弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

宇宙

2016年3月20日

ニュートリノで探る宇宙と素粒子

(霧山昴)
著者  梶田 隆幸 、 出版  平月社

 よくは理解できないながら、宇宙の成り立ちが少しでもつかめたらという思いで読みすすめてみました。
 ニュートリノは、電子と同じく素粒子の仲間。ニュートリノは、電子から電荷と重さをはぎとったようなもの。ニュートリノの大きさは分かっていない。
 私たちは、ニュートリノを触ったり、目で見たりして直接感じることはできない。
 しかし、ニュートリノがなければ私たち人類は存在できない。なぜか・・・。地球上の生物は、すべて太陽の光と熱によって生かされている。もしも太陽がなかったら、地球表面の温度は太陽系のいちばん外側にある冥王星よりも下がり、生物はまず生きていかれない。
 大要のエネルギーは、核融合反応によってつくられている。太陽中心の水素原子核が4個くっついてヘリウム原子核になるときに、膨大なエネルギーを放出する。もし、ニュートリノがなかったら、この反応はおこらない。最初の核融合反応が点火しないから・・・。
 ニュートリノがないと、太陽だって光り輝くことができないというのです。なんだか、ニュートリノを身近に感じることができました。
ニュートリノは観測するのが、とてもむずかしい。なにかにぶつかっても、曲がったりせず、地球すら貫通して飛んでいってしまう。
 太陽からやってくるニュートリノ1個を物質と反応させるには、地球を100億個ほどタテに並べてニュートリノを通す必要がある。そのくらい大量の物質があってはじめて、反応が起こる。逆に言うと、1個の地球を100億個のニュートリノが通り抜ければ、そのうちの1個がたまたま地球の内部のどこかで反応することになる。
 ニュートリノは、雨あられと地球に降りそそいでいて、太陽から地上にやってくるものだけでも、1平方センチメートルあたり毎秒660億個もある。
 こんなにすさまじい量のニュートリノって、一体どこへ行くのでしょうか・・・。
 スーパーカミオカンデは、直径40メートル、高さ40メートルの水槽を5万トンの水で満たしている。
 ニュートリノが一番たくさんつくられたのは、宇宙の始まり、つまり「ビッグバン」のとき。宇宙は始まって以来、ニュートリノに隅々まで満たされている。
 ニュートリノは、宇宙で一番たくさんある、もっともありふれた粒子である。
 ニュートリノは、電気的に中性で、物質とほとんど反応しない。ニュートリノは、物質と相互作用する力が弱い。弱い力とは、陽子の大きさの1000分の1くらいの距離にしか力が及ばない。
大気ニュートリノは、人間の身体にあらゆる方向から入射し、ほとんどそのまま空き抜けていく。
ニュートリノに質量があることは、現在では素粒子物理学の定理となっている。
 岐阜の山中にあるスーパーカミオカンデのほか、南極にも観測点があるそうです。すごいな、すごいな、と思いつつ、宇宙の起源と構成って今でも不思議なことだらけだということは、よく分かりました(分かったような気がしました)。
(2015年11月刊。800円+税)

2016年3月 7日

オーロラ!

(霧山昴)
著者  片岡 龍峰 、 出版  岩波科学ライブラリー

  私は残念ながら現物のオーロラを見たことはありません。映像のみです。
オーロラほど不思議な光はない。冷たい炎のような光が色を変え、形を変え、音もたてずに空を舞う姿の圧倒的な不思議さには、驚きと畏怖の言葉が尽きない。
100年前、ノルウェーの科学者(ステルマー)が電話をつかって30キロ離れたところで写真を同時に撮影し、オーロラの高さの精密な三角測量を繰り返した。その写真乾板は4万枚をこえる。その結果、オーロラが地上100キロ、高いものだと1000キロで光っていることを突きとめた。
オーロラの緑や赤は、酸素原子がエネルギーを受けたときに自然に出てくる色。緑の光を放つには0.7秒かかるが、赤の光を放つには110秒の時間がかかる。したがって、オーロラの赤は、緑が光る場所よりももっと真空に近い、110秒ほど励起状態のまま仲間と会わずに漂うことのできるほど空気が薄い状況、つまりより高い場所でないと光ることができない。上が赤く、下が緑という、あのオーロラのクリスマスカラーは、酸素原子がつくり出したグラデーションなのだ。
北極の近くでは、オーロラは見えない。オーロラは、地球規模で「輪」を形づくっている。
地球が磁場をまとっていることによって、電子は磁場気に捕らえられ、オーロラオーバルの近くに輪のように電子が流れこみやすい状況になっている。そこで、猛スピードで大気へ流れ込んだ電子が、空の終わりの酸素原子と衝突して、オーロラを光らせている。
オーロラの全体像は、今ではほとんど明らかになった。でも、今なお、電子と陽子の動きの違いや細かなプラズマの構造など、分からないことは多い。
オーロラの解説が十分に理解できたということはありません。それでも、オーロラの生成・構造が単純なものではないことだけはよく分かりました。宇宙には不思議なことだらけですね・・・。
それにしても、マイナス40度とかいう世界でオーロラを観察しようとは思いません。やっぱり、ぬくぬくとしながら、映像でガマンしておくことにします。
  
