弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物

2010年2月21日

タイガとココア

著者 林 るみ、 出版 朝日新聞出版

 釧路市動物園で産まれた、後ろ脚に障がいをもつアムールトラ2頭の生育日誌です。残念なことに、そのうちの1頭は1年あまりで死んでしまいました。でも、動物園の飼育員の皆さんの懸命な飼育状況がたくさんの写真とともによく伝わってきます。
 私も、今や日本一有名な旭山動物園に見学に行ったことがあります。広々とした大自然のなかで、アザラシやペンギンなど、たくさんの動物たちが生き生きと生育しているのを見て、心を打たれました。この釧路市動物園には行ったことがありませんが、釧路には3回ほど行きました。今度行くときには、この動物園に立ち寄ってココアちゃんを拝んでこようと思います。
 アムールトラの赤ちゃんは、3頭生まれましたが、1頭は間もなく死んでしまいました。残る2頭も、後ろ脚に障がいがあり、ちゃんと立てません。その2頭が生まれてから大きくなるまで、飼育員の皆さんが手塩にかけて育てる様子が伝えられます。
 ともかく、この本のいいところは、産まれ落ちたところ(母アムールトラは産みっ放しで、赤ちゃんの面倒を見なかったのです)から、2頭が徐々に大きくなっていき、飼育員が抱えきれなくなるまでの様子が克明に写真で紹介されていることです。大きくなったら怖いばかりのトラも、小さいときには子猫そのもので、ともかく可愛いのです。
 生後まもなくのとき、授乳は1日6回、2時間ごと。そのたびに排便の世話をし、足のマッサージもする。排便させるためには、ミルクを飲んだあと、必ず濡らした紙でお尻をふき、うんちをさせる。本当は母トラが赤ちゃんトラのお尻を舐めてやる。
 ミルクを誤って飲み込まないように注意深くしないといけないし、感染症にかからせないように、授乳時は飼育員も手の消毒を念入りにする。
 大きくなって、毛が抜け変わるときには、抜けた毛を飲みこみ、毛玉が胃の中にたまらないよう排出させるために、ネコ草を与える。
 ええっ、ネコ草って何ですか?知りません。どなたか、教えてくださいな。
 毛は内臓の鏡。動物は毛並みに体調が出る。うひゃあ、これも知りませんでした。そうなんですか……。
 100年前は10万頭いたと言われる野生のトラは、現在では多く見積もっても6000頭しかいない。アムールトラは絶滅の危機に瀕している。これも人間のせいですよね……。
 とても可愛らしいトラの赤ちゃんの写真が満載の本です。どうぞ手にとって眺めてみてください。心が癒されますよ。
 
(2009年11月刊。1400円+税)

2010年1月24日

生きものたちの奇妙な生活

著者 マーティ・クランプ、 出版 青土社

 オーストラリアのニワシドリが紹介されています。
メスは見回って、あたりにある全部のあずまやを点検する。
メスは幸運なオスを一匹選んで、そのオスのあずまやの戸口に行く。オスは歌い、飛び跳ね、突飛なダンスを踊り、骨や貝殻その他のものをくちばしで拾い上げ、頭を上下させて物体を振る。そして、それを放り出して別のものを拾い上げ、同じことをする。その間、メスはオスの様子を眺めて吟味する。それが気に入れば交尾する。そのあと、メスは飛び去っていく。オスは冷静さを取り戻し、あたりを片づけ、散らばったものを正しい場所にきちんと戻す。そして、別のメスを迎え入れる準備を整える。
 NHKの映像でも見ることができましたが、オスの涙ぐましい努力には笑うどころか、身につまされてしまいました。男って、本当に辛いのですよ。決して寅さんばかりじゃありません。
 オーストラリアのカエルは胃の中で子育てをする。
 メスは21~26個の受精卵からおたまじゃくしを飲みこみ、胃の中で6~8週間のあいだ、食道が拡張して小さな子ガエルを吐き出すまで、そこで育てる。母親の胃の中で発育する間、オタマジャクシは体に貯蔵した卵黄だけを栄養源にしている。母親がなぜ子どもたちを消化してしまわないのか。子どもたちは、母親の胃酸の分泌を阻害する物質を分泌している。子どもたちが外界に出ると、母ガエルの胃は正常な消化機能を回復する。
 うへーっ、す、すごいですね、この仕組みって。自然界は驚異に満ちていますね。
 ウサギは2種類の糞をつくる。昼間の糞と夜の糞だ。夜の糞には細菌がぎっしり詰まっている。ウサギは夜の糞を食べて細菌をリサイクルするとともに、その過程で養分を吸収している。うむむ、糞なんて汚いだけという思いを捨てなくてはいけません。生きる糧でもあるのですね。
 インドでは、スカラベが人間の排泄物を毎日4~5万トンも埋めている。アフリカでは、ゾウの新鮮な糞の山には、15分以内に4000匹のスカラベが集まる。
 中国、オーストラリア、南米の人はゴキブリを食べる。アフリカの熱帯では蚊を食べている。いやはや、とんだことです。こんなものも食べる人がいるのですか……。
 この世は、不思議な生き物でいっぱいなんですね。

