弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物

2009年11月24日

イルカ

著者:村山 司、出版社:中公新書
 イルカという名称は生物学・分類学上の正式なものではなく、あくまでも便宜的な呼び名に過ぎない。
 口のなかにヒゲ板があるのがクジラ、口のなかに歯があり、からだの小さいのがイルカである。
 イルカはクジラと違って、それほど大きな回遊はしない。
いったん陸に上がった動物のなかで、イルカやクジラの祖先は今から6500万年前に再び海に戻っていった。それは、大規模な地殻変動によって陸地が動き、その結果、イルカやクジラの祖先は海に追いやられたからだという有力な学説もある。
 イルカは弾力的な皮膚をもっているため、渦流が生じず、抵抗が少ない。イルカの皮膚は、2時間ごとに垢となって落ちていく。これも余分は抵抗を減らすのに有効なのだろう。
 イルカやクジラには、胃が4つある。体温は37度ほど。
 イルカの胸ビレのなかには、5本の指の骨が今も存在する。
 イルカは数分間、呼吸しなくても平気。時速30キロで泳げる。イルカは水中で呼吸しない。急な潜りと浮上をくり返しても、潜水病に苦しむことはない。イルカの肺は非常に強く、肺胞がつぶれても肺自体が破裂することはない。肋骨も間接が柔らかいため、折れることはない。
イルカは海水を直接のむことはしない。餌のなかにふくまれる脂肪を分解するときにつくり出される水を利用する。
 イルカは半球ずつ眠る半球睡眠をしている。
 イルカの子育てはメスだけがする。そして集団で行う。集団のなかで、子イルカを群れの真ん中に位置させ、敵から子どもを守る。ゾウに似ている。そして、乳母役のイルカがいる。母親のほかに、出産経験のあるメスや年配メスのイルカが子イルカの面倒をみる。
 イルカは優れた聴覚をもっている。イルカはホイッスルを用いて、お互いに交信している。そして、イルカは人間と遊ぶことが大好きである。
 イルカのことがとても分かりやすく紹介されている本でした。
 天草ではイルカがたくさん泳いでいるのを見れるようです。ぜひ行ってみたいと思います。

 和歌山の白浜温泉では、バブルの象徴ともいうべき「ホテルK」を実見してきました。ともかくすごい。想像を絶する豪華さです。マダガスカルと南アフリカにしか生えていないバオバブの木の一木彫りの大きな扉が南紀白浜にあるだなんて、信じられません。
 門をはいると、貴族の十蛇の服装をしたボーイさんが2人出迎えてくれます。エントランスから建物に入ると、広い広いホールです。高くて見上げると首が痛くなる天井は、金箔がはられています。大きくて太いエンタシスの柱は、いかにも高価そうな大理石です。
 一泊50万円の部屋を見学させていただきました。一体誰が泊まるのか、不思議でなりませんでしたが、それでも、泊まる人はいるようです。といっても、楽天で予約すると、かなり割安で予約できるということです。確かに白浜の海に面した部屋で、気持よく過ごすのもいいかもしれません。
 大阪の佐伯照道弁護士の『なぜ弁護士は嘘を見破れるのか』に紹介されているホテルです。こちらの本も読んでみてください。勉強になります。

(2009年8月刊。740円+税)

