弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

宇宙

2023年10月29日

賢治と「星」を見る


(霧山昴)
著者  渡部 潤一 、 出版  NHK出版

 福島県に生まれ、東大東京天文台で働く高名な天文学者(教授)が、宮沢賢治を語った本です。宮沢賢治が天文学を深く研究していたことを初めて知りました。天文学者の眼から見た宮沢賢治という面白い視点で貫かれている本です。
 宮沢賢治の本に登場する数々の星たちや星座に関する記述は、天文学者の目から見ても、かなり正確。賢治の宇宙に関する知識は当時としては、半端なものではなかった。
宮沢賢治は、石集め、植物採集そして化石掘に熱中した。
賢治が中学2年生のとき(1910年)、ハレー彗星が地球に接近してパニックを引き起こした。彗星の尾に含まれる有毒ガスによって地球の生物が全滅するというデマが流布したのです。自転車のチューブがバカ売れしたという話もあります。それで、息継ぎをしてしのぐという馬鹿げた対応策に走った人々がいたのです。
 賢治は、東京で「星座早見」を手に入れている。
 宮沢賢治の物語の基本パターンは、現実から入り、夢のような体験を得て、ふたたび現実に戻るというもの。
細い月のとき、欠けて暗くなっている部分がほのかに輝いて見えることがある。これは、地球にあたって反射した太陽光が月の暗い部分を照らし出しているもの。「地球照」(アースシャイン)と呼ばれる。賢治は、この言葉を自分の詩に取り入れている。
賢治は「鋼青(こうじょう)」という表現を空について使っている。青みを帯びた鋼色(はがねいろ)という意味。夜明け前の夜空が次第に青みを帯びた昼の色に変化していくときの表現。
「銀のきな粉」でお空がまぶされるというのは、満天の星がまたたいている夜空の様子。
夜明け前には、空気が冷えて露が出てくることがある。そんな夜明け前の露に、月も星も隠されてしまう。
「月は、もう青白い露に隠されてしまって、ぼおっと円(まる)く見えるだけ」
シリウスの輝きについて、賢治は、「青や紫や黄や、うつくしくせわしく、またたきながら...」と表現している。たしかに、明るい星が低空で激しくまたたくとき、しばしば色が瞬間的に見えることがある。七色の輝きが消えたり、見えたりして美しい。
世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない。この宮沢賢治の指摘は、今日、ますます輝いているように思われます。
目先の利益だけを追求して原発(原子力発電所)を再開・新設そして、その使用済の核燃料処理場を受け入れようとするなんて、とんでもない間違いです。自分の国を守るには核兵器を持たなければいけないというのは、核戦争を肯定することです。でも、そんな事態で、人類が生き残れるはずもありません。「核の冬」がたちまち到来し、凍結し、餓死してしまうことでしょう。
この本を読んで初めて賢治が石灰工場に技師として勤めた意味が理解できました。要するに、農地の改良、肥料づくりをしようとしたのですね。農民の生活を向上させるためのものです。
オーストラリアの砂漠地帯では、夜、人口光の影響をまったく受けないので、月の光さえなければ、天の川の明るさで、自分の影ができるほどだというのに驚きました。
そして、タイタニック号の沈没(1912年4月)というのを、賢治は同時代の人間として受け止めているのです。
宮沢賢治は1933(昭和8)年9月21日、39歳で亡くなりました。結核、そして急性肺炎によるもののようです。
賢治を通して宇宙のことを知った気分になった本です。
(2023年9月刊。1650円+税)

