弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
宇宙
2020年7月13日
銀河の片隅で科学夜話
(霧山昴)
著者 全 卓樹 、 出版 朝日出版社
コロナ・ウィルスのせいで、毎日、気が滅入ってしまいそうですが、そんなときには、宇宙のスケールで考えてみるのもいいことですよね。
1日の長さは、1年に、0.000017秒ずつ伸びている。0がコンマの下に4つ並んでいます。
3億5千万年前は1年は385日だった。このとき1日は23時間。6億年前は1日が22時間、9億年前だと20時間しかなかった。
今から500億年すると、地球がまだあるとして、1日の長さは今の45日になってしまう。
もちろん、そんなころには、あなたも私も星のくずの彼方を原子にでもなって浮遊しているだけなんでしょうが...。
天の川銀河の中心には太陽を2千の2千倍、400万倍集めて、極限まで縮めたような、想像を絶する怪物、超巨大ブラックホールが鎮座している。あらゆる存在の中心に暗黒が棲んでいるのだ。しかも、この暗黒はただの虚無ではない。なんともはや、想像を絶する世界です。
宇宙飛行の費用は、今のところ、1回68億円。10年後には20億円にまで下がる見込み。いやはや、そんな大金を出せる超大金持ちが世界にも日本にもいるというのが信じられません。
この本は東大のなかでも難関で天才たちの集まるところと言われる理物(りぶつ。理学部物理学科)卒の著者が縦横無尽に語っているのですが、最後に紹介されるアリの話にもっとも心打たれました。なんと、奴隷になったアリたちも反乱をすることがあるというのです。
アリも人間と同じく、自由を愛し、そのために命さえ投げ出すのだ。
こんなことを知ることができるのも多読しているからのことです。なので、本読みはやめられません...。
(2020年4月刊。1600円+税)
2020年3月16日
宇宙は無限か有限か
(霧山昴)
著者 松原隆彦 、 出版 光文社新書
宇宙って広いんだから無限に決まってるだろ...。私の直観です。でも、そうすると大変なことになると著者は脅します。いえ、説明します。
無限に宇宙が続くとすると、空間が無限に広いことになる。もし無限に広い宇宙が私たちのまわりと同じように続いているとしたら、その中にある星や銀河の数も無限個ということ、星のまわりに惑星が回っているのはありふれたことなので、惑星の数も無限個となる。その中には、地球のような惑星があるだろう。つまり、星や惑星が無限個あれば、どこかに必ず地球とまったく同じ環境になっていると確認される惑星があるはずだ。そこに生命が誕生している確率はゼロではない。どんなに小さな確率でも、そこに無限をかけあわせれば、無限になる。宇宙人の住む惑星が無限個あるならば、その中には地球とほとんど同じような惑星も無限個あり、人間と同じような姿形をした宇宙人がどこかにいるだろう。そんな確率はとんでもなく小さいだろうが、無限の宇宙では、どんなに小さな可能性でも必ず起きる。つまり、第2、第3の地球がいくらでもあるのだ。
なんだか怖い話になってきましたね...。
本当に宇宙が無限に続いているとすると、このほかにも奇妙な宇宙像に導かれてしまいます。つまり、「無限」という言葉は「無知」と隣り合わせなのです。
宇宙の年齢は138億年と考えられている。ところが、宇宙の広さは470億光年とみられている。これは、光の速度より、宇宙空間の膨張の速さが上回っているということを意味する。
ええっ、光速より速いものなんてないと信じていました。
ところが、宇宙空間の膨張の速さについては、光速度を超えてはいけないという規則は適用されない。宇宙空間が一様に膨張すれば、必然的に距離に比例して遠ざかる速さが増える。十分に遠方の宇宙を考えたら、いずれ必ず光速度を超える。そうでないとつじつまが合わなくなる。
こうして宇宙の地平線までの距離は470億光年となる。それより先の宇宙がどうなっているのか、現在の私たちは知ることができない。つまり、470億光年が観測可能な宇宙の果てとなる。
しかし、この観測可能な宇宙の果ては、本当の果てとは言い難い。
オルバースのパラドックスは、夜空の星がなぜ見るのかということでもあります。星が無限にあるとしたら、夜に空を見上げたらと、必ずどこかにある星の表面に視線はぶち当たるため、夜空全体が星の表面と同じ明るさで輝くはず...。