(2015年10月刊。1300円+税)

2016年2月 1日

銀河系惑星学の兆戦

(霧山昴)
著者  松井 孝典 、 出版  NHK出版新書

 真夏は、夜寝る前にベランダから天体望遠鏡をのぞいて月の素顔を見るのを私は楽しみにしています。その月面にたくさんある「あばた」(クレーター)は、なんと天体衝突によって生まれたというのです。
物質科学的に超高速の天体衝突で生じるような、超高圧下でつくられたような鉱物が発見された。これらのクレーターの多くは、40億年以上も前にできたもの。
 それが無数にあるということは、40億年前の月では、無数に天体衝突が起きていたことになる。
 そして、月のマントルには、地球のマントルと同じくらいの水が含まれている。最古の結晶化年代は44.17億年である。
 地球に降ってくる隕石の多くは、宇宙空間に漂っていた塵やガスが凝縮してつくられた鉱物が単に集まっただけの集合体である。隕石の多くは、今から45億年以上前にできた。いちばん古い隕石は、1969年2月(例の東大・安田講堂攻防戦の翌月です)にメキシコに落下した。推定5万トン。ただし、大気中で爆発した。粒子が直径100キロメートルほどの天体になるまでに数百万年かかる。
 太陽系は、45億6600万円前に誕生したことが分っている。
 ブラックホールは「穴」ではなく、きわめて密度の高い天体である。周囲の物質をとり込みながら、無限の重力崩壊を続けているようなもの。
 銀河の中心には太陽の1億倍もの物質をもち、超巨大ブラックホールが存在している。
 冥王星が惑星ではないとされたのは、2006年に太陽系の惑星の定義が定められたから。惑星の定義は三つ。
 ① 太陽を回る軌道上にある天体
 ② 重力が物体の強度を上まわるだけの質量を持ち、静水圧平衡に近い形をしている天体。
 ③ その軌道の近くには、ほかの大きな天体が存在しない。
 冥王星は、この条件を満たしていないので、「準惑星」とされた。
 地球上にある広大な海を形成するほど大量の水はいったいどこから来たのか・・・?
 実は、それは彗星によって運ばれてきた可能性がある。
 えーえっ、ななんという不思議なことでしょう。想像できません・・・。
 最初の原始的微生物、あるいはウィルスも、宇宙から来た可能性が否定できない。地球が誕生する以前に、宇宙には生命の萌芽があったのではないか・・・。
 生命は宇宙で誕生し、それが彗星によって育まれ、運ばれ、彗星が地球に衝突することで地球に生命がもたらされた。
 むひゃあ、そんな、そんなことがあるのでしょうか・・・。ところが、著者は、この仮説を否定できないというのです。
 いやはや、宇宙にハテは果たしてあるのかと同様、無限の難問が宇宙には満ちみちています。

(2015年12月刊。780円+税)

 先週、私の町は断水騒ぎで大変でした。マイナス7度になって水道管が凍結し、破裂してしまったのです。水が使えないとトイレも風呂もダメです。コンビニやスーパーから水やパン、弁当がたちまち姿を消してしまいました。水のありがたさを改めて実感したと会う人ごとに話したものです。電気より、灯油やガスより、何より水が生活の基本なのですよね。本当に大変でした。
 それにしても、都市生活って、案外もろいのですよね。これで原発事故が起きたら、どうしようもありませんね・・・。