2009年11月 9日

建築する動物たち

著者 マイク・ハンセル、 出版 青土社

 ハキリアリというアリは、最近ではかなり有名です。南アメリカに住み、葉を切り取って巣に運び、専用のキノコ畑を栽培しているアリです。その巣は地下6メートル、800万匹の成虫と200~300万の卵や幼虫がいます。その巣にセメントを流しこんで型をとった写真が紹介されています。セメントを6.7トンも流しこんだのですが、そばにいる人間が小さくしか見えません。それほど、スケールの大きい巣なのです。
 シロアリの大きな塚がある。そこには、塚の表面を風が通ると、頂上部分では気圧が根元に比べて小さくなるから、空気が塚の上部から流れ出て、下のほうから侵入することになる。こうやって、塚の中の換気が実現する。うへーっ、す、すごいですね、これって……。
 ハチやアリといった社会性昆虫の巣作りにおける組織系統の実態がわかってきた。それは人間とは異なり、リーダーシップなるものが存在しない。責任者という個体や個体群はいない。階層的な構造や管理部門もない。
 たとえば、シロアリに理解や判断はほとんど要求されない。シロアリは仕事を探しまわるだけで、作業の方法については、自分のなかから、そしてつくる場所は建物自体から指令を受ける。いったん着手した仕事は、誰がやってもコミュニケーションの必要もないまま続いていくし、完成する。うむむ、そういうことなんですか……。不思議ですね。
 ニワシドリのメスにとって、配偶者の選択は、それを探す情報量においても決心するまでに注ぎ込む時間と労力においても複雑な過程である。メスは巣を作る前から、オスの不在の折を狙っていくつかのパワー(巣)を訪れて点検する。そして、次にオスがいるとき、そのうち、いくつかにもどって求愛ディスプレーを見る。しかし、まだ交尾しない。それから1週間ほどかけて産卵のための巣作りをしてから、前に訪れたパワーのいくつかに改めて戻って、再び、選ばれたオスの求愛を受ける。そして、最終的に、そのうちの一羽と交尾する。
 メスが慎重にオスを選ぶというのは、ゴリラやチンパンジーだけではないようです。もちろん、人間についても言えることでもあります。だから独身の男女が増えているのでしょうか……。
(2009年8月刊。2400円+税)

2009年11月 7日

熱帯の夢

著者 茂木 健一郎、 出版 集英社新書ヴィジュアル版

 アメリカ大陸、中央アメリカにある小さな国、コスタリカは、軍隊を持たない国として有名です。そして、熱帯雨林を積極的に保全し、観光資産としています。私も一度は行ってみたいと思いますが、言葉の問題もありますので、実際に行くのはフランス語圏に決めています。
それはともかくとして、コスタリカの国土は5万平方キロメートルですから日本の7分の1以下となります。そこに、1000種類もの蝶が生息している。日本の蝶は230種類でしかない。コスタリカの蝶は、日本の30倍以上の「種密度」となる。
 ヘレノールモリフォチョウは大きな目玉模様をいくつも持っています。そして、羽を開くと、その裏に怪しげなまでに輝く青色を示します。羽の鱗粉の構造と光の干渉によって
もたらされる輝きです。
 擬態について、次のように著者は説明します。はたして、この説明は完璧なものなのでしょうか。私には、いささか疑問です。
 ドクチョウやトンボマダラには、それに擬態した蝶や蛾がいる。これらの蝶そっくりの羽をしているが、ほんとうはまったく別の系統の種で、体内に毒もない。それが、長い進化の過程で似たような姿かたちになる。もちろん、あの蝶に似ようと意識してやるのではない。遺伝子の変異によって、さまざまな色かたちの個体が生まれるなかで、たまたま毒をもった蝶に似ている形のものが淘汰の中で有利となり、より多くの子孫を残す。そのような微小な変異が積み重なって、やがてそっくりの外見になる。
 どうなんでしょうか。蝶にも「種としての意思」があるのではないでしょうか。そして、「たまたま」ではなく、何かの意図にもとづいて毒をもった生物に似せようとしていると解すべきではないのでしょうか。著者は種としての生きものの「意思」を、あまりにも無視しているように思われてなりません。
 東大の理学部をでて、法学部を出て、さらに大学院で物理学を修めたという学者です。恐るべき優秀さですね。すごい学者が脳についてとても分かりやすく語ってくれますので、私はずっと愛読者です。
(2009年8月刊。1100円+税)