光の速さが有限であること、宇宙に始まりがあること、この二つにより夜空が星で覆いつくされるのに必要なほど遠くまで見通すことができない。オルバースのパラドックスは、宇宙が無限の過去から存在していないという理由で説明できる。
たまには、こんな浮世離れした議論に加わって、頭のほてりを冷ましたいものです。
あなたもぜひ、ご一読ください。
(2020年1月刊。800円+税)
すっかり春めいてきました。道の両側に白いこぶしの花が咲きほこっています。ヒヨドリが花の蜜を吸っているのを見かけました。昨年うえたチューリップの花が咲きはじめました。春到来です。
コロナウィルスのため、世界中が大変な状況となっています。全国一斉に学校が休校にするなんて、とんでもないことです。本当に子どもの健康を考えての措置だとは、とても思えません。人の流れだけでなく、モノづくりも止まっていて、営業と生活が成り立たなくなっています。日本政府はパニックをあおるようなやり方ではなく、情報を適切に開示して、きちんとした医療体制を確立してもらいたいところです。
2020年3月 9日
星宙(ほしぞら)の飛行士
(霧山昴)
著者 油井 亀美也 、 出版 実務教育出版
宇宙飛行士が語る宇宙の絶景と夢。これがサブタイトルです。宇宙飛行士として飛行中に撮った地球と星を見事なカラー写真で紹介してくれる楽しい本です。
親から、家にお金がないので防衛大学校に行ってくれと頼まれて入学。自分に向かないと思ったところで、ひょんなことから戦闘機パイロットとなり、教官もつとめているうちに宇宙飛行士に応募して採用されたという経歴です。
自衛隊時代はソ連を「敵」だとしっかり思い込んでいたのが、ロシアで宇宙飛行士として訓練を受けているうちに誤解は解けていったといいます。
宇宙飛行士に選ばれたときは既に39歳になっていました。それから厳しい訓練を経て、実際に宇宙を飛んだときには40歳でした。そして、今もまた宇宙に飛び出そうとしているそうです。すごいですね・・・。
宇宙は常に快晴。
流れ星は、天から降ってくるのではなく、眼下に広がる大気圏の中を地上に向かって流れていく。
オーロラは、寄せては返す波のようなもの。
オーロラの緑は大気中にある酸素原子、ピンクや紫は窒素原子の色。
オーロラが美しく光るほど、危険のサインとも言える。
エネルギーの塊である太陽を一瞬でも直に見ると失明してしまう。なので、ISS(国際宇宙ステーション)の窓には、太陽からの紫外線をカットするフィルターが貼られている。
快適な船内から防寒対策することなく、大好きな冬の星座を見続けられるというのは、ISSの特典だ。
地上では、惑星は瞬かず、恒星は瞬く。しかし、宇宙では、どちらも瞬かず、鋭い輝きを放つ。なので、両者は見分けにくい。
ISSは、全体としてサッカー場ほどの大きさのある巨大な構造物だ。空気の満たされた10ほどの部屋がある。この部屋を全部あわせると、ジャンボジェット機1.5倍くらいの容積がある。そこに宇宙飛行士6人が生活している。
日本は、ISSで一番大きく静かで機能美にあふれた「きぼう」という部屋をもっている。
宇宙飛行士には、筋力を保つために、1日2時間半の運動が義務づけられている。
夜景の撮影が難しいのは、ISSが秒速8キロで移動しているから。この秒速8キロというのは、拳銃の弾の20倍もの速さ。これは、東京と大阪間を1分で飛ぶという猛スピードだ。
ISSにいるあいだは、どんなに疲れていても、緊急事態に対処できるだけの余力は残しておかなければならない。うむむ、なるほど、そこまで徹底しているのですね・・・。
子どものころの夢を見事にかなえたという話でもあります。すごいですね
(2019年11月刊。1600円+税)
2020年1月 4日
宇宙から帰ってきた日本人
(霧山昴)
著者 稲泉 連 、 出版 文芸春秋
ずいぶん前に、このコーナーでアメリカの宇宙飛行士たちは実際には月面着陸していないという本(いわゆるトンデモ本)を紹介して、叱られたことがあります。トンデモ本を真に受けてしまったわけです。9.11についても陰謀論があるようで、フェイクニュースが横行する世の中ですので、なかなか真実を見抜くのは大変です。
宇宙に飛び出した人類は、今では国際ステーションをつくって長期滞在していますし、日本人も、そのなかで頑張っているのですよね・・・。でも、私は、例のチャレンジャー爆発事故を「目撃」して以来、宇宙旅行なんて、ますます怖いと思うばかりです。
その点、ロシア(旧ソ連)の宇宙船ソユーズ号は大変な安心感があります。