2016年1月 1日

ブラックホール・膨張宇宙・重力波

(霧山昴)
著者  真貝寿明 、 出版  光文社新書

 光陰、矢の如しです。一年の過ぎるのが本当に早いです。人生の折り返し点をとっくに過ぎている今、この先、地球と宇宙そして人類がどうなっていくのか、ちっぽけな存在である私の死後、いったい意識が消失したあと、何が待ち受けているのか・・・。ぜひ、知りたいところです。
 ブラックホールとは、光さえも脱出することができない重い天体。だったら、ブラックホールなんか私たちは見えないはず。ところがブラックホールは観測されている。なぜ?
 実は、ブラックホールそのものが見えているわけではない。それでも、ブラックホールの存在が分るのは、ブラックホールに吸い込まれているガスの分子同士がぶつかりあってX線などの電磁波を強力に放射するから。ガスが「明るく光る」ため、ブラックホールに吸い込まれていく姿が見える。だから、ブラックホールは、天文学的には「明るい天体」とも言える。ええっ、そうなんだ・・・。
 銀河系の中心部分にも、超巨大なブラックホールが存在している。太陽の実に300万倍以上の質量と見積もられている。
 ここで、クエスチョン。鏡を手にもって自分の顔を見ている人が、光速で動いたとすると、鏡に顔は映るのか?
 その答えは、鏡に顔は映る。なぜなら、光速で人間が動いていたとしても、光はその人から見て光速で動くから。
 なんとなく、分ったようで分らない話です。
 時間の進み方は、観測する人によって変わる。ロケットの速度が速ければ速いほど、地球の1秒に比べてロケットの1秒は遅くなる。だから未来に行くタイムマシンは可能だ。光速に近いロケットで宇宙のどこかに飛び、そして戻ってくればよい。浦島太郎の話は竜宮城が光速近いスピードで移動していたとすれば、ありうる。ただし、過去に戻るタイムマシンは不可能。
現時点での宇宙像は次のとおり。宇宙は何らかのメカニズムによって誕生し、インフレーションと呼ばれる急激な真空の膨張を起こした。インフレーションは、当時の地平線スケールをはるかに超える大きさまで引き延ばし、現在我々が観測している範囲を超えてほぼ一様な宇宙を実現した。インフレーションは、膨張領域同士が衝突する現像で終了し、高温高密度の「火の玉」となり、ビックバン宇宙モデルに引き継がれる。火の玉は、宇宙の膨張にしたがって温度を下げ、宇宙全体の大規模構造ができていった。宇宙は現在なお加速膨張を続けている。
 重力波とは、時空に生じた「ゆがみ」が波となって伝わる現象である。これまで地球上で重力波をとらえたことはない。重力波は、とてつもなく弱い波だから。
 そこで、日本は岐阜県神岡の山中に長さ3キロのトンネルを2本掘って、大型低温重力波望遠鏡「カグラ」を建設中である。人工的に重力波を作り出すことはできない。宇宙でつくられる重力波を観測するしかない。
 連星パルサーの発見により、重力波の存在が間接的にせよ確かめられた。
 重力波の観測が現実すると、中性子星の軌道パラメーターが分るだけでなく、これまで不明だった原子核の状態方程式が決まり、ブラックホールが形成される直接の証拠を得ることになる。また、銀河中心のブラックホールの形成過程や初期宇宙の解明、あるいは重力理論の検証にもつながっていく。
 宇宙に涯があるといいます。では、その外側は、いったいどうなっているのでしょうか・・・。暗黒かつ真空の世界なのでしょうか?
宇宙の話ほど、ロマンをかきたて、日頃のこせこせした悩みを忘れさせるものはありません。


(2015年9月刊。900円+税)