(2009年5月刊。2400円+税)

2010年1月 3日

イカはしゃべるし空も飛ぶ

著者 奥谷 喬司、 出版 講談社ブルーバックス
 日本人は、年間1人あたりイカを1.2キログラム(イカ3~4杯)も食べている。これほど日本人のイカ好きのため、日本列島沿岸でとるイカ40~50万トンではとうてい足りない。
 イカには、血中のコレステロールを抑えるタウリンという物質が多く含まれている。イカは非常に良質のたんぱく質を含み、低脂肪でもあって、ダイエット志向にぴったりである。
 日本のスルメイカは1968年に空前の豊漁があり、70万トンもとれた。今では、その半分以下の30万トンもとれない。
 化石のアンモナイトはイカの遠い祖先筋にあたり、イカも昔は重い貝殻を背負っていた。イカは貝類の親戚なのである。
 イカの筋肉は運動力の強いものほどよく発達していて、そのようなイカほどおいしい。運動力の鈍いものは筋力も弱くて、まずい。
 同じ重さの金と同じ値打ちのある「竜涎香」(りゅうぜんこう)と呼ばれる高価な香料のもとは、実はマッコウクジラの腹の中にたまった不消化のイカの「からすとんび」の塊なのである。いやはや、とんだことですね。
 イカは水中を矢のように泳ぐが、それだけイカの筋肉は短時間に多量の酸素を必要とする。
 イカの墨は粘液に飛んでいるので、ぷっと吹き出すと、しばらくその雲は散らばらない。これは恐らく攻撃の目を欺くダミーと思われる。
 イカは一瞬にして体色を変えるという超能力を持っている。すべての色素細胞が収縮すると、イカの皮膚には色がなくなり、全体が透明となる。
 スルメイカは1年間で一生を終える。アカイカは胴長が1ヶ月で3~4センチも伸び、1年間で体重5キロ、胴長40センチを超す巨体になる。
 イカは水族館で慣らさない限り、生きた餌しか食べない。そこで、疑似餌を水中で跳ねるようにしてあやつり、イカを誘う。
 イカのことをいろいろ知ることのできる本でした。イカ刺しってホントおいしいですよね。また呼子に行ってみたくなりました。
(2009年2月刊。1600円+税)

2010年1月 1日

カワセミ

著者 福田 啓人、 出版 雷鳥社

 熊野古道のわたらせ温泉旅館(ささゆり)で早朝、カワセミに出会いました。久しぶりの邂逅です。空飛ぶ青い宝石という名前のとおり、輝くブルーでした。
大きさはスズメと同じ。青い背中、オレンジ色のお腹、赤い脚。とても鮮やかな色彩なので、見間違うことはない。構造色のため、光の当たり方や見る角度、周囲の景色で色が違って見えるので、一種の保護色である。
 構造色自体には色がなく、CDやシャボン玉、青空などと同じ。いつもは無色透明なのだが、光の干渉によって、さまざまな色彩に変化する。いつもは青色に見える背中が光の加減で宝石の翡翠色に見えることもある。そのため、感じで翡翠と書くといわれている。しかし、その逆に宝石の翡翠の名前はカワセミを見てつけられたとも言う。
 オスとメスは、くちばしの色で見分けられる。くちばしの下が黒いとオス、赤ければメス。
チーっという独特の鳴き声は、自転車のブレーキ音のように聞こえる。水面スレスレを直線的に飛び回り、スピードにのてくると、弾丸のような形に身体をすぼめ、さらにスピードを増すこともある。水辺の岩や木の枝に止まり、水中を観察し、魚影を見つけては補色を繰り返す。ときには水面の上空でホバリングをし、魚を見つけて水中に飛び込む。捕まえた魚は岩や木に叩きつけて丸のみする。
 小さいドジョウ、小エビ、小型のザリガニ、小さいカエルなど、水中生物で丸のみ出来そうなものなら何でも食べる。
カワセミの寿命は平均して2年。ただし、ドイツで15年生きたという記録もある。
カワセミの一生は一夫一婦制だが、絶対ではない。
カワセミの子育ては2週間ほど。その間にヒナは魚捕りを覚え、一人前に育ち、親のナワバリから追い出されてしまう。逆のこともある。
よくぞこんな写真が撮れたものだと思うほど、くっきり鮮明なカワセミの写真のオンパレードです。これほど素晴らしい写真をとるには、じっと我慢の日々が何日も何ヶ月間も続いたのではないでしょうか。その成果を、わずか1600円で見られるのですから、安いものです。
カワセミの百の生態写真として、大いに推奨します。