ソユーズは、1957年のスプートニク1号の打ち上げに使われたR-7Aを改良したもの。ソユーズは2000回近くの打ち上げに使用されており、その成功率は97%をこえる。現在も年間10機以上が打ち上げられるほど、信頼性には定評がある。ただし、2018年10月に打ち上げに失敗し、発射直後に緊急着陸するという事故も起こしている。
ソ連時代に爆発事故を起こして公表されなかったという事故もあるようですので、手放しで安全だと評価できないのかもしれませんが、この分野ではアメリカよりソ連時代をふくめてロシアのほうが宇宙船の安全性は確保されているようです。
それにしても、宇宙から地球の公害による汚染がはっきり見えるという指摘には、そんなにひどいのかと驚きました。なにしろ、ベトナム戦争のとき、地上の戦火まで見えたというのですから、宇宙船から地球は驚くほど、よく見えるのですよね・・・。
1990年にソ連の宇宙船ソユーズに乗って日本人として初めて宇宙旅行した秋山豊寛氏は、地球の青さというのは、地球自体は青いのではなく、地球と宇宙との境目の美しさを指していると語っています。
このとき、TBSはソ連に50億円支払ったとのこと。まさにバブル現象でした。1986年にチャレンジャー爆発事故が起きて、毛利衛氏が日本人初の宇宙飛行士になるはずだったのが、順番が入れかわったのです。秋山氏は、ひどい宇宙酔いに悩まされたとのこと。
地球に帰還した直後は、動力酔いに悩まされる。これは筋力が弱ったのではなく、三半規管によるバランス感覚がなくなり、まっすぐ歩けない、ふらふらと千鳥足になってしまう現象が起きる。
宇宙船内では、上下の概念がなくなってしまう。それに慣れた人が、地球に戻ってくると、危ない目にあってしまう。
宇宙船のなかでは、無動状態なので、ニュートンの作用、反作用の法則、つまり押せば押されるという法則を身体で実感・理解できる。
毛利衛氏は、私と同じ団塊世代。1992年にスペースシャトルで宇宙に行った。このときの地球の人口は55億人。2度目は2000年、NASA宇宙飛行士として行ったとき、地球人口は61億人。そして今や77億人。2050年には100億人になると予測されている。はたして、地球は人間をそんなにかかえこめるのか・・・。
(2019年11月刊。1650円+税)
2019年10月15日
2つの粒子で世界がわかる
(霧山昴)
著者 森 弘之 、 出版 講談社ブルーバックス新書
私の特技の一つは、よく理解できない本であっても、なんとか最後の頁まで読み通し、ところどころ分かることで良しと思い切れることです。この本も、まさにそうでした。まったく理解は出来ないのですが、うすぼんやり分かるところがあり、世の中の仕組みについて考えるきっかけの一つをつかむことができました。
私たち人間の身体も、地球も、本の活字のインクも、素粒子が集まって出来ている。もっとも早く見つかった素粒子は、電子。1897年にイギリスの物理学者ジョゼフ・ジョン・トムソンが発見した。
素粒子には、物質をつくりあげている粒子と、力を伝える粒子の二つがある。
光子には質量がない。運動エネルギーは持っていない。しかし、エネルギーがないわけではなく、別の種類のエネルギーを持っている。光は光子から構成され、光子が多いほど強い光であり、光子のエネルギーは光の波長で決まる。
これは、エインシュタインの立てた仮説。
光は、粒子と波の両方の性質を持っていて、場面に応じてその一方の姿を見せる。これを粒子と波の二重性という。ところが、実は、光だけでなく、あらゆるものが、波と粒子の2つの性質をあわせ持っている。
電子や原子も、波としての姿を隠し持っている。量子力学は、その波としての性質にとくに注目し、波の形や運動について記述した理論。
このように、あらゆる粒子は波でもあり、波は粒子でもある。粒子と思われていた電子は波としての姿も時おり見せ、波と思われていた光も粒子としての性質がある。
世の中のあらゆる粒子は、ボーズ粒子かフェルミ粒子のどちらか。世界の粒子は、この2種類に大別できる。
ボーズとは、インドの物理学者サティエンドラ・ボーズに由来する。
フェルミは、イタリアの物理学者エンリコ・フェルミに由来する。
原子核の大きさは、原子全体の10万分の1ほどでしかない。原子核は原子を図に示したとき、点として表すことができないほど小さい。電子にいたっては、大きさを持つのかどうかもはっきりしていない。つまり、原子は、ほとんどスカスカなのだ。