2014年12月22日

光とは何か


著者  江馬 一弘 、 出版  宝島社新書

 真空の空間では、目の前を通り過ぎる光線が見えることはない。目の前の宇宙空間は真っ暗にしか見えず、そこを光が通過していることには気がつかない。
 なぜなら、宇宙空間は、ほぼ真空であり、光を散乱されるものがほとんどないから。
光は、ほかの物質と出会うことで、初めて何かが始まる。
 光の正体は、空間を伝わる電気的な波である。
 光の三原則とは、光の直進、反射、屈折に関する法則のこと。光は、障害物にぶつからない限り、まっすぐに進む。
 光が2億9979万2458分の1秒間に進む距離が1メートルである。
 分子や原子などのミクロのレベルで考えると、鏡に反射したあとの光は、鏡に反射する前の光とは、厳密には「別のもの」。鏡にあたった光は、「そのまま」鏡を通過する。それとは別に別に、鏡に光が当たることで、鏡の中の分子や原子が振動して、光を放つ。その光が「反射光」として、人間の目に見えている。
 光が屈折するのは、光の速度が変化するため。光は透明な物体の中を進むとき、その速度は物体の種類によって変化する。それが光の屈折を生む。
 ダイヤモンドの中での光速は、真空中の4割ほどにまで減速する。
 宝石となる物質のほとんどは、屈折率が高い。
 光の色ごとに屈折の度合いが違うのは、プリズム中での光の速度が、色ごとにわずかだけど異なるため。
 赤色の光は原則の程度がやや小さいので、屈折する角度も小さい。
 紫色の光の速度の程度がやや大きいので、屈折する角度が大きい。昼間の空が青く見えるのは、空気中の分子が赤色の光よりも青色の光の方が強く散乱することが原因。
 海が青く見えるのは、散乱の効果よりも、水が青色の光を吸収する効果の影響が大きいから。ニュートンは、「光線に色はない」と言った。
 色とは、この世界に実在するものではなく、光の波長の違いを胸が「色」というイメージで認識しているだけ。つまり、色を実際に「見ている」のは脳であり、色という感覚をつくり出しているのは心である。
物質のなかで電子が振動すると、光(を含めた電磁波)が生まれる。
 電子が振動すると、振動する電場が生まれて、それが波のように空間を伝わっていく。それが光(を含めた電磁波)である。
 じつは、光は波ではない。光の正体は粒である。
 結局、光は波としての性質と、粒としての性質をあわせ持つ、不思議な存在なのである。
 フシギ、不思議、変テコリンな存在である光について、少しばかり頭を悩ませてみました。面白いですよね、こんな話って・・・。
(2014年7月刊。900円+税)

2014年11月25日

宇宙の果てはどうなっているのか?


著者  大内 正己 、 出版  宝島社

 たまには気宇壮大に、宇宙を眺めたいものです。今夜は、満月がこうこうと輝いています。
 頭上高く見る月と、ビルの屋上すれすれの月とでは、同じ大きさのはずなのに、まるで大きさが違います。目の錯覚だというのです。月の大きさにも大小があるとしか思えません。
 天文学者は大変ですね。昼間も仕事はしているのでしょうが、観測するのは、基本的に夜でしょう。みんなが寝静まっているときに、ひたすら目をこらして天文の動きを観測するなんて、ぞっとします。夜は、やはりぬくぬくと布団に入って、ぐっすり眠りこけたいものですよね。
 宇宙の歴史は138億年。ビッグバンによって宇宙が始まってから8億年たったころ、つまり宇宙の初期時代にある天体(銀河)を発見した。これをヒミコと名づけた。この銀河は、同時代のものに比べて10倍以上の大きさがあり、明るさも10倍あった。古代の宇宙にこれほど巨大でまぶしい銀河は、これまでこのヒミコ以外に見つかっていない。
 すごい話です。宇宙の始まりから8億年たっても、まだ、宇宙の初期だというのです。日頃の私たちの時間の流れからは、想像も出来ないスケールです。
 原子が生まれたのは宇宙の誕生から38億年後のこと。それまでは、まだまだ宇宙が熱すぎて、原子核と電子が結合できなかった。このころ、温度が3000度にまで下がってきたので、原子核と電子が結合して、水素原子とヘリウム原子が生まれた。電子が原子核と結合したことで、光を邪魔するものがなくなり、光は直進できるようになった。これを宇宙の晴れ上がりと呼ぶ。
 宇宙の中で、人間の知っている物質はわずか5%しかなく、残りの95%はよく分からないもので出来ている。
 古代マヤ文明は天体をよく観測していた。マヤ人が観測をもとに計算した1年は365.2420日だった。現在の観測によると、1年は365.2422日であるから、マヤ人の観測の精度はきわめて高かった。
 ヒミコは、3つの銀河が横一直線にきれいに並んでいる。どうしてなのか・・・。
 宇宙には、まだまだ、たくさんの解明すべき不思議があるのです。
 毎日のちまちましたことを忘れさせる書物でした。
(2014年9月刊。1300円+税)