 
(2009年2月刊。1600円+税)

2009年11月24日

イルカ

著者:村山 司、出版社:中公新書
 イルカという名称は生物学・分類学上の正式なものではなく、あくまでも便宜的な呼び名に過ぎない。
 口のなかにヒゲ板があるのがクジラ、口のなかに歯があり、からだの小さいのがイルカである。
 イルカはクジラと違って、それほど大きな回遊はしない。
いったん陸に上がった動物のなかで、イルカやクジラの祖先は今から6500万年前に再び海に戻っていった。それは、大規模な地殻変動によって陸地が動き、その結果、イルカやクジラの祖先は海に追いやられたからだという有力な学説もある。
 イルカは弾力的な皮膚をもっているため、渦流が生じず、抵抗が少ない。イルカの皮膚は、2時間ごとに垢となって落ちていく。これも余分は抵抗を減らすのに有効なのだろう。
 イルカやクジラには、胃が4つある。体温は37度ほど。
 イルカの胸ビレのなかには、5本の指の骨が今も存在する。
 イルカは数分間、呼吸しなくても平気。時速30キロで泳げる。イルカは水中で呼吸しない。急な潜りと浮上をくり返しても、潜水病に苦しむことはない。イルカの肺は非常に強く、肺胞がつぶれても肺自体が破裂することはない。肋骨も間接が柔らかいため、折れることはない。
イルカは海水を直接のむことはしない。餌のなかにふくまれる脂肪を分解するときにつくり出される水を利用する。
 イルカは半球ずつ眠る半球睡眠をしている。
 イルカの子育てはメスだけがする。そして集団で行う。集団のなかで、子イルカを群れの真ん中に位置させ、敵から子どもを守る。ゾウに似ている。そして、乳母役のイルカがいる。母親のほかに、出産経験のあるメスや年配メスのイルカが子イルカの面倒をみる。
 イルカは優れた聴覚をもっている。イルカはホイッスルを用いて、お互いに交信している。そして、イルカは人間と遊ぶことが大好きである。
 イルカのことがとても分かりやすく紹介されている本でした。
 天草ではイルカがたくさん泳いでいるのを見れるようです。ぜひ行ってみたいと思います。

 和歌山の白浜温泉では、バブルの象徴ともいうべき「ホテルK」を実見してきました。ともかくすごい。想像を絶する豪華さです。マダガスカルと南アフリカにしか生えていないバオバブの木の一木彫りの大きな扉が南紀白浜にあるだなんて、信じられません。
 門をはいると、貴族の十蛇の服装をしたボーイさんが2人出迎えてくれます。エントランスから建物に入ると、広い広いホールです。高くて見上げると首が痛くなる天井は、金箔がはられています。大きくて太いエンタシスの柱は、いかにも高価そうな大理石です。
 一泊50万円の部屋を見学させていただきました。一体誰が泊まるのか、不思議でなりませんでしたが、それでも、泊まる人はいるようです。といっても、楽天で予約すると、かなり割安で予約できるということです。確かに白浜の海に面した部屋で、気持よく過ごすのもいいかもしれません。
 大阪の佐伯照道弁護士の『なぜ弁護士は嘘を見破れるのか』に紹介されているホテルです。こちらの本も読んでみてください。勉強になります。

(2009年8月刊。740円+税)