以上、私が少し分かったかな・・・、と思ったところだけを引用・紹介してみました。
私の身体が、そんなスカスカの原子の寄り集まりだからこそ、ミューオンとかが通過していくのでしょうね。でも、そうすると、私が小さな脳で考えているというのは、どんな現象になるのでしょうか・・・。これも宇宙の神秘の一つですよね。
(2019年5月刊。1000円+税)
2019年5月 7日
地球一やさしい宇宙の話
(霧山昴)
著者 吉田 直紀 、 出版 小学館
久しぶりに宇宙についての本を読みました。たまには、こういう本を読んで気宇壮大な気分に浸るのもいいことですし、必要です。宇宙に関する最新の知見が盛り沢山で、知らなかったことばかりでした。
地球が月に及ぼす力によって、月の内部は現在も温められ続けている。
月の地下には巨大な空洞がある。幅100メートルの空洞が50キロにわたって続いている。これは、かつての火山活動で流れた溶岩がつくった空洞。内部には、氷や水が存在する可能性がある。月は活火山なのかもしれない。
月の誕生には諸説あるが、生まれたばかりの地球に、火星ほどの小天体がぶつかり、地球の一部と小天体の残骸が集まって月が生まれたという説が今は最有力。
月は地球から少しずつ遠ざかっている。毎年、3.8センチという速度で離れていっている。月は潮汐によって地球の自転を遅らせ、自らは地球から離れていっている。
月がいなくなると、月は地球の自転を遅くする働きをしているので、そのタガが外れて地球の自転速度が速まり、1日が8時間になる。すると、月のおかげで安定していた地球の大気は、バランスが崩れて、常に大嵐が吹き荒れる状態になり、生命が存続し続けられるか怪しくなる。
宇宙にも色がある。若いときには青緑色をしていて、年齢を重ねて、138億歳になるとベージュ色になった。
宇宙はいまから138億年前に無から生まれた。宇宙は、広がりのない一点、つまり何もないところから生まれた。
GPSは、相対性理論にもとづいている。物体の速度や重力によって、時間の進み方が変わるという理論にもとづいて、GPS衛星の時計を調整し、位置情報を正しく保っている。
宇宙が始まったころ、まだ星のない「暗黒時代」があった。このころは水素やヘリウムの「ガス」と「ダークマター」が薄く漂い、ビッグバンの名残である「弱い電磁波」が飛び交うだけだった。そして、ガスは一様に広がっていたのではなく、少しだけ濃い部分も薄い部分もあった。濃いガス雲は、やがて薄い円盤をつくり、回転しながらさらに中心に集まる。中心部は高温・高密度になり、やがて赤外線を放出しはじめる。小さな小さな星の赤ちゃん「原始星」が誕生した。この原始星の質量は、太陽の100分の1、中心の温度は1万度をこえ、密度は1立方センチあたり、0.001グラムほど、水と空気の中間くらい。ぷよぷよしている感じ。
太陽質量の100分の1ほどだった原始星は、太陽の20倍ほどの重さになったとき、核融合反応を始めて、太陽の10万倍もの明るさで輝きはじめた。
「ファーストスター」をコンピューター・シュミレーションでつくってみたというのです。すごいです。とても面白い本でした。
(2018年12月刊。1300円+税)
2019年3月 4日
時間と時計の歴史
(霧山昴)
著者 ジェームズ・ジェスパーセンほか 、 出版 原書房
この本の第一版は、今から40年も前の1977年に出版されたそうです。この本は、最新(2018年5月)の内容に改訂されていますので、まったく最新の知識が得られます。
時間って、あるようで、ないようで、とても不思議なものですよね。
時間は使えるし、節約したり、無駄にしたりすることはできるけれど、壊せないし、変えることもできない。
時間はどこにでもあるけれど、空間を占めることはない。
時間は、はかれるけれど、見れないし、触ることも、除くことも、箱に入れることもできない。
誰もが毎日、時間を利用しているけれど、誰も時間とは何かをきちんと定義することができない。
時間は物理量だ。なので、観測でき、機械式時計や電気時計その他の物理現象をつかった時計ではかることができる。
万物は振動するが、一定の率で振動するものは、時間の間隔をはかるための標準として利用できる。
日時計で1日の長さをはかると、2月と11月とでは、15分もちがってしまう。
現存している最古の時計はエジプトでつくられた。日時計も水時計も、エジプト人の手でつくられた。