2014年9月16日

宇宙のはじまりの星はどこにあるのか


著者  谷口 義明 、 出版  メディアファクトリー新書

人間の身体を形づくっている炭素やカルシウムといった原子は、もともと宇宙には存在しなかった。これらの原子ができるきっかけになったのは、「星の誕生」である。
 ガモフのアイデアは、「そんな考え方は、大ボラだ」と非難された。ビッグバンは、大爆発とともに、「大ボラ」を意味している。しかし、今では、このビッグバンこそ宇宙論の標準モデルとみなされている。
すばる望遠鏡は、世界で唯一、遠方かつ広範囲を観測できる「広視野カメラ」を搭載した大型望遠鏡だ。
 2006年には、日本の観測チームが望遠鏡を使って128.8億光年の遠方にある銀河の姿をとらえた。
すばるのカメラは、従来より大幅に軽量化している。カメラは材質からすべて見直し、口径が大きくなるほど困難になるレンズの加工にも手が加えられている。
 すばる望遠鏡の建設費は400億円かかった。私は、軍事予算に膨大なお金をかけるよりも、宇宙観測、そして、新薬開発にお金をかけるべきだと考えています。
 光が見える現象は、光子(フォトン)を目が拾っているから。ある物体から光が発せられると、その光の強度は距離の2乗に比例して弱くなってしまう。
 20年前まで、人類は100億光年以上も離れた銀河を観測することは出来なかった。しかし、今では、スバル望遠鏡をつかったら、肉眼で見える天体の1億分の1の明るさしかない天体まで見ることができる。
 宇宙が誕生したのは137億年前。そのため宇宙の大きさは137億光年だと思っている人が多いが、実際には宇宙が膨張しているため、もっと大きくなっており、直径にして940億光年もある。単純平均で光速の3.4倍で宇宙が膨張している。ええーっ、光速の3.4倍で宇宙が膨張しているなんて、どういうことなのでしょうか。光より早いものはないと言った(と思う)アインシュタインの言葉はどこに行ったのでしょうか・・・。
 1000億年後。そのまま膨張が加速を続けていけば、宇宙の膨張速度は光速をこえてしまう。これの意味するところは、星がいくら光を放っても、空間の膨張速度のほうが速くなってしまうため、遠ざかる星が放つ光は地球まで届かなくなるということ。つまり、宇宙のはじまりの星など、絶対に発見できなくなってしまう。
 天の川銀河には、全部で2000億個もの星(恒星)が存在している。そして、天の川は宇宙のなかに無数にある銀河の一つにすぎない。現在、宇宙にある銀河は、1000億個にのぼるとみられている。
 天の川銀河は、お隣のアンドロメダ銀河に除々に近づいている。この二つの銀河は50億年後には合体して、一つの銀河になる。二つの銀河の合体といっても、星同士の衝突は、まず起こらない。
天の川とアンドロメダが合体したとき、星同士が衝突する確率は、太平洋にスイカをランダムに2個落として、これらのスイカ同士がぶつかるほどの確率だ。
 なーるほど、このたとえはよく分かりますよね。それなら心配することなんかないやと思ってしまいます。
 ともかく宇宙の本を読むと、50億年後の衝突なんてスケールの話なのです。あと50年も生きていられるはずがない身として、50年ではなく50億年後だなんて、いったい何の話をしているのか、笑ってしまいます。たまには、そんなスケールで考えてみるのも、決して悪いことではありません。
(2013年4月刊。840円+税)