2009年11月 9日

建築する動物たち

著者 マイク・ハンセル、 出版 青土社

 ハキリアリというアリは、最近ではかなり有名です。南アメリカに住み、葉を切り取って巣に運び、専用のキノコ畑を栽培しているアリです。その巣は地下6メートル、800万匹の成虫と200~300万の卵や幼虫がいます。その巣にセメントを流しこんで型をとった写真が紹介されています。セメントを6.7トンも流しこんだのですが、そばにいる人間が小さくしか見えません。それほど、スケールの大きい巣なのです。
 シロアリの大きな塚がある。そこには、塚の表面を風が通ると、頂上部分では気圧が根元に比べて小さくなるから、空気が塚の上部から流れ出て、下のほうから侵入することになる。こうやって、塚の中の換気が実現する。うへーっ、す、すごいですね、これって……。
 ハチやアリといった社会性昆虫の巣作りにおける組織系統の実態がわかってきた。それは人間とは異なり、リーダーシップなるものが存在しない。責任者という個体や個体群はいない。階層的な構造や管理部門もない。
 たとえば、シロアリに理解や判断はほとんど要求されない。シロアリは仕事を探しまわるだけで、作業の方法については、自分のなかから、そしてつくる場所は建物自体から指令を受ける。いったん着手した仕事は、誰がやってもコミュニケーションの必要もないまま続いていくし、完成する。うむむ、そういうことなんですか……。不思議ですね。
 ニワシドリのメスにとって、配偶者の選択は、それを探す情報量においても決心するまでに注ぎ込む時間と労力においても複雑な過程である。メスは巣を作る前から、オスの不在の折を狙っていくつかのパワー(巣)を訪れて点検する。そして、次にオスがいるとき、そのうち、いくつかにもどって求愛ディスプレーを見る。しかし、まだ交尾しない。それから1週間ほどかけて産卵のための巣作りをしてから、前に訪れたパワーのいくつかに改めて戻って、再び、選ばれたオスの求愛を受ける。そして、最終的に、そのうちの一羽と交尾する。
 メスが慎重にオスを選ぶというのは、ゴリラやチンパンジーだけではないようです。もちろん、人間についても言えることでもあります。だから独身の男女が増えているのでしょうか……。
(2009年8月刊。2400円+税)

2009年11月 7日

熱帯の夢

著者 茂木 健一郎、 出版 集英社新書ヴィジュアル版

 アメリカ大陸、中央アメリカにある小さな国、コスタリカは、軍隊を持たない国として有名です。そして、熱帯雨林を積極的に保全し、観光資産としています。私も一度は行ってみたいと思いますが、言葉の問題もありますので、実際に行くのはフランス語圏に決めています。
それはともかくとして、コスタリカの国土は5万平方キロメートルですから日本の7分の1以下となります。そこに、1000種類もの蝶が生息している。日本の蝶は230種類でしかない。コスタリカの蝶は、日本の30倍以上の「種密度」となる。
 ヘレノールモリフォチョウは大きな目玉模様をいくつも持っています。そして、羽を開くと、その裏に怪しげなまでに輝く青色を示します。羽の鱗粉の構造と光の干渉によって
もたらされる輝きです。
 擬態について、次のように著者は説明します。はたして、この説明は完璧なものなのでしょうか。私には、いささか疑問です。
 ドクチョウやトンボマダラには、それに擬態した蝶や蛾がいる。これらの蝶そっくりの羽をしているが、ほんとうはまったく別の系統の種で、体内に毒もない。それが、長い進化の過程で似たような姿かたちになる。もちろん、あの蝶に似ようと意識してやるのではない。遺伝子の変異によって、さまざまな色かたちの個体が生まれるなかで、たまたま毒をもった蝶に似ている形のものが淘汰の中で有利となり、より多くの子孫を残す。そのような微小な変異が積み重なって、やがてそっくりの外見になる。
 どうなんでしょうか。蝶にも「種としての意思」があるのではないでしょうか。そして、「たまたま」ではなく、何かの意図にもとづいて毒をもった生物に似せようとしていると解すべきではないのでしょうか。著者は種としての生きものの「意思」を、あまりにも無視しているように思われてなりません。
 東大の理学部をでて、法学部を出て、さらに大学院で物理学を修めたという学者です。恐るべき優秀さですね。すごい学者が脳についてとても分かりやすく語ってくれますので、私はずっと愛読者です。
(2009年8月刊。1100円+税)