2023年7月22日

夜空の星はなぜ見える


(霧山昴)
著者 田中 一 、 出版 北海道大学図書刊行会

 夜空は暗い。満月の夜が明るいといっても本を読むのは辛いし、星だって見える。
 でも、よーく考え直してみたら、夜の空が暗いって、実はあたり前なんかじゃない。だって、星って、無数にあるはず。だったら、満天は無数の星で埋め尽くされて、暗いはずがない。
 でも、反対に、星って地球からは遠い遠いところにあるものそうすると、そんな遠いところの星が発した光が地球まで届くのに何万年もかかったとき、その光が人間の目に一点の光として感じるって、そんなことが本当にできるの...。
 というわけで、夜空の星を私たちが見ることのできるのは、実は奇跡的な出来事のはず。でも、夜になると、星はフツーに空にあって、またたいて見える。いったい、どういうことなの...。
 この本を初めて私が読んだのは、今からなんと49年も前の4月のこと。つまり私が弁護士としてスタートを切った4月、まだ弁護士バッジも受けとっていないときのことでした。
 この本から受けた衝撃は大きく、そのため本棚の片隅に置かれながらも、決して捨てることはありませんでした。いま「終活」と称して、本棚の整理をすすめているのですが、手に取ったとき、もう一度よく読んでみようと思って、人間ドッグの泊まりで読む本の一冊として選んだのです(いつも一泊ドッグで6冊よみます)。
太陽からの光は、大気で反射し、また大気に吸収されて、地上に達するのは、その半分、つまり1平方センチメートルあたり1分間に1カロリー。太陽から放射された光は、500秒で地球に到着する。
 網膜上に集められた光は、網膜を構成する細胞によって吸収される。夜空の星のなかで一番明るく輝いているのは、真冬の南天にある大犬座のシリウス。このシリウスが見えるためには、「理論」上、0.96光年以内に存在しなければならない。しかし、シリウスは実は8.64光年の距離にある。この最も明るいシリウスを見ることができないのだから、夜空のすべての恒星を人類が眼で見ることはできない。
 こんな「理論」的結論は、もちろん明らかに間違っている。そりゃあ、そうですよね。星は夜空でバッチリ輝いていますからね。
 星野村にある天文台の大型の天体望遠鏡をのぞくと、昼でも星が見えます。これには驚きました。最近久しく行っていませんが、ホテルが併設されていますので、泊まりがけで行って、夜空をのぞいてみたいです。
 人間の網膜は、「理論」よりはるかに遠い光の到着を敏感に感じている。1千光年先の星を人間は見ることができる。なぜか...。
 著者は、そこで、次に光とは何かに挑みます。ここになると、かなり難しくなってきます。要するに、光とは粒子であって波でもあるということ。両立しそうにないのに、両立しているという量子力学の世界です。
 網膜に届く光量子が5個から8個になると、光の到着を網膜は感じる。光の粒子性を仮定すると、夜空に輝く星は、千光年に及ぶ遠方のものまでこの眼でたしかに見ることができる。
 そして、光という単一の物質が、波動であって、かつ粒子だというのはとうてい受け入れがたいところだが、光が粒子性と波動性を同時にもちうるなら、夜空の星を人間の眼が感得できることになる。
 光量子数が多いときには、きわめて良い精度で、全エネルギーが定まっていながら、それと同じように、光の位相がほぼ一定の値をとることが許される。通常の光が波動性を顕著に示すゆえんである。
ここはちょっと理解が難しいですね...。それはともかく、次は、なぜ夜の空は全天満天の星で覆われていないのか、なぜ暗いのか...、です。
 結局、これは宇宙が膨張しているからだと私は思います。すべてが光速で膨張していったとしたら、満天が星で覆い尽くされるはずがありません。
 というわけで、私の宇宙に関する謎は深まるばかりなのでした。いかがでしたか...。
(1973年9月刊。840円)