地球の自転は徐々に遅くなっていて、1日は1000年前よりおよそ16ミリ秒だけ長くなっている。これは、主として月が地球の海に及ぼす摩擦による潮汐作用のためである。6億年前の地球では1日は21時間だった。
うるう年の1972年には、2秒のうるう秒が加えられた。
すべての基本単位のなかで、時間はもっとも正確にはかることのできる量である。これは、すべての基本測定を可能な限り時間測定に近づけるべきだということを意味する。
1メートルの定義は、1983年にパリで開かれた国際度量衡総会は次のように定めた。
1メートルは、光が2億9979万2458分の1秒に進む距離である。
時間って何だろうと思いながら、ついつい最後の頁まで、さっぱり理解できないことが多々あるのを身にしみて自覚しつつ読了しました。
ありがとうございました。
(2018年11月刊。2800円+税)
2019年2月11日
太平洋
(霧山昴)
著者 蒲生 俊敬 、 出版 講談社ブルーバックス新書
太平洋も動いているのですよね。その海底が少しずつ移動していて、地球の奥深く沈み込んでいくプレートテクトニクス理論は、初めはウェゲナーの大陸移動説と同じで、信じられませんでしたが、どちらも今では定説になっています。
日本に地震が多いのは、そのせいです。そんなところに原発をつくったり、使用ずみ核燃料の最終処分場を地底深くに置いておこうなんて、いずれもとんでもありません。
この本に、地球上の海について、その表面だけでなく、深いところでも海流があると書かれていて、驚きました。
北大西洋から始まった深層流が最後に北太平洋まで到達するのに、約2000年かかる。この階層海流のおかげで地球の高緯度域と低緯度域との温度差がやわらげられている。つまり、深層海流は、地球にとってエアコンのようなありがたい存在だ。
深層海流の速さは、1時間に40キロメートル、つまり時速5キロ。
地球が受けている潮汐力の7割は月による。月という衛星のあるおかげで、海洋の熱塩循環が続き、そのエアコン機能によって、地球の温和な環境がたもたれている。
POPsとは、難分解性有機汚染物質。海洋生物に取り込まれたPCBsの一部は、やがて生物の死骸の断片とともに、海洋表層から深層へと沈降していく。世界でもっとも深い、西太平洋のマリアナ海溝のなかにあるチャレンジャー海淵(水深1万920メートル)で採取されたエビ類の体内から、高濃度のPCBsが検出された。恐るべきことだ。
海水中では、光と音は、対照的だ。海水中で、光はほとんど通らない。これは、水の分子が光のエネルギーをさかんに吸収してしまうからだ。音については、海水はきわめて優れた伝導体となる。海中では、空気中に比べて4倍以上の速さ、毎秒1500メートルだ。
宇宙を飛行した人類は全世界に550人をこえた。これに対して、水深1万メートル以上の深海底に到達した人類はわずか3人のみ。
調べてみると、深海の海溝水は豊富に酸素を含んでいることから、海溝の内部と海溝の外側とで、海水の入れ替わりがひんぱんに起こっていた。
地球も海も、まさに生きているのですよね・・・。宗教家は、それでも、地球も海も、神がつくったと説明するのでしょうか、不思議です。
(2018年9月刊。1000円+税)
2018年11月 8日
フォッサマグナ
(霧山昴)
著者 藤岡 換太郎 、 出版 講談社ブルーバックス新書
フォッサマグナって、地理の教科書に載っていましたので、今はどんなものなのか、すべて判明していると思って手にとって読んでみました。すると、驚くべきことに、今も謎に包まれていて、よく分かっていないというのです。
この本を読んで、門外漢の私がしっかり認識できたことは、地球は生きていて、絶えず流動していること、そして日本列島も移動しているということです。
ですから、日本列島のあちこちで大地震が起きるのも自然の摂理なんですよね。そんな日本に原子力発電所(原発)をつくるなんて、土台まちがっています。
九州にしても、いずれ大分の別府と島原あたりを結んだ線で2分されると言われています。まあ、明日おきる話ではありませんので、今を生きる私たちが心配するようなことではありませんが・・・。
それにしても、南海トラフの大地震予想というのは、近いうちに間違いなく起きることなのでしょう。そのとき、原発や新幹線は本当に大丈夫なのでしょうか。また、全国各地、いたるところにタワーマンションをぼこぼこ建てて、見晴らしの良さにうけにいってる住民の皆さんの生活は大丈夫なのでしょうか。私は本当に心配です。