2009年11月 2日

モグラ博士のモグラの話

著者 川田 伸一郎、 出版 岩波ジュニア新書

 我が家の庭にモグラがいることは間違いありません。でも、死んだモグラしか見たことはありません。この本を読むと、モグラの生態ってまだまだわかっていないことがたくさんあるんですね、びっくりしました。こんな身近な存在なのに、分からないことだらけというのも不思議ですよね。著者はモグラ博士ですが、ぜひいっしょにモグラの謎を解明しましょう、と呼びかけています。
 モグラには目がない。目はあるけれど、皮膚でおおわれてしまっている。モグラは光を感じることができない。また、その必要もない。モグラの棲む地下世界は夜の闇よりもっと暗く、まさに真っ暗。ここまで光がない環境だと、目は必要ない。
モグラの鼻には、アイマー器官というのがあって、微弱な振動を感知することができる。これによってモグラのトンネルにミミズが出てきたことなどを知る。
モグラは、地上を歩くのは苦手。モグラ塚は地上との出入口ではない。
 西日本にすむ大きなコウベモグラがどんどん北上していって、小さなアズマモグラを北東に押しやっている。この分布境界線は、富士山から金沢市を結ぶ線あたりにある。
 モグラのテリトリーは、水田の1枚から2枚ほど。モグラの寿命は3年から4年。5年も生きていたら珍しい。メスは一度に3匹から6匹の子どもを産む。ただ、モグラの人工的な繁殖に成功した例はない。
モグラは植物を食べない。そうなんです。でも、毎年春のチューリップ畑を目ざしている私にとって、モグラはチューリップの球根を地上に放り出すという厄介者なのです。
 モグラはトンネルに穴が開くことをとても嫌う。出入り口が開くと、すぐに土を持ち上げて隠してしまう。というのも、ネズミなどが入ってきたりするからです。
 モグラは、1日3回食事をする。おなかがすくと、体力を消耗してすぐに死ぬ。そのため、早朝、夕方、深夜と3回トンネル内の見廻りに出かける。モグラが何度も繰り返し利用し続けるトンネルは、モグラのブラシのような被毛によって壁が磨かれ、つるつるの硬い壁面になっている。
モグラは温帯にすむ。暑いところにもすごく寒いところにも住んでいない。いやはや、モグラって、こんなに分かっていないことが多いのか、ホント不思議ですよね。
 モグラが生きて捕まるのは、母親モグラが子育てが終わって、子どもモグラを追い出すときだというのです。なーるほど、子別れって命がけなんですね。
 モグラの不思議な話が盛りだくさんの面白い本でした。
 
(2009年8月刊。780円+税)

2009年10月26日

先生、子リスたちがイタチを攻撃しています!

著者 小林 朋道、 出版 築地書館

 大好評の先生シリーズです。毎回、私も楽しく読ませていただいています。
 私も、動物を飼育してみたいという気持ちはあるのですが、あちこち旅行もしたいし、両立できませんので、あきらめています。本当は犬を飼って、毎日散歩したいのです。
 といっても、我が家の庭にはモグラがいますし、ヘビもいます。そして、夜になるとヤモリが窓に貼りつきます。小鳥はキジバトそしてヒヨドリは常連です。もちろん、スズメ軍団もいます。春にはメジロ、そしてウグイス、さらにはカワラヒラなどもやって来ます。山のふもとの近くに住んでいますから、それなりに豊かな自然に恵まれています。ただし、モグラは生きた姿では見たことがありません。見るのは、地上の死骸となっているときです。庭のあちこちに土が盛り上がりますので、何頭ものモグラがいることは間違いありません。
 ヘビの姿の方は、幸いにして最近は見かけません。ただし、庭に出るときには、思わぬ遭遇ということにならないように用心しています。
 先生シリーズは、鳥取環境大学で動物行動学と人間比較行動学を専門にする小林先生の日常生活が愉快なタッチで紹介されています。微笑みながら、動物と人間の行動科学が学べるという勝れものの本です。
 イタチ科の動物であるフェレットを飼育したときの顛末は面白いのですが、その顔写真がなんとも可愛らしいのです。いやあ、これはぜひ飼ってみたいと思いました。実際に飼うと大変なんでしょうね……。
 シマリスの子どもたちがカタカタカタという音を一斉に立てて、イタチ(フェレット)を撃退するのは実証する実験は面白いものです。やはり、学者になるには、少し奇抜な発想のできることが必要なんですね。ということは、やっぱり学者は変人に限る、ということでしょうか…(おっと、失礼しました)。
 ヤモリは家守り。イモリは井守り。ヤモリは爬虫類、イモリは両生類。ヤモリの尿は、白色のねっとりとした半固体状、イモリの尿は液体。
 アカハライモリの生態を探求するためには川岸のアシを夜中に鎌で刈りつくす作業が必要となる。その作業のため、小林先生は、ついに腱鞘炎となり、両手首にサポーターを巻かざるをえなくなりました。学者って、それほど大変な職業なんですね。いやはや、学者なんてならなくて良かったと私は思ったことです。本を読むだけなら、私も出来ますから…。
 モグラはミミズだけでなく、セミも食べる。私は、初めて知りました。そういえば、うちの庭にも、もちろんセミの幼虫はいます。7年ほども地中にいて、地上ではわずか1週間の生命というはかなさです。
 面白いシリーズの本です。どうか、引き続き、がんばって面白い本を書いてくださいね。
(2009年8月刊。1600円+税)