2023年6月26日

宇宙検閲官仮説


(霧山昴)
著者 真貝 寿明 、 出版 講談社ブルーバックス新書

 宇宙のなりたちに関心のある私ですから、さっぱり理解できないながらも、どこか分かりあえるところがないかと手探りですすみながら、ともかく読みすすめてみました。
 アインシュタインの一般相対性理論は、「質量があると時空が歪(ゆが)み、歪んだ時空が重力の源である」と説明するもの。こんなこと言われても、まるで理解できませんよね...。
 ブラックホールが宇宙に存在するのは確実です。このブラックホールは、一般相対性理論が予言した天体。一般相対性理論の根幹をなすアインシュタイン方程式の解は、ブラックホールの内側に特異点が存在することを示している。特異点は、時空の対称性などの仮定によらず、一般的に存在することが、特異点定理によって数学的に証明されている。
 宇宙検閲官仮説とは、この特異点が発生しても、ブラックホールの中に閉じ込められているから心配しなくてもよいだろうとする仮説。すなわち、ブラックホールなしに「裸の特異点」が出現すると、それは自然界の検閲に引っかかって隠されるはずということ。いやはや、これまた私の理解をこえてしまいます。
 裸の特異点とは...。巨大な星が重力崩壊して、電子の反発力で支えられず(白色矮星となれず)、中性子の反発力で支えられず(中性子星となれず)、さらにつぶれ続けるならば、支えるものがなく、一点に無限大の質量が蓄積する時空特異点が出現する時空になってしまう。でも、時空特異点が生じても、それがブラックホール地平面の内側のことなら、外側の世界には影響が出ない。
 ブラックホールは発生できるが、消滅できない。
 ブラックホールは合体できるが、分裂できない。
皆既日食のとき、太陽の近くに見られる星の位置が通常とは異なるという観測データによって、太陽の質量によって空間が歪み、その歪んだ空間を光が進むため、皆既日食以外のときとは光の進む方向がずれてしまう。
 遠くの銀河にある変光星ほど、赤っぽく見えている。これは、宇宙全体が膨張していることの証拠。つまり、ドップラー効果によるもの。
 分からないながらも、宇宙について考えると、自分の死後、宇宙はどうなるんだろうか...というのが、実にちっぽけな、とるに足らない心配だと、いつのまにか雲散霧消してしまうのです。
(2023年2月刊。1100円+税)

2023年6月17日

ワンルームから宇宙をのぞく


(霧山昴)
著者 久保 勇貴 、 出版 太田出版

 著者は、どうやら独身のようで、ワンルームマンションで10年も一人暮らし。そして、そのワンルームでやってる仕事は、なんと、広大な宇宙に飛んでいく宇宙探査機をどうやって上手に制御するかを研究すること。ええっ、そんなこと、ワンルームの自分のパソコンで一人で出来るの...、驚いてしまいました。ところが、著者はできると断言しています。
 宇宙機を目的地まで正確に飛ばす方法を考える軌道制御の分野では、宇宙機の運動や制御入力を数学的に方程式化して、その方程式をパソコンで解いて、制御がうまくいくかどうかを確認する。
 自分のパソコンで計算した宇宙機の軌道を初めて見たら、自分の目で宇宙の真理をのぞいたような感覚になるだろう...。いやはや、そんなことが宇宙航学研究所ではなく、ワンルームにある自分のパソコンで可能な世の中なんですね...。
 宇宙機の制御というのは、高校の物理で習う方程式でも、そこそこ太刀打ちできてしまうものなんだそうです。ええっ、えっ、ホ、ホントなんですか...。ウソでしょう。
 著者の研究は、多くの場合、パソコンひとつで完結してしまう。ワンルームの白いデスクにA4サイズのノートパソコンを広げ、ひとり黙々と研究する。うひゃあ、なんだかイメージが狂ってきましたよ...。
 著者は福岡生まれの兵庫県育ち。東大の航空宇宙工学科に入った。宇宙飛行士になるのを夢見て...。ところが、現実には足切り不合格。試験も受けられなかった。いやはや、すごい試験なんですよね。
 宇宙工学は、人間を乗せた宇宙船を正確に月にたどり着かせたり、3億キロメートルも彼方(かなた)の小惑星に60センチメートルという精度で探査機を着陸させる。
 宇宙機の設計での絶対的なルールは、とにかく制限重量を守ること。決められた重量の中で各システムのバランスを絶妙に調整し、ちょうどうまいこと全体のシステムを成り立たせて初めて宇宙機はミッションを遂行できる。
 宇宙空間は熱や放射線で機器が壊れやすく、しかもいちど壊れたら基本的に修理に行けない。そんな厳しい世界で、いかに巧妙に重量リソースを配分して、ミッションの成功率を高めていく。実際には、現実的な安全策を優先したり、機能を切り捨てたりという決断の繰り返しだ。JAXAで働きながら、なんと週1回はボクシングジムに通っているというのです。
 著者の書いていたブログが本になったものだそうです。書くのが好きというのも、いいことですよね。まあ、私も書くのが命ですけど...。
(2023年3月刊。1800円+税)

