衰するまで著者はつきあいました。
 著者の妻が死産して悲しんでいるとき、マーリーは静かに寄り添い、全身で妻を慰めた。待望の赤ん坊が生まれたとき、マーリーは大切に扱い、決して赤ん坊を危ない目にあわせることはなかった。そんなエピソードがいくつも紹介されています。犬は人の心が分かるのですよね。
 老犬は人間にいろいろのことを教えてくれる。いつしか時が流れて、身体のあちこちが傷んでくるにつれ、生命には限りがあって、それはどうしようもないことだと。
 マーリーは次第に老いて、耳が遠くなり、身体にがたがきた。老いは生きとし生けるものすべてに忍び寄ってくるけれど、犬の場合には、その足取りが驚くほど急だ。12年間というあいだに、元気な仔犬だったマーリーは、手に負えない若者になり、そして筋骨たくましい成犬から、足腰が弱った老犬へと変化した。
 マーリーは、人生において本当に大切なのは何なのかを、身をもって人間に示してくれた。忠誠心、勇気、献身的愛情、純粋さ、喜び。
 そして、マーリーは、大切でないものも示してくれた。犬は高級車も大邸宅もブランド服も必要としない。ステータスシンボルなど、無用だ。びしょぬれの棒切れ一本あれば、それで幸福だ。犬は、肌の色や宗教や階級ではなく、中身で相手を判断する。金持ちか貧乏か、学歴があるかないか、賢いか愚かか、そんなことはちっとも気にしない。こちらが心を開けば、向こうも心を開いてくれる。それは簡単なことなのに、にもかかわらず、人間は犬よりもはるかに賢く高等な生き物のはずでありながら、本当に大切なものとそうでないものとをうまく区別できないでいる。
 人間は、ときとして、息が臭くて素行は不良だが、心は純粋な犬の助けが必要なのだ。
 著者がマーリーの死を悼むコラムを新聞に書いたところ、読者からなんと800通ものメールが来たそうです。心の優しい動物好きはアメリカにも多いのですよね。
 わが家でも、子どもたちが小さい頃に犬を飼っていました。小型の芝犬です。メス犬でしたが、息子がマックスと名付けました。子どもたちと犬を連れて散歩するのが、私の大いなる楽しみでした。世界一のバカ犬とは決して言いませんが、飼主に似たのか、間抜けな犬でした。庭にクサリでつないでいると、同じところをぐるぐるまわっているうちにクサリがからまって身動きとれなくなるのです。それでもバカな犬ほど可愛いというように大切にしたつもりでしたが、ジステンバーにやられて早死にさせてしまいました。マックスが死んでもう何年もたちますが、動物霊園に遺骨をおさめていますので、年に一回は今もお参りしています。
 犬は人間の古き良き伴侶なんだとつくづく思います。

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