2009年11月 2日

モグラ博士のモグラの話

著者 川田 伸一郎、 出版 岩波ジュニア新書

 我が家の庭にモグラがいることは間違いありません。でも、死んだモグラしか見たことはありません。この本を読むと、モグラの生態ってまだまだわかっていないことがたくさんあるんですね、びっくりしました。こんな身近な存在なのに、分からないことだらけというのも不思議ですよね。著者はモグラ博士ですが、ぜひいっしょにモグラの謎を解明しましょう、と呼びかけています。
 モグラには目がない。目はあるけれど、皮膚でおおわれてしまっている。モグラは光を感じることができない。また、その必要もない。モグラの棲む地下世界は夜の闇よりもっと暗く、まさに真っ暗。ここまで光がない環境だと、目は必要ない。
モグラの鼻には、アイマー器官というのがあって、微弱な振動を感知することができる。これによってモグラのトンネルにミミズが出てきたことなどを知る。
モグラは、地上を歩くのは苦手。モグラ塚は地上との出入口ではない。
 西日本にすむ大きなコウベモグラがどんどん北上していって、小さなアズマモグラを北東に押しやっている。この分布境界線は、富士山から金沢市を結ぶ線あたりにある。
 モグラのテリトリーは、水田の1枚から2枚ほど。モグラの寿命は3年から4年。5年も生きていたら珍しい。メスは一度に3匹から6匹の子どもを産む。ただ、モグラの人工的な繁殖に成功した例はない。
モグラは植物を食べない。そうなんです。でも、毎年春のチューリップ畑を目ざしている私にとって、モグラはチューリップの球根を地上に放り出すという厄介者なのです。
 モグラはトンネルに穴が開くことをとても嫌う。出入り口が開くと、すぐに土を持ち上げて隠してしまう。というのも、ネズミなどが入ってきたりするからです。
 モグラは、1日3回食事をする。おなかがすくと、体力を消耗してすぐに死ぬ。そのため、早朝、夕方、深夜と3回トンネル内の見廻りに出かける。モグラが何度も繰り返し利用し続けるトンネルは、モグラのブラシのような被毛によって壁が磨かれ、つるつるの硬い壁面になっている。
モグラは温帯にすむ。暑いところにもすごく寒いところにも住んでいない。いやはや、モグラって、こんなに分かっていないことが多いのか、ホント不思議ですよね。
 モグラが生きて捕まるのは、母親モグラが子育てが終わって、子どもモグラを追い出すときだというのです。なーるほど、子別れって命がけなんですね。
 モグラの不思議な話が盛りだくさんの面白い本でした。
 
(2009年8月刊。780円+税)

2009年10月26日

先生、子リスたちがイタチを攻撃しています!

著者 小林 朋道、 出版 築地書館

 大好評の先生シリーズです。毎回、私も楽しく読ませていただいています。
 私も、動物を飼育してみたいという気持ちはあるのですが、あちこち旅行もしたいし、両立できませんので、あきらめています。本当は犬を飼って、毎日散歩したいのです。
 といっても、我が家の庭にはモグラがいますし、ヘビもいます。そして、夜になるとヤモリが窓に貼りつきます。小鳥はキジバトそしてヒヨドリは常連です。もちろん、スズメ軍団もいます。春にはメジロ、そしてウグイス、さらにはカワラヒラなどもやって来ます。山のふもとの近くに住んでいますから、それなりに豊かな自然に恵まれています。ただし、モグラは生きた姿では見たことがありません。見るのは、地上の死骸となっているときです。庭のあちこちに土が盛り上がりますので、何頭ものモグラがいることは間違いありません。
 ヘビの姿の方は、幸いにして最近は見かけません。ただし、庭に出るときには、思わぬ遭遇ということにならないように用心しています。
 先生シリーズは、鳥取環境大学で動物行動学と人間比較行動学を専門にする小林先生の日常生活が愉快なタッチで紹介されています。微笑みながら、動物と人間の行動科学が学べるという勝れものの本です。
 イタチ科の動物であるフェレットを飼育したときの顛末は面白いのですが、その顔写真がなんとも可愛らしいのです。いやあ、これはぜひ飼ってみたいと思いました。実際に飼うと大変なんでしょうね……。
 シマリスの子どもたちがカタカタカタという音を一斉に立てて、イタチ(フェレット)を撃退するのは実証する実験は面白いものです。やはり、学者になるには、少し奇抜な発想のできることが必要なんですね。ということは、やっぱり学者は変人に限る、ということでしょうか…(おっと、失礼しました)。
 ヤモリは家守り。イモリは井守り。ヤモリは爬虫類、イモリは両生類。ヤモリの尿は、白色のねっとりとした半固体状、イモリの尿は液体。
 アカハライモリの生態を探求するためには川岸のアシを夜中に鎌で刈りつくす作業が必要となる。その作業のため、小林先生は、ついに腱鞘炎となり、両手首にサポーターを巻かざるをえなくなりました。学者って、それほど大変な職業なんですね。いやはや、学者なんてならなくて良かったと私は思ったことです。本を読むだけなら、私も出来ますから…。
 モグラはミミズだけでなく、セミも食べる。私は、初めて知りました。そういえば、うちの庭にも、もちろんセミの幼虫はいます。7年ほども地中にいて、地上ではわずか1週間の生命というはかなさです。
 面白いシリーズの本です。どうか、引き続き、がんばって面白い本を書いてくださいね。
(2009年8月刊。1600円+税)