2022年11月24日

地球を掘りすすむと何があるか


(霧山昴)
著者 廣瀬 敬 、 出版 KAWADE夢新書

 地球の地下を実際に掘ったときの最深は12キロ。わずかとしか言いようがありません。だって地球の半径は6400キロもあるのですから、1%にもなりません。
 そして、地球の内部の核、マントルは赤くなければ、ドロドロでもない。
 地球を12キロ以上に掘りすすめないのは、高温になるため。1キロメートル堀りすすむごとに30度上がっていく。ドリルの先端に取りつけたダイヤモンドは、実は熱に弱い。ダイヤモンドを使わない別の方法を考える必要がある。
 ダイヤモンドは、深さ150キロよりも深いところでしか出来ない。ダイヤモンドが出来るには、それだけ高い圧力が必要になる。
 地球の表面は十数枚のプレートで覆われている。プレートとは、堅い板のこと。大陸プレートと海洋プレートの二つがあり、それぞれが別の方向に異なるスピードで動いている。大陸プレートの移動速度は、海洋プレートよりも遅く、年間数センチほど。たとえば大西洋は少しずつ拡大している。毎年2~3センチほど。ヨーロッパとアメリカは遠ざかっている。
 大陸が分裂したのが2億5000万年前。大西洋は、今も拡大中。
 プレートを動かしているのは、自らの重さで沈み込む力。この力でマントルからマグマを引き出している。海があるからプレートが冷やされ、重くなり、沈み込んでいくという循環が生まれる。
 マントルは岩石でできていて、コアは鉄を主体とする金属でできている。
 地球の表面の7割が海に覆われているが、海の深さは平均3キロほど。すると、表面にわずかに水がはりついている程度で、全質量の0.02%にすぎない。地球の1000分の1の隕石ひとつで、海の全水量と同じだけの水がもたらされる。現在の海の全水量を1海水とすると、太陽系の初期に降り注ぐ隕石によって100海水以上の水がもたらされたとしても、不思議ではない。
 コアは地球磁場をつくっている。磁場がなければ、地上にすんでいる生物は、有害な太陽風や宇宙線にさらされてしまう。
 地球に磁場がなければ、海がなかったかもしれない。海だけでなく、大気もなくなっていたかもしれない。
 火星には昔は海が存在した。火星の海がなくなったのは38億年前のこと。火星ができてから7億年後に海は焼失してしまった。磁場がなくなったからだと考えられている。
 磁場が消滅すると、太陽風の影響を受けて大気が剥ぎとられ、海が消滅した。
 この本では、火星はなぜ小さいのか、月はどうして生まれたのか、まだ完全に解明されていないことが示されています。そして、地球のマグネシウムが多い理由も説明が尽くされていないとのこと。世の中は、まだまだ謎だらけなのですね。そのことが分かっただけでも本書を読んだ甲斐があります。
(2022年7月刊。税込990円)

2022年10月 8日

空のみつけかた


(霧山昴)
著者 武田 康男 、 出版 山と渓谷社

 今から30年以上も前、40代初めに南フランスへの語学研修のツアーに参加しました。もちろん夏休みを利用してのことです。学者のサバティカル休暇を真似た法律事務所があると聞いて(北九州第一)、早速とり入れ、実践したのです。
 夏の南フランスは雨が降らず、夜10時まで明るく、そして食事は美味しく、人々はワインを飲みながらたっぷり2時間かけるのです。人生を味わい尽くすというフランス人の生き方を私も身につけたいと思いました。
 午前中のフランス語教室が終わると、学生食堂で安くて美味しい食事をとります。なんと、ワインつきです。そのあとはまったくの自由時間。広々とした大学構内で空を見上げると抜けるような青空が広がっています。これこそが生命(いのち)の洗濯だと思いました。25歳で弁護士になって20年近くになっていましたから、気分転換が絶対に必要でした。南フランスの青空のすごさは今もくっきり思い出すことができます。
 この本は、たくさんの空の現象を長く観察してきた著者による集大成の写真集です。その一は、年に数回はみられそうな空。その二は、年に1度くらいは見られそうな空。その三は、一生のうちに見られたらラッキー、というレアな空。この3つのステージで空が紹介されています。それにしても笠雲というのは、すごいですね。まるで、UFOです。こんな奇妙な形の曇って、見たことがありません。
 線状降水帯というコトバを最近知りました。そこでは、にゅうどう雲(「入道雲」とは書いていません)が次々に生まれ成長していきます。にゅうどう雲は、真夏そのものの雲ですね...。
 秋空に天高く見えるのは、うろこ雲。これは、空に小さな細胞上の対流がたくさん出来ていて、対流の中に、この雲が発生する。これは私も子どものころから見たことが何回もあります。
 この本では、真っ赤な夕日というのは、実はあまりない、としています。空気の澄んだ場所では、橙(だいだい)色の眩(まぶ)しい太陽が沈んでいく。ハワイの夕日は、眩しくて、とても見ていられない。そうなんですか...。
 日本は湿気が多く、空はかすみがちなので、赤い夕日を見やすい。
 そして、夕日の赤い太陽は、実は丸くない。上下にややつぶれている。これは、上空ほど大器の密度が小さいため。太陽の光が低空ほど浮き上がって見えるからだ。なーるほど。
 太陽の左右に、色づいた輝きが見られることがある。まるで、太陽が他にもあるかのようなのに、幻日(げんじつ)と言われた。
 虹の色は、アメリカでは6色、ドイツでは5色、イギリスは「ニュートン」以来7色。日本では、7色ですよね。こんなに国によって違うものなんですね。
 いくつもの空の写真があって、楽しく眺めることができました。
(2022年8月刊。税込1700円)