2014年5月19日

絵でわかる宇宙開発の技術


著者  藤井 孝蔵・並木 道義 、 出版  講談社

 ロケットがどうやって地球をとび出し、宇宙をとんでいくのか、そして、それをなぜ人間が制御できるのか、不思議でなりません。その不思議を少しでも解明するため、絵があるなら少しは分かると期待して読みはじめたのでした。
 結論からいうと、イメージは少しふくらみましたが、いやはや難しい。まだまだ分からないことだらけです。
 ロケットはなんといっても軽くつくらなければいけない。そのため、ミツバチの巣にあるような、ハニカムサンドイッチ構造をしている。
 ロケットの材料として複合材がつかわれ東レなどの日本の素材メーカーが貢献している。
 ロケットエンジンの燃焼室は4000度にもなる。この高温に耐えられるエンジンを設計しなければいけない。そのため冷却に工夫がこらされている。
 ロケット研究のなかで新幹線に役立つことがあったことが紹介されています。
 日本の新幹線にはトンネルが大変多い。超音速で狭くて長いトンネルは、豆鉄砲波と同じトンネル微気圧波をもたらし、被害を発生させる。そこで、今の新幹線の先頭車両は、くちばし型のとても長い流線型になっている。
ロケットの打ち上げは出来るだけ赤道に近い場所が選ばれている。地球の公転速度は赤道で時速1700キロメートル。つまり、地球は音よりも早く自転している。この地球の自転による表面速度を利用するため、ロケットは少しでも赤道に近い場所から打ち上げられている。
 でも、日頃、そんなに早く大地がまわっている(動いている)なんて、実感しませんよね。
今、人工衛星は3500機以上も宇宙を飛んでいる。ロシア1450機、アメリカ1113機。その次、3番目が日本の134機。中国133機なので、近く、日本は追い越されてしまう。
人工衛星が初めて飛んだのが1957年。ソ連のスプートニク1号。初めて人類が宇宙に出たのが1961年のガガーリン(ソ連)。「地球は青かった」という名セリフはよく知られている。
 宇宙に向かうロケットの信頼性は90~95%程度。10回から20回に1回は失敗する可能性がある。
 まだまだ、宇宙は遠い気がします。それにしても、アメリカは、戦争にばかりお金をつぎ込んで、宇宙開発を断念してしまっているのが、私としては残念です。
(2013年10月刊。2200円+税)

2014年2月17日

宇宙が始まる前には何があったのか?


著者  ローレンス・クラウス 、 出版  文芸春秋

 何もないところから何かが生じることはない。しかし、この常識は宇宙では通用しない。重力と量子力学のダイナミクスを考慮すると、常識はくつがえってしまう。それこそが科学の素晴らしいところ。私たちが目にするものすべてを、空っぽの空間から作り出すことが可能なのだ。
 この本で語られていることは、何年、何十年、何百年というものではなく、2兆年とか、まさしく気が遠くなりすぎるほどの次元の話です。もちろん、地球はおろか太陽だって50億年という寿命がとっくに尽きてしまっている先の話です。
 まあ、たまには、そんな雄大な宇宙の話に耳を傾け、目を見開いてもいいのではありませんか・・・。
私たちの身体を構成している原子のほとんどすべては、かつて爆発した星の内部に存在していたもの。私たちは、みな、文字どおり、星の子どもたちなのだ。私たちの身体は星屑(ほしくず)で出来ている。
光速より早く動くものはない。これが私たちの常識。しかし・・・。
 量子力学によれば、高い精度で粒子の運動速度を測定することができないほど短い時間ならば、その粒子は光よりも早い速度で動いてもかまわないということが示唆される。そして、もしも光より速い速度で動いているとしたら、アインシュタインによれば、その粒子は時間を逆行しているように振る舞うはずなのだ。
 なんということでしょうか。光速より早いと言うことは、時間を逆行することになるだなんて・・・。
アインシュタインが一般相対性理論を提唱したのは、わずか100年前のこと。そのころ、宇宙は永遠不変というのが世の中の常識だった。
 現代は、宇宙は膨張していることを知り、暗黒物質が宇宙にあることを知っている。空っぽのように見える空間エネルギーが含まれていて、それが宇宙の膨張を支配している。
 観測可能な宇宙は、これからどんどん光速より大きな速度で膨脹していく。つまり、未来になればなるほど、見えるものは減っていく。いま見えている銀河は、未来のある時点で、私たちからの後退速度が光速をこえ、それ以降は見えなくなる。その銀河は、地平線の彼方に消えてしまうのだ。
 これから、2兆年たつと、一部の銀河を除いて、すべての天体が文字どおり姿を消してしまう。つまり、今日、私たちの観測可能な宇宙にちりばめられている4000億の銀河は、すべて姿を消している。
 私たちの太陽は銀河系の辺境にある平凡な星の一つにすぎない。そして、銀河系は観測可能な宇宙にちりばめられている4000億個もの銀河の一つにすぎない。
 宇宙では、きわめて高い信頼度で、無から何かが生じることはありうる。
 空っぽの空間にもエネルギーが存在することが発見された。つまり、実は、空っぽの空間というのも複雑なものだった。適切な条件の下では、何もないところから何かが生じることは可能であるばかりか、必然だということ。
 高温・高密度のビッグバンの時期には、もともと物質と反物質とが同じだけ存在していたのだが、ある量子的なプロセスにより、物質の法が反物質よりもわずかに多くなるという小さな非対称性が生じた。そのおかげで、何もないところから、何かが生じた。それが、今日の宇宙にみられる星や銀河になっていた。
この本を読んで理解できたなんて思っていませんが、宇宙の始まる前には何があったのか、宇宙に終わりがあるのかという問いかけに対する答えの一つだと思い、最後まで興味深く読みとおしました。
(2014年2月刊。1600円+税)