フォッサマグナとは、本州の中央部の火山が南北に並んで、本州を横断している細長い地帯のことを言う。この東西では、地層や岩石などの地質がまったく異なっている。フォッサマグナ地域の東西では、1億年から3億年前の古い岩石が分布しているのに対して、フォッサマグナ地裁の内部は2000万年前以降の珍しい岩石でできている。
フォッサマグナは地下6千メートル以上の溝であることが判明しているが、実は、どれくらい深いのかは、まだ分かっていない。したがって、日本アルプスの3千メートル級の山の頂上との落差は1万メートルもある。
フォッサマグナがなぜ出来たのかは、いろいろな説があるものの、定説はなく、謎に包まれている。その論争の一つは、そもそも日本の本州は、最初から一つの島弧だったのが、二つの島弧が合体したものなのかという未決着の議論につながっている。
今から40年ほど前、ウェゲナーの大陸移動説というものが提唱されたとき、冷笑する学者が多かったように覚えています。あんな重たい大陸が動くはずがないという考えで、これは地球が動くなんて間違いだというのと似た考えです。
ところが、その後、プレートテクトニクス理論なるものが出てきて、地球内部のある高温高熱のマグマが地表へ噴き出してくるので、大陸も海も動いているという学説でした。これが今ではすっかり定着しています。
それにしても、明治の初めにドイツからやってきたナウマン博士がわずか10年ほどの滞日期間中にフォッサマグナを発見し、あわせて日本列島の地質図を完成させたというのは、大変な偉業だと改めて思いました。生きている地球に無事に住んでいるって、つくづくありがたいことなんですね・・・。
(2018年9月刊。1000円+税)
2018年8月 6日
天文学者が宇宙人を本気で探しています!
(霧山昴)
著者 鳴沢 真也 、 出版 洋泉社
この広い広い宇宙のどこかには、きっと地球の私たちのような高等生命体がいることでしょう。そして、そのうちに交信できることになるでしょう。でも、それが今すぐに実現できるとは思えませんし、今すぐだったら、免疫体系の違いなどから、下手に接触したらお互いに生命を維持できないかもしれませんよね・・・。
この本は、天文学者が真面目に真剣に学問として宇宙のどこかにいる生命体を探索している取り組みをレポートしています。
著者は結論として、宇宙のどこかに、きっと知的生命体はいるとしつつも、それは地球に既に来ているとか、来れるほどの近距離にはいないとしています。
知的生命体は、かなりレアな存在である。その最大の理由は、進化の偶然性にある。著者は、知的生命体はいるにしても、銀河100個に1文明、あるいは1000個に1文明ではないかとしています。どんなに楽観的に考えても天の川銀河に10も存在していないというのです。ということは、地球までUFOに乗ってはるばるやって来る可能性はほとんどないということですよね・・・。
この宇宙には、1000億の桁で銀河が存在していて、それぞれの銀河に1000億の桁で恒星が存在する。1000億かける1000億の星が宇宙にいるというのは、地球上のあらゆる海岸に存在する砂粒の数よりまだ多いだけの星があるということ。これだけ星があれば、知的生命体がどこかにいても何ら不思議ではない。ほとんどの天文学者が、そう考えている。
天文学者は、そのため大型の電波天文台を設置して探索にいそしんでいるのです。4光年という距離は、東京に1コのビー玉を置き、兵庫県に別のビー玉を置いておく。これがケンタウルス座アルファ星と太陽との距離である4光年を感覚的にあらわしたもの。
夏になると、夜に寝る前にベランダに出て、天体望遠鏡で月の素顔を眺めるのが私の習慣の一つです。夏の楽しみでもあります。ベランダにゴザを敷いて寝たこともありますが、さすがに今はできません。月の運河をくっきりと眺めていると、クラゲのような形をした宇宙人の存在を信じていた少年のころをなつかしく思いだします。
たまにはスケールの大きい宇宙の話に浸るのもいいものですよ。
(2018年4月刊。1600円+税)
テレビを見ない私ですが、ロボコンを録画して見るのは大好きです。高専ロボコンも大学ロボコンも、どちらも楽しみにしています。
先日は大学ロボコンがあり、東大が優勝しましたが、豊橋技術大学が東大キラーとして奮闘していました。高専ロボコンより大学ロボコンのほうが技術的には数段上だと実感しますが、素朴な面白さという点では高専ロボコンも捨てたものではありません。