2022年8月29日

ブラックホール


(霧山昴)
著者 二間瀬 敏史 、 出版 中公新書

 ブラックホールの姿が見えた、だなんて、不思議ですよね。だって、光が吸い込まれていくんでしょ。その姿が見えるはずありません。なので、ブラックホールの周囲が見えたので、その真ん中の黒いものがブラックホールというわけです。なるほど、なーるほど・・・。でも本当なんんでしょうか。ブラックホールって、いったい何でしょうか・・・。
そこにある物質が詰まっているわけではない。物質のかたまりではなく、時間と空間のかたまり、のようなもの。ええっ、いったい何のことでしょう・・・。ともかく、わけが分からないまま、読みすすめました。この世の中、わけが分からないけれど存在するものというのは、いくつもいくつもあります。コロナ禍が爆発的に増えているのに、行動制限なし。旅行するのも自己責任で自由。ロシアのウクライナ侵略戦争が終わる目途が立たないなか、日本も核をもてという声が強まる不思議さ。日本が核をもったら攻められないなんてノーテンキな幻想でしょう。いったい日本に原発(原子力発電所)がいくつあるのか知っているのでしょうか。休眠を入れたら50ヶ所以上になります。その一つでも攻撃されたら、日本はおしまいなんですけど・・・。
 ブラックホールの中に物質はない。どこにも物質はない。重たい割にはすごく小さい天体。そして重力がとても強い天体、それがブラックホール。
 えぇ、物質がないのにすごく重く、重力がとても強いって、どういうことなんでしょうか・・・。
 ブラックホールの表面は、時間が凍りつくところ。時間の流れが止まるところ。
それではブラックホールをつくった物質、その後にブラックホールに落ち込んだ物質は、いったいどこに行く、行ったのか・・・。これは、今なお答えが見つかっていない現代物理学の宿題だ。
 ブラックホールの正反対のものとしてホワイトホールと呼ぶものがある。このことも知りませんでした。外向きに一方通行の面に囲まれた時空の領域です。
 この宇宙には、大小無数のブラックホールが存在している。これらのブラックホールは、太陽質量の10倍以上重い大質量星の重力崩壊で形成されたものと考えられている。
 かの有名なホーキング博士は、タイムマシンができないことを意味する「時間順序保護仮説」を主張した。ホーキングはいまだかつて未来からの旅行者がいないことがその証拠だとした。そうですよね。映画や小説だとタイムマシンで時空を行ったり来たりしますし、できますけど、いったい父親が母親と巡りあわずに私が存在できるものでしょうか・・・。どう考えてもおかしいです。
 光さえも逃げ出せない時空の領域、それがブラックホール。では、それは何なのか・・・。こんな日常生活とはまったく無縁な思考の遊びのような世界に、しばし浸っているのも心地良いものなんですよね・・・。
(2022年2月刊。税込946円)