2013年12月16日

宇宙になぜ我々が存在するのか

著者  村山 斉 、 出版  講談社ブルーバックス新書

この世のはじまり、広大・無限の宇宙が実は原始よりもはるかに小さかったというのです。信じられません・・・。
誕生した直後の宇宙は原子よりも17桁も小さかった。それをインフレーションで大きく引き伸ばして30桁以上も大きさになり、やっと3ミリの大きさになった。そこでビッグバンが起こり、宇宙のもっていたエネルギーが熱や光に変化し、宇宙は一気にあつくなり、ゆっくり大きくなっていった。宇宙は137億年もかけて少しずつ大きくなっていった。
宇宙が3キロメートルぐらいの大きさになったとき、粒子と反粒子のバランスが崩れた。宇宙に同じ数だけ出来ていた粒子と反粒子は、どこかで反粒子が粒子に変化したと考えられる。何ものかが10億分の1個だけ反粒子を粒子に変えたことで9億9999個の粒子は反粒子とぶつかって消滅しても、粒子は2個生き残り、星や銀河、そして人類へとつながっていくことになる。
さらに宇宙が1億キロメートルまで大きくなったところで、ビッグス粒子が凍りつく.宇宙がギュッと凍りついたおかげで、素粒子の世界に秩序が生まれ、多くの素粒子に質量が与えられるようになった。
このようにして始まった宇宙はゆっくりと膨張しているので、だんだん冷えていく。
 宇宙が100億キロメートルになると、消滅が止まり、生き残る数が決まる。これが今残っている暗黒物質だと考えられている。さらに宇宙が3000億キロメートルになると、クオークが強い力で閉じ込められて、陽子や中性子になる。中性子はすべてヘリウムの原子核に組み込まれている。宇宙が誕生して38万年後になると、落ち着き、1000万年光年ほどの大きさに落ち着く。まだ3000度Cあるが、原子核と電子がくっついている原子ができるようになる。
 暗黒物質の重力に引き寄せられて、原子が集まり、これが星になり、星がたくさん集まって銀河をつくる。宇宙で最初にできた元素は水素とヘリウム。星は人類の体のもとになる元素の製造マシーン。ただ、星の核融合によって出来るのは鉄まで。
 超新星爆発が鉄より重い元素をつくる原動力になる。超新星爆発は、新しい星の材料となるガスやチリを宇宙空間にばらまく。このばらまかれたガスやチリは、重力の重い場所に集まり、新しい星をつくる。地球は太陽をつくるために集まってきたガスやチリの一部でつくられている。その地球上で誕生した人類の体は、星のなかでつくられたものだから、まさしく人間の体は星屑でつくられていることになる。
 物質には反物質があり、両者が出会うと消滅するというのは、かつて私が読んだ、SF小説にありました。サイエンス・フィクションと思っていたら、こうやって学説として生きているのですね。そして、その小さな差が宇宙をつくっているというのです。そのとき、ニュートリノという小さな粒子が立派な働きをしています。
 ヒッグス粒子というのは、角砂糖ほどの空間に、10の50乗兆個もあるというのですから、なんのことやら想像を絶します。
 生まれたばかりの宇宙が原子よりはるかに小さいものだったというとき、その前は無だったというわけです。では、この広大無限の宇宙は無限に存在するというのでしょうか。
 地球も太陽も、そして銀河系宇宙も有限だということです。しかし、無限の存在があるのか・・・。気宇壮大なことがぎっしり詰まった、小さな新書でした。たまには宇宙の話を読んで気晴らししましょう。
(2013年1月刊。800円+税)

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