2009年10月19日

ホタルの不思議

著者 大場 信義、 出版 どうぶつ社

 初夏というより、晩春でしょうか。5月の連休(ゴールデンウィーク)が終わって間もなく、我が家から歩いて5分のところの小川に、毎年、ホタルが飛び交います。ほっとするひとときです。
 著者は企業の研究所に入り、そして中学校の教員となったあと、博物館の学芸員としてホタルの研究に専念するのでした。これもすごいですよね……。
 私が東京のような大都会ではなく、田舎で弁護士を続けているのも、歩いて5分のところでホタルの光を眺めることができることの良さに価値を見出しているからです。
 ホタルの放つ光は、次のような生化学的な酸化反応による。酵素であるルシフェラーゼとルシフェリン、ATP(アデノシン三燐酸)などの物質が混ざり、そこにマグネシウムイオン、酸素が加わると反応がすすみ、発光する。この反応は効率が非常に高く、蛍光灯などとは比較にならないほどエネルギーを光に変えている。このため、ほとんど熱を伴わないことから、冷光とも言われる。そしてホタルは発光反応を自由に制御している。
 ホタルには、せっかちな西日本型(2秒に1回発光する)と、のんびり発光する東日本型(4秒に1回発光する)がある。発光パターンだけでなく、産卵習性も異なっている。
 ゲンジボタルの幼虫は、4月の雨が降るあたたかな夜にサナギになるため、一斉に発光しながら川岸に上陸して、土に潜る。ホタルは、幼虫も光るのですね……。見たことはありませんが、なんだか夢幻的な光景です。
  西日本のゲンジボタルのメスは、100個以上の集団となって産卵する。しかし、東日本のゲンジボタルは、同じ種でありながら、集団産卵はしない。
パプア・ニューギニアにはホタルの木というのがあるそうです。オスのホタルが集まり、集団となって発光してメスを呼び寄せるのです。この木が切られてしまったら、このホタルは絶滅するだろうと予想されています。そうならないことを祈ります。
 我が家から歩いて5分のホタル出現地にも、すぐそばに新しく道路がつくられています。レジャーランドへ通じる便利な道路として開設されつつあるのです。でも、いったい、このレジャーランドが、いつまでもつのか、私には疑われてなりません。
 自然環境を孫の代にまで残したいものですよね。
 
 庭の合歓(ねむ)の木が、またふわふわとしたピンクの花を咲かせ始めました。この花を見ると、なぜかいつも子どもの頃の心のときめきを覚えます。どうしてかなと考えていると、夏祭りの提灯に描かれていた花や金魚などの鮮やかなピンクの色を連想させるからだと思い当りました。
 我が家の庭の合歓の木は小さいのですが、お隣にあるのは大きくて、慮杖を大きく広げるほどに全面に咲いて、それはそれは華やかです。
 朝、居間の雨戸を開けると、目の前に秋明菊の花が飛び込んできます。すっと高く延びた茎に、純白の花びら、そして真ん中はクリーム色になっています。気品あふれる、見るからに清々しさの伝わってくる花です。そばに紫色の斑(ふ)入りの不如帰(ほととぎす)の花も咲いています。稲刈りも間近の秋です。
 