2022年3月 5日

さばの缶づめ、宇宙へ行く


(霧山昴)
著者 小坂 康之、林 公代 、 出版 イースト・プレス

福井の高校生がつくったさばの缶詰が宇宙食として採用され、日本人飛行士が愛好しているという、うれしい話です。テレビでもやったようですが、私は知りませんでした。
2020年11月27日、野口聡一郎宇宙飛行士がISS(国際宇宙ステーション)で、「さば缶」をおいしい、おいしいと言いながら食べました。「福井県の若狭(わかさ)高校の皆さんがつくってくれた『さば缶』です」と紹介したのです。
この「さば缶」は、缶を開けても、プシュッと汁が出てきて困るということはありません。
「大変美味しいです。美味しーい!!」
「お魚はジューシーで、しょうゆの味がしっかりしみてます」
いやあ、感激しますよね。高校生が作った「さば缶」が宇宙ステーションで美味しい、美味しいと言って宇宙飛行士から映像で紹介されるなんて、超すごいことです。
「さば缶」を宇宙食にという願いで、14年かけ、のべ300人もの高校生が関わったプロジェクトでした。本当に高校生がつくったの...、という疑問をもつ人がいるかもしれませんが、ちゃんと宇宙食の安全基準を満たした製品なんです。もちろん、しっかりした教師の指導の下ではありますが...。
無重力状態の宇宙船内で汁が飛び散らないよう、「さば缶」の汁をどのくらいの粘度にするか、とろみをどうやってつけるのか、工夫した。結局、くず粉を使って味もしみて、とろみが出ることを突きとめた。
「鯖(さば)街道をISSへ!」
これが高校生チームの合言葉だった。
当初は、小浜水産高校、そして今は若狭高校に吸収され、その海洋学科の高校生たちが担っている。小浜水産高校でつくっていた「さば缶」は、「蒸煮」をする手間をかけるので、生臭さがなくなり、汁も濁りがなく、澄んでいる。地元民に大好評で、いつもたちまち売り切れになっていた。
NASAが有人月面着陸をめざすアポロ計画のために衛星管理手法として「HACCP」をあみ出した。今では、日本でも2021年6月から、すべての食品事業者にこのHACCPによる衛生管理が義務づけられている。これは工程管理を徹底し、記録を残すことに尽きる。
1億円かかるといわれた費用を、30分の1の300万円で小浜水産高校は実現した。そして次は宇宙食への挑戦。
宇宙では味覚が鈍くなるから、味は濃いめにする必要がある。
ISSには冷蔵庫がないので、賞味期限は常温で1年以上が必要。
若狭高校海洋学科に入ると、1年生のときにHACCP基本技術検定の資格試験に挑む。そして、3年生になったら宇宙食「さば缶」をレシピどおりに缶づめを製造する。
読んでいるうちにワクワクしてくる楽しい本でした。高校生の皆さん、ぜひひき続き、いろんな味の宇宙食「さば缶」を開発してくださいね。
(2022年1月刊。税込1650円)