2009年10月19日

ホタルの不思議

著者 大場 信義、 出版 どうぶつ社

 初夏というより、晩春でしょうか。5月の連休(ゴールデンウィーク)が終わって間もなく、我が家から歩いて5分のところの小川に、毎年、ホタルが飛び交います。ほっとするひとときです。
 著者は企業の研究所に入り、そして中学校の教員となったあと、博物館の学芸員としてホタルの研究に専念するのでした。これもすごいですよね……。
 私が東京のような大都会ではなく、田舎で弁護士を続けているのも、歩いて5分のところでホタルの光を眺めることができることの良さに価値を見出しているからです。
 ホタルの放つ光は、次のような生化学的な酸化反応による。酵素であるルシフェラーゼとルシフェリン、ATP(アデノシン三燐酸)などの物質が混ざり、そこにマグネシウムイオン、酸素が加わると反応がすすみ、発光する。この反応は効率が非常に高く、蛍光灯などとは比較にならないほどエネルギーを光に変えている。このため、ほとんど熱を伴わないことから、冷光とも言われる。そしてホタルは発光反応を自由に制御している。
 ホタルには、せっかちな西日本型(2秒に1回発光する)と、のんびり発光する東日本型(4秒に1回発光する)がある。発光パターンだけでなく、産卵習性も異なっている。
 ゲンジボタルの幼虫は、4月の雨が降るあたたかな夜にサナギになるため、一斉に発光しながら川岸に上陸して、土に潜る。ホタルは、幼虫も光るのですね……。見たことはありませんが、なんだか夢幻的な光景です。
  西日本のゲンジボタルのメスは、100個以上の集団となって産卵する。しかし、東日本のゲンジボタルは、同じ種でありながら、集団産卵はしない。
パプア・ニューギニアにはホタルの木というのがあるそうです。オスのホタルが集まり、集団となって発光してメスを呼び寄せるのです。この木が切られてしまったら、このホタルは絶滅するだろうと予想されています。そうならないことを祈ります。
 我が家から歩いて5分のホタル出現地にも、すぐそばに新しく道路がつくられています。レジャーランドへ通じる便利な道路として開設されつつあるのです。でも、いったい、このレジャーランドが、いつまでもつのか、私には疑われてなりません。
 自然環境を孫の代にまで残したいものですよね。
 
 庭の合歓(ねむ)の木が、またふわふわとしたピンクの花を咲かせ始めました。この花を見ると、なぜかいつも子どもの頃の心のときめきを覚えます。どうしてかなと考えていると、夏祭りの提灯に描かれていた花や金魚などの鮮やかなピンクの色を連想させるからだと思い当りました。
 我が家の庭の合歓の木は小さいのですが、お隣にあるのは大きくて、慮杖を大きく広げるほどに全面に咲いて、それはそれは華やかです。
 朝、居間の雨戸を開けると、目の前に秋明菊の花が飛び込んできます。すっと高く延びた茎に、純白の花びら、そして真ん中はクリーム色になっています。気品あふれる、見るからに清々しさの伝わってくる花です。そばに紫色の斑(ふ)入りの不如帰(ほととぎす)の花も咲いています。稲刈りも間近の秋です。
 
(2009年7月刊。2200円+税)

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