(2009年7月刊。2200円+税)

2009年10月12日

人が学ぶイヌの知恵

著者 林谷 秀樹 渡辺 元ほか、 出版 東京農工大学出版会

 私は犬派です。幼い頃から犬と一緒に育ちましたから、犬には愛着があります。猫はどうも好きになれません。
 子どもたちが小さいころ、柴犬を飼っていましたが、私の不注意もあって蚊に刺されてフィラリアで死なせてしまいました。この本を読んで、犬について改めていろいろ知ることが出来ました。
 メス犬の生理出血は人間と違って、排卵前後に起きるから、もっとも妊娠に適した時期である。
 イヌは汗をかいて体温を下げることが出来ない。かわりに唾液を蒸発させて、熱を放散させている。
 イヌは肉食に近い雑食なので、丸呑みするのが正しい食べ方である。
 イヌは食べ物の味より臭いで学習し、それによって好き嫌いがある。一般に大型犬は味オンチで、小型犬は好き嫌いの激しい傾向にある。オスよりもメス犬の方が好き嫌いが多い。
 イヌは甘いものが大好きだ。イヌはネコと違って腐肉も好き。イヌはビタミンCを体内で合成できる。イヌは汗をかかないから塩分の排泄が出来ないので、ヒトと同じように塩分をとると、塩分の取り過ぎになって高血圧になる恐れがある。
 イヌの嗅覚はヒトの1億倍もの感度を持っている。イヌの動体視力は優れているから、テレビ画像はヒトと違ってコマ送りにしか見えない。
 イヌがヒトと同じものを食べていると栄養学的に問題があり、虫歯にもなりやすい。ドックフードが好ましい。そして、イヌにはタマネギやチョコレートを与えてはいけない。
イヌも心の病にかかる、飼い主の夫婦げんかが絶えないと、神経性の脱毛症を引き起こすことがある。飼い主と離れていると、鬱状態になり、食欲をなくしてしまう。
 イヌは排便したあと、うしろ足で土をかけるような行動をとるが、それは便を隠すためではなく、自分の臭いをつけるため。
 イヌにとって、臭いは大切な社会的コミュニケーションの手段の一つなのである。
 イヌは叱られると、あくびをしたり、自分の口をなめたり、目をそらしたり、背中を向けてすわったりする。これは飼い主を馬鹿にしているのではなく、怒っている飼い主に対し、落ち着いてよ、もうやめてよと伝えていると同時に、自分を落ち着かせようとしているもの。
 イヌは、もともと群れで生活する動物なので、ひとりで放って置かれるのは苦痛に感じる。そこで、飼い主の外出がイヌにとっての一大事にならないよう、日頃から、慣れさせておくべきだ。留守したときにイヌの気が紛れるようなオモチャを与えるのもいい。
 イヌは、過去の出来事を記憶する能力はあっても、判断応力は欠けている。悪いことをしたイヌを後になって怒っても、なぜ怒られているのか、理解できない。
 イヌは、ヒトの感情や意図を敏感に読み取ろうとし、その動作を積極的に模倣しようとする。イヌが飼い主の家族に順位をつけて認識しているという話は最近は否定されている。
 イヌが腹を見せるのは、服従や信頼を示すシグナルである。しかし、それを強制すると、イヌとの信頼関係を壊してしまう。
 イヌとのことで知らないことが多すぎたと反省させられました。

(2009年7月刊。1400円+税)