2021年12月13日

宇宙の終わりに何が起こるのか


(霧山昴)
著者 ケイティ・マック 、 出版 講談社

世界は、どのように終わるのか...、火で終わる。今後50億年ほどのうちに、太陽は膨張して赤色巨星となり、水星も金星も軌道全体が呑み込まれ、地球はマグマで覆われ、生物など皆無の、ただの黒焦げの岩になってしまうだろう。菌すらいない、くすぶった燃え殻さえ、やがて太陽の外層に落下し、死にゆく恒星の激しく渦巻く大気の中に、自らを原子としてまき散らしていくだろう。
私たちの暮らす宇宙が、安定した居心地のいいところで、安全に年をとっていける場所だ。そう思いたいが、こんな宇宙観はもはや成りたたない。私たちの宇宙は変化している。
宇宙論においては、明確に定義された「いま」という概念は存在しない。
運動する速度が速いほど、その運動しているものにとっての時間はゆっくり進む。また、非常に重い物体に近づくと、時間はゆっくり進むようになる。
初期宇宙は、一つの巨大な炎だった。この仮説は、完全に確かめられた。
プランク時代とは、宇宙時間ゼロから10秒のマイナス43乗まで。そのあとに大統一(GUT)時代がやってくる。これは10秒のマイナス35乗だけ持続する。宇宙時間の10秒マイナス6乗あたりで、最初の陽子と中性子が形成され、そこに電子も寄り添って、通常の物質の構成要素が出そろった。宇宙時間2分になるころ、宇宙は快適な摂氏10億度にまで冷えた。まだ、太陽の中心よりは熱いが、できたばかりの陽子と中性子が強い力で結合できるほどには低温だ。
宇宙に存在する水素のほぼすべてが最初の2~3分のあいだに生み出された。つまり、私たちをつくっているものの大部分が、宇宙が存在してきたのとほぼ同じ長さの期間、なんらかの形態で宇宙の中に存在してきたということ。
私たちの身体は星屑(ほしくず)で出来ている。つまり、ビッグバンの副産物から成り立っているのだ。
今から40億年もすると、私たちの天の川銀河は、アンドロメダ銀河と衝突し、華々しい光のショーが起こるだろう。
重力とは、物体と物体のとのあいだにはたらく力というより、質量をもつ任意の物体とのあいだにははたらく力というより、質量をもつ任意の物体の周囲に生じる空間の湾曲と考えたらよい。これがアインシュタインの天才的洞察の一つ。
ビッグリップが起きるのは、早くて2000億年後。ふー、やれやれ...。ビッグバンは一度限りの出来事だったのか。それとも、一つの激しい転換点なのか...。
2015年9月14日の午前9時50分45秒。ほんの一瞬、少しだけ背が高かった。そのとき重力波が通常したのだ。重力波の進路内にいたら、少し背が伸び、次に背がちぢんで、横幅が広がる。この変形は陽子の直径の100万部の1程度のものでしかない。つまり、ないに等しいというレベルの話だ。
いやあ、たまには、こんな気宇壮大な話を頭の中にとりこんで、あれこれ空想をたくましくしたいものですよね。自分が死んだあと、いったい世界はどうなるのか、地球はどうなるのか、いつまで人類は地球上に存在しうるのか...。興味は尽きません。
(2021年9月刊。税込1980円)

2021年9月20日

スペース・コロニー、宇宙で暮らす方法


(霧山昴)
著者 向井 千秋 、 出版 講談社ブルーバックス新書

臆病者を自認する私にとって、宇宙で暮らすなんて、考えられもしません。実のところ飛行機だって乗るのが本当は怖いのですから...。
人間が初めて宇宙空間に飛び出したのは1961年4月12日。ソ連のガガーリン少佐だ。人口衛星スプートニク1号が打ち上げられたのは、それより3年半前の1957年10月4日だった。いやあ、これって超々スピードですね。なんだかんだ言っても、宇宙ではアメリカよりもソ連、今のロシアのほうがすすんでいますよね、なぜなんでしょうか...。
まあ、それでもアメリカのスペースシャトルは、地上と宇宙とを39回も往来したとのこと。これはすばらしい。ただ、このスペースシャトルは2011年7月に運用を終了しています。
いま、国際宇宙ステーション(ISS)は、1998年の組み立て開始から、すでに23年間も地球の上空を周回しているとのこと。これまた、すごいです。
宇宙空間に人間が生存するためのもっとも重要な基盤技術は、メンテナンスフリーで長時間使える電力供給システムをつくること。そこでは、宇宙線にさらされる宇宙空間でも耐久性をもつ放射線耐久性に優れた材料による高効率かつ高出力の太陽電池などが考えられている。
人間が宇宙に行くと、骨にふくまれるカルシウム量が減少する。宇宙放射線による人体への影響は無視できない。
宇宙に滞在する宇宙飛行士は、顔と頭に膨満感を感じる。無重力では、血液が下半身に集まらなくなり、反対に上半身の血流が増加する。放っておくと心臓のサイズが小さくなり、機能も低下する。なので、宇宙飛行士について、適切な栄養管理(食事指導)と最適化された運動方法を組みあわせる。
宇宙ステーション内では、意外にも細菌や真菌などの微生物が地上より活発に増殖する。
宇宙飛行士が宇宙空間で船外活動をするとき、宇宙服は通常0.4気圧に減圧する。
ISSの中で、食糧も水も、そしてエネルギーまでもが再生できるというのは驚くばかりです。でも、私は、こんな密閉空間に閉じ込められるなんて、想像すらできません、嫌です。逃げ出したいです。ですから、宇宙空間に出るのが好きで、かつタフな人にまかせて、話を聞くことにします。
(2021年5月刊。税込1100円)

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