2009年10月11日

自然界の秘められたデザイン

著者 イアン・スチュアート、 出版 河出書房新社

 1,2,3,5,8,13,21,34,55、89,144…。3つ目以降の数字は、どれも、その前の2つの数字の和となっている。そして、ユリの花びらは3枚。キンポウゲは5枚。ヒエンソウの多くは8枚。アラゲシュンギクは13枚。アスターは21枚。ヒナギクとヒマワリは34枚から55枚、また89枚。大きなヒマワリになると花びらは144枚だ。
 この数字をフィボナッチ数という。フィボナッチというのは、12世紀のイタリア・ピサの人である。いやあ、どういうことなんでしょうね、この規則性は…。
シダの葉は、一部が全体を縮小した形をしている。シダの茎の両脇には、細かく分かれた葉が何枚も並んでいる。葉は茎の根元に近いほど大きく、先端に近づくほど小さくなって、全体として柔らかな三角をつくっている。そして、これが、一つ一つの葉にあてはまる。シダの種数によっては、この構造が4度も繰り返される。
 これまた、不思議なことですね…。
古代ギリシアの哲学者プラトンは、正多面体が5つしかないことを知っていた。正四面体、立方体(正六面体)、正八面体、正十二面体、正二十面体である。
シマウマは縞模様のおかげで、草原でも目立たぬように草を食める。トラは縞模様のおかげで、ジャングルで待ち伏せするときに気づかれずにすむ。縞柄のチョウチョウウオやスズメダイは、すみかであるサンゴ礁の色合いにあわせて飾りたてられている。
 黄褐色のライオンは砂漠の砂と同じ色だ。ヒョウがまだら(斑)の皮をまとっているのは、枝にうずくまっているときに木漏れ日の模様に溶けこむためである。
 自然界の生物のデザインの豊富さ、その奇抜さは、人間の想像力をはるかに超えるものがありますよね。そして、その規則性にも感心してしまいます。どうして、そんなことが可能になったのでしょうか。神のみぞ知る、ということでしょうか…。信じられません。自然には不思議さがあふれていますよね。

(2009年2月刊。1600円+税)

2009年9月22日

くらげ

著者 中村 庸夫、 出版 アスペクト

 海月、水母、久羅下。クラゲをあらわす言葉です。海の中をふわりふわりと漂っていくクラゲは夢幻の存在というほか言い表しようがありません。
 英語ではゼリー・フィッシュというそうですが、まさしくゼリー状の姿をしています。でも刺されたら痛い存在です。私も子どもの頃、お盆過ぎに海水浴をして、クラゲに刺されて痛い思いをした記憶があります。
 クラゲは古事記にも登場しているそうですが、なんと、魚や恐竜よりはるか古く、10億年前に地球上に現れたといいます。
 脳も心臓もエラも骨もない。動物でも魚でもない。プランクトンなのである。
 海の中をフワフワと漂っているのは、クラゲの一生の中のほんのわずかな期間であり、その他の期間は「ポリプ」の姿で付着生活をしている。
 さまざまなクラゲの生態が見事な写真で紹介されています。コンパクトな写真集ですが、生物の多様性を発見・実感させるものとなっています。
 漆黒の水中に体を輝かせて浮かぶ姿は、まるでUFOが宇宙から舞い降りてくるような錯覚をおこさせた。
 こんなキャプションがついていますが、まったくそのとおりです。
 しかも、いかにもカラフルな姿がカラー写真で紹介されています。造形美の極致というべきクラゲの姿は、いつまでも見飽きることがありません。

(2009年3月刊。2000円+税)

2009年9月21日

いっしょがいいね

著者 間山 公雅、 出版 文藝春秋

 眺めているうちに、心がほんわかあたたまってくる。そんな鳥たちの可愛い写真集です。
 みずみずしい緑の森の中で、枝にとまった2羽のフクロウが仲良く寄り添っています。隣のフクロウの身繕いに手を貸したりもします。
 丹頂鶴に赤ちゃんが生まれました。丹頂鶴は、求愛ダンスで愛を確認しあうと死ぬまでパートナーを変えず添い遂げるそうです。卵は夫婦で交代しながら温め、家族単位で行動します。赤ん坊が親の背中の羽毛に埋もれるようにしてもぐりこみ、頭だけを出しているほほえましい写真もあります。子どもたちは親からエサを分けてもらったりしながら、次第に大きくなっていきます。身体が白いのが親で黄色いのが子どもです。
 ところが、菜の花の咲く頃には、子どもの身体も白くなり親と見分けがつきません。やがて、親にならって求愛ダンスを始めます。
 災害や戦争などを追いかけていたカメラマンが故郷の北海道をまわって写真を撮り始めたのでした。良くできた、小さな写真集です。

(2009年1月刊。1238円